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葉虫(※テスト)

作者: 梅木蒲生

 朝食をくいながら歩くにはいったん細い路に入るのが宜しいと思ったから十路地を人気が薄い方へ曲がるとたちまち知らない、空気が深くて色が緩い方角に出たものだから、負けん気と不要の根性にひっぱられてとうとう見た事も聞いたこともない青い山の麓まで辿りついた。山といっても親指三寸の形をした隆起の産物で、小高い丘と表す方が自然だったが麓の鳥居の根本に薄汚れた障るのも憚れそうな紙切れがあって、


「なまじ初めてお見えになるかたは騙されたと思ってこの先山道をずっと行って御覧なさい夏なら藪蚊に気をつけ長着しなさいふゆなら厚く着込んで風邪をひかぬよう細心しなさい、」


 などということをつらつらと囃してあったので疑るべく私は目の先にある道をなにがしの山道と、ふっくらと肥えた特徴の地形を何某山と脳味噌に地図を広げて赤のマークで書き込んでおいて、ふらりと立ち及ぶことに決心した。

 暫らく行くと諮るところ神社の参道であろう今上の道は自ずと狭く、葉叢や虫蚊の息は近くなり、鬱陶しくむさ苦しく、私の彷徨える所在はとうとう逃れ獲ることが出来ないまでの精神的な五里霧中、その上暗く濃密な森林において天井に太陽は没し、やがては道も消えて薄暮色の小さな井戸と太った樹の群れが行く手に塞がった。諦念して、傍の裸に剥き出してある深い土壌に腰を下ろすと、もう十時を過ぎていた。


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