【0:1:0】耳を塞いで
ねぇ、耳塞いでてよ
私が良いって言うまでさ
……ありがと
そう、じゃあちゃんと塞いでてね
これはね、ひとり言だから
もしかしたら誰かが聞いてるかもしれないし
もしかしたら君がこっそり聞いてるかもしれない
だけどこれはひとり言
別に返事が欲しいわけでも、答えが欲しいわけでもない
そういうものだから
私はね、君のことが大嫌いだよ
とっても、とっても、大嫌い
遠慮がちに繋いでくる手のぬくもりも
壊れもの扱うみたいに撫でてくる優しさも
目が合うだけで緩い顔で微笑む呑気さも
全部全部、嫌い
こんな状況で、本当に耳塞いで何も聞かない君が、大嫌い
少しくらいびっくりして、少しくらい傷つけばいいのに
私ばっかりドキドキさせられるのはズルい
君ばっかり素直に好きって言えるのもズルい
ズルいから、嫌い
全部私が悪いけど、ズルいものはズルいの
ねぇどうやって君はあんなに素直に好きなんて言ってるの
私には全然分からない
君がこんな私を好きな理由も
君がこんな私に好きなんて言える理由も
さーっぱり、分からない
本当、意味が分からないから、嫌い
……愛してるけど
……はぁ
……いいよ、もう手をどけて
ん?
何もないよ
何でもない
ちょっとだけ、君の真似をしただけだから
気にしないで




