【1:0:0】おやすみ
炎天に揺らぐアスファルト
必死で風を吹き出すエアコン
煽るようなセミの声
間抜け顔で眠る君
目を吊り上げて、眉寄せて、口を結んで
そんな顔ばかりしているくせに
寝ているときは、溶けかけスライム
ほっぺをつついて遊んでみようか
開いた口にお菓子をひとつ、どうだろう
想像するだけ
怒られるから
キスのひとつくらいはどうだろう
たぶん、何でもない顔してこっちを見てくる
起きてましたよ知ってますよの目をしながら
済ました顔で、何でもないように涎の跡を隠すだろうな
知ってる知ってる
君のことだから、知ってなくても分かってる
渋い顔して隠れるように寝返りひとつ
考えてることがバレただろうか
以心伝心、比翼の連理
そんなこと言ったら、たぶん鼻で笑うだろうけど
呆れた顔して肩をすくめて
だけどたぶん、君はそれを否定しない
憎まれ口は叩くだろうけど
エアコンを1℃下げる
渋い顔が、溶けたスライム
外はまだまだ暑そうで
日が落ちるまではダラダラすべき
エアコンをさらにもう1℃
これならたぶん、怒られない
君の隣、特等席を陣取って
薄目を開けた君の瞼にキスを落として
捕まえるように、腕の中に閉じ込めて
ため息
君はだけどやっぱり、何も言わずに
だから僕も、何も言わずに
そっと、目を閉じる
僕はやっぱり、君が好きだよ




