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君に伝えられなかったこと

作者: 僕ちゃん

 僕の中には、今でも心の中に住んでいる女の子がいる。物理的に僕の体の中に家があるとかそういうのではなく、単に今でも忘れられない子がいるということだ。


 彼女との出会いは僕が高校を卒業し、毎日の様に仕事に追われ疲れはてた僕がたまたま昼ご飯を食べるため仕事場の近くの公園に行った時だった。その公園の中にいたのが彼女だった。もう桜が散りかけほとんどなくなっている木の桜の花びらの代わりをしているかのように立っていた。


 僕が彼女を好きになったのは一目惚れだった。少し細めの腕に長い黒髪全く日の当たらない人かのような白い肌。彼女の魅力は僕に紐をくくりつけ引っ張っているかのように僕の目線を釘付けにした。僕は彼女に無意識のうちに話しかけていた。

「いいお天気ですね」

 彼女は、笑って答えた。

「はい」

 これが初対面の僕と彼女が交わした初めての言葉だった。

 その時の彼女の顔は、驚くこともなく、まるで僕に話しかけられるのを待っていたかのようだった。


 そして僕は、それから毎日のようにその公園に行った。そして、毎日のように彼女もそこにいた。そうして、毎日会うことで少しずつ彼女のことを知っていった。彼女は隣町に住んでいる。僕より2つ上の女性だった。彼女に会いたくて仕方なかった僕は、今晩この公園で待ってるとだけ伝え仕事に戻った。


 その晩は、けっして田舎ではないこの街でこんなに星が見える日があるのかというくらい雲1つなくはっきり星の見える夜だった。僕は輝く月の下でベンチに腰をかけ彼女を待った。数分して白い服に身を包んだ彼女がやってきた。

 彼女はやってきて早々に、

「ごめんね遅れて、でも、あんまり時間ないんだ」

 と言った。僕は、その言葉がずっと脳裏にひっかかりたわいもない話くらいしかする余裕がなかった。それでも僕は、次の約束くらいはと思い

「次いつ会える?」

「んー、わかんない。でも、お昼はできる限りくるよ」

 と言った。僕は安心した。今日がダメでもまた会えるんだと思った。しかし、そんな話の後なのに、彼女の顔はずっと星で輝く夜の空を眺めていた。その横顔は、僕になにか語りかけているかのように思えた。でも、当時の僕にはその顔が何を伝えようとし、何を思っている顔なのか全く想像もつかなかった。


 それからは無言のまま、時間が過ぎ彼女が

「もう遅いからそろそろ帰るね」

 と言った。そして、彼女は立ち上がり、

「月がきれいですね」

 と言って歩いて行った。

 当時の僕にはその言葉が何を表しているのかも知ることはなかった。僕は、「そうだね」と小さな声で答えた。


 それから何回か昼は公園で彼女に会うことができた。それから彼女は僕の家で料理を作って振舞ってくれた。毎日自分で夜ご飯を作っていた僕だが、好きな人が作る料理は同じメニューでもなんだか暖かく心が温まる料理だった。


 そして、9時前になり彼女はあわててかえっていった。


 それから、昼も夜も彼女に会うことはなかった。何度も何度も公園に行ったが会えなかった。

 そして数日が経ち僕の元に一通の手紙が届いた。その手紙は間違いなく僕宛に彼女からだった。

その手紙には




 公園であった男の子へ


 この様な手紙を送っているのには

 理由があって私は初めてあなたにあった時には

 病気で余命が後4カ月となっていた。

 そして私は、あなたに恋をしてしまい貴方と

 4カ月の寿命のうちのほとんどを一緒に過ごして

 しまった。あまりにも濃いい時間を過ごしてしまった。

 私があの夜に言った言葉わからなかったみたいだね?

 月がきれいですねはね、夏目漱石がI Love youを

 日本語に訳した言葉だったの

 つまり、私は貴方が好きってこと。

 私と貴方が話したのは本当短時間だった

 でも、私の4カ月の余命から考えると

 短い様でとても長い時間だった

 本当に幸せだった。ありがとう


 私のこの手紙が貴方のもとに届く頃には

 私は貴方と同じ世界にはいない。

 それでも、最後に本当に貴方に言いたかったこと

 私と出会ってくれてありがとう

 幸せになってね


 昼の公園であった人より


  僕は、手紙を読みながら涙を流した。どうして、あの言葉の意味が理解できなかったのか。どうして、彼女に自分の気持ちを伝えなかったのか。僕は、何をしても解放されることのない後悔の塊に潰されそうだった。気がつけば、涙を流したまま、公園に走っていた。夜の肌寒い風を切り、硬いアスファルトの上を止まることのない様に…。公園に着き僕は思った。なんでまだ彼女のことなんか半分も知らない僕が勝手にまた会えるなんて勘違いして先延ばしにして…。



  それでも僕は彼女に伝えたかった。彼女と僕の出会いは運命だと思ったこと。初めて会ったあの日からずっと好きだったこと。彼女の料理が僕の冷えた胃袋を暖かく、優しく包んでくれたこと。彼女と公園で会う時間が疲れが飛ぶほど楽しく、幸せな時間だったこと。どんなに伝えたくても同じ世界にいない彼女には届かないとわかっていても僕は叫んだ。初めて会った時、彼女が立っていた桜の木に向かって、

「ずっと好きだ」と。


  それから、何年と経ち春、夏、秋、冬という季節の流れをいくつ超えただろうか。何度目かの春が来て彼女と出会った季節が過ぎかけ、この前まで咲いていた桜も、梅ももう散りそろそろ蝉が鳴き出す季節がやってきたが今でも手紙を見るたびに僕は思う。本当、人間の悪い癖だ。まだある先があると行き詰まるとなんでも先延ばしにしてしまう。僕は後悔している。


 だが、彼女はしっかり僕の心の中で生きている。本当に人が死ぬ時とは誰もその人のことを思い出すことがなくなり、その人がいた記憶もなくなった時だと思う。



 もし、君がまた僕の前に現れたなら

 あの時の様に話しかけしっかり彼女のことを知り、それで例え自分が傷ついたとしても、伝えたいと思う


 僕は世界で1番君が好きだ。









何事も先延ばしにせず、大切なことならなおさら行動に移してほしいと思う。思うだけでは何も変わらない。行動した先に変えられる未来があるのだから。例え結果がどうなったとしても、行動せず迎えた結末と行動して迎えた結末なら行動して迎えた結末の方が後悔は少なくなると思うからこそ。自分が生きているのは、未来でもなくては過去でもない今だということを心に刻み、日々を生活していただきたい。

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