表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/47

必死のチェイス


ヨーコは、立ちすくんだ。



ワゴン車から飛び出してきたのは、数人の男達。


こんなに暑い日だというのに、目出し帽を被り、全身黒ずくめの出で立ちだ。


…ただ者ではない。


すぐさま危険を察知したヨーコは、本能的に身を翻して駆け出した。

野うさぎのような早さだ。


それを見た男達も、一斉に彼女の跡を追って走りだす。


…なぜ追われなければならないのか??

それも解らないまま、ヨーコは必死に脚を動かした。


追手は、明らかに怪しいグループだ。

捕まれば、何をされるか解らない。


ヨーコは、脚に力をこめて走り続けた。

住宅街から出さえすれば、人目のある大通りにたどり着く。

誰かに助けを求められるかも知れない…。


全速力で、走る、走る、走る。


男達が追ってくる足音が迫ってくる。


ヨーコは、もう無我夢中で駆けた。

熱い空気を吸い込む度、肺が焼け付くかのように痛む。

息が苦しい。

けれど、立ち止まるわけにはいかない。


耳元で風がビュンビュン鳴っている。


後方からは、車の走行音も聞こえてきた。

恐らく、男達が乗ってきたワゴン車だろう。

もしそうならば、ヨーコがいくら懸命に走っても追い付かれてしまう。


ヨーコは、ありったけの力を振り絞って駆けながら、カバンから携帯電話を引っ張りだした。


画面を見る余裕も無いまま、使い慣れた番号を呼び出す。


「待てオラァ!!」

すぐ後ろで、男の一人が叫び声をあげた。

「止まれェっ!」


「イヤ!」

コールし始めた携帯電話を耳に押しつけながら、ヨーコも叫ぶ。

苦しい。

けれど、脚は止めない。

前につんのめりそうになりながら、挫けてしまいそうになりながら、精神力だけで走る。


ふいに携帯電話のコール音が切れた。

“彼”の声が、機械の奥からヨーコの耳に届いた。


『ヨーコ?家に着いたか?』


優しい、彼の声。

それを聞いただけで、ヨーコに力が漲ってくる。


「隼人!助けて!!」

ヨーコは、必死に呼び掛けた。

「追われてるの!!」


『!』

電話口の向こうで、隼人が息を呑んだのが伝わってきた。

『今どこだ!?』

優しい声は、急激に険しいそれに変わる。


「もうすぐ五日市街道に出るわ!」

ヨーコは答え、前方を見た。

50メートルほど先まで行くと、激しく車が行き交っている通りにぶつかる。

五日市街道だ。

この道沿いに出さえすれば、助かるかもしれない…!


その時、ふいに行く手に車が飛び出してきた。

ジープだ。

住宅街には似合わないその車から、黒ずくめの男達が3人、次々に姿を現す。


ぎょっとして、ヨーコは立ち止まった。

背後からも黒ずくめの男達が追ってきている。


逃げ場は、ない。


『ヨーコ!どうした、ヨーコ!!』

携帯電話から、隼人の焦った声がもれてくる。

それに答える時間は、もう残されていなかった。


両側から男達が迫る。


とっさに、ヨーコは近くの家のブロック塀によじ登ろうとする。

その脚を、腕を、胴を、男達はわしづかみにして地面に引きずりおろした。



携帯電話が、熱いアスファルトの上に転がった……



「ヨーコ!返事しろっ。ヨーコ!!」

隼人は、携帯に怒鳴った。

辺りの空気が、彼の声に静かに震える。


通話口の向こうで、ブツッと音がして電話が切れた。


ツー、ツー、ツー…


虚しい音だけが、隼人をつつみこむ。


「…どうした?」

岩波が怪訝そうに部下を見た。

何かが起きているらしい。それも、よくない何かが。


隼人は、歯を食い縛って、乱暴に携帯を閉じた。


バキン!


携帯は大きな音をたてる。


それが合図となったかのように、隼人はダッと駆け出した。


「おい!どこ行くんだ!?」


岩波が叫ぶのが聞こえる。


けれど、隼人は立ち止まらなかった。


ヨーコ。

どうしたんだ?

誰に追われてたんだ?

今、どこにいるんだ??


隼人は、駅ビルから飛び出した。

近くに止めておいた岩波の車に目をとめる。


黒のローレル。

運良く、鍵はエンジンに刺さったままだ。


「岩波さん、借りますっ!!」


聞こえるはずも無いが、精一杯の大声で叫ぶと、彼は車に乗り込んだ。


…待ってろよ、ヨーコ。

すぐに助けてやるからな…!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ