#009 ディアブロ
「分かった。
「俺も自分の娘が、薬漬けになるのは御免だ。
「知っていることを話そう。
マスターは娘のことを気にしながら話し、
一度ため息をついて話しを続けた。
「オマエも知っての通り、
「いま出回っている『合成麻薬』は非常に強い中毒性を持つ。
「初回服用者はハイな気分から一転、例え大人しい性格でも暴れ回る。
「服用から僅か数分で、次が欲しくなる。
「常習者になってくると、欲求が抑えられなくなり理性が飛び。
「奇声や奇行に走り、最悪は自殺を図る者が後を絶たない。
「そこまでは知っているな。
「問題はここから。若者の彼らがどうやって入手したか。
「最近はというと昔はしていなかったように聞こえるが、
「ネット上での規制や取締は年代を重ねるごとに、
「厳しくなり密輸入は難しい。
「そうなって来ると、・・・オマエも察しの通り、
「国内で作られた純国産ものと考えていいだろう。
「あとはこれを見れば、分かる筈だ。
そう言って玄武がわたしの前に置いたのは、
薄型16インチのタブレット端末。
画面には棒グラフが表示されていた。
横=Xは、5歳ごとの年齢が30歳まで。
縦=Yは、服用者数を指すと彼は言い、説明を続ける。
「これから分かることは、ひとつ。
「15歳から20歳までの服用者が、異様に多いということ。
「このことは警察と厚生労働省の職員も気付いているが、
「これを更に詳細にしたのが次のグラフだ。
捲るように画面を指でタッチして、次のページを開く。
2つの同じ棒グラフが記載されていたが、範囲が違う。
横=X線が、1歳ごとの年齢。12歳から25歳までと。
2つ目の横=X線には、10種類の職業別。
両方の縦=Y線は、変わらず服用者数を指していた。
「これは・・・・・・・・・・」
わたしは思わず、息を呑んだ。
確かにこのグラフが事実ならいくら警察が調べても、
何も見つからない訳だ。
『極道組織』のヤクザや『危険地帯』に潜むギャングはほぼ無関係。
問題なのは寧ろ、学生の方だ。
特に中学生と大学生の服用者数が異常なまでの数値が出ていた。
「悪いが、ここまでしか調べれなかった。
「はっきり言って、
「今回の麻薬騒動には想像以上の『裏』があると見ていい。
「―――――もしかすると、『表』と『裏』が逆転しているのかもしれん。
『表』と『裏』の逆転、想像したくはない。
優等生だった学生が麻薬を作っているというのは―――。
「・・・・・、信じたくはないがここからわたしの仕事だからな」
流石に『裏事情』に詳しくとも
『表事情』となってくると別ということらしい。
だが、わたしは違う。
探偵という職業は、どちら側にも堂々と足を踏み入れることが出来る。
警察以外でこういう仕事は中々あるものではない。
「夏希には悪いが、ここでおいとまさせて貰うよ」
「おう。帰れ、帰れ。貧乏人が来る処じゃないからな」
シッシ、と手を振ってさっさと帰れという。
・・・・・・、一言余計だ。
あっ、そういえばどうして浴衣なのか。
訊くのを忘れてたなあ、と思い返しながら歩く。
バーから出ると予想外の人物がわたしを待っていた。
「投稿の気持ち」
探偵さんとしては予想外の人物。
皆さんは、どうでしょうか。