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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第2話「プライマリー・アシスト」
26/63

#004 冷凍室

頑丈な扉を抜けると、灰色の男が立っていた。

灰色―――外見、上下ともに灰の色に似たダボダボのパジャマ姿に

春先の異常気象で、

外は真夏日並みというのにモフモフっとしたニット帽を頭に乗せていた。


端折った言い方で、灰色の男はわたしに向かって挨拶を一言。

「ども、古賀さん」


挨拶を交わそうと、歩み寄ろうとした時だった。

ほんの一歩、―――歩くだけ汗ばむ世界から一転。

冷たい空気とひんやりした風が肌を伝い、

冷蔵庫ではなく冷凍庫に入ったような急激な寒さを感じた。

2度以上この部屋を訪れているわたしだが、

急激な気温変化には慣れないものだと考えながら口にする。

「相も変わらず(さむ)いな、この部屋は―――トビ」


冷凍庫のような部屋のデジタル時計を見る。

AM9:57 2020,03,10 15℃。


「仕方ありませんよ。このフロアは特別ですからね」

灰色の男―――トビが言うことには一理ある。


熱暴走―――パソコンが熱い、使っていると熱くなってしまうという症状。

パソコンというものは非常に精密な機械となっていて、

自身の熱で基盤の回路や部品に影響を及ぼすことも少なくない。

例として、頻発するエラーや使っている途中で電源が落ちるなど。

そういった悪影響を軽減するための対策として

発熱が更なる発熱を招くという正のフィードバックにより、

温度の制御ができなくなる現象、

またはそのような状態を防ぐための冷却措置を

1フロアすべてにひいているらしい。


―――どうぞ、とトビを言って招き入れられたわたしは

高級感あふれるキレイに研磨、

コーティングされた白と黒の大理石の床に足を乗せ

彼の数歩後ろをついて歩き始めると

青いLEDが光り輝く、

シンプルかつスタイリッシュな黒い箱の前で彼は尋ねてきた。


「スーパーコンピューターの管理には、

「細心の注意と多額の維持金が必要ですからね。

「維持金は、このマンション利用者の家賃から補っています。

「足りない分は古賀さんのように、仕事が欲しい人に紹介する仲介料金や

「仕事の報酬で管理していますからね。

「それで今回はどういう仕事をお探しですか?


「高額報酬が約束された依頼が欲しい」

わたしにとって、正当な願いだった。

いままで1人で仕事をしていたものを2人で成すというのは、

大きく時間を有効活用できる上に

仕事量も半分になるというメリットがある。

デメリットがあるなら、

報酬額―――1人が得られる収入も半分になるからだ。


「フ~ン、例の元麻薬取締官 神崎忍さんの為にかい?

「流石に情報が早いな、トビ」

「そりゃあ、探偵事務所の防犯セキュリティーはボクの管轄ですからね。

「セキュリティー、ね。あの解かりやすい安物の防犯カメラがか」

「んん? あっ、もしかして気付いてない。

「事務所に設置した40のナノカメラ。


ナノカメラ―――ナノサイズまでは行かないものの通常の

デジタルカメラやスマートフォンよりも遥かに小さい小型カメラ。

2年前の『最先端技術賞』を獲得したが、

主に犯罪分野、

盗撮への使用率が極端に多いことから規制が厳重に敷かれている。

強い規制から入手ルートは限られ、価格は2年前の倍以上。

それを40もの数となると、

軽く100万円相当はするところ・・・じゃなくて。


いま、問題にすべき点は(そこ)じゃない。

数が40となると、死角のない全方位盗撮。

趣味が悪いとか、そういうレベルじゃないな。


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