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14 ハジキンとメモリマ

「待ってよ、ハジキン!」

 ウインディ・シティから出て、自転車に跨った竜巻に、後を追って来た和美が声をかける。

「ダマシヤ探しに行くの? だったらあたしも手伝うよ!」

 和美はダマシヤの存在を知っている、秘密の過去を共有する七人の一人である。そして、先程の会話で、既に竜巻がダマシヤを探しているのを知っている。

「マジか? そいつは有り難い。マジメガは風紀委員の仕事が忙しいとかで非協力的だし、バクチカは大人になって卒業しちまったから、人材不足なのよ、俺達」

「そうなんだ。ハジキンには昔、命を救ってもらったからね。ハジキンの手助けになるなら、喜んで手伝うよ! いわゆる、恩返しって奴」

 自分の自転車……竜巻と似た趣味のMTBに跨りながら、和美は顔を綻ばせる。

「だったら、メモリマには風街の北東……商業地区の方を頼んでいいか? 他の部分は大体、俺とニャーコ、ノロイチで分担して探す手筈になってたんだが、建物だらけの商業地区の方は、可能性低いから後で探そうと思って、探す担当決めてなかったんだ」

「りょーかいッ! 風街は庭みたいなもんだから、任せといて!」

(そういえば、こいつの家は風街にあるんだったな)

 昔の事を、竜巻は少しだけ思い出す。小学生の頃、風街周辺で起こった超常現象に巻き込まれ、命の危機に陥った和美を、竜巻は助けた事があった。正義のヒーロー、ガンブラットとしての姿で。

 その際、うっかり変身を解除して素顔に戻る場面を、竜巻は和美に見られてしまった。それ故、和美はダマシヤに関する秘密を共有する、数少ない存在となったのである。

 無論、命を救ってくれた相手である竜巻の秘密を、和美は漏らす様な真似はしなかった。それどころか、色々とヒーローとしての活動に関わる雑用を、手伝ってくれていたのだ。

「さっきの……ハルイチの馬鹿は、単に家が近所で、通ってるゲーセンで良く出会う程度の奴で、別に本当に……それ以外の関係は無いからね! いわゆる、ただの迷惑な奴!」

 勘違いされたくは無いのだろう、和美は春一と自分の関係を、念を押すかの様に、竜巻に説明する。

「そうなんだ。ところで、風街の北東部を調べるって、メモ帳にメモしなくていいのか?」

 忘れっぽい為、昔はメモを持ち歩き、何かとメモをとっていた和美の姿を思い出しながら、竜巻はからかい気味の口調で、和美に問いかける。

「そんくらい、メモしないでも大丈夫だってば!」

 軽い口調で言い返しつつ、和美はポケットから迷彩塗装された携帯電話を取り出す。

「それに、今はケータイがメモ代わりになるから、メモ帳なんて持ち歩いて無いよ!」

 携帯電話を手にした和美は、何かを思い付いたのだろう、はっとした様な表情を浮かべる。そして少しの間、頬を仄かに染めて逡巡してから、竜巻に問いかける。

「ハジキン、ケータイの番号とメルアド、交換しようよ。ホラ、ダマシヤ見付けたりしたら、連絡とらないと駄目だし……」

「OK、ちょっと待って」

 竜巻も迷彩柄の携帯電話を、ポケットから取り出す。

「あ……いわゆる、おそろいって奴!」

 機種は違うが、携帯電話の柄が同じであるのを見て、喜びの声を上げる和美と、竜巻は携帯電話の番号とメルアドを、交換する。そして、交換を終えた二人は、携帯電話をしまう。

「じゃあ、頼むぜ!」

「まーかせてッ! 後で電話するねッ!」

 おどけた仕草で敬礼しながら、MTBで走り去って行く和美と別れた竜巻は、緑に覆われた磐座山の麓を目指す。心地良い向かい風の中を、颯爽と。



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