とある一家の日常
短編が書きたくなったんで(笑)
とある兄妹が自宅のコタツに向い合わせで入っていた。
外は雪が積もり日曜日の昼前にすることがない二人は互いをチラッと見ては視線を反らす。
心なしか二人とも少しだけ頬か赤く染まっているのはコタツのせいなのか…
そんな沈黙の中、兄が口を開く。
「なぁ、茜…」
「んっ?」
名前を呼ばれた妹はコタツに顎を乗せたまま返事を返す。
その姿勢で次の言葉を待っているのだ。
「その…なんだ…好きだぞ…」
「うん…エヘヘ…」
禁断の愛、その代名詞とも言われる形がそこにあった。
嬉しそうに笑顔を見せる妹の顔に兄は照れる。
「あのねお兄ちゃん…」
「ん?」
「あたしもね…好きだよ…大好き」
その言葉に恥ずかしくて頬をかく兄…
静寂が部屋に広がる。
少しして兄が再び口を開く。
「その…なんだ…俺はメッチャ好きだぞ」
「うん!」
再び兄の告白にデレた妹は元気よく返事を返す。
そして…
「お兄ちゃん、私はねお兄ちゃんが超好きです」
「おっおう…」
「エヘヘへへ…」
桃色空間が二人を支配する。
再度兄が口を開いた。
「茜、俺は地球で一番お前が好きだ」
「うっうん…」
流石に地球一と言われて狼狽えた妹は生唾を飲み込んで口を開く。
「わ、私は宇宙一お兄ちゃんが極超好きだからね」
「あ、あぁ…」
流石の兄も次は太陽系一か銀河一と来ると予測していたらまさかの宇宙一にしてやられたと手をおでこに当てる。
「まぁ、なんだ…とりあえず、俺はお前が好きだからな」
「うん、私はねもっとお兄ちゃんが好きだよ」
「いや、お前の2倍、いや、3倍は好きだぞ!」
「じゃあ私はそれの2乗倍好き!」
「いや、ちょっと待てよ!俺の方がお前を好きなんだって!」
「私なんかお兄ちゃんを愛してるもん!」
「お、俺なんか…」
「お兄ちゃんのそれよりも更に私はお兄ちゃんが好き!」
「いや、待てって!俺の方が…」
「待たない!私の方が好き!」
「いや、だから…」
「何を言われても私の方が…」
「俺の方が好きって言ってるだろ!」
「なによ分からず屋!私の方が好きで愛してて一生どころか同じ墓に入ってその後もずっと一緒に居るんだもん!」
「それでも俺の方が…」
「いーえ!私の方が…」
「俺の…」
「私の…」
「「この分からず屋ー!!!!」」
いつの間にか立ち上がっていた二人は拳を突きだし腕を交差して互いの顔面を捕らえる!
クロスカウンターである!
ドタドタドタドタ!!!
振動に気付いた母親が部屋の戸を開けると取っ組み合いの喧嘩をしている兄妹がそこに居た。
「二人とも止めなさい!」
母の一喝で喧嘩は修まる。
溜め息混じりに母は怒る。
「いい加減にしなさい!全く毎日毎日二人して喧嘩ばっかり!兄妹なんだから少しは仲良くしたらどうなの!」
「だって~お兄ちゃんが…」
「俺かよ!?お前だろ!」
「いい加減にしなさい!全く誰に似たんだか…とりあえずお昼ご飯出来たから食べに来なさい!」
「「はーい」」
食卓に移動すると既に席についている父が新聞を読んでいた。
「なんだまた喧嘩してたのか?」
「そうなのよ~」
「まぁいい、仲良く出来なくても暴力はいかんぞ。ほらっ今日は昼からハンバーグを母さんが手作りしてくれたから食べよう」
「「「「いただきまーす」」」」
静かな食卓に食事する音だけが響く。
我が家は食事中はテレビを消すので非常に食卓は静かだ。
「ふぅ、やっぱり母さんの手作りのハンバーグは最高に美味いな!父さんこれが好きなんだ」
「あら?このハンバーグは私も好きよ」
「ん?」
父さんの言葉に母さんが続く、それに父さんが反応した。
「いや、これはワシの方が好きだ」
「何言ってるの、私が好きだから研究してこの味に仕上げたのよ」
「それでもこの味はワシの方が好きだ!」
「いーえ!これは私が最高に美味しいと感じる味です!」
「いや、ワシの方が…」
「私の方が…」
「ワシの…」
「私の…」
「「この、分からず屋ー!!!!」」
父と母の拳が交差する!
だが父は頭を下げて母のパンチを避けた!
その結果、母の顔面に父のパンチがヒットするのだが…
「ぐぉぉぉ…」
母のパンチと共に出された前蹴りが父の腹を直撃していた。
これはとある一家の毎日の光景である。
完