第5話 関西弁の巻☆
「ゴラ――!!」
金髪を後ろで三つ編みにした少女がすごい剣幕で迫ってくる。
女の子と思えないほどドスの効いた声だ。
「われ何さらしとんじゃい!?」
「は、はい?」
真白はわけがわからず固まってしまう。
「私は風紀委員検察局の藤堂緒音である」
「御用改めである、神妙にお縄につけ――」
藤堂緒音の怒声に鈴木はあわあわとして震えている。
「私たち何かしましたか?」
「廊下を走ってたやろ!」
「これは学校則56条に反する行為や」
真白は半信半疑といった感じで生徒手帳を取り出して確認してみる。
確かに学校則56条には『廊下を走ってはならない』ときちんと記載されていた。
「廊下を走ってすみません」
「でも、ウサギさんを探さないといけないので見逃してください」
「デモもストもない!!」
「詳しい話を聞くからついてくるように」
藤堂緒音は容赦ない眼光で鈴木と真白を睨め付けると、厳かに宣言した。
これに対して異議を唱えたのは意外にもずっと怯えていた鈴木だった。
「でも、私たち本当に急いでるんです……」
「校則第56条には但し書きで『教師若しくは生徒会に許可を得ている場合、又は特段の事情がある場合』には廊下を走ってもよいことになっていたと思います」
「私たちには学校の備品であるウサギを探すという『特段の事情』があるので、校則違反にはならないはずです」
鈴木は生徒手帳も見ていないのにスラスラと条文を読み上げて、藤堂緒音に反論した。
藤堂緒音も鈴木の言い分を聞いて、どうやら納得してくれたようだ。
「なんや、ほんまに事情があったんか~」
「てっきり苦し紛れの嘘やと思ってたわ、急に大声出して堪忍な」
藤堂緒音は手を何度も合わせて謝罪した。
藤堂緒音は一通りの謝罪を終えると、またあっけらかんとした表情に戻った。
いやまったく反省してないでしょ――
「ほな、さいなら」
そう言うが早いか、藤堂緒音はさっさと立ち去ってしまった。
「危うく補導されるところだったよ……」
「助けてくれてありがとう」
「全然いいの」
「それよりも、ウサギさんを探すの手伝ってくれない?」
鈴木の提案で、二人は日が暮れるまでウサギの捜索を続けた。
しかし、結局ウサギは見つからずに二人は途方に暮れていた。