ピンク色した小さなクジラ
ピンク色した
小さなクジラ
収納ケースを
探し歩いていた
家具屋さんの棚の隅
その真っ黒な瞳で
通り過ぎる人たちを
一人ぼっちで眺めていた
目が合ったわけでも
呼ばれた気がしたわけでもない
気になって覗いてみた
ヒレの先に
抱きまくらって
打たれていた銘にしては
小さすぎるのが
ここにいる原因なのかな
ピンク色が
なにか暗い色した寂しさを
不自然な鮮やかさで縁取っている
売れ残りだとか
取り残されたんだとか
別に
僕とおんなじだからって
哀れんだわけじゃない
なんか
テレビで
抱きまくら
あったほうが
睡眠の質が上がるって
専門家の人が言っていたのを
たまたま思い出しただけ
収納ケースの中に
入れて持って帰れるから
袋とか要らなかったから
ピンク色した
小さいクジラ
今は毎朝一番で
転げ落ちているベッドの下から
僕に拾い上げられている
洗濯繰り返してきたせいで
少し体が波打ち始めて
その真っ黒な瞳には
時々毛玉がついていたりして
ピンク色した
小さなクジラ
こっちは一日乗り越えるのに
四苦八苦してるのに
ベットシーツの海の上
優雅に浮かんで過ごしてる
まあ毎晩
こんな可愛くもない人間の隣りにいて
挙げ句
ベッドからも落っことされながら
任務を全うしてくれているのだから
それくらいは
許してやるか
ピンク色した
小さなクジラ
だから
たまに寝坊して
落っことしたままに
してしまうときがあるのも
お互い様ってことで
どうか許してくださいね