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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第2話「プライマリー・アシスト」
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#023 探偵の仕事

「さて、ボクはここらで退散させてもらうよ。

医者を名乗る男性は、

バーカウンターから離れスキンヘッドの男性に向かって、

後付けのような言い回しで口を開く。


「ああマスター、今回の料金は結構です。

「あと、これから言うことを彼にお伝えください。

「―――3特区の蜘蛛は危険だと、弥勒(みろく)さんからです。


弥勒、その名前・・・なのか単語かキーワードが出た途端に

マスターと呼ばれるスキンヘッドの男性は

白い皿を拭くのを止めて視線を切り替える。

夏希や神崎自身には聞き覚えがまるでない為、

どういう意味なのかは不明だった。


ぺこり、とお辞儀したあと神崎はお礼を交わし、

「それで・・・その、あなたのお名前を教えて頂けないでしょうか。


笑って、彼は答えた。

「ボクの名前は、――― 竜泉寺(りゅうせんじ) (たくみ) 。

「低俗区『スラム街』のチャイナタウンで小さな美術館を経営しています。

「宜しければ、お寄りください。それでは。


彼・・・竜泉寺がドアベルを鳴らして去ると、同時に誰かが入って来た。

黒いスーツにきりっとした赤いネクタイ。

黒い短髪の上にくたびれた様に、垂れ下がる黒猫を頭に乗せ

掛けていたメガネを胸ポケットに仕舞い、無言のまま席に着いた。

今いるBarの店内で知らぬ者はいない、

―――探偵の古賀明彦だった。


「マスター、スプリング・ブロッサムをひとつお願いするよ。

古賀は漆原にソフトドリンクを注文(オーダー)した後、

疲れ果てた顔で隣の席に座る夏希に視線を向ける。


「それと夏希、悪いが外してくれないか。

「そこの新入りに説教をしなくては、ならないからな。

コクリ、と頷いた夏希は素直に受け取ったのだろう。

反論なく席を後にした彼女と入れ替わるように神崎がそこへ腰を下ろした。



わたしは疲れ切っていた。

今日ほど忙しい一日は滅多にないだろう。

探偵事務所のある3高区『銀座ホール』新富から

2高区『緑町タウン』日比谷まで徒歩で「月虹」を連れて向かい。

さらにそこから、3特区『ビショップ街』赤坂の大嶽の住まいへ徒歩から

リムジンに乗って同じく3特区の六本木で年上の人間、

―――高峯とお茶をした後ここへ戻って来たのだ。

だからと言って、教育方針を変えるつもりはない。


カウンター越しで漆原は、グラスに次々と材料を入れていく。

グラスの背が高いが口径の小さい、

―――コリンズグラスに直接、氷を入れ分量を量らずに慣れた手つきで

青りんごシロップ、ライムジュース、メロンシロップを注ぎ、

最後に冷えたソーダで満たしたあと静かに混ぜていく。

僅か2分足らずでわたしの目の前に、

淡いグリーンカラーの色合いが

まさに若芽が出る春に相応しい一杯が置かれる。


わたしは片手でグラスを持って、一口分だけを口内に注ぎ込む。

青りんごシロップの爽やかな甘みと

ライムジュースのこのフレッシュな酸味が

見事にマッチして舌の上で遊び、ソーダの喉越しと爽快感は

二十歳以上の人間でいうビールの一口目と

同じぐらいの旨さだと言えるだろう。

喉から胃へ向かったことを感じたわたしは、質問から長話を始めた。

「オマエ、探偵の仕事とは何だと思う?」

 

神崎は戸惑うことなく、ハキハキと答えた。

「他人の秘密をひそかに調査し、依頼人に調査結果を伝えることです。

「また犯罪に関わる証拠を発見した場合は、警察に届けなければならない。


―――ああ、予想通りの答えだ。

如何やら、神崎にまだわたしの助手は当分の間は無理と言わざるを得ないだろう。

「神崎、これはわたし自身のスタイルでもなければルールでもない。

「常識中の常識として、その頭に入れて置け。

「例え、調査の経過がうまく進んでいないとしても

「必ず守らなければならないものがある。それは、

「―――依頼人だ。


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