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夢屋の魔女は話上手  作者: もち
2/2

状況を上手に話してみた

その後も何がどうなったのか僕にはわからなかった。

僕の手を引いていた人は

夢屋と書かれていた建物に入るなり

僕から手を離し鍵を閉め

窓にかけてあった札をCLOSEDに変えカーテンを閉めた。


「あっぶなぁ。きみ大丈夫?。」

息を切らしなが言う。


僕はまだ体が上手く動かせず、やっとの思いで顔を上げた。


そこにはよくゲームや漫画で出てくる

三角帽子にローブ姿の魔法使いの衣装を着た女の子が立っていた。


そこでようやくマトモに呼吸ができていなかったことに気がつき必死で呼吸を整える。

徐々に呼吸が落ち着いてきたのを見計らい


「怖かったね。とりあえずもう大丈夫だから安心して。」

彼女はそう言うと僕の顔を覗き込んできた。


綺麗な人だな。

女性のがはっきり見え僕は素直にそう思った。


「ここはどこなんです?。というかさっきの何?それに君は誰?」

疑問が一気に頭に巡りまたパニックになりかける。


「そうだね…。

先ずは自己紹介しようか。僕はここ夢屋で魔女をやってる者だ。

ここは僕の店でお客さんに夢を売ってるんだ。」

そう言って彼女は微笑んだ。


「夢を売ってる?。」

どういうことだろう?。

「そう。夢を売ってるんだよ。

お客さんからこの人にこんな夢を見せて欲しいって依頼が来るから、その通りに相手に夢を見せるんだよ。それが僕の仕事。」


んん!?

理解が追いつかないぞ?。

「ええと?。そんなことができるんですか?。」


「そりゃあ、僕は魔女だからね。」

自称魔女さんはえっへん。と胸を張っている。


「そもそも魔女ってアニメやゲームの世界の話で現実にいるなんて…。」

いるなんて思えない。

そう言いかけて先程の出来事を思い出した。


いやま待て

さっきの出来事が現実なんだから魔女位居るんじゃないだろうか…。


「あぁ。やっぱり君は人間なんだね。

もしかしてとは思ったけど実際に見るのは初めてだなぁ。」

自称魔女さんは目をキラキラさせながら言う。


「え?いやいやあなたも人間じゃないですか。」


「ん?僕は人間ではないよ?。

さっきも言ったじゃないか僕は魔女だよ。

人間とは根本的に体の作りが違うよ。知らないのかい?。」


どうしよう

全く話が理解できない。


「そもそもここは人間世界ではないんだよ。

君がどうやってここに来たのかは知らないけど、人間が来るなんてそうそうないことなんだ。

何年か前に人間が迷い込んで来たって話や昔かーさんが会った事があって話はきいたことはあるけど実際に見るのは今日が初めてだ。」

綺麗な目でこっちを見られると少し照れてしまう。


「つまり、僕は人間が居るべきところじゃない所に今居てあなたは本当に魔女でここで仕事をして生活しているってことですか?。」


「そういうことだね。君はどうやってここまできたのかな?」


簡単に信じられる話ではないが、あり得ない出来事の連続で僕は信じざるを得なかった。


僕は先程までの経緯を魔女さんに話をし助けてもらった感謝を伝えた。


「感謝されることじゃないよ。さっきのアレは僕が原因で君が襲われかけたようなモノだからね。」

魔女さんの顔色が少し曇る。


「魔女さんが原因?。」

さっきのアレと魔女さんは何か関係があるんだろうか?。


「さっき君を襲おうとしたのは僕のお店の常連さんなんだ。

僕はさっき夢を売る仕事をしてるって言ったよね。仕事なんだから報酬は貰うのは当然だよね?。そこは人間も同じでしょ?。」


「はい。」

ソレは当たり前だ。


「僕らの体は人間とは違って魔力で出来てるんだ。だから生きていくためには魔力が必要なんだけど、基本的に魔力の補充は食べることで補うんだよね。

人間で言う食事だね。

僕らもそれは同じなんだけど他にも魔力の補充方法があってね、

僕らは自分の魔力を相手に分け与えることができるんだ。

大怪我した時とかに分け与えて助けたりもできるわけ。」


なるほど。便利な体だなぁ。


「基本的に仕事の報酬は食べ物で払うか、

さっき言ったように直接魔力を受け渡す形になるんだ。

それでさっきのお客さんなんだけど…。」

急に魔女さんの顔が曇る。


「常連さんなんだけど通い詰め過ぎて魔力を僕に渡し過ぎたんだ。

体を維持できなくなったみたい。

もうやめたほうが良いって言ったんだけどね…。

そんな状態で君を見つけたから多分食べようとしたんじゃないかな?。

人間を食べるとかなり魔力回復になるって話をきいたことがあるし…。

ただ誤解しないで欲しいんだけど普段だと食べようなんて思わないものなんだよ。

相当魔力が枯渇して生命維持限界で我を失ってたんじゃないかな…。」


魔女さんの話には何故か説得力がある。

丁寧に説得してくれているのもあるけど、

声の質や喋り方で聞きやすいからかな?。


「なるほど…。

怖かったですけどね。

少し自分が体験したことが納得できました。

ありがとうございます。」


一旦間を置き、


「で、

僕はどうやってかえれば…?。」


少し冷静になると、

早くしないとアルバイトに遅れてしまうなどと考えている自分に嫌気がさす。


「ん〜…。

無理じゃないかな?。」


…。


「へっ?。」


今なんと?。


「帰れないんじゃないかな?。

多分…。」


「え?。

それはあれ?。

魔女さんも帰り方を知らないってことで?。」


「うん。だって人間なんて今まで会ったこともなかったし。」


笑顔で言われた。


まじか…。

え?どうすんの?僕…。


魔女さんは両手をパンッと鳴らし、

「とりあえずさ。

ウチにいなよ。

丁度仕事の手伝いも欲しかったし。」

そう僕に提案してきた。


少し考えたが

他に方法はないし

正直な所僕は魔女さんのことをもっと知りたいと思った。


「じゃあ…。お願いします。

あっ大事なことを忘れてました。

魔女さん名前はなんて言うんですか?。」


「名前?名前なんて大層なもんないよ〜。

魔女は魔女だもん。

君には名前があるの?。」


無いのか。

名前。


「じゃあとりあえず、魔女さんと呼びますね。

僕はカナタといいます。」


「人間って一人ひとり名前があるんだね〜。

よろしくねカナタ君!。」


こうして僕は夢屋で魔女さんのお手伝いをすることに決まったのである。


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