繊細なアメリカギター
週末の夕方、スミオはいつも見に行ってる楽器屋のギターフェアで幼い頃から憧れていたアメリカ製のフォークギターを36回払いのローンで買って、十三の橋の下でボコりに弾いて聞かせる。
ボコリが言い出す。
「なんかスミオ弾くの上手くなったん違う、チューニングも狂ってないし、未だかつてないバランスやわ〜 」
スミオが言う。
「こんな素晴らしい音とバランスのとれたギターはもう一生出会わないと思うわ〜 なんか持った瞬間にどんなコードでも押さえられると思って買ったんや」
スミオは河川敷でギターの記念写真をカシャカシャと撮っていた、その時、突然の突風が吹いてギターが宙に舞い、回転してバラの香りがしたと思うとアスファルトの上でムーンサルトした。
一瞬で輝くギターの貝のバインディングが破損してしまったーーーー
次の日、スミオは自分の陶器製の象の貯金箱を割って修理に持っていった。少し傷がついたが、音色は変わっていなかったのでホッとしていた。
それから暑い夏を迎えて、スタンドに立てかけていたギターを弾こうとして手に取ってみるとヘッドやボディの端のバインディングが剥がれ出していて、弾ける状態ではなくなっていた。
修理代が無くなってしまったので、にかわで接着してあるそれを、瞬間接着剤で器用にくっ付けて弦を張り直したのだった。
スミオが言った。
「いい音出す楽器は、人間みたいにデリケートやな〜 自分には勿体ない感じやけど自分の身体の一部みたいや」
「スミオなんか大人になったみたい〜 」
「俺、大人なん? ん、、、それってZKK違うよな」
「それなに? 」
「カビオが言ってた、ずるい、かたい、きたない、のZKKや」
カビオは毎週スミオとつるんでる、バンド仲間である。
ボコリがあきれ顔で言った。
「またカビオ電気代も払えへんのに、おなまな事言ってるの? 」
「......」