冬木の芽【冬の詩企画】
志茂塚ゆりさま主催の「冬の詩企画」参加作品です。
しんと冷えた空気に気管を凍らせ
鼻と肺を痛めつけられても
足掻いて足掻いて
地べた這いずって手を伸ばす
なのに
掴んだものは薄氷だった
氷一枚隔ててみる景色は煌いていた
あそこに行けば幸せになると思っていた
越えてやろうと手を伸ばせば
何が何でも手に入れるんだと燃える情熱に
あぶられ溶けて儚く消えた
氷のフィルターがなくなってしまえば
理想も夢も希望も色あせ
蒼い蒼い背景へ吐いた息が
綿菓子のような塊になって漂う
北風に千切られる白を追いかければ
葉を落として広がる木の枝
茶色く寒々しい折れ線の
節々にはさなぎのような芽
春のひだまり
夏のぎらつき
秋のつるべ落とし
それらをかき集め
蓄え溜め込んで作られた
固く 硬く
堅く 難く
小さくて地味で
誰にも見向きもされず
誰も彼にも見逃されて
来たるべき時を待っている
塵の一つ一つさえ凍って落ち
遮るものなく空気を透過する光は
淡くて体の芯までは温められないけれど
けれど いつか
けれど いつか
茂る葉へ
ほころぶ花へ
変わるときは
いつか来る
冬木の芽とは。
ウメ・モモ・サクラなど春ほころびる芽が、すでに前年の秋までにできていて、そのまま冬を越すこと。
花芽と葉芽がある。
本作は「冬の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2157614/(志茂塚ゆり活動報告)
なお、本作は下記サイトに転載します。
http://huyunosi.seesaa.net/(冬の詩企画@小説家になろう:seesaablog)