#020 倍報酬
今回、わたしが請け負った依頼は、
「合成麻薬『ディアブロ』の物流・密輸ルートまたは製作元の捜索」。
あの「伊達と踝君のところへ行く」前、
絶賛徹夜続きの巌城刑事によれば合成麻薬『ディアブロ』
物流の根源は、大手海外の薬品メーカー『Drag Maker』。
日本支部を通じて流していたことが被害者の証言で判明したとのこと。
密輸ルートに関しては、
漆原のおっさん『マスター』とわたしの調査した通り、純国産もの。
3年前の合成麻薬『マキュロス』と
今回の『ディアブロ』の比較分析した結果、
主成分である『ケシ』が遺伝子操作されていたことが判明。
これにより、組織ぐるみの製造ではない可能性が浮上した。
製作元は、あの廃ビルだった。
『匿名』で警察へ連絡を入れておいた。
今頃、巌城刑事か厚生労働省の人間で溢れ返っていることだろう。
調査費用はそれほど掛からなかった。
交通手段に用いた電車やタクシー代を含めて、およそ4万ちょっと。
残りの6万円は、迷惑料といったところだ。
彼女・・・依頼人である神崎忍が、うろうろと『危険地帯』に出入り。
自宅であるマンションで弟の面倒を見ていれば、
自殺に走ることもなかっただろうに。
そうこう考えていると、
フロストガラスに彼女の影が映っているのが見えた、
わたしは「―――どうぞ」と中に入るように勧める。
昨日着ていた白色ワンピースとは打って違い、黒い礼服に身を包めていた。
焦っていたのか、手首に通した数珠が見える。
ポーチもベージュではなく、黒い手提げだった。
恐らくこれから、弟・・・尚也の告別式といったところだろう。
「失礼します、これが報酬の10万5670円と
「私から迷惑料として9万4330円、計20万円です。
神崎は黄色の封筒をわたしの前へ置き、
確認するように中身のお札を扇状にしてテーブルの上に置いた。
おー。ぼろ儲け、とは言わずクールに言葉を返す。
「どうも、・・・確かに。
「この度、ご愁傷さまでした。
「それと今回は探偵事務所Silver Crossにご依頼戴き誠にありがとうございました。
「またのご利用をお待ちしております。
わたしの言葉を最後まで聞き終えた神崎は、やはり急いでいたようだ。
足早に一礼『お辞儀』した後、パタンとドアの音が虚しく響いた。
わたし個人としては、虚しいという心構えは微塵もなく
予想以上に手に入った久しぶりの小遣いをどう使おうか悩んでいた。
結局のところ、
数か月滞納していた家賃を丸ごと奪われ一文無しになったのは、
翌日の午後の話だ。
―――翌日。
営業時間開始直後、
予想だにしなかった人物が再度訪れた。
それも奇怪な理由とともに、
「私をここで雇わせてください」
わたしの前に現れたのは、依頼人として2日前に尋ねてきた女性。
白色のワンピースが良く似合い、厚生労働省の職員である
麻薬取締官、24歳独身、
神崎忍だった。
「投稿の気持ち」
第1話「正義を成す悪」完結です。
よろしければ評価の方、お願いします。
第2話は執筆出来次第、同じく短編として「#001」から始まります。
次回も読んで戴ければ幸いです。




