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11話


「やった!!」


俺達のこの長い放浪生活にもとうとう終止符を打つときが来たようだ。


「やっと、人を見つけられたね。」


熊さんを倒して1日が過ぎた今日、俺達は相変わらず森の中にいた。

そしてとうとう見つけたんだ、救いの救世主を。


「思えば男と二人きりなんていう最悪の環境だった。」


「べつに僕は二人でも楽しかったけどね。」


気持ち悪い奴だ。まさか俺に惚れたか?残念だが、俺の趣味は正常……とは一概には言えないけれど、少なくとも男を嗜むようなことは絶対にない。


「ということだから、夜宵の気持ちには応えられないんだ。」


「なんで僕はいきなり振られてるんだよ!?」


「それはお前が男だからだ。」


「はぁ、最近は柳牙の理不尽にも慣れてきちゃったよ。」


どうやらイケメンの調教にいつの間にか成功していたようだ。

……ビックリするほど嬉しくないな。


「こんなことしてたら見失っちゃうってば。せっかく巡り会えたチャンスなんだから全力で掴もうよ。」


そうだった。俺達は今、空を上っていく煙を目指して歩いている。というのも、煙があがっているということは、そこに誰かいるはずであり、それはつまり俺達が町に帰れることを意味しているからだ。


「なんとしても、追いつくぞ!!」


「そうだね。」


俺達はできる限りのスピードで森の中を掛けていった。













「すみません。俺達、道に迷ってしまったんですけれども。」


「あぁ、それは災難でしたね。おい誰か、この人達に町までの地図を渡してやれ。」


煙の元である焚き火の近くにいたのは四人の若い男だった(俺がかなりガッカリしたのは言うまでもない)。その人達は俺達の事情を話す(さすがに、初日からずっとさまよっていたということは言わなかった)と、親切にも町までの道のりを記した地図をくれた。

この地図は俺が持っていることにした。方向音痴の夜宵に持たせても宝の持ち腐れだからだ。


「皆さんは何をしに?」


「俺達は《オルトロス》を探しています。」


「《オルトロス》?」


「なんだ、知らないのですか?」


6日間も放浪していたから俺には情報が皆無だ。だが、夜宵の方を目で確認したところ、あいつも知らないようだったから、ここ最近の情報なのだろう。


「《オルトロス》というのは初めて確認されたユニークモンスターで、今【妖精の里】に向かって来ている奴です。俺達は【エデン】のメンバーで、この辺のパトロールをしているんですよ。といってもこの辺りは最前線ですから、俺達も死なない程度にですけどね。」


なんだなんだ?

ユニークモンスターはまだ分かるけど、【妖精の里】やら【エデン】やらは俺の知らない単語だ。夜宵は分かるようだから後であいつに聞いておこう。


「へ〜、【エデン】のメンバーなんですか。」


「はい。だから【エデン】の恥にならないようにしないとなんですよ。」



ワオーーーーン


今のは昨日も聞いた遠吠えだ。


「昨日よりも近いな。」


もしかしたら、既にすぐそこまで来ているのかもしれない。


「《オルトロス》、いや狼という確率もあるか?

まぁ、どちらにしても確認しなくちゃな。


あ、すいません。俺達はこの先に行ってきます。君達は先に帰っていてください。」


そう言ってから四人は慌てて荷物を纏め、遠吠えが聞こえた方へ進んでいった。




「親切な人達で助かったね。」


「イケメンじゃなかったしな。」


彼等となら俺はすぐに友達になれる気がする。もちろん気がするだけだが。基本的に俺の社交性は0だから。そう考えると夜宵の存在は随分と異質だな。


「そう言えば、【妖精の里】と【エデン】ってなんだ?」


「【妖精の里】は僕達の町の通称だよ。で、【エデン】っていうのは【妖精の里】最大のギルドのこと。」


なるほど、俺が遭難している間にもいろいろなことがあったんだな。


「それじゃぁ、地図も手に入れたことだし、帰るか【妖精の里】に。」


「おう!!」










ワオーーーーン


また近くなっている気がする。あの親切四人組と分かれてから4度目となるこの遠吠え。それを聞く限りその声の主が段々とこちらに近付いている気がするのは俺の気のせいだろうか?


「なぁ、夜宵。これ近くないか?」


「僕もそんな気がしていたところ。」


嫌な予感しかしない。


「あの人達は大丈夫だったかな?」


「大丈夫だろ、見た目強そうだったし。」


「そんな適当な。」


ふ、俺が男を心配するわけないだろ。

そういえば俺、もう随分と長いこと女の子を見てないな。最後に見たのは初日にあった理沙さんと咲夜さんか。あの頃は良かった。

はぁ、空から美女が落ちてこないかな。


「空に何かある?」


夜宵が上を見て歩いている俺に不思議そうに訊ねてきた。


「いや〜、空から美女が落ちてこないかなと。」


「…………。(←蔑むような視線)」


「いや、可能性は0じゃないだろ?」


「ソウダネ。」


凄い棒読み。

はぁ、夜宵には男のロマンが分からないみたいだ。



ワオーーーーン


「柳牙!!」


「分かってるよ!!」


今のは近いとかそういうレベルじゃない。


「来る。」


凄まじい程の破壊音と共に木をなぎ倒し、そいつは現れた。


「ワオーーーーーン!!!!!!!」


現れたのは二対の頭を持つ巨大な犬。その頭に表示された名前は、


《オルトロス》



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