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9  ラズベリーブルーの草原

九  ラズベリーブルーの草原



 リオが口にした、リオのしたい事。

 空間輸送システムを閉じることは、リオが出来ることであり、リオのしたい事では無かった。

 キョウは震えながらリオを見つめた。

 それと、リオが遣りたいことはとは別に、キョウに与えられた仕事。

 キョウにとっては、リオが戻れるのは喜ばしいことだが、最悪、キョウがイップ王女と同じ運命を辿(たど)る。

 空間輸送システムを閉めた後、開けるのがキョウの仕事だった。

「………開けるのか? そんな事をして、大丈夫なのか?」

「えぇ、一番の問題は、空間を開けた時に隙間(すきま)が出来てたために、六次元とつながった事でしょ。だから霧が現れた。今回はプログラムは打ち直しておくから、隙間(すきま)は絶対に出来ない。王国ファスマの地下にある、空間輸送システムのエネルギーは、バッテリーと言う電池のようなものが付いてるから、エネルギーを貯めれるし、開けるには問題がないけど、十秒位が限界。だから私が出る時間しかない。万が一にプログラムの打ち間違えが起こって、隙間(すきま)が出来ても、直ぐに閉まるから大丈夫よ」

 リオは理解しているので簡単に言うが、キョウはたまらなく不安を感じる。それに、リオが本当に遣りたいことは、こちらの世界にリオが居ないと出来ない。戻れるのは嘘ではないらしい。

「正直、自信がない。ユキナ側から開けれないのか?」

「うん、それがユキナも聞かされて無いから解らないの。でも、空間輸送システムが今も(つな)がっていると言うことは、システムは動いていると言うこと。要するに、このパスワードは止める為のものなの。でも、最悪はシステムを壊すパスワードかも知れないから、そうなれば戻れなくなる」

 キョウにはリオの言っている意味が今一つ解らないが、パスワードを打ち込めば、空間輸送システム自体が止まり、もう二度と動かせないとふんだ。

「なら、俺がこの世界に残り、開けるしかないが、心配無いんだな?」

 少し鋭さを増し、(ねん)を押すようにキョウが(たず)ねる。

 リオの事は何を置いても信じたくはあるが、セリオンの記憶では止めなかった事を、キョウは()やんでいた。今も本来なら止めるべきかも知れない。

「キョウ、大丈夫よ。私を信じて」

「キョウ、リオの言っている事は間違いない。大丈夫だ」

 空間輸送システムの内容を知る、リオとユキナの二人からそう言われるが、キョウには不安が残る。

 一度閉まったものを再び開けて、また閉まらなかったら、それこそ意味がない。しかし、それによりリオが戻れる事は確かだ。

 リオの話によると、ユキナ側から空間輸送システムを止め、こちら側の空間輸送システムで開ける。

 キョウにしてもこちら側の空間輸送システムは正常に作動するのかも解らないし、どうやって動かすか、止めるかも知らない。しかし、キョウには選択肢は無かった。

 それに、イップ王女の時のように、自分が守るべき者が()やんでいるのを、ただ見つめているだけではない。今度の罪はキョウ自身が背負(せお)うと考えると、リオが背負うより(はる)かにましだ。

 キョウはリオと共に立ち上がり、頷いた。

「解った。………やる! どうすれば良い? 教えてくれ」

「うん。その前に、………ユキナは黙っててね」

 リオは扉の方に目をやり、小声でユキナに注意を(うなが)す。ユキナも扉の方を向いたまま頷いた。

 キョウは扉に背を向けているから気付かなかったが、後ろに誰かいる。咄嗟(とっさ)に剣に手をかけたまま振り向いた。

 後ろを着けて来たのだろう。そこには、マグナを引き連れたイップ王女が(たたず)んでいた。

 先程は混乱していたし、リオの事ばかりに頭が行きよく見ていなかったのだが、こうして改めて見てみると、はやりイップ王女は(ひん)がある。

 高価な装飾品(そうしょくひん)はつけていないし、ドレスも記憶にある以前よりも安そうな素材で、()るし物だろうが、あつらえたように着こなしている。

 安食堂の扉の前に立っているだけだが、それだけで一枚の絵になる。

 リオとイップ王女は同時に目線を交わす。

 イップ王女とリオ。ついに二人は出会ってしまった。

 リオはキョウの横をすり抜け前に出る。

 キョウは黙ったまま、その姿を見届けた。

 たしかリオは出会ったとき、イップ王女を大嫌いと言っていたはずだ。言い合いに成っても、リオが理不尽(りふじん)な事を口にしても、キョウはリオの味方であろうと思った。

「始めましてかな、イップ王女様ですよね。私はリオ・ステンバーグと言います」

 しかし、キョウの心配したような事はなく、リオは普通に話し掛けた。それが嬉しかったのか、少しだけ優しい目で、イップ王女はリオを見ていた。

「そうか、お主がリオか。………あっ、すまぬ。勝手にリオと呼んだが、かまわぬか?」

 リオは頷いた。

 その様子にイップ王女も口元を(ゆる)め、頷き返すと言葉を続ける。

「リオ、まずは謝らせてくれ、キョウから聞いたかも知れぬが、お主達二人にはすまぬ事をした」

 丁寧(ていねい)に頭を下げるイップ王女に対して、リオは手を振り、あっけらかんとして答えた。

「いいよ、謝らなくて。私とキョウに記憶を入れたのでしょ?」

 その様子は、イップ王女への思い遣りからでなく、本当に興味無さそうにしている。

 それも解っていたかと、キョウは改めてリオの凄さに、驚きを通り越し溜め息を吐く。

 キョウはリオが戻れない事ばかりが頭にいき、リオにイップ王女が何をしたのか伝えていない。

 不思議そうに眺めるキョウに気付いたのか、リオは後ろを振り向くとキョウに説明を始める。

「イップ王女が生きているって解ったら、そうしかないでしょ?」

 リオの答えに、イップ王女は再び頭を下げた。

「そうだ、(わらわ)(ひど)いことをした。すまぬ」

「だから、謝らなくて良いって言ったでしょ。イップ王女の記憶は、私の役に立っているから問題無いよ」

 リオは本当にあっさりしている。内容が解ったキョウも、イップ王女がそこまで謝る必要性を感じていなかったが、リオも同じなのであろう。

 そこでリオとユキナの料理が運ばれて来たので、イップ王女は慌てた。

「あっ、すまぬ、食事時であったか。先に(いただ)いてくれ」

「うんん、それより先に、少しお話を聞かせてください」

 リオは料理がテーブルに運ばれると、ユキナに「私の分は残しておいね」と呟き席を変えた。

 リオは隣のテーブルに移り、イップ王女にも席を勧める。イップ王女は素直に従い、リオの前に座った。

 マグナとキョウは席に座らず、お互いの(したが)う者の後ろに移動した。二人はにらみ合う。

 ユキナはリオに言われた通りに何も語らず、こちらに耳を傾けたまま、一人食事を進めた。

 先に口を開いたのは、リオの方からだった。

「それより、記憶を入れるってどうやったの?」

 やはりそこが気になったのか、リオはイップ王女に(たず)ねる。

「うむ、あれは雷の魔法と向こう側の医療の装置を使ったのだ。(わらわ)の脳内の記憶を(つかさど)部位(ぶい)の電気信号と、同じ電気信号を魔法で作り、医療の機械でバイパスしたのだ」

「そう」

 リオはあっさり納得する。キョウはその様子を意外と見ていた。普段なら原理や方法、その道具など詳しく(たず)ねるが、今回の物に興味はなかったのだろうか。

「じゃ、私達の記憶が全てで無いのは、キョウが私を守ってくれたからね? 本来ならもっと詳しい記憶があったはず」

「あぁ、それも聞いたか。キョウは途中で目を覚まし、リオを担いで走り去った。だから、作業は途中で、リオ達には中途半端な記憶しか無いはずだ」

「やっぱりね」

 リオは問題の答え合わせをするように、次々と当てていく。キョウは等々(しび)れを切らせた。

 キョウが(つた)えたのは、イップ王女が生きていた事だけだ。ここまで解るのには、どう言う解釈(かいしゃく)で解ったのだろうか。

「リオ、待ってくれ。どうしてそこまで解る? 俺はそこまで話てなかったろ」

 リオは後ろを振り向き、キョウに向いて頷いた。自分が説明するからだろうか、その瞳は笑っている。本当に説明の好きな子だ。

「それはね、キョウと初めて会った時、私達はお互いに解ったでしょ?」

「あぁ、俺はリオがイップ姫だと直ぐに解ったことか。俺も不思議に思ったが………」

「あれは私も不思議に思って考えたけど、答えはキョウがくれたの」

「俺が?」

 そこでキョウは(あご)のしたに手を当て、悩み考えた。

 キョウが答えを与えたとすると、暗殺者に追われた時の宿で、あやふやな記憶の、ニグスベールの奇跡の話をしたぐらいだ。しかし、あの時はリオを担いで逃げていたのは、セリオンの記憶だと思い、もちろん話しはしていない。

「私達は二年前に会っている。私もあの時、記憶をいじられた影響(えいきょう)からか、その時の記憶は曖昧(あいまい)よ。だけど、肩に担がれているのを覚えている。そして、その時に私はキョウの横顔を見ていたの。お互いに名前は知らないし、イップ王女とセリオンの記憶を入れられた後だから、私達は微かに覚える記憶で、キョウは私をイップ王女、私はキョウをセリオンだと認識してしまった。間違っているかも知れないけど、多分そんなところよ」

 なるほどとキョウは頷く。そう考えるとリオがイップ王女と解ったことも説明がつく。

 リオのこの考えは、科学者の考え方である。

 科学では真実を知るとき、二通りのやり方がある。一つは、その物自体の正解を探し当て、真実を突き止めるやり方。もう一つは、周りの物を否定して、だから正しいと、結論付けるやり方がある。こちらは肉眼では見えないが、その物質は存在するときなどで使う循環論法(じゅんかんろんほう)である。

 リオは、空間輸送システムやイップ王女の記憶を、後者の考えで(みちび)き出したのである。

 親が学者で、それをずっと見ていたためか、日頃(ひごろ)からそういう考えを持ち合わせていた。

 そこまで終わると、ここからはリオの本当に聞きたいところに入るのだろう。一度だけ首を鳴らし、目を細め、穿(うが)つ様にイップ王女を見た。

 その様子に、周りの空気が変わった。

 今までの話は、本当は聞く必要は無かった。リオにとっては記憶いじられた事や、それをやった方法など、本当はどうでも良い話だ。

 リオは今の状態が満足である。自分のやりたいことも出来たし、キョウにも会えた。それはイップ王女の記憶が有ったから出来たことで、逆に感謝すらしている。

 しかし、ここからは別だ。いくらイップ王女と言えど、邪魔する者は許さない。

「本当は何故(なぜ)、私に会いに来たのですか? それを教えてください。謝罪(しゃざい)ならもう結構です。おかげでキョウとも会えたし、感謝しています」

「リオ………」

 キョウは嬉しそうに口元を(ゆる)ませた。

 その様子をイップ王女も嬉しそうに見て(ほほ)(ゆる)ます。自分のしたことが、悪いことだけで無いと思ったのだろう。しかし、イップ王女の用件も謝るだけでは無かった。

 リオと同じ考え。

(わらわ)は、お主達が何故(なぜ)、この様な場所に居るかが知りたいのだ。………ここまで来たという事は、お主達も、あれを閉めるためにきたのか?」

 イップ王女は穏和(おんわ)な顔付きから、リオに負けないほど真剣な目付きに変わった。

「えぇ、そうよ」

 リオは当たり前のように答える。

 イップ王女はリオのその返答を、辛そうに見ていた。

「もう良い。(わらわ)が居るから大丈夫だ。お主達に迷惑はかけん。あれは(わらわ)が閉める」

「どうやって? 二万七千の言葉は意味ないわよ」

 イップ王女は、内心リオがその事を知っている事に驚いたが、明細(めいさい)は口にせずに言葉を続けた。

「セリオンに頼んで、あれを向こう側から壊す。その為に剣もあしらえた。リオ、記憶を全て持っていないお主には無理だ」

 イップ王女の言葉を聞き、キョウは又かと言う想いで(まぶた)を閉じた。

 ――――霧は止まらない。

 ――――お前には無理だ。

 その台詞はもう聞きあきていた。

 結局は誰もが解っていないのだ。

 リオが反論しようと口を開き掛けたとき、その前にキョウが口を開いた。

「無理と言う言葉は、もう聞きあきた………」

 静かに口ずさむ。

 その場にいた者、全員がキョウを見つめる。

 キョウは数えるように、ゆっくりと言葉を続けていった。

「最初は俺だったんだ。次は法国オスティマの(えら)いさん、次はユキナ、そしてイップ姫。………誰もがリオに言ったんだ。でも、リオはそんな言葉より、自分を信じてここまで来た。多分、リオにそう言った誰もが全く理解していない」

 キョウはゆっくり目を開ける。

 リオの様に、自信をもった真っ直ぐな瞳をイップ王女に向けた。

「――――あれを閉めるのは、リオしかいない。………イップ姫、リオはあなたの記憶を持っているから閉めに行くわけではない。リオが出来るから行くんだ。あれを理解していない、あなたの方が無理なんだ」

 確信する様にキョウは、イップ王女を見つめたまま、その言葉を放つ。イップ王女は息を飲み込み、真剣にキョウを睨み付けた。

 そんなイップ王女を見て、敵対してしまった、記憶の中の引かれていた女性に対して、キョウは悲しくもあり、少しだけ寂しく思った。

 イップ王女は国民を想って覚悟を決めたが、結局(けきょく)は開けることもしていないし、閉める事も出来ないだろう。なのに、責任だけが彼女にのし掛かったのだ。それは、イップ王女の力不足ではないし、偶然(ぐうぜん)の産物でしかすぎない。

 だと言うのに、いまだにそれは彼女を苦しめている。それはまるで呪いのように。

 キョウの思いとは別に、ユキナも食事を取りながら、イップ王女の不運を見つめていた。

 リオと会う前に、ユキナがイップ王女と出会っていたところで、ユキナはなにもな話さず、帰ることを諦めていただろう。

 エネルギーを止めるならまだしも、操作室を壊せば、最悪閉まることなく、開いたままに成る可能性が大きい。そうなると、今度はエネルギーを止めるしかなくなり、地中に埋まっているケーブルを切ることに成るが、それは霧の多いハイゾーンでは、不可能にあたる。さらに、実は核融合炉は直接キョウ達の世界に来ていない。近くにはあるはずだが探さなくてはいけない。しかし、再びハイゾーンの中を探し、核融合炉を見つけるとなれば事だ。そしてそれは、実際は不可能に近い。

 すなわち、操作室を壊せば、事実上、核融合炉のエネルギーが()きるまで止めることが出来なくなる。

 ユキナは思った。

 二つの世界は、時代は、霧を止めて動こうとしている。しかし、それらが選んだのは、イップ王女で無く――――リオなのだ。

「しかし、お主は帰ってこれなくなるぞ、だから(わらわ)に任せよ! お主がそこまで背負込(しょいこ)む荷物ではない!」

「それなら、イップ王女も一緒よ。あなたには罪はない。だから任せて」

 リオとイップ王女は、お互いに自分の意見を貫く。

 イップ王女は微かに遠い目をした。

(わらわ)は十八年間、あれに(たずさ)わってきた。(わらわ)が生きてきた半分以上だ。悪いが手出しは無用、あれは(わらわ)が止める!」

 睨み付けるようにイップ王女はリオを見る。

 その想いは記憶を植え付けられた、リオやキョウには良く理解できた。

 ずっと相手してきた宿敵だ、リオが完璧なのを知ったところで、簡単には任せられないだろう。

 その想いを知ってなお、リオは首を振った。

「イップ王女、あなたは間違っている。あなたのするべき事は霧を止めることじゃない。それに、キョウも言ったけど、イップ王女、システムを理解していないあなたには無理よ。あれを止めれるのは私だけ」

 (かた)やリオも一歩も引かない。

 イップ王女が壊したところで、万が一に止まってしまえば、リオがやりたいことに支障(ししょう)が出る。

 二人には、二人で共に止めると言う考えは無い。有るのは互いに互いの想いを(つらぬ)くだけだ。

「リオ、お主にはすまぬ事をした、それは謝る。しかし、これだけは別だ。(わらわ)の邪魔はしないでくれ。お主達とは対立したくはない」

「こちらも、イップ王女には感謝はするし、気持ちは解るわ。だけど、壊させない! あれは私が止める。イップ王女と言え、邪魔はさせない!」

 リオとイップ王女は、互いに口を閉じて睨みあっていたが、イップ王女は深い溜め息を吐いて、寂しそうにキョウを見た。

 キョウは何かを考えているのか、目を閉じている。

「キョウ、リオを止めよ。お主の守るべき者を戻れない状況にするな!」

 イップ王女の叱咤(しった)に、キョウはゆっくり目を開いた。

「俺はセリオンの記憶が有る。――――イップ姫、その台詞をセリオンに対して言えるのか?」

 キョウの瞳はどこか、(あわ)れみにも見えた。

 セリオンはずっとイップ王女を見ていた。彼の心境(しんきょう)は今さっきまでのキョウと同じだろう。せめての救いは、イップ王女と共にユキナの世界に行けることだけで、その事に安堵(あんど)していることだろう。

 ここまで黙り込み、ただ話を聞いていたマグナはやっと口を開いた。

「構いませんイップ王女、邪魔立てするなら対峙するだけの事。小僧、次は躊躇(ちゅうちょ)せん、放つぞ!」

 マグナのその台詞にキョウは口元を(ゆる)めた。

 魔法の凄さは、記憶の中のマグナや、リオのを見て解っている。しかし、今のキョウには何故か、暗殺者や魔法、霧に対しても恐怖を感じない。

 リオとイップ王女、二人の覚悟に比べると、そんな恐怖は取るに()りない。

「その前に切り捨てる。距離は十分取っていろ」

 マグナとキョウは、お互いに目線を交わす。そこでイップ王女は勢い良く立ち上がった。

「マグナ構わぬ放っておけ! ………リオ、重ね重ね言っておく、お主の記憶は植え付けだ、お主が手出しする必要はない!」

 イップ王女はそれだけ言い捨てると扉に歩いていき、一度だけ振り返って、キョウに対して何かを言いたそうに口を開いたが、結局(けっきょく)は口を閉じてマグナと共に出ていった。

 キョウはその姿を寂しそうに見送った。

 リオは最後まで、イップ王女に本当の閉め方を教えなかった。それをすると、本気でイップ王女と対立することになるからだ。

 自分が開けた訳ではないと、解っていても、彼女はあんな過去を経験したのだ。それが正しいく、助かるためだとしても、二度と開ける事はしないし、開けると解れば抵抗してくるだろう。

 あの惨劇(さんげき)は、そんな簡単な言葉では(くつがえ)らない。

 リオには後ろを振り向き、そんな寂しそうなキョウの顔を見て、()ねたように唇を(とが)らせる。

 自分を信じてくれる事は嬉しいが、よくよく考えれば、キョウにはセリオンの記憶があり、イップ王女と言えば一番守りたい人物ではなかろうか。

「………キョウ、解ってる? キョウは私の、リオの騎士だからね」

 そんなことを念押(ねんお)しされ、キョウは戸惑(とまど)ったように何度も頷いた。

 リオが()ねた理由が解らない。

「解っている。それより良いのか? こんな事になったが、マグナは凄い魔法使いだぞ。邪魔されれば不味いし、今からでもイップ姫に話して、閉めるのを助けてもらった方が良くないか?」

 リオの判断を解っていても、ついつい口にしてしまう。そんなキョウの台詞に、リオは今度は(ほほ)(ふく)らませむくれた。

「ほら、それよそれ! キョウは私の騎士とは言いながら、イップ王女と一緒に行きたかったんだ! そうなんだ!」

 リオはプィッと顔を背けると、ユキナの席に戻り、不機嫌なまま食事をとりだした。

 なぜリオが(ふく)れているのかキョウには解らず、それでも、とりあえず弁論(べんろん)する。

「ちっ、違うだろ。別にイップ姫と共に行きたいとは言ってない。邪魔されるぐらいなら、共に行動した方が()にかなっていると言いたいだけで、それに………」

 (あせ)り、変な汗をかきながら言う台詞は、正しいことを言っているはずだが、自分でも解るほど、何だか言い訳じみていた。

 ユキナは苦笑いのまま、二人を見ている。

 二人とも若いな。

「リオ、やきもちは置いといてだ」

「やきもちじゃない!」

 リオはユキナの台詞に直ぐに噛みつく。

 ユキナは溜め息混じりに解ったと頷いた。

「それより、これからどうする? 向こうも止める気なら鉢合(はちあ)わせする。邪魔されては困るぞ」

 ユキナの台詞にキョウは頷いた。

「それだが、俺はアイストラ王国でセリオンらしき人物と会っている。もしイップ王女が()ストラでセリオンを待っているなら、そろそろセリオンと合流して、王国ファスマに向かうと思うぞ」

 一週間かかる道のりを、キョウ達は五日で着いたのだ。それから二日経っている。

 たしかに、あれがセリオンと言う保証はないし、セリオンで有っても、向こうは男の一人歩きだ。こちらより格段にスピードは早いはず。本当はもう合流していてもおかしくない。

 リオはキョウの言いたいことが解ったのか、ご飯を食べながら行儀悪く話し出した。

「そうね、ご飯を食べたら直ぐに出発した方が良さそうね。キョウも急いで注文して」

 キョウは頷くと、離れた場所にある厨房(ちゅうぼう)の中の食堂のおじさんに大声で注文する。

「おじさん、何でも良いから直ぐに出来るやつ、一人前お願いだ!」

 席に戻ると、リオはキョウに対して真っ直ぐに見つめていた。

 言いたい事は解る。リオもセリオンの強さは解っている。

 キョウは頷き、安心させるために言葉に出した。

「大丈夫だ、もし出合ってもセリオンだろうが、マグナだろうが、暗殺者だろうが俺が何とかする。邪魔する奴は全て俺が斬り倒す。リオとユキナは霧を止める事だけに集中してくれ。心配ない、必ず成功する!」

 リオとユキナは共に頷いた。

「私達の方の準備も整ったわ。食べ終わったら向かうわよ。私達の目的の地、王国ファスマへ」

 キョウはそう言ったが、相手がセリオンなら不安が残る。

 どこまでキョウの剣が通じるか解らない。最悪は、命を掛けて(たて)になり、それにより時間を稼ぐしかやり方が無いかもしれない。

 しかし、今は不安を語りたくは無い。

 キョウはそんな心を隠し、二人に笑って見せた。

 そして、ついに、キョウとリオは王国ファスマに足を入れることとなる。



 その日、王国ファスマに一番近いフォエベ王国の港に、五百名の兵士が降り立った。

 この辺りの霧の数を軽視(けいし)しているのか、全ての兵士は馬に(また)がっている。

 霧の対策として、馬には多くの鳥籠(とりかご)がくくり付けられているが、果たしてその程度(ていど)の数でどこまで持つのかは考えもので、あまりにも無謀(むぼう)すぎる姿だ。

 その為か、兵士たちの士気(しき)は低かった。

 大戦から(なが)らくの時が経っており、その様な光景は最近はまるで見ない。霧の大討伐でなら何度か見てきたが、馬に乗ってなど見たこともないし、考えられない事だ。

 人々は珍しそうに、遠巻きで兵士たちを観ている。

 五百もの大軍は北を目指して、一斉(いっせい)に移動していく。

 北と言えば王国ファスマのある方向だ。

 人々はあまりにも無謀(むぼう)な兵隊達を無言で見送った。

 しかし、フォエベ王国の人々が、本当に驚いたのはもう少し後で、半日後に現れる、法国オスティマ本国の旗を(かか)げた、二百名の兵士が、再び北に向かうのを見たときだった。

 こちらも馬に乗り、鳥籠を幾つも付けていて、先ほどと同じだが、司令官に対して声を上げ、士気(しき)は高い。

 フォエベ王国の人々は、どこかで戦争が始まったのかと、不安な面持(おもも)ちで北の山々を見上げていた。



 ()ストラを離れて、キョウ達は王国ファスマを目指し歩く。

 依然(いぜん)と霧は増えていったが、ユキナの鉄の棒をキョウが使い、霧など相手にならない。それに、ここまで来ると、霧のせいで生物自体が少なくなるのか、逆に霧に乗っ取られた生物とは、ほとんど出会わなくなった。

 ここからはキョウの独壇場(どくだんじょう)だ。無抵抗(むていこう)な霧を()こそぎ切り倒す。

 リオやユキナは、霧を相手せず余裕を持って旅が出来た。

 霧が相手に成らない今、キョウ達の旅のスピードは早い。このままのペースで進めば、()ストラを出たのが早い分、イップ王女達より早くに王国ファスマに着けるだろう。邪魔をされる心配は薄くなる。

 三人並んで歩いていると、不意にリオがキョウの顔を()き込んできた。

「どうした?」

 汗を()きながらの、キョウの問い掛けにリオは首を振った。

「何でもないよ。キョウが何だか楽しそうに見えて」

 リオに言われて初めて気付いたが、キョウの口元は(ゆる)んでいた。

 ここまで命を狙われたり、自分達に他人の記憶を植えられたりと、信じられない事ばかりが起こる、辛い旅だった。それに、セリオンが暗殺者を倒してくれたことを知らないキョウは、今も暗殺者には警戒をしているが、アイストラ王国を出てから、気配が絶たれたので諦めたものかと安易(あんい)に考えていた。

 ただ、王国ファスマが近づくにつれ、それでも楽しい旅だったと感じる。

 記憶の中の思い出の風景。

 キョウの記憶では無かったが、(なつ)かしい場所に帰ってきたと言う気持ちが高ぶり、自然と足が早くなる。リオも同じ気持ちなのだろう。彼女も笑顔だった。

 しかし、それは王国ファスマの領土に着いてからは一変した。

 三人は国境を越え、ついに王国ファスマの領土(りょうど)に足を()み入れる。

 領土に入ったとは言え、しばらくは風景も変わらず、ただの森の中を歩いているだけと同じなので、王国ファスマにやって来たと言う気持ちにはあまり成れない。

 しばらく歩き、領地の最初の町に差し掛かる。

 町は、崩れた家屋が残っているだけで、当たり前だが誰も残っていない。

 この辺りは領地の中でも農業が盛んな所だった。以前は、秋には金色の麦畑が(つら)なっていた場所は、今では草が生えしきり、あの時のような面影(おもかげ)はない。

 イップ王女達の記憶では、霧が発生して一年後の記憶なので、ここまで(ひど)い荒れようではなかった。

 当たり前の話だが、キョウやリオにとっては、王国ファスマの(にぎ)わいを知っているだけに、そんな些細なことが寂しく思った。

 あの(にぎ)わいは、もう戻って来ないのだろう。しかし落胆(らくたん)している暇はないと、足取りを進める。

 以前に来た、イップ王女達の記憶より早かったが、それでも六日かかった。

 その日、山とは言えぬ、高台の坂道の上らからそれは見下ろせた。

 記憶に有るだけで、自分の目で確めるのは初めてだ。

 それを見た瞬間に、リオはキョウの手を強く握ってくる。キョウも強く握り返す。

 お互いに言葉は無かったが、気持ちは同じだった。

 キョウは出発前に、リオの年齢なら失敗する可能性が大きいと言った。確かに楽な旅ではなかった。幾度となく、命の危機を感じた旅だった。しかし、キョウとリオはやっとそれを見た。

 高く、入り口付近は二重構造(にじゅうこうぞう)の、外敵から城を守るための堅陣(けんじん)外壁(がいへき)

 今は霧を出さないための外壁(がいへき)

 王国ファスマ正門。

 ついに、キョウ達は、王国ファスマにたどり着いたのである。



 其処(そこ)は、十八年前、世界で一番大きかった国。

 人々が、誰もが(あこが)れた国。

 技術が一番進んでいた国。

 事の発端(ほったん)の国。

 十八年前に滅んだ国、王国ファスマ。

 二人の旅の目的地。

 キョウとリオ、二人の物語の最終章。



 懐かしい王国ファスマの外壁が姿を現せた。

 領土を歩いていても、王国ファスマにやって来たと、あまり実感が持てなかったが、この風景を見ると、(あらた)めて心から思う。

 見覚えのある風景。

 幾度(いくど)となく(くぐ)ってきた門。

 誰かが、もしくはイップ王女が開けたので有ろうか、正門は人が一人通れるほどの隙間(すきま)だけ開いていた。

 十八年前、この門を閉めたのは、いまだに頭の中に残る。

「ユキナもここから出てきたの?」

 リオが楽しげで、少しだけ自慢したように、ユキナに話し掛けている。

「いや、城の西側の方だ。あの辺りの城壁は一部(くず)れていた。そこから出てきたが、あれは遠回りだった」

「城壁、(くず)れてるんだ」

 確かに十八年前、手付かずな土地だ。いくら堅陣(けんじん)な城壁であろうと、(もろ)い場所は有るだろう。それに門が閉まったあと、誰かが中から出るために壊したかも知れない。魔法を使えば可能だろう。

 キョウ達は、正門を(くぐ)り中に入る。

 記憶にある、目も閉じたくなる惨事(さんじ)

 霧に乗っ取られていない者も、まだ中に居るにも関わらず、(みな)で閉じた王国ファスマ側の正門。そこも開いていた。

 人々の叫ぶ声が今も耳に残るが、その現場である今の城壁内は、あれが嘘のように静かで穏やかで、霧の姿もない。

 二重構造の城壁のなかは、広く取られており壁は高い。

 城壁の壁の中には、敵を弓で狙うための穴や、通路が設けられており、そこまで登るのは、梯子(はしご)に成っている。休憩するなら、もってこいの場所だ。

 霧は梯子(はしご)を登っているところは見たことは無いので、登れないとは思うが、人が登ったあとに梯子(はしご)を取れば、霧はさらに城壁の上にはやってこられないだろう。

 ただ、十八年間放置された、竹製の梯子(はしご)を登る勇気があればの話ではあるが。

 それに、ここは霧の発生する以前は、流通の管理をしていたので、色々な物や道具がおかれている。

 しかし、武器やくわなどの鉄製品はサビついており、雨風のあたる木製の扉や、外に出したままの木製の箱などは()()てている。それは、十八年と言う時間が、けして短く無いことを意味していた。

 夕暮れまでには城に着きたいので、ここでは休憩を取らず、そのまま後にする。キョウ達は、悲劇の歴史が出来てしまった、王国ファスマ側の門から、外に抜けだした。

 ここからは城までは後一時間。

 後一時間で、辛い歴史に幕を下ろす。

 ここからも、キョウが思っていたほど、霧の数は多くない。外とよく似た程度だ。それを考えると、リオやレナ姫に教わった通り、壁では霧の隔離(かくり)は出来なかったのだと解る。

 それでも、他の国から考えれば格段に多い。

 霧の多い場所では、それが自然の霧か、次元の違う霧が多く集まり濃くなっているのか区別できないほどだ。

 それに、そこまで集まられると、現在はユキナに借りている、キョウの持っている、霧を切り裂く鉄の棒一本では対処(たいしょ)がやりにくい。

 真っ直ぐに歩けば、そのまま城に一直線で行けるのだが、そのように霧が固まっている場所は()けて歩いていくと、どんどんと東に追いやられる。

 それはどこに通じる道か解っていたので、キョウとリオは、本道の方にあえて道を修正せず、そのまま進んでいった。

 リオは、今から向かう場所が嬉しいのか、キョウの顔を覗くと、楽しそうに話し掛けてきた。

「キョウ、あそこに着いたら、ちょっとだけで良いから休憩しようよ」

 現在は霧の発生源の中心地の、危険な王国ファスマに居るにも関わらず、場違いな提案をしてくる。

 興奮しているのだろうか、少しだけ(ほほ)を赤らめた顔だった。

「霧が集まっていなかったら少しだけな」

 こんな時に不謹慎(ふきんしん)だが、キョウもリオに負けず(おと)らず、行ってみたい願望(がんぼう)は大きくある。

「しかし、不安だな」

「そうね………」

 二人して不安を口にして、黙り込む。

 ユキナは二人の会話から、霧が多くて不安をもたらしていると考えていた。

 ここまで来る最中に、さらに詳しく二人の過去も聞いた。

 ユキナもリオの考えと同じく、前世など信じていなかったが、やはりその通りで、二人にはイップ王女とセリオンの記憶を、植え付けられた事が最近解った。

 ユキナの世界にも、その技術に近いものがあるが、まだ他人の記憶を植え付けられるまで行っていない。しかし、魔法を使えば、技術を(おぎな)い、さらに進化することもリオにより理解できた。

 全く、リオの凄さには目を見張るものがある。この世界の住人は気付いていないが、その凄さは空間輸送システムを止めるだけに留まらない。もっと凄い技術に通じている。

 リオの考えた世界が来れば、それは本領を発揮するだろう。

 少しだけ帰りたくない。それをこの目で見てみたい。

 ユキナは学者だ。だから、この世界にきて初めて、自分の身の安全よりも、好奇心の方が(まさ)った。しかし、リオに言われた通り、ユキナも帰ってすることがある。

 全ては、リオの考えた未来のためだ。

 ユキナは二人を見る。

 不安の影を(のぞ)かせながらも、楽しそうに力強く前に進む。

 本来なら、二人は脇役で、イップ王女の予備として終わるはずだった。空間輸送システムを閉めるにしても、ユキナやイップ王女が主役だったはずだ。

 それなのに、今、前を向いて歩いていりのはリオだ。

 リオの案無くして、空間輸送システムは止まることが無かっただろう。そして、止まらないならそれ以上の未来も無かった。

 彼女により、時代は(かせ)が外れ、大きく動けるようになる。それなら、ユキナは脇役で十分かまわない、この物語の主役はリオしかいない。

 嬉しそうに前を歩くこの二人には、解っているのであろうか、その凄い事を()りに行くと。

 多分、解っていない。

 二人は言葉より、ただある未来をなぞるように作って行くだけだから。

 数回の霧と対峙して、キョウ達は目的地に近付いた。

 胸が高鳴る。

 これを見れる喜びも大きいが、不安も大きい。

 霧を止めるために、こんな場所までやって来て、他の者が考えれば小さすぎる不安。未来を目指して歩いてきた二人が、一つだけ過去にこだわったもの。

 長い坂道が平坦になり、林から抜け、森が終わるところ。

 そこからはか木々が生えておらず、また少しだけ登り坂になっている。

 キョウとリオ、二人してその坂道を掛け登った。

 早く見たい。不安はあるが、それでも自分の目で確かめてみたい。

 林の間から飛び出すと、一気に空気が変わる。

 草と土の(にお)い。雨降り前の(にお)いにも似ている。

 二人がそこを登りきったとき、一気に風が二人の間を()け抜けていった。

 そして、その風により、二人の前を小さな花びらが舞う。

 その花びらの色はラズベリーブルー。

「うわぁー」

 キョウの隣でリオが歓喜(かんき)をこぼしていた。

 二人の不安はよそに、ラズベリーブルーの丘は、イップ王女とセリオンの記憶のままに、リオとキョウを出迎(でむか)えてくれていた。

 王国ファスマの、東の木々の生えていない高台にある、ラズベリーブルーの草原。

 (くず)れた家屋(かおく)や、()()てた土地、風化(ふうか)のした道具とは違い、ラズベリーブルーの草原は今もなお、その青色は健在(けんざい)で、王国ファスマを(ささ)えているような気がした。

 ユキナは呆れた様に二人を見ていた。

 これから歴史に残るような、大きな仕事をすると言うのに、まだまだ子供のような事にこだわる。

 たしかに、他人には些細(ささい)な事かも知れないが、キョウとリオには十分に意味が有ったし、もう存在しないかと不安にもなった。

 二人の記憶にしかない風景が、今も目の前にある。

 二人はどちらともなく、自然と再び手を繋いだ。

 眼の下には、滅んだ王国が有る。

 城下町はここからも解る位に無残につぶれ、城だけが孤独(こどく)(たたず)んでいた。

「ついにたどり着いたな、王国ファスマに!」

「うん!」

「もうすぐ空間輸送システムが閉じるんだな!」

「うん!」

「霧のない時代が来るんだな!」

「うん!」

「リオ、頑張ったな」

「うん、………キョウ、」

「なんだ?」

「ありがとう」

 そう言えば、今まで旅をしていて、一度しか見たことがなかった。

 人々との別れ。

 暗殺者に狙われた事。

 自分や他人の、幾つもの過酷な過去。

 何度辛い目にあっても、ただ前を向いて、弱音は出なかった。

 リオは歯を食い(しば)りながら、静かに涙を流していた。

 キョウは誘われた涙を、グッと(こら)える。

 今の言葉はリオ・ステンバーグ姫の台詞ではない。リオ本人の気持ちだ。だから純粋に嬉しいが、まだ終わりではない。

「リオ、礼を言うのはまだ先だ」

 リオは目元の涙を、両手で(ぬぐ)い去った。

「そうね、ここからが本番よね」

 リオは振り向いて、キョウとユキナを真っ直ぐに見つめる。

 二人は笑顔だった。

「ユキナ、私のサポートをお願い!」

「任せろ!」

「キョウ、私を守り、助けなさい!」

「解った!」

 三人して頷く。

 リオはこの旅の最終目的地の名を静かに語った。

「少し休憩したら、王国ファスマ城に向かいます」

すいません。前回、妙な所で切ってしまい、なんだか盛り上がりも今一な、変な章になってしまいました。

少しだけ無理矢理詰めたところもあり、最終回前で、何とかしたく思いましたが、なかなか筆も進まず、時間が掛かりすぎました。

次回、最終回なので見捨てないで下さいね。

さて、いよいよ次回はラストですが、二人の旅の結末を見てください。

後一話、頑張って書き終わりますので、皆様も、もう少しだけ、キョウとリオにお付き合い頂いたら光栄です。

では、次はラストの後書きで。

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