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動き始めた事態

 長らくお待たせしましたが…ついに!連載を再開しましたっ!! 


 これからは一日一回の更新を予定しています。三月の声を聞く前に、完結できるのではないかと思っています。


 それでは、引き続き二人の夏物語をお楽しみください。


「……多分、レッドイーグルの仲間が居るとしたら、あそこしか無い…」


 エレナは、憂鬱な思いで呟き、切なげな瞳で、バックミラーに映るマドンナを睨み付けた。


 パトカーは、サイレンをけたたましく鳴らしながら、道路をひた走っていた。 信号も無視。交差点も無視。パトカーと救急車だけに許された、非常時の特権だ。


 運転するのは、マドンナこと筑摩麗奈。後部座席で、警官達に両脇を固められているのが、エレナ。

 彼女は、マドンナに『レッドイーグルのいる所まで案内しなさい』と命令されたのだ。



 仲間を警察に売る行為なのだと思うと、気が進まない。ずっと共に生きてきた仲間を、裏切ることなどできない。エレナは、最初のうちはマドンナの残酷な命令を無視し続けた。


 しかし、マドンナの強い態度に押され…仕方なく案内している、という状況だ。───都会に忘れ去られた、あの小さな公園へと。


 あの公園は、昔からレッドイーグルがよく使っていた。だから、坂上哲也を誤って殺してしまった隼人も、本能的に、そこへ足を向けたのだ。

 『隼人と関係のある場所に行く』という事実だけが、罪の意識に苛まれている今の彼女を支えていた。




「この交差点を左に入ったところよ」

 エレナが告げたとき…。




 パン!

 パーン!


 いきなり、鋭い音がこだました。


「…何かしら?目的地の方から聞こえたけれど…」

 マドンナが怪訝そうに呟く。他の刑事たちも、キョロキョロと窓の外を見回した。


「まさか…銃声…?」

エレナは、急に嫌な予感に襲われて、擦れた声を発する。


「大丈夫よ。万が一、今のが銃声だったとしても。一応、このパトカーの窓は防弾ガラスだから」

 落ち着き払って、マドンナが答えた。そのまま、交差点を左に曲がる。彼女は、バックミラーでチラリとエレナを見やると、思いっきり嫌味なセリフを吐いた。

「レッドイーグルが喧嘩でもしてるのかしらねぇ…?」


 しかし、エレナは聞いていなかった。


 ──レッドイーグルは、誰も銃なんか持ってない。だとしたら、今の音は…まさか、あいつらが…?



 エレナは、今までに無いほど動揺し始めていた。





「え?通り魔?この子が?」

 混乱しきった表情で、本町署に残っていた刑事たちは拓人を見つめた。

「冗談はやめてくださいよぉ、岩波さんも隼人クンも」

「こんな子供が、通り魔なんてする訳ありませんよ」 彼らは、思わず笑いだし、「ねぇ?」とお互いに目を合わせる。



 しかし、手錠をかけられた当の本人──拓人が、サラッと言い返した。

「俺だよ。通り魔は」



 刑事たちが、石化した。



「証拠もある。これだ」

 岩波は、ビニールに包んだ血まみれのハンカチを刑事たちに見せた。


 刑事たちが、ササッと後退りした。いくら刑事と言えども、サスペンスドラマのように、いつも殺人事件を扱っている訳ではない。若い刑事ならば、血糊がついた物品など見たことが無いに等しいのだ。



「とにかく、早いところ麗奈に連絡をつけてくれ。今回の事件は、レッドイーグルには無関係のようだからな」

 岩波が命じた。



「エエエェェーっ!!」

 刑事たちは、揃って飛び上がる。

「その子、レッドイーグルのメンバーじゃないんですかぁ!?」


「ちげーよ」

 拓人があっさり否定した。

「あんなのと一緒にされてたまるか」


「──…とにかく、麗奈の推理は間違っていたんだ。レッドイーグルは、全くの無実だ。…早く、麗奈達を呼び戻せ」

 岩波が強い口調で言うと、刑事たちは慌てふためいて一礼し、先を争って電話に殺到した。



「じゃ、俺たちは事情聴取、ってことっスね」

 今まで横で黙っていた隼人も、テキパキと動きだした。


 小走りでフロアを横切り、書類棚を開ける。手際良く数枚の書類を選ぶと、また小走り。そのへんに転がっていたボールペンをパッとつかみ(一応、「借りまーす」と呟いた)、試し書きもそこそこに、最低限の必要事項を記入する。



「書類、用意しました!」

 隼人はニッコリと綺麗な表情で、それを岩波に手渡した。


「あぁ、どうも」

 岩波は呟き、サッと書類に目を通した。

 …だが、ふと思いついて顔を上げる。妙に急いだ様子で聴取室に拓人を連れていく隼人が、目に入った。

「おい隼人」

 岩波は不機嫌そうに、隼人の背中に怒鳴った。

「まさか、早く終わらせて彼女に会いに行こうってんじゃないだろうな」



 …ピタッ。



隼人の動きが、急に止まった。


 そして、悪戯っぽく岩波を振り返る。

「やっぱ…ダメっすか?」


「ダメに決まってんだろうが!!ドアホ!!」

 岩波の雷が落ちた──。


 

 その時。


「いっ、岩波さん!大変です!!」

 電話をかけおわった刑事の1人が、声を裏返らせて駆け寄ってきた。冷や汗をかき、小さく震えている。


 ただならぬ雰囲気に、岩波や隼人、拓人までが立ち尽くした。


「…どうした?」

 岩波が、低い声で尋ねた。

「何があった?」



「レッドイーグルとブルーシャークが、喧嘩してるそうです!筑摩刑事たちも、それに巻き込まれてる、って…それに」

 刑事は、青ざめて今にも倒れそうだった。

「ブルーシャークの1人が、銃を持ってるそうです───」


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