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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第1話「正義を成す悪」
19/63

#017 非道

風・・・か、肌に冷たく心地のいいサワッとしたものが撫でる様にあたる。

伊達は薄れる暗い闇『意識の世界』から肌に風の心地を感じていた。


―――私は・・・確か、・・・。

ぼんやりと意識を取り戻そうとする伊達は、数秒前・・・。

または数分前の記憶を辿るが、『不気味なモヤ』が出てくる。

黒い霧が掛かり2つの赤い閃光が私を引き裂き、

呑み込むように包んでいく。


「・・・・・・ッ、」

辿り着いた時だった。

黒い闇『意識の世界』を脱出した私が最初に見た光景は、

美しいもの、夜景だ。

昼夜問わず、研究に没頭していた私が見ることのなかった暗空に浮かぶ月

天を衝く高層マンション、

マンションに劣らず伸びようとする建築途中のビル群

暗い世界に点々と赤や黄色の明かりが黒いキャンバスに描く。


「美しいだろ」

景色に夢中になっていた私を邪魔するように、

声を掛けてきたのは黒いスーツに赤いネクタイを着用した男だった。

私を追い込んだ『不気味なモヤ』の正体にして、―――化物。


「・・・な、」

後ろに身を引こうとした時だった。身体が痺れて動かない。

それに加えて唇や舌も

声に張りがなく呂律が回らなかった。景色に見惚れている間、

体の方に意識を向けていなかった性か、驚きを隠せないでいた私を見て、


「驚く必要はない。

「ちょっと強い、麻酔をアンタの下顎の奥と脊柱に打ってある。

下顎孔伝達麻酔。

下顎孔という神経の下、あごへの入り口付近を麻酔する方法。

下歯槽神経という神経が走行していて、

舌の左右のどちらか半分と下あごの内側に効くらしい。

・・・確か、先週だったか。歯医者に立ち寄った時に耳に挟んだ。

歯医者と違って今回打ったのは、片方の下顎奥ではなく両方だが。


脊柱麻酔または下半身麻酔。

手順としては、

横向で背中を丸めた状態から背中を消毒した後、

裁縫で使う縫い針、程度の大きさの注射針を背中の背骨と背骨の間に刺す。

局所麻酔のひとつであり、クモ膜下腔に麻酔薬を注入し、

脊髄の前根、後根をブロックする方法として

医学方面には多く知られている。

 

物理的な縛りではなく、精神または神経を傷つける縛り・・・、

澄ました顔をしているが異様な気配を纏ったまま、男は月を眺めて答える。

「―――どうかな。『わたし』の友人であるジュンと雅弓を縛った鎖のようだろ。

「・・・・・・・・・・」

「ああ、そうだった。麻酔の影響で呂律が回らないんだったな。

「さて、どこから話したものか。


月に向けていた視線を落とした男は、こちらの方『私の目』を見て話しを続ける。

「そうそう、キミが捕らえていたジュンと雅弓なら今頃・・・

「彼等の仲間、ギャングに救出されているから安心しなよ。

「それから、キミのお友達のえーと、くるぶし君だっけ。

「彼は今頃、キミと友達となったことを後悔しながら16匹の狂犬に

「鋭利な爪で引き裂かれ。凶暴な牙で肉と骨を喰われ。

「血達磨になって、ブタの餌になっているころだよ。


次々と、

『R18』の残虐非道極まりない嘘を

平気で吐く男だと思った私は、鼻で笑った。

その私の行動・行為が気に入らなかったのか男は、

右手をピストルの形にして、

パン、と一言。

「嘘だと思うなら、下を見なよ。

「身体が動かなくとも、目線は変えれるはずだよ。


正直に言って嘘だと思っていた私だが、男に言われて恐る恐る目線を下に。

暗がりだが、蛍光灯のLEDに当てられて遊具が見える。

青いペンキで塗られたであろうジャングルジム、黄色の滑り台。

砂場に無造作に置かれた小さなスコップや

子供が使うプラスチックのバケツ。

廃タイヤが半分埋まった跳び箱のようなものまで・・・公園だろうか。

見回す限り、特にこれと言って不審な物『死体』は無いように見えたが、

遊具の中から何かが歩いてくる。


生物の研究をしていた私はイヌやネコではないのは、直ぐに分かった。

分野は違うが、その動物の動きには脂肪がついているような。

イヌやネコのような華奢な動きではなかった。あれは、―――ブタだ。


ブタは何かを口に咥えこむというか、

食べている途中か口から飛び出ているものが

徐々に上へ。上へ上がっていく。

プイッ、と首を捻って一度外へ放ったのは、棒状の・・・。

生々しい人間の腕だった。


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