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25 正義の味方の広報活動

「本日は晴天にして、絶好のガンファイト日和なり! 本日は晴天にして、絶好のガンファイト日和なり……と。問題無し、マイクテスト終了!」

 拡声器の力を借りなければ、出せないだろう程の大声が、ショッピングモールの上空から顕幽市の夜空に響き渡る。建物の谷間を木霊の様に反響する声の主は、ガンブラットと化して、夜空に滞空している竜巻。

 竜巻は左手に、銃口がラッパの様に広がった拳銃を手にして、撃鉄の辺りに向け声を張り上げていたのだ。様々な弾丸を打ち出せるだけでなく、手で握れる様々な道具に変化する、ガンブラットとしての主力武器である銃を、竜巻は拡声器モードに変えて拡声器として使い、マイクテストを行っていたのである。

 周囲には、大きな紙袋を抱えている、猫姫と化している音音や、タロッティアと化している純一などが、滞空している。マイクテストの声のせいで、滞空している三人の存在に気付き、騒ぎ始めている人々を見下ろしながら。

「久し振りだな、顕幽市の諸君! 電光石火の二挺拳銃、ガンブラットだ!」

 拡声器モードの拳銃を使い、大声を響かせた後、竜巻は一見すると通常のままの姿に見える、右手に持つ拳銃を空に向け、引き金を引く。銃声が響き渡り、赤い弾丸が尾を曳きながら夜空に上り続け、爆音と共に弾け飛ぶ。

 真夏の夜空に似合う打ち上げ花火の様に、赤い火花が飛び散り、夜空のキャンバスに炎の花を描き出す。竜巻は人々の注目を集める為に、外見は通常モードと区別が出来ないのだが、花火弾モードにしてあった右手の拳銃で、花火弾を撃ったのだ。

「暫く顕幽市での活動を止めていた我等……放課後ヴィジランテスは、今宵より活動を再開する!」

 夜の街やショッピングモール、そしてマンションや家々の窓……ベランダなど、顕幽市の至る所から、歓声が上がる。放課後ヴィジランテスの存在を、覚えていた者達の歓声である。

 かっての自分や、自分が見知った者達が、放課後ヴィジランテスに助けられた記憶が有る者達は、顕幽市の至る所に残っている。

「何故、長きに渡り活動を止めていた我等が、再び活動を再開したのか? その理由は、顕幽市に住む人々にとって、極めて危険な存在が、現れたからである!」

 口の上手い政治家の様に、慣れた感じのスピーチを、竜巻は続ける。

「その危険な存在の名は、ムカシノジブン! 既に都市伝説として知る者も多いだろうが、昔の自分にそっくりな人間に出会うと、自殺に追い込まれるという、危険な超常現象だ!」

 顕幽市の各所が、ざわめく。ムカシノジブンという都市伝説を、知る者達が反応したのだ。

「このムカシノジブンという超常現象を解決するにあたり、我々から顕幽市の諸君に、幾つかお願いがある! ムカシノジブンに関する情報の提供が、その一つ目!」

 竜巻に右手で合図を出された純一は、タロットカードの束から、一枚のカードを引き抜く。引き抜いたのは、十七番目のカード……星。

「ムカシノジブンの発生源を探す為、これまでの被害者が、顕幽市の何処でムカシノジブンに出会ったのかという事に関する、詳細な情報が欲しい! 情報を持つ人は、インターネット上にサイトを用意したので、そこから情報を送ってくれ!」

 そう竜巻が言い終えた直後、純一は記憶している放課後ヴィジランテスの公式サイト名を、星のカードを紙、右手の人差し指をペンとして、書き込む。「放課後ヴィジランテス暫定復活記念サイト(仮)」という、急いでいた為に、結構適当に付けられたサイト名を。

 すると、驚くべき事に、夜空に煌めく星々の一部が、光を強め始める。発光するドットと発光しないドットで、絵や文字を描き出す電光掲示板の様に、明るく輝く星々と、そうでない星々や星が無い暗い部分で、「放課後ヴィジランテス暫定復活記念サイト(仮)」という文字が、夜空に描き出される。

 タロッティアと化した純一の、星のカードが持つ機能の一つ、スタータブレットを純一は使ったのだ。ペンで描く様に、絵や文字をコンピューターに入力出来る、タブレットというパソコンの入力装置の様に、星のカードに描いた文字や絵を、星々を電光掲示板風に使って、夜空に描き出す機能である。

 小学生の頃も、放課後ヴィジランテスの広報手段として、数多く利用されていた、タロッティアとしての純一の能力だ。ちなみに、実際に星の光が強くなっている訳では無く、顕幽市だけで、強く光っている様に見えるだけであり、カメラで撮影しても、文字や絵は映らない。

 純一は続け様に、公式サイトのアドレスを星のカードに書き込み、夜空にサイトのアドレスを描き出す。

「覚えている人もいるだろうが、この星々で描かれた文字は、カメラで撮影しても残らないし、俺が喋っている事も、録音するのは不可能だから、覚えておく自信が無い人は、メモっておいた方がいいぞ!」

 メモという言葉から、和美の事を思い浮かべるが、今は和美を気にしている場合では無いので、竜巻は話を続ける。

「次! 二つ目の願いは……夕方から日が沈むまでの黄昏時、なるべく顕幽市にいないようにする事!」

 眼下にいる人々の中から、疑問の声が上がる。竜巻は即座に、声を上げた者だけでなく、顕幽市中の人々に、疑問に対する答えを返す。

「ムカシノジブンは、黄昏時の顕幽市だけで発生する現象! だから、黄昏時に顕幽市にいなければ、被害に遭う可能性が無くなるという訳さ!」

「でも、そんなの無理だよ! 仕事があるから!」

 二つ目の願いを、実行できないだろう人から、不満の声が上がる。

「絶対、そう言い出す奴がいると思ったぜ! そういう連中向けの願いが、三つ目の願いだ!」

 竜巻に拳銃を握ったままの右手で合図された音音は、ショッピングモールに向かって降下し、身軽な猫の様に屋根に着地する。

「三つ目の願いは、ムカシノジブンに出会ってしまった人を見かけたら、即座に我々に合図を送る事!」

 音音は紙袋の中から、一掴みのロケット花火を取り出し、ショッピングモール周辺に集まっている人々に、ばら撒き始める。

「合図であるロケット花火や打ち上げ花火を、空に向かって打ち上げろ! そうすれば、我等はすぐに駆け付け、ムカシノジブンと出会ってしまった不幸な奴を、助ける!」

 歓声が津波の様に広がり、音音が次々と巻き続ける花火の、争奪戦が繰り広げられる。音音はビルの谷間を跳び移りながら、人が集まっている辺りに移動し、節分の豆まきの様に、花火を撒き続ける。

「そして、四つ目の願い! 合図を送れない状況で、ムカシノジブンに出会ってしまった人を見かけた場合は、そいつを眠らせるか、身体の自由を奪う事!」

 そう対処すべき理由を、竜巻は人々に解説する。

「そうしなければならない理由は、ムカシノジブンに出会っても、意識を失くすか身体の自由を奪えば、自殺は不可能だからだ!」

 竜巻の言葉に騒然となる街中に、残った最後の一掴みの花火を撒き終えると、音音は宙に舞って、竜巻や純一の元に戻って来る。

「以上で、放課後ヴィジランテスによる、ムカシノジブン関連の告知は、終わり! 顕幽市の諸君が、ムカシノジブンの被害を最小限に減らす為、願いを聞き入れてくれる事を、我等は期待する!」

 スピーチを締め括ると、竜巻は拡声器モードにしていた左手の拳銃と、花火モードにしていた右手の拳銃で、ガンスピンを行う。

「解除!」

 ガンスピンをしながら解除命令を出し、ガンスピンを止めると、竜巻の拳銃は元の姿……通常モードに戻る。ちなみに、拡声器モードなどに切り替える場合も、ガンスピンをしている常態でなければ、モード切り替えの命令を、拳銃は受け付けない。

 二挺の拳銃を通常モードに戻した竜巻は、ホルスターにしまう。そして、星々が文字と記号を描いたままの星空に向かって、急上昇し始める。

 音音は竜巻の後を追う様に、急上昇を開始する。程なく、音音は追い付き、竜巻に寄り添うかの如く、その傍を飛び始める。

 純一はスター・タブレットを解除し、星のカードをタロットカードの束に戻しつつ、竜巻と音音の後を追い始める。電光掲示板から文字や絵柄が消えるかの様に、星々で描かれた文字が消えていく星空に向かい、純一は飛んで行く。

 拍手と声援を送る人々の上空を飛び去り、竜巻達は程なく、姿を消した。



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