#019 衝動
『bbbbb、ウブブブブッブウウウ』
ぎこちない携帯の着信音が鳴った。
そろそろ変え時か、と待ち受け画面を見る。
電話番号は表示されていないが『狒々』と書かれていた。
「どうやって、俺の番号を知った?」
『ヤハハハ、そっちの口調ってことは本当みたいだな。あの噂、』
「西の殺し屋が、どうしてここにいる」
対面するこちらよりも僅かに高いビルの屋上にひとつの人影が見えた。
距離が遠いせいか、
顔を窺うことは出来なかったが男物の衣服で身を包んでいた。
『興味があったから、かな。
『狂った化物、裏と表の顔を持ち合わせるサイコキラー探偵さんによ。
『電話したのは、忠告だ。
『あんまり、食い散らかすなよ。この町で生きたければ、郷に従え新米。
『じゃあな。精々、気張れや。
人影は屋上からその姿はなく、電話着信履歴にもその存在はなかった。
流石は伝説と言われるだけはある4人のひとり。
西の人食い『狒々』。
南の人攫い『黒鴉』。
北の悪魔『修羅』。
東の鬼人『弥勒』。
この町で最も『危険人物』扱いを受けている屈指の化物たち。
関わった人間が例え、警察官であろうが、政治家、官僚でも同じ。
この世界から消えるだけでなく、
親家族。親友、会社までもがターゲットと成りえる。
この町に来た時から、
薄々感じ取っていたが実際に会うと違ってくるものだな。
震えが、武者震いが止まらない。
この『衝動』こそが俺の生きる理由なのかもしれない。
「実に面白い」
独り言。
自らに暗示をかけたわたしは、ゆっくりと『衝動』を抑えその場を去った。
翌日というか、今日。
3月9日7時30分、わたしは探偵事務に帰宅する途中。
ある人物に連絡を取った。
依頼人、神崎忍。
依頼達成報酬額、税込で10万5670円。
適当な価格だと思う・・・が、
ほぼこれが今月の家賃になるかと思うと、頭が痛くなる。
「投稿の気持ち」
次回、衝撃のクライマックス。




