第8話 睡眠不足の武術訓練
朝食は、ごくごく普通の朝食であった……この世界からすると。
・フェニックスの卵を使った目玉焼き・・・地球で言う鶏の卵とあんまり変わらない。ちょっと半熟感が増したかな?これはこれで好き。
・オークの肉・・・地球で言うベーコン?まあオークはほとんど豚だけど味はぜんぜん違う。オークのほうが油が多く食べにくい。焼き方の問題?
・パン by 小麦・・・ほとんどパン。地球のものよりかなり硬いがこれはパン。
ほとんどパンとベーコンエッグである。
なので私は楽しんでいることだろうとさぞかし思うだろうが……
「……一体どうしたのよ、その隈……。」
そうなのだ。朝から魔力をそこそこ使い、二時間半女神と戦い続けたうえに、なにより睡眠不足のせいでかなり疲れが溜まっている。パンやベーコンエッグを楽しんでいる暇はないのである。
っていうかほとんど味感じないし。
「まさか三時半からずっっっっと起きてたとかじゃない……ですよね?」
さらに防音シールドを張っていたため、彼女たちには事情が把握できないのだ。
「実は……女神様と戦って……」
「……え?」
「気にしなくていいと思うわ。空想の世界に飛んでいってるとかでしょ」
「ですね。または寝不足による幻覚か、まだ夢の世界にいるかですよね」
「そっかー。まあエミリアだし、大丈夫だよねー!」
「「うん」」
なんで誰も私を心配してくれないのっ!と叫びたいところだが、今はそれだけの元気がない……。
***
「ではこれから剣術の授業を始める」
アルベール・チェスター先生__元王国騎士団長らしい__は、そう言った。
彼は騎士団長らしく水色のサラサラヘアーに紺色の瞳というなんとも爽やかでクールな人物だ。
その見た目とは対局する、優しくて面倒見の良い性格であることは授業が始まって三十秒後に発覚している。
「どうしたんだ?朝からそんな寝ぼけた顔して……って、やばいぞその隈……」
「……ふぇー?どうしたもこーしたもありませんよ、ただの寝不足です……」
「……お前ほんとに大丈夫なのか?その調子じゃ普段の10%くらいしか出せないぞ?」
「多分死なないと思うのでへーきです……」
そろそろ本気でやばい。頭がぼーっとして何もかも頭から消えてゆく……
「よし、次は二人一組でペアになって実践練習をしてもらう」
先生がそういった後は殆ど覚えていない。
「エミリア、俺とペア組まない?」
「暁の女神様になんと畏れ多いことを!」
「いいじゃんちょっと、ほんのさきっちょだけ」
「いやらしい言い方をするな!あの御方が男子全員に近寄らなくなったらどうするんだ!」
「あ、そっかぁ」
「暁の女神様、僕とペアを組んでいただけませんか?」
などのうるさいBGMはほとんど記憶から消えた事にしよう。わたしがモテているのかはまた後で考えることにして。
「エミリア!後で話があるから俺のところに来てくれ!」
こいつもBGMだわー。
そこから視界が上へ傾き、青く澄んだ空が目に映った。
あ。やばい。
最後に聞いた声はソフィアの声だった。
「あんたって、ほんっとに、」
そこからふっと視界が暗くなった。
次回更新予定は月曜です。これからも「チート×2(呼び名つけてみたけどなんかいまいち……いいのがあったら言ってください)」をよろですm(_ _)m