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魔王サマは不敵に笑う  作者: 楸(ひさぎ)
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第四話 この世界についてのエトセトラ

 この剣と魔術の異世界──「ロンドニア」に存在する突出して広い面積を誇る大陸、「中央大陸」。その東端に位置するのが「エルネスティ王国」である。


 エルネスティ王国は、まだ神が地上にいた時代から存在する中央大陸の中でもかなり歴史ある国だ。しかし領土は他国と比べても広大とは言えず、貿易が活発なわけでもなく、軍隊がすこぶる強い訳でもない。言ってしまえば特に取り柄のないこの王国が何千年と存続できたのは、なんと王族が受け継いできた「秘伝の魔術」とやらが関係しているらしい。


 その魔術でエルネスティ王国は周辺国よりも常に優位に立ち回り、大きな危機を回避し続けてきたそうだ。


 そんなエルネスティ王国の王都から更に東に進んだ辺境に存在する冒険者の街、それが今俺達がいる「イルトリア」である。


 イルトリアの始まりは、数百年前に小さな迷宮が発見されたことである。この迷宮に挑戦しようとする冒険者達が作った小さな町が段々と大きくなり、今のイルトリアになったそうだ。


 その迷宮は既に最下層まで攻略済み。かなり弱い魔獣ばかりしか出ないので主に新人ビギナー向け。よってこの街は、夢と希望に満ち溢れた新人冒険者達がこぞって訪れる、「始まりの街」である────。




「で、合ってるよな」


「うん、まあ大体は⋯⋯⋯⋯あ、少し右にズレてる。もっと正確に、素早く」


「アッハイ」


 この世界に来た翌日。俺は早速エルに剣を教えて貰っていた。


 服装は「部屋」で着ていた魔術師っぽいローブ姿から一転、運動しやすい軽装になっている。


 開始から数十分。とにかく素振り、素振り、素振り──。かなりしんどい。という訳で気を紛らわせるためにエルに昨日教えて貰ったこの世界の情報を確認していたのだ。


 ちなみに「こんな当たり前のこと、なんで知らないの⋯⋯?」みたいな顔してたから取り敢えず記憶喪失ってことにしておいた。当然今でも疑われてる。うん。


『割と雑ですよね、マスターって。だからダメなんですよ』


 可愛い声で主人を(なじ)ってくる精霊は無視することにする。


「てか、これ、思った、より、きつい、な!」


 ぶんぶんと木剣をふりながらエルの方を見る。エルは昨日着ていた軽武装の鎧を外していた。腰の剣はそのままだ。あと今日も可愛い。セミロングの髪をアップに纏めてて可愛い。


『変態ですね、通報します』


 この世界に警察はいませんのでご自由に。


「剣術において基礎は何より大事なことだから、頑張ってね?」


「頑張りますとも」


 というか何故エルはこんな怪しさ満点の魔術師と一緒に居れるのだろう。記憶喪失で変な魔術を使いオマケに魔王かもしれない奴とか、俺なら絶対嫌だ。


『自覚あったんですね⋯⋯』


 無視だ、無視。


 ちなみに現在地はイルトリアの中にある冒険者ギルドの裏手にある修練所である。


 そう、なんと俺は冒険者になったのだ。


 余談だが、ギルドに入った途端「新入りかい兄ちゃん⋯⋯」なんて絡まれて俺TUEEEEすることも、受付嬢が超美人だとかも、新人試験で俺TUEEEEするとかいうイベントなんてものもなかった。おいおい異世界転生系ラノベじゃ当たり前のイベントじゃないのか!テンプレだろ!しっかりしろよバグってんじゃないのかこのゲーム!


『ラノベなのかゲームなのかはっきりしてください』


 というか魔王がこんなことしてていいのだろうか。女神様には好きに生きていいと言われたものの、普通魔王って城の王座でふんぞり返ってるイメージなんだが。てか俺の城無いな。


「⋯⋯そういや、この世界に勇者っているのか?」


「勇者?今は⋯⋯10人程いたはずね」


 なんか多くね?


『勇者ってやっぱり魔王を倒すとかするんですか?』


「場合によっては、かな?」


 こわ。10人いる勇者がみんな襲ってくるとか恐怖じゃん。やっぱ魔王ってことは隠しとこ。


「というかリリちゃんもこの世界のこと知らないんだね⋯⋯」


『⋯⋯⋯⋯きっ、記憶喪失なんで⋯⋯』


 おい。



 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



 そんなこんなで剣を振り続けること一時間、エルからストップの声がかかった。空はまだ明るい。この街に時計は中央の広場にひとつしかないので正確な時間は分からないが、3時くらいだろう。


「アルト、今日はこのくらいにしない?」


「了解。じゃあ約束通り今から俺が魔術を教えるよ」


「う、うん!」


 ⋯⋯⋯⋯なんというか、エルはかなり魔術にこだわっているみたいだ。理由は計り知れないが。


「よし、じゃあまず魔力の──」


「おいおい、見ねえ顔だなァ、新人か?」


 早速魔術を教えようとした瞬間、ギルドの方から4人組の男達が出てきた。左から盾を持った背の高い大柄な男、ボロボロの外套を着た小柄な男、ローブを着た中肉中背の男、大剣を背負ったこれまた背の高い大柄な男だ。多分盾使い、斥候、魔術師、剣士ってところだろう。背の高さ的に携帯の電波表示みたいでちょっと笑える。


「なにか?」


「いやいや、ルーキーのクセにココを使うとか、何様って感じなんだけど」


 さっきから喋っているのは右端の剣士の男だ。すっごい因縁つけてくる。いや、これ、もしや⋯⋯?


「ここはギルド所属の冒険者なら誰でも使っていいはずですが⋯⋯」


「おいおい、ここのルールも知らねえのか?ここは俺ら「夜明けの狼」が年中予約してんだよ。分かったなら出てけ」


「そんな理不尽な⋯⋯!」


「へへ、どうしても退かねえってなら、痛い目みるしか無さそうだなァ!」


 ガチャガチャと盾や剣を鳴らして挑発する4人。


 やはり⋯⋯やはりこれはッ!!!




 異世界転生テンプレ、主人公に難癖付けて戦いになるやつだああああ!!!!















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