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8話

下ネタ注意


目の前に迫る白銀の毛むくじゃらな足を避け、その隙にその足に拳を叩き込む。白銀の毛は斬撃に対しては凄まじい耐性を誇るが逆に打撃には弱い。俺の拳は難なくその足を破壊することに成功した。

残りの足はあと七つ。

そいつは足を八つ持つモンスター、"鎧蜘蛛"。個人的にはオーク四体分よりも強いと思う強敵だ。


「そっちは大丈夫か?」


「大丈夫だ。」


夜宵は今、"巨猿"と闘っている。声から察するにあちらも順調なようだ。












「ふぅ。」


なんとか倒したな。"鎧蜘蛛"は確かに強敵だけれど1対1なら勝てない敵じゃない。まぁ、一人でいるとその1対1の状況にするのが大変なわけだったんだけど、今は違う。俺には仲間がいる。

―イケメンだけどさ。

やっぱり、夜宵が陽動に行ってくれると負担が大きく減る。おかげで俺は敵と1対1で闘えるわけだ。


「お疲れ様。」


夜宵が"巨猿"を倒してこちらに来る。


「どうだ、【銃拳】の使い心地は?」


【銃拳】とは夜宵が覚えた新しいアーツのことだ。銃で敵を殴りつけるこのアーツは銃弾が有限である夜宵には不可欠なアーツだと言える。


「さすがに弾撃つよりは弱いかな。」


そりゃそうだ。銃なのにその銃自体で殴った方が強いなんてことがあったら大変だ。


「そうか、ならもう一つ聞かせてくれ。」


「どうぞ。」


「この道、本当にあってるのか?」


「……………。」



俺達が出会ってから更に2日が経った。当初俺は町の方角すら分からない状況だったが、夜宵は自信あり気に『町のある方角ならわかるよ』なんて言う。

もちろん俺は喜んで夜宵について行ったさ。


「町に近付くにつれて敵が強くなっていくなんてことがあるのか?」


そう、俺達は町に近付いている筈なのだ。なのに敵が強くなっているのはどういうことだ?

俺達の町はいつから魔王城になった。


「ごめん、今まで相棒にも黙ってたことがあるんだ。」


夜宵が俺のことを相棒って言う時は何か俺のことを怒らせるようなことを言う時だと俺はこの2日間で学んでいる。といっても今の状況なら夜宵が言うこともある程度推測できる訳だが。


「言ってみな。」


とりあえずは聞いてやろう。イケメンだが、一応は仲間なんだ。そして俺は仲間には優しい男だ。


「実は、道を間違えたみたい。」


→正直に言ったので許す

殴る


「うわっ!!」


っち、避けられたか。


「今の本気だったよね!?

僕の【見切り】がなかったら直撃だったよ!!」


【見切り】とは夜宵が新しく覚えたスキルで、その名の通り、相手の攻撃を見切るスキルだ。

もちろん、俺も夜宵にこのスキルが無かったら全力で顔面を殴りつけようとはしなかった。

――たぶん。


「大人しくしていた方が楽に逝けるぜ?」


俺は怒ってるんだ。道を間違えた?

んなもん今言うなよ!!

なんで俺が2日もかけて町とは全く逆方向に行かなきゃいけないんだ!!


「本当にごめんってば、悪かったよ。」


「謝って済むか!!

ったく、これだからイケメンは。」


「それは関係なくない?」


「うるさい。お前に口答えする権利なんてねぇんだよ。」


この役立たず、どうしてくれようか。


「でもでも、悪いことばかりでもないよ。この辺にいる鎧系のモンスターは倒すと銃弾を落としてくれるし、それに僕達だって強くなれるじゃん。」


「黙らっしゃい!!」


こいつはまだ遭難二日目だからいいさ。俺なんてもう遭難五日目だぞ。さすがに辛いわ!!


「それに、おまえは下ネタを毛嫌いし過ぎだ。男ならもっと下に走れよ!!」


これも俺が夜宵に抱いている不満の一つだ。というか夜宵に対する最大の不満だ。

昨日も、見つけたキノコの形が男のアレに似てたから俺がそれを見て大爆笑してたら、夜宵は笑いもせずに冷たい視線を向けてきた。

なんだ、イケメンは潔癖だから下ネタは言わないってか?

なら俺が汚してやらぁ。


「下ネタってそれこそ、今は関係ないよね!?」


大いに関係するわ。そもそもで男二人揃って下ネタを言わないなんてことはありえないんだ。これからの俺達の関係の為にも夜宵には早急に落ちてもらわないと。

下ネタを連発するイケメンか。


「何をいきなり笑っているんだ?」


ヤバい、下ネタを連発する夜宵を想像したら吹いてしまった。


「如月 夜宵、おまえには間違った道だと知っていながらそれを知らせなかったという罪がある。」


「だから、悪かったってば。」


「なら、それ相応の罰を与えてしかるべきだろう。」


「罰?」


嫌そうな顔をする夜宵。だがもう遅い。


「罪人、如月 夜宵には二十回連続で『ち○こ』と大声で叫ふ、の刑を言い渡す。」


「絶対に嫌だよ!!」


「嫌じゃなきゃ罰にならないだろ。」


さぁ、見せてくれイケメンが下ネタを大声で叫ぶという醜態を。


「反省の気持ちがあるならできるよな?

別に不可能なことを言っているわけでも生死に関わることでもないんだから。」


端から見たら、イケメンを脅すただの悪人だな。だけどいいんだ。イケメンを貶めるためなら俺は悪魔にだってなれる。


「う〜。」


涙目でこちらを見る夜宵。中性的な顔つきの為、一瞬女に見えたが、俺は騙されない。こいつは間違いなく男で何よりイケメンなのだ。


「早くやれよ。」


イケメンには厳しい男、神崎 柳牙。

容赦なく夜宵を追いつめていく。


そしてとうとう


「分かった、分かりました。言えばいいんだろ、言えば。」


やっと覚悟を決めた夜宵は息を大きく吸って、


「ゴニョゴニョゴニョゴニョ……」


「声が小さいわ!!」


そんなんじゃ罰ゲームにならねぇだろ。


「っく〜。

○んこち○こちん○……………………。」


「ハァハァハァ、これで満足か!?」


俺は爆笑してしまっていて夜宵の言葉に答えられる余裕がない。

ヤバい、ツボった。


「笑うな!!」














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