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サイコキラー探偵  作者: 三鷹 キシュン
第1話「正義を成す悪」
16/63

#014 助け船

「ひとつ、いいですか。

「ぼく等を監禁したのは、あの時の腹いせですか。

「伊達先生。


テレビに映る男は、苦笑して答える。

『腹いせねぇ~。

『確かにアレからというものワタシの人生は大きく、

『捻じ曲がってしまったが、そんな事はどうでもいい。


3年前。ぼく達、2人は何処にでもいる普通の高校生だった。

担任の先生は、愛想が良くて優しい。人気のある教師との学校生活は楽しかった。

担当の教科科目は、数学と生物。

時折、英語雑じりの面白いトークでぼく達を笑わせて、

授業以外でも、放課後から始まる部活動にも積極的だった。

部活動で生徒たちと作ったハーブ園から、

オリジナルブレンドのハーブティーを振舞うなど、評判の高い先生だった。

少なくとも文化祭の最終日までは。


園芸部の部員である生徒がハーブを

自分でブレンドしたものを試飲した直後、

意識不明の重体で救急車に運ばれていった。


その時ブレンドしたのが彼女・・・連山雅弓で、試飲したのがぼくだった。


警察が捜査した結果、

試飲した紙コップから検出されたのは麻薬成分だった。

このことから、ハーブ園を重点的に調査が入った。


隅々まで調べた結果、

ハーブ園の四方の隅から品種改良された『ケシ』が栽培されていた。

その他にも校内の閉鎖された地下から培養設備が見つかり、

重要参考人として逮捕されたのが、伊達だて 行實ゆきみね 。


・・・今から思い返せば、あの時の優しさはただの演技だったのだろう。

平静を装う為のバレ難い演技・・・つまりは、すべてが偽装だった。


ぼく達はそれを忘れるために高校を中退し、

当時有名だったストリートギャング『血戦軍ブラッドストリート』に入団。


『オマエ等はワタシの・・・

『ワタシをまた邪魔するつもりか‼

「また、ってなんですか?

「ぼく等が追っていたのは、先生じゃない。

『それを信じろと言うのか―――‼



廃墟のビルにて、わたしはパソコンに向かって大声を出す人物を

気配を殺して影から覘いていた。


犯罪者の危機的状況の心理状態というのは、凡人には理解できない。

それが当たり前であって、ごく普通なことだ。

しかしだ。

わたしという存在はどうやら他の人間とは共感能力が異常なのだろう。

何もかもが手に取るように分かってしまう。

次にどういう言動を吐くか。どういった行動に出るか。

彼のすべてをわたし自身が握っているような

一種の錯覚に囚われている気分だ。


これが、この状態が薬漬けでいうところの『ハイな気分』だろうか。

さて、気分もいいし。

そろそろ手を貸そうか、わたしの友人として。


「その辺にしたらどうです。伊達先生」


わたしの気配ではなく声で気付いたのか、

彼はびくりと一瞬ぎこちない動きを見せた後、

反射的にこちら側に目を向けてきた。

暗がりの室内でもわたしの目には、

彼の瞳孔が開いていることが認識できた。


「な・・・なぜ、貴様が⁉」

口をパクパクさせながら、

まるで化物を見たかのような目でわたしを指差した。


「・・・・・・、それより誤解を解きましょう。

「彼等が尾行していたのは、あなたではなく。

「女性の方ですよ。あなたを調べていた麻薬取締官。

「と、まで言えばもう理解できる筈ですよね。


沈黙。

わたしの目の前にいる人物、彼・・・伊達行實は、

内心の怒りが頂点に達する直前の静かな沈黙を維持していた。

グツグツ、と煮え切った心身の怒りを

わたしにぶつける様に捨て台詞を吐き続けた。

「―――ホザケ、貴様らのような人間のクズが社会にどんな貢献をした‼

「―――私は大学で培養研究の時代を塗り替える論文を書いた、

「―――なのに学生が全てを奪っていった。

「―――これは復讐だ‼


犯罪者に対して、わたしに思いやりや同情は一切合切しない。

これは決まり事ではない。自分のルールでもない。

だってこれは、

全く持って詰まらなく。くだらない。

これはただの、『自己満足エゴ』なのだから。


これは頂けないな。

冷めた料理をわたしは食べない。

電子レンジや鍋などでもう一度、温めて食べると味が違うからだ。

好奇心『メインディッシュ』が削げ、

スリル『スパイス』もない。

―――これでは、殺す価値もない。


 「投稿の気持ち」

 第1話クライマックスに向けて全身全霊でブッ書き中です。

 次回も読んで戴ければ幸いです。

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