47/47
【0:0:1】賢しら
綺麗に生きてきた
才能がないと嘯いて
風に向かうこともなく
泥にまみれることもなく
這い歩く誰かを横目に
逃げて生きればいいのにと
楽に生きることができるのにと
傷つくこともなく
傷つけられることもなく
これも生き方だからと肩を竦めて
どこにも届かない手を伸ばす必要なんてないからと
こじんまりと膝を抱えて
誰かの靴裏すら見えなくなるほど
通り過ぎる誰かすらいなくなってようやく
どこにも行けない自分に気づく
歩き方も、立ち方すらも知らず
這い歩く力もなく
血にまみれる覚悟もなく
ひとり
たったひとりで朽ちていく
腐る足に身体が震える
落ちる腕に歯が鳴って
叫ぶ喉すら、持ち合わせない
助けてと身勝手に願う
必要としてと不相応にも祈り続ける
ここに至れど、汚れる道も見えていない
だから、ぽつんと死ぬのにね
綺麗なまま
汚れを知らないまま
たった一匹
膨れ上がった雛は、口だけ開けて
恨むように死んでいく




