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あやかし飄々奇伝  作者: 涼。
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修行・変化

1章・3話『修行「変化」』


風は変化の修行を続けていた。

常に人の姿でいる事、見た目はもちろん人の動きや仕草まで完璧に仕上がっていった。

「うむ、もうよかろう、よく頑張ったな風よ」

「はい、母様の言われた通り、この人の姿はとても便利ですね、今はもうこの人の姿の方が楽になってきました」

「なれば、風だけの人の姿を作らなければのぉ」

風は主に母様の姿を真似して変化していた。

「風だけの姿ですか・・人で言うと男の成人といったところですか?しかし、見て真似するしか・・」

「そうじゃのぉ・・わらわが今から変化する者を風の姿とするがよい」

と、葛の葉は一瞬にして里では見かけぬような気品のある立派な人の男に変化してみせた。

「優美であろう?この姿はわらわが初めて美しいと思った人の男の姿じゃ、真似てみよ」

「はい!」

その姿は人の歳でいうと20歳くらいの男であった。

風は変化した葛の葉の姿をよく見て、見事に寸分狂わず変化した。

「・・見事じゃ・・これからは、その姿が風じゃ。そのまま、わらわと人としてしばらく暮らし、慣れたら一緒に人里にでようぞ」

「はい!楽しみです」

そうして、その日から風はその姿で葛の葉と人としての暮らしをしながら、同時に人が使う文字を学んだ。

「風よ、この文字から、人というものが優れていることが、改めて分かったであろう」

「はい、凄いです」

風は小屋にあった書物を読みふけった。

「風よ、書を読むのが楽しいのは分かるが、書の全てが真実ではない、人は優れてはいるが真と偽り、善と悪が要り混ざったものじゃ、まだ分からぬだろうが、これから人と接して我が目で見極めていくことじゃ」

「はい!」

そして、半年ほど経った頃、いよいよ人里に出る事になった。

「よいか風、われらは都から来た、通りすがりの夫婦、われらの風貌なら、容易く声はかけて来ぬだろう、身構えることはない、では、行こうか」

「はい・・」

そうして、小屋を出て里に続く道に出かけた。

「これも人が歩くために作ったものなのですね・・」

「そうじゃ、遥か遠く都や他の国々にまで続いておる」

「・・・」

しばらく歩くと、立て札が立っていた。

「これより信太卿・・」

「ここの人里の名じゃ、参るぞ」

「はい」

歩いていると、まず見えたのが水田と、その中で働く数人の人であった。

「人が主食とする米を作っているのですね」

「そうじゃ、人にとって最も重要なものじゃ」

水田を抜けると、次は畑と耕す人が見え、それを抜けると、家屋が見えた。

「道にそって、隙間無く並んでいる・・」

「これが村じゃ、この一軒、一軒に家族が住んでおる、隣同士助け合いながら村を作っておる、そして、隣の村ともな、それらをまとめて国としてるのじゃ」

「人は助け合い、分かち合い生きているのですね」

「そうじゃ、だが風よ人の世は良いばかりではない、それはいずれ分かるであろう」

「はい」

風は母様がこの世は人の世と言う意味が直に分かった気がした。

そうして、風の初めての人里体験は終り、小屋に戻った。

「良い経験ができました」

「うむ、これで変化の修行は終わりじゃ」

「母様、そういえば風は母様の本当の姿を知りません、見せてくれませんか?」

「よいぞ、では次の修行で見せようぞ」

「次の修行?」

「うむ、次の修行は厳しいぞ」

「・・・」

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