兄妹間の深夜の騒動
目覚まし時計が「ピピッ、ピピッ」と鋭く鳴り響いた。
その音に引き裂かれるように、ベッドに横たわっていた大島舎人は目を覚ました。
「…まだ暗い?」
瞼をこするように開け、寝室を見渡す。窓の外は濃い闇に包まれ、月明かりだけがかすかに室内を照らしている。次第に暗さに慣れた瞳が、壁際の本棚に並んだ漫画の背表紙やガレージキットの輪郭を捉える。
「こんな深夜に目覚まし? 設定ミスか…?」
苛立ちが頭をよぎった矢先、突然アラーム音が止む。沈黙が訪れ、耳の奥で自分の鼓動が響く。
「午前3時か4時か…」
スマホで確認しようとしたが、鉛のように重い身体が動かない。眠気に抗えず、再び寝返りを打とうとした瞬間──
「…っ!? 動けない…?」
全身が縛りつけられたような感覚に襲われる。心臓が高鳴る。
(まさか金縛り…? 遅寝のせいか…)
深呼吸で落ち着けようとする。その時、胸の上に柔らかな重みを感じた。
一定の大きさがあり、温もりを帯びている。しかも…微かに動いている。
(…金縛りじゃない。何かが乗っている──)
思考が駆け巡る。(…生きてる? 動物か? いや、この形状は…
目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。
肌に伝わるのは、人間の体温。布越しに感じる柔らかな膨らみ。腰のあたりにかかる、しなやかな重量…そして甘い桃の香り。
「はあ…」
深いため息が漏れる。舎人は天井に向かって呟いた。
「羽衣。文句は山ほどあるが、とりあえず俺の上から降りてくれないか?」
[お兄ちゃん~♪ お兄ちゃんの鼓動、落ち着くんだよね~]
くすぐったい吐息が首筋にかかる。羽衣の長い紫髪が舎人の頬を撫でた。
甘ったるい声が耳元に触れる。
「寝言か? まだ寝てるなら──」
「ちがうよ~」
即座に返ってくる声に、舎人は悟った。完全に覚醒していると。
「…寝たふりはやめろよ」
身体を揺すると、胸の上にうつ伏せになっていた羽衣がゆっくり顔を上げた。月明かりが、彼女の紫色の髪と彫刻のような輪郭は淡く浮かび上がらせた。
羽衣が舎人の胸に覆いかぶさり、紫色の髪が汗で濡れた鎖骨に絡みつく。薄いパジャマ越しに、柔らかな膨らみが舎人の肋骨を押しつぶすように沈み込んだ
「お兄ちゃんの鼓動、速いよ?」羽衣が唇を耳たぶにすり寄せ、甘ったるい吐息を吹きかける。
「昨日みたいに……また獣になるの?」
舎人が仰向けに逃げようとするたび、羽衣の腰が無意識に前後に揺れる。太ももの内側で硬くなったものを感じて、彼女の目が妖しく細まった
「離せって言ってるだろ!」
舎人が喉を詰まらせながらも、羽衣の背中を撫でる手が止まらない。下着のない肌は絹のように滑らかで、腰のくぼみが掌に吸い込まれていく。
「嘘つき」羽衣が舎人の手首を掴み、自分のパジャマの裾へ導く。腿の付け根まであと数センチ──「こっちが欲しいんでしょ?」
(月光が汗ばんだ腿の曲線を照らし、布地が危うく裂けそうなほど張り詰めた舎人の下半身に影を落とす)
「こんなこと…誰に教わった!?」
舎人が必死に布団を掴む指が白くなる。羽衣は妖艶に舌なめずりし、腰を沈めて熱を伝える。
「お兄ちゃんの夢話よ」
「と…と…とにかく降りろ、しかも下着もつけずに夜中に乗りかかるなんて、どういう了見だ」
羽衣が上半身を起こすと、長い紫色の髪が舎人の胸元を撫でるように流れた。しかし腰から下は密着したままで、むしろ体重をかけて沈み込む
「ほら、離れたよ?」
悪戯っぽく顎をしゃくる羽衣の腰が、微妙に円を描くように揺れた。
「でもお兄ちゃんのここが……熱くて硬いから、離れられないんだよね」
「バカ言うな!離れろ」
舎人が羽衣の肩を押そうとした瞬間、彼女のパジャマの襟がさらに開く。胸元の影が深く落ちて、汗が舎人の指に絡みついた。
「まずい……ブラをつけ忘れた」
「どんだけ非常識だ、つけろ!!!」
舎人の慌てて様子を見て羽衣は故意に腰を浮かせて布団の上に跪坐する。薄明かりが腿の内側の柔らかな曲線を照らし出した。
「どうしたの?」人差し指を舎人の唇に当てながら、羽衣の足首が舎人の太ももを挟む。
「 私のプリっとした胸や、もちもちのお尻を見てドキドキしちゃった?」 「我慢できないの」
確かに妹・羽衣は美しい。腰まで届く紫の長髪、モデル並みのくびれた肢体。だが今はそんな感慨も吹き飛ぶ。彼女が挑発的に囁いた。
「大丈夫だよ~。お兄ちゃんの童貞、私が卒業させてあげる、だって全ての兄が妹を使って童貞卒業をするものだ」
「………」
舎人の理性の糸が切れた。
「ふざけるな!」
右手が閃く。羽衣の頭へ鋭い手刀が──
「いてっ!!!」