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2話


俺の名前は神崎(かんざき) 柳牙(りゅうが)。身長は182㎝と高め、体重は標準。ルックスは平均的でギャルゲーの主人公になれると自分では思う。勉強はそこそこ。運動は得意。でも社交性が壊滅的。そんな俺はアレからしばらく時間が経っているのにもかかわらず、誰ともギルドを組めずにいた。というか、こちらに来てから誰とも喋れてすらいない。


「こんな筈じゃなかった。」


本当なら【群の(ハーレムキング)】の効果で女の子と運命的な出会いをしてキャッキャウフフな展開になる筈だったのに。

はい、現実を見ます。


「みんな凄いよなぁ。」


この広場には学生、つまり若い人が多い。だからかわからないけど、みんな積極的だ。早くもギルドを作りに行くグループも見受けられる。

今も若い男二人組が女子高生二人組に声をかけた。その女子高生二人組はかなりレベルが高くて一人はプロポーション抜群の美人、一人はまるでアイドルのように可愛い美少女。さっきからこの二人は声をかけられているけど、まだ誰ともギルドを組んだ様子はない。もしかして二人で組む気なのだろうか?

だけど、それならこんな場所に留まっている理由はないよなぁ。人でも捜してるとかか?



「やめて!!」


俺が考えに耽ってる間に雲行きが怪しくなっていた。男二人が女子高生二人の腕を掴んで離さない。おそらく断られて激昂した男二人が強硬手段に出たのだろう。

ギャルゲーならここで選択肢がでるに違いない。


→助ける

 見ないふり


「嫌がってるみたいだし、やめなよ。」


俺はもちろん助ける方を選んだ。当たり前だ。俺は無理やりとか力ずくで女の子を屈服させるのとかが大嫌いなんだから。女の子は全て俺の宝物なんだ。



「お前には関係ねぇだろ?」


「ひっこんでろや!!」


昂奮しているからか元からなのか言葉遣いが汚いし今にも殴りかかってきそう。


俺って、こういう厄介事の耐性は異様に高いんだよね。今も不良二人に絡まれてるのに何とも思わないし。


「お、俺が相手しておくからに、逃げて。」


でも女の子への耐性は異様に低いんだよね。今も女の子二人を前にして足がガタガタ。二次元ならこんなことにはならないのに。


「で、でもあなたが…」


「理沙、男の思いを無駄にしてやるな。」


美少女ちゃんの声を遮ったのは美人さん。美少女ちゃんはそれに頷く。


「おい待てよ、俺達の話は終わってねぇよ?」


ウザ!!

むかついたので女子高生二人を掴んでいる男達の腕をひねりあげてやった。


「話なら俺としようか。」


その隙を見て女子高生二人はこの場を去る。

久しぶりに三次元の女の子と会話ができて感動だ。


「てめぇ、ちょっと来いや!!」


町の裏路地に連れて行かれる俺。キャー怖い。


「さっきはよく……ぐは!!」


問答無用で殴り飛ばした。女の子を労れない奴は万死に値する。


〜数分後〜


「俺達が悪かった、ゆ、許してくれ。」


さっきの二人はぼろ雑巾みたいになっていた。

昔、祖父に体術を教えてもらってるから、俺は割と強い。そこらの貧弱なオタクとは違うのだ。


というわけで、粗大ゴミを路地裏に放置したままで俺は元いた広場に戻り、再びギルドメンバーを募る。

すると、広場に先ほどの美人、美少女ペアーの女子高生が現れた。



これはフラグか!?

不良から助けた女の子と仲良くなる。ありふれたパターンだけど、それだけに期待が持てる!!


俺のことに気がついた二人組はこちらに駆け寄ってきた。

よし!!これで俺も人生勝ち組!!


「さっきはありがとうございました!!

それで、あの後は大丈夫でしたか?」


すんごい可愛い女の子が俺に話しかけてくれている。これはチャンスだ!!

もちろん、ここで俺のとる選択肢は………


→データがありません

データがありません


「う、うん。」


ドモッタ。

そりゃそうだよね、俺ってば三次元の女の子と喋るのは久しぶりだもん。明らかに経験値が足りないよ。

くそ、こういう時こそ【群の(ハーレムキング)】の出番じゃないのかよ!!



「良かったぁ。心配してたんです、怪我なんかしてたらどうしようって。

でも、咲夜(さくや)ちゃんは『男の強がりを邪魔するな』とか言ってましたから。」


良かった、普通に会話が繋がった。

でも、強がりとかじゃなくて俺は男には本当に強いんだけどな。言われてみたら強がって女の子を守りにいったモヤシにしか見えないかも。声も震えてたし。

…うわ〜俺、カッコ悪い!!


「あの男二人は少し経ったら自分の馬鹿さに気がついて反省してたよ。」


よし、今度ははっきり言えた!!

ちなみに嘘は言ってないよ本当に、少し(殴り続けて時間が)経ったら自分の馬鹿さに気がついて(泣きながら)反省してたもんね。


「私からも礼を言うよ。どうだろう、私達はこれから町の外に出ようと思っているのだが、君も一緒にこないか?女二人だとどうしても不安でね。」


キタキタキタキタキターーー!!!!!!

俺のテンションは今、大気圏を突き破ったぜ。

これは選択肢とか見る必要もねぇ!!


「是非お願いします!!」


「は、はい。こちらこそ。」


思ったよりも声が大きかったからか、二人を驚かせてしまった。いけないいけない、いくら嬉しいからって浮かれ過ぎも良くないよな、外には何がいるのかわからないんだし。


「では行こうか。」


周りの男共が羨ましそうにこっちを見てくる。すまないな、俺はもう君達とは違うのだよ。





「自己紹介がまだでしたね、私は裕貴(ゆうき) 理沙(りさ)っていいます。」


「私は十六夜(いざよい) 咲夜(さくや)だ、よろしく。」


「お、俺は神崎(かんざき) 柳牙(りゅうが)。」


ぎこちないけど会話が成立している!!

しかもこんな美人と美少女と!!

と、話は変わるが咲夜さんの胸がさっきから揺れて凄い。ブラジャーって揺れないように抑えつけるものだよね?抑えつけられて尚アレだけの躍動感を表す咲夜さんの胸、恐るべし。


「どうしました?

さっきから真剣な顔をして心配ごとですか?」


咲夜さんの胸のサイズを真剣に目測してました。なんて言えないよな。


「いや、大丈夫だよ。」


「変な柳牙さん。」


小さく笑う理沙さん。

理沙さんの笑った顔、超可愛い。できれば俺だけのメイドさんにしたい!!

そして、御主人様って言われてご奉仕されたい!!

おっと思考がまた変態チックになってしまった。自重せねば。



「着いた。ここをくぐれば町の外だ。ここからは気を引き締めていくからな。」


喋っているうちに町の出口の門に着いた。そこには俺達の他にも外に出ようとしている奴らも集まっていた。

ときおり聞こえる周りの話から察するに、どうやら既に外に出て行った奴らもいるらしい。


俺達は咲夜さんを筆頭に迷うことなく外に一歩足を踏み出した。


「いきなりモンスターに襲われるかと思ったが、そうでもないのか。」


町の外は森。まるで開拓された様子もない樹海だった。だが、とりあえず今のところは危険はない。


でも、よく考えたら凄いよな。浮かれていて気がつかなかったけど、咲夜さんと理沙さんはいきなり神様の考えたゲームの世界に連れてこられたのにも関わらずパニックになることもなく、しっかり現状を受けとめてこうして適応しているんだからさ。

うん、俺には無理だ。


「今日は様子見だけのつもりですから、柳牙さんも無理はしないで下さいね。」


「分かった。」



カサカサ カサカサ


いきなり、俺達の右の方から物音が響く。


「来るぞ!!」


"ゴブリン"


頭上にそう表示された怪物が三匹草陰から俺達の目の前に現れた。


咲夜さんはどこからともなく現れた刀を迷い無く一番手前の"ゴブリン"目掛けて振り下ろす。


「キシャー!!!」


手前の"ゴブリン"のHPが半分まで減った。


「す、凄い。」


俺も武道をかじっていたから、咲夜さんの剣筋の良さが分かる。多分剣道か何かをやっていたのだろう。

俺も負けてられないな。


左側の"ゴブリン"に向かって走り、そのまま跳び蹴りをかます。俺の足は見事に"ゴブリン"の腹に命中し"ゴブリン"をふっ飛ばした。更に転がった"ゴブリン"目掛けて踵落としを決め、"ゴブリン"のHPを0にした。

横では咲夜さんがきっちり"ゴブリン"を切り倒しており、残る"ゴブリン"は一体だけ。


「氷りなさい!!」


理沙さんがそう叫ぶのと同時に最後の"ゴブリン"が氷の針に串刺しにされ、HPが0になって消滅した。


「今のどうやったの!?」


凄い、まるで魔法みたいだ!!

理沙さんの元に駆けより真相を聞いてみる。


「実は武器に杖を選んだらスキルに【氷結】というのがありまして、説明を見てみたら対象を氷付けにするってあったから使ってみたんです。」


なるほど、杖は魔法みたいなスキルを得ることができるのか。ってことは俺の【群の(ハーレムキング)】は武器に拳を選んだから手には入った?

多分、違うよな。待てよ、その前に理沙さん、気になることを言っていたよな。


「そもそも、スキルの説明って見れるの?」


「はい、見れますよ。知りたいスキルのスキル名をタッチすれば。

でもそれを聞くってことは、もしかして柳牙さんもスキルを持っているんですか?」


……やべ、この質問は予期してなかった。どうしよう、馬鹿正直に【群の(ハーレムキング)】を持ってるなんて言えないしな。


「あ、別に言いたくなければいいんですよ。スキルの情報は大切ですしね。」


「うん、ありがとう。」


理沙さんに気を使われてしまった。

理沙さんだけスキルを言って俺だけ言わないのも不公平な気がするけど、こればっかりは仕方がない。

この借りはいつか必ず返す。できれば体で……


「油断するな。」


「はい!!」


ビックリした。咲夜さんに俺が変なこと考えてるのがバレたのかと思った。

気を取り直して、俺達は再び森の中へ進んでいく。













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