プロローグ
学校のチャイムが鳴る。この時間、僕たちのクラスの授業は数学だ。
つまらない。
この発言をすると大抵の人は、僕が数学嫌いだと判断する。
確かに、授業の内容が分からなくてその教科が嫌いになるのもありえるだろう。
しかし、僕は違う。
僕の父親は数学者だ。自慢ではないが
世界に認められた実力の持ち主である。
その影響で、僕は小さい頃から数学に関しては特別な教育を受けてきた。
だから、この高校生程度の内容は
とてもつまらないのである。
授業担当は大学を卒業したばかりの非常勤講師だ。
そのため、教科書ガイドの内容を板書する、
という意味をなさない授業を行っている。
彼が生徒を指名するパターンは非常に
分かりやすいので、自分が指される直前に
解法を確認しておけば全く問題ない。
そして、実際に指されたのはそれから
10分も経った後だった。
数列の序盤あたりで屈する僕ではない。
ワケなく問題を解き、自分の席につく。
教師は満足そうに頷き、僕の解答に
ピンクのチョークで⭕をつける。
教室の生徒のうち、半分は眠りに落ちているか、友達としゃべっていた。もう半分は、
板書を写すフリをして漫画を描いたりしていた。実際に授業をキチンと受けているのは
この32人のクラス中、6人ほどしかいなかった。
この後30分ほどは僕が指されることも
ない、と分かり切っているので僕も授業から
脱出しようか。
検討を始めた その時であったー。