表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女暗殺者リリィと異世界から転移した小説家との恋の物語  作者: 日向 たかのり
第四章 小説「異世界小説家と女暗殺者の物語(結婚編)」
39/44

第三十九話 拘る二人

 いよいよ衣装選びも佳境に入って来た。

 それを当日着る当人の意見は、ほとんど聞かれずに。


「うーん。とはいえ、フェイスの意見も捨てたものではないわね」

 あれ、流れが変わって来た。

「そう言えば、和服で白無垢(しろむく)と言う衣装があるらしいの。この世界にはないデザインだったわ。それにしようかしら?」

(え?)

 もっと重装備の花嫁衣装が、第一候補の急浮上してきた。

「あのー、ローズさん。私、動きやすい衣装の方が……」

 私は、再び、自分の希望を訴えてみた。

「何言ってるの? 当日なんて、ちょっと歩くだけで、後は立ってるだけですよ。花嫁が、何するの?」

「それは、聞いて知ってるけど……」

 和服の様な物は、ローズがデザインしてきた衣装の中にはない。

 もしかして、これからデザインして作るのか?

「うーん、ローズさん。確かに枇々木(ヒビキ)の世界では、1つの衣装の選択肢かも知れない。だけど、こちらの世界は、こちらの世界で、風習と言うか、文化と言うか、伝統と言うのがあるじゃない? 異世界の白無垢(しろむく)と言う和服は、どうかなぁと思うの?」

 この屋敷で数少ない年長者としてのシャトレーヌの意見が出てきた。

「いいえ。小柄なリリィさんには、枇々木(ヒビキ)の世界の衣装が似合うと思うの」

「いや、似合うと言うか、こう言うことに疎かったリリィさんには、ちゃんとこちらの世界の伝統的な衣装を……」

「白無垢だって、枇々木(ヒビキ)の世界では、伝統的な衣装と聞いたわ」

「いえいえ、リリィさんが詳しくて、あえて白無垢にしたいと言うのなら、私は反対しないわ。でも、リリィさんは、下手すると普段着でも良いと言い出す子よ。それは、駄目だわ」

 あわわ。二人が喧嘩し出した。止めないと。

「わ、私は、振袖とか言うやつでも、構わないぞ」

 枇々木(ヒビキ)に返事をした時と同じ衣装が良いと思って伝えた。

 どうせ動きづらいなら、思い出のある衣装が良いと思って。

 だが。

「駄目です!」

 二人は同時に私に振り向いてこう言った。

「あ、はい。すいません」


 結局、無難なウェディングドレスに決まった。

 枇々木(ヒビキ)の世界にも、似たような衣装が沢山あるらしい。

 それにした方が良いだろうと言うことになった。

 私にしてみれば、どの衣装も、何かあった時に動きづらいので、苦手なのだが。

 

 枇々木(ヒビキ)が、ようやく書斎から出てきた。

「服は、決まったの? ごめんね、忙しくて」

「本当に、そうだぞ」

 私はむくれた。

「ごめん、ごめん」

 頭をかいて謝る枇々木(ヒビキ)

「で、どれに決まったの?」

「これよ」

 ローズが、手に持って、枇々木(ヒビキ)に見せてあげた。

「……」

 枇々木(ヒビキ)が、ジッと見つめるだけで、何も言わない。

「あれ? 気に入らない?」

 流石のローズ・コーディネーターも、私の未来の旦那様の御意見は気になるらしい。

「い、いえ。こんな素敵な服を、着てくれるんだと思って、ちょっと……」

 どうも、感激しているらしい。

「じゃ、着せてみる?」

 ローズの目が輝きだした。

「え? 今から?」

 慌てる私。

「ほら、着せて見せてあげて。リリィさん」

 シャトレーヌも、テンションが上がっている。

 そうして、二人に連れていかれた。

 私の部屋で着替えを終え、静々とリビングに向かう。


「ん? どうしたの、リリィさん?」

 入り口で足を止める私に、シャトレーヌが気にして声を掛ける。

「う、うん」

「見せてあげないの? リリィちゃん」

 と、即すローズ。

 すると、ローズとシャトレーヌが手を引いて、私をリビングに招き入れた。

「はい。未来の旦那様。未来の奥様の花嫁衣装ですよ」

 ローズが、我が事のように嬉しそうにして、私を紹介してくれた。


「ど、どうかな?」

 少し照れてしまい、視線を床に逸らす私。

 リビングには、フェイスもいた。

 だが、二人とも、返事がない。

「どーしたのかなー? 返事がないぞー!」

 ローズが、感想を言うように即す。

「リリィさん、綺麗だよ。本当に素敵だ。リリィさんは、やっぱり乙女だったんだねぇ」

 こんな時でも、悪口を言えるフェイスって。

 だが、ローズは、突っ込むのを我慢してくれた。

 しかし、拳は、固く握られている。

「どう? 枇々木(ヒビキ)? 他のにする?」

 私は、枇々木(ヒビキ)の答えを待つ。

「いいや、それが良い。似合ってるよ。素敵だ。綺麗だよ」

 枇々木(ヒビキ)は、ニコニコしながら感想を述べてくれた。

「うぐっ!」

 それを聞いて、ローズが泣き出した。

「え? なんで、お前が泣くんだ?」

 慌てる私。

 お蔭で、私の感動の気持ちが吹っ飛んだ。

「よがった。本当に、こんな時が、ぐるなんで。ほんどうに」

 涙声で、ちょっと何言ってるか分かりにくい。

 だが、ローズは、私達2人が、ここまでくる流れを思い浮かべてくれたのだろう。

 シャトレーヌは、ニコニコして、そのやり取りを見守っている。


「ローズは、本当に涙もろいな。そして、泣くと何を言ってるのか良くわからなくなる」

 私は、そのローズの泣き顔が、とても、とても嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチッと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!

執筆の励みになります。ぜひよろしくお願いします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ