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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第2話「プライマリー・アシスト」
31/63

#009 脅迫

依頼人が落としたという携帯電話からの着信、この意味を

親切な人が拾ってくれたのだろうと

そういう風に解釈した神崎は電話に出る。

「もしもし」


スマートフォンのスピーカーから聞こえてきたのは、

アニメやマンガのように機械で声を変える。

―――男か女かも分からない変声機(ボイスチェンジャー)を使った質だった。

『コノ件カラ、手ヲ引ケ』


手が震える。

神崎には初めての感覚だった。

かつては厚生労働省にて、

麻薬取締官という職業から『脅し』めいたことは日常茶飯事。

しかし、この『脅し』は違う。

自分の身を守るためではなく、

本物の『殺意』に満ちた『脅し』に私は呑まれた。


『ワタシノ、目的ハ、アナタ、デハ、ナイ。邪魔ハ、死ヲ、意味スル』

なにも言い返せなかった。

『殺意』が湧く声から心の中で『恐怖』に変換され、

私は身動きや呼吸さえまともに出来なくなっていた。


『今ノ、アナタニハ、全テヲ、知ル、権利ハ、ナイ―――』

電話が切れたことで、

緊張の糸が途切れ重荷が外れたように体が楽になった。

力が抜けてしまった私は、その場に膝を落とし過呼吸。


私は舐めていたのかもしれない。

古賀さんの言う通りだ。

いまの私には仲間がいない。

先輩も同僚も、私自身が答えを永遠と出していくしかない。

古賀さんは、それを・・・いままでずっと一人でやって来たんだ。

誰かに出来て、私にそれが出来ない訳がない。

挫けている場合じゃない。

立ち上がれ、私。まずは深呼吸から・・・。


そう考えていた私は、

背後から迫ってくる気配や足音にも気付くことが出来なかった。

「あの~、」と訊かれて私は咄嗟に肩を竦ませ、

「ひゃい」舌を噛んでしまった。


「ああ、すみません。驚かすつもりはなかったのですが」

膝を落としていた私に腰を下ろして声を掛けてきたのは、若い青年だった。


まず私の目線から初めに見えたのは、

白のVネックセーターに茶色のフード付きライダースジャケット。

視線を下ろした先には、加工入りされた青味の掛かったデニムパンツ。

目を上へ、かなり短めのそれも目立つクリムゾンレッドに染めた髪だった。


「自分はこういう者です」

赤い髪のその男は、私に黒い手帳の桜の代紋を見せる。

警視庁 捜査一課 警部補。

赤刃(あかば) (じん)(えい) 、と記されていた。


「この辺りで、不審者目撃の情報が寄せられていまして・・・。

「なにか知りませんか?


考えるまでもなかった。

その不審者が私であると悟った私は謝罪した。

「探偵さんの代理の仕事」「落し物の捜索」などの事情を刑事さんに、

漏れなく話した私は、自分の愚かさにほろりと頬をつたって涙が流れ落ちる。

私の反応に刑事さんは、オロオロしながらハンカチをくれた。


「すみませんでした。もういいですよ」

刑事さんがくれたハンカチで涙を拭いながら、

私は刑事さんを残してその場を後にした。



風が吹く―――。

彼の後方から、その場から去れと言わんばかりに追い風が彼を邪魔する。

右腕を上部に持ち上げ、彼は指を右耳に当てる。

彼にしか聞こえない起動音を確認した彼は、『1204号室』のドアノブを握る。

握ったまま、右にまわした彼はドアを引いて中へ入っていく。


「・・・はい。

「・・・ええ、上手く騙せましたよ。

「・・・・・・ハハハ、

「これで貴方の思惑通り、彼女はここには来ないでしょう。

「・・・・・・。

「あとの問題は彼女の失くしたケイタイだけですよ。

「・・・はい、そうです。

「念には念を入れて、彼女の始末は自分が請け負いますよ。

「では、失礼します。


右耳に取り付けていたBluetoothを外し右手で粉々に潰した彼は、

半透明なビニールの上に放り横たわった女性を見つめる。

「OLさんは、いいね。細くて、

「・・・直ぐに解体してあげるよ。バラバラに


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