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いつも好き好き言ってた俺の幼馴染に彼氏が出来たって!?

作者: 佐古昭博

久しぶりの短編です。

宜しくお願いします。

「え!? (かなで)に彼氏!?」


 親友から聞いた突然の話に俺は呆然となったのだった。


◇◇◇


 俺は足立(けい)、一普通の高校二年生だ。しかしそうだなあ。ただ特技があるとすれば……、


「あれ、ケイどこ行ったの?」

「ふふふ、ここさ」

「わっ、びっくりした! 母さんの前ではしないでっていつも言ってるでしょ!?」

「ふふふ」


 そう、俺の特技は存在を消すことである。この技を習得するのに実に5年の歳月を使った。それには訳があり、


「で、なんで我が家のリビングで隠れているの??」

「ふっ、それはだな………」

「あーいた、ケイ!! 今日も今日で許さないんだから!!」

「あっ、しまっ……。ぎゃーー!!!」


 こいつは俺の邪魔ばかりをする俺の幼馴染下村(かなで)だ。成績優秀、スポーツ万能。絵に描いたようなカースト上位で、少し茶色がかったショートヘアーはいつも少し毛先がくるっとしている。

 美人でしかも巨乳だから、アイドル的に男子から人気である。

 こんな暴力女のどこが良いのか。いや、確かに、おっぱいがでかくて、良い匂いしてたら、そりゃあ悪い気はしない………痛たたたたたたたたたたっっっ!!


「いつも息子が迷惑かけるわね~奏ちゃん」

「いいえ、いつものことなんで大丈夫ですよ、おばさま。それよりケイ、あんたまたB組のまどかちゃんにちょっかい出したでしょ!?」

「痛たたた!」

「私がいっつもあんたに好き好きってしてるのに、なんで他の女に手を出すのよー!!」

「痛たたた!!」

「もー許せないーー!!」

「痛たたた!!!」


 少し女の子の尻をおっかけたらすぐこれだよ。そう俺は他の女の子と遊ぶのが好きなのだ!!

 別に良いじゃん! 少しぐらい他の女の子と遊ぶくらいさ! 向こうから誘ってきたら、断る理由なんてないだ……ろ……?


「あ、オトしちゃった」


◇◇◇


 チャイムの鐘の音が生徒たちの歓喜に変わる放課後。


「ケイ~、一緒に帰ろうー」

(かなで)

「今日さ、なんか新しいのお店が開いたんだって。開店記念だから安くしてるかもよっ。一緒に行こう」

「う~ん、分かった。行こう!」


 そして俺たちは学校近くの商店街に新しく出来たパフェ屋さんに行った。そこには多くの人が並んでいて、高校生や若い女性たちで賑わっていた。

 そして待つこと20分、われわれもパフェを買い、歩きながら一緒に食べる。俺はチョコレート、奏はイチゴバナナだ。


「ん~、美味し~」

「なるほど、これは美味い。人気店になるな」

「そうねぇ。有機栽培の果物だって謳ってたし、少しだけ値段はするけど、果物本来の自然の甘さが感じるわ」

「さすがは奏。相変わらず舌が肥えてますな」

「ふふ、料理を作ってると、自然と素材を意識するからねっ」


 そして近くの公園に立ち寄り、一緒に座って残りのパフェを食べた。もう秋の音が聞こえてきて涼しい風も吹いている。


「気持ちいいわね」

「ん、そうだなあ」


 ストンと奏は俺の肩に頭を載せる。少しモジモジしながら甘い顔をしている。俺もついドキッとする。


「!」

「ねえ、いつ私に告白してくれるの??」

「それは~だな~……」


 その時、俺のスマホがブーッと揺れる。


「あ、ちょっと待って」

「………」


 俺はスマホを確認し、奏は体を起こして髪を整える。


「! 友達から呼び出しが来た。すまんが、先に行く」

「え? 今から? ……まさか女?」

「まさか? 単なる友達だよ」

「………」

「……」

「誰?」

「とにかく野郎達と服を買いに行くんだって!」

「あ、そう……」


 俺は彼女の手をふいっと払った。今だ……!


「あっ、じゃあ私もそっちに………あ、いない!! ケイ、ケイっ! どこ行ったの!?」

「ふふふ、俺はもういない」

「あ、ちょっ………。やっぱり!! また女ね!! 女でしょ!!」

「……」

「あー、もうまた逃げられた!! せっかく良い雰囲気だったのに~~!! 悔しいー!! ケイのバカ~~~!!」


 こうして俺はそそくさとC組の男達とミクちゃんと一緒に遊びに行ったのだった。


◇◇◇


「また他の女と遊んだんだって~?」

「おん」


 こいつは俺の無二の親友、槙村幸太郎。サッカー部のエースでスポーツ万能。俺と奏と同中で、よく学校で遊んでいた。友達も多く、いわゆる陽キャだ。ただし成績は俺より悪く、要はバカなのである。


「奏が言ったのか?」

「まあな。で何回も言うが、そろそろ付き合えよー」

「だって、付き合ったらもう他の女の子と遊べないじゃんか」

「そりゃ分かる。付き合って遊んだら、そりゃ二股だ。そりゃあ良くない」


 俺も人の子だ。それぐらいの節度は持っている。


「………しかしなあ、そんなことばかりしていると、いつか奏ちゃんに愛想尽かされるぞ?」

「へっ、まさか」


 しかしそう陽気にいられるのもつかの間だった。それから数日経ったある日のことだ。俺は幸太郎と市の駅前をブラブラしている。すると幸太郎が声を上げる。


「あれ? 奏ちゃんじゃない??」

「ん。あ、本当だ」


 珍しいな。あいつがこんなところにいるなんて……、


「え!!?」


 あいつの隣に知らない男が立っていた。その男は彼女と楽しく笑っていた。


「?????」


 一体どういう状況だこれは?? 奏が俺以外の男と仲良さげに歩いているなんて???


「おい、どうする後つけてくか? (けい)(けい)ってば!?」

「え? あ、う、うん……」


 俺は親友に言われるがまま、二人の後を追った。ふたりはゲーセンで遊んだり、喫茶店に行ったり、買い物したりと普通のデートをしていた。

 二人が別れる頃には俺は口から魂が出かかっていた。


「けーい。おーい、(けい)っ」

「あ………ふぁ、ふぁい………」

「ちょっと僕の情報網で少し確かめてみるから、時間をくれ」

「ふぁ、ふぁい……」

「明日か、明後日には情報が入ると思う」

「ふぁ、ふぁい……」

「それまで待て」

「ふぁ、ふぁい……」

「し、死ぬなよ……??」

「ふぁ、ふぁい………」


 俺はそれ以降の記憶が残ってない。ただ覚えているのは母さんが風呂で溺れる俺に声をかけてくれたぐらいだ。

 そして翌日の6限目に幸太郎から聞いた。


「え!? (かなで)に彼氏!?」


 幸太郎は深刻そうにコクンと頷いた。


「嘘だ……。嘘だと言ってくれ……」

「いや、残念ながら………」

「相手は……相手は誰なんだ!??」

「一高の岡倉という男らしい」

「一高!? めっちゃ優秀な高校じゃないか!?」

「僕の情報ではその中でも秀才で、スポーツも出来て、その上イケメンだ。お前のような脳天バカと比べたら月とスッポンだ」

「チュキとシュッポン………」

「いや、提灯に釣鐘(つりがね)かも」

「ちょうちんにちゅりがぬぇ……」

「兎も角だ。お前には太刀打ち出来ない相手だ」

「………」

「だから軽。もう諦めるんだ………」

「どこにいる??」

「え??」

「次はどこに行くか、奏に確かめてくれないか」

「そんな無茶な……」

「頼むこの通り! 最初で最後の一生のお願いだ!!」

「……」


 俺は初めて親友に頭を下げた。幸太郎が了承するまではずっも頭を上げないつもりだった。最初は困惑した彼だったが、


「分かった軽、頭を上げてくれ。正直に答えてくれるか分からないが、一応彼女に訊いてみるよ」

「おお、我が友よ……」

「じゃあこれは僕からのお願いだ。これからの自分の言葉や約束は絶対に守るんだぞ」

「おお、分かった」


 こうして俺と幸太郎の作戦が始まった。


◇◇◇


 幸太郎情報によると、この日曜日に二人は市内のショッピングモールと近くの洋食屋さんに行くらしい。


「俺とも行ったことない場所に………ギリリ」

「おい、ぎりぎりと歯ぎしりを鳴らすな。相手に気づかれるぞ?」

「むむ……」

「いつものように存在を消せ……!」

「むむ、分かった……」


 そして今回の作戦はこうだ。偶然ばったり会った幸太郎が岡倉と話をしている隙に、俺が奏を連れて土下座してでも別れさすというものだ。それならば流石の奏も別れてくれる…………と思う。

 それにしてもあいつあんなにヒラヒラしたミニスカート履いて、可愛くおめかしして………。ちくしよょう…。


 そしてきゃっきゃうふふと二人で買い物を終え、洋食屋さんに向かった。二人はテーブルの二人席で対面に座っている。


「二人で顔を合わせて楽しそうに話しやがって~~………わなわな」

「軽の存在は見えないが、机がやたら揺れているな……。あんまりわなわなと揺らすな。尾行に気づかれるぞ!」

「………」


 俺たちは二人にバレぬよう、一応黒のサングラスと髭をつけている。


「あ、スープ飲み始めた。カーッお上品に飲みやがって!!」

「お前はズズズーッと大きい音が出てるぞ?」


 そしてがメインが出て、しばらく雑談を交えた後、奏がトイレに立った。そしたらおもむろに幸太郎が立つ。


「よし、今だ!」


 自然な調子で幸太郎は変装を解き、奏たちのところに向かう。さすがはコミュニケーションのプロ。もう岡倉と楽しそうに打ち解けている。

 くそ、俺は足がガクガク震えている。行くか行かないか……。三人は何を話しているか分からない。幸太郎も話す量が減ってきている。一体ど、どうしたら………?

 その時奏が岡倉の腕を取った。出て行くつもりか???

 俺は焦って三人の所に走って、奏の手を掴んだ。


「あ、ちょっ、ちょっと……!」


 俺はそのままお店の外に奏を連れていく。


「あ、あのっ、お客様、お会計………!」

「あの二人がすべて支払います!!!」


 そして俺は奏を連れて近くの公園に向かった。


「はあはあはあ………」

「もう、折角デートのためにお洒落してきたのに。服が台無しよー!」

「奏……!」

「なに??」

「あの男は別れてくれ!!」

「……とりあえずそのサングラスと髭は取ったら?」

「あ、お、おう」

「なんで? ケイには関係ないじゃん」

「それが大ありなんだ……」

「なんでよ?」

「それは俺が………」


 好き、というこの二文字がこんな簡単に出てこないなんて……。あいつはいつも嬉しそうに俺に言う。こんなに勇気がいることなんだな。

 そして俺は彼女の顔を見る。彼女は頬を膨れながらも、目は僕をしっかりと捉えていた。


「好きだ奏」

「え? なんて?」

「好きだ奏!!」

「聞こえない。もう一度」

「好きだっ! 奏!!」

「もう一回」

「好きだ奏!!!」

「本当に??」

「あぁ、本当だ!!」

「ほんとに本当??」

「ほんとに本当!」

「もう他の女の子のとこ行かない?」

「行かない行かない!」

「私だけ見る?」

「見る!!」

「部屋の掃除もたまにしてくれる?」

「する!!」

「料理も?」

「料理も!!」

「子供は3人?」

「4人!!」

「じゃあ、彼と別れたらさ、私と付き合ってくれるの?」

「あぁ、もちろんだ!!」

「そう……」

「………」

「……分かったわ。良いよ、付き合いましょう」

「いやったーー!!!」

「………そうだって。聞いた? ふたりとも?」

「ばっちし!!」

「yes!!」

「………へ??」


 後ろを振り向くとスマホを持った二人がニヤニヤしながら、こちらを見ていた。

 なんだ? 何が起きている???


「えーと、ご紹介しましょう。私の遠縁の親戚の岡倉雄介君です」

「ふえ………?? し、親戚??」

「初めまして。奏さんの親戚の岡倉雄介です」

「あ、はい。初めまして……」

「今回のことで私の相手がどうしても必要だから、面識のある彼に協力してもらったのよ~」

「………」

「けどケイが知らない相手じゃないといけないから、私の母の伯母さんのお孫さんにあたる人間にしたのよ」

「………」

「いや~、けどまさかここまで作戦が上手くいくとは思わなかったなあ」

「でもケイがビビッて、なかなか来なかったのはイライラしたけどねー」

「こういうこと初めてだったので、とっても緊張しましたよー」

「いや、素晴らしい演技でしたよ岡倉さん」

「はっ、謀ったなーー!? お前ら~~!??」

「普段の仕返しよ~」

「ぐぐぐ……」

「さて作戦は成功したし、帰りますかね」

「そうだな~」

「待て、俺は今回のことは認めんぞ!?」

「………ふーん、そんなこと言っていいのかなぁ(けい)?」

「なに?」

「この発言な覚えてないかい??」

「『これからの自分の言葉や約束は絶対に守るんだぞ』『おお、分かった』」

「……こ、これは………」

「もしも軽が最後にごねたりしたら、黙らせるための学校で録音した音声だ」

「………」

「それに、こーれーも~」

「え?」

「『好きだっ! 奏!!』」

「お、おい止めろーー!!」


 奏が嬉しそうに何回も俺の告白音声を流す。大音量だから公園にその声が響き渡り、周りの人たちがキョロキョロ見る。

 地、地獄だあー!!!


「もう最高! これずっとスマホの目覚ましにしとこっ♡」

「……」

「じゃあこれで音源は登録したし、二人も聞いてくれた。それに~♪」

「?」

「学校のグループライ◯でさっきの告白動画を流しときま~す」

「あ、おいっ! それは待ってく……」

「だ~め♡ ポチッ♡」

「って、あーーーーー………!!」


◇◇◇


「見てーあの二人よー。この前のユー◯ューブで流れてた公開告白した男子」

「……」


 あれ以降校内で動画が拡散され(、しまいにはご近所にまで知れわたり)、俺たちは公認のカップルとなる。

 彼女は俺の右腕に両手を絡めて、幸せそうに俺と一緒に歩く。俺は恥ずかしすぎて正直死にそうだ。そうだ、存在を消し………、


「存在を消したら、またシメオとすから」

「は、はい………」

「けどやっぱり嬉しいわ。ケイと一緒にこうやって歩くのが夢だったのー♡」

「そ、そうか……。それは良かった……」


 俺は周りの目が気になって地獄だよ……。


「見てあれ、銀杏よ。あそこにふたつの実が風に揺れて……」

「おお、確かに二つのたわわな実が揺れている」

「どこ見てるの??」

「へ? いや、別に???」

「今、巨乳の女の人が通ったわね~……」

「ふぇ?? 一体なんのことやら……」


 奏はさっとスマホを取り出し、


「あ、おい………」

「『私だけ見る?』『見る!!』『好きだ奏!!!』」

「ああああああああーーーーっっ!!!」

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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[一言] 主人公がクズだし、このクズを好きなヒロインも理解不能
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