6 霧の騎士VSリオの騎士
六 霧の騎士VSリオの騎士
城から抜け出し、東の丘の草原で、イップ姫は本を読んでいた。
ラズベリーブルーの草原に、城から持ち出したシーツを広げ、お気に入りのタマゴサンドを傍らに置き、座ったまま物語に没頭する。
辺りは春先で、花や土の匂いが香り、日差しは陽気に見舞われ、風の音や小鳥の囀りも聞こえる。
最近は業務に追われ、好きなことが全く出来ない。今日はここで本を読みふけると決めたのだ。一日や二日で何かが変わるとは思わない。だから、勝手に今日は休日とする。
「イップ姫――――!」
遠くからセリオンの声が聞こえ、息を切らしながら、ラズベリーブルーの丘を駆け上がってきた。
「姫っ! やっぱりここでしたか。探しましたぞ。朝から急に居なく成って、護衛の騎士達が大慌てしております」
セリオンの慌てる声に、イップ姫は身動き一つ立てない。イップ姫は本に目をやりながら冷静に答えた。
「勝手に慌ててるだけだよ。私が居なくても業務に差し遣いはないわ」
イップ姫はそこで要約セリオンに目を向ける。革の胴衣を着て、大剣を持ったまま走ったので、額からも大粒の汗をかいている。
「それにしてもセリオン、汗だくだよ」
「誰のせいだと思っているのです」
セリオンは仏頂面のまま答える。
「良いですか、休みたい時はちゃんと伝えて下さい。急に居なくなられては心配します。私もイップ姫の業務は少し厳しすぎると感じております。私からも皆様にちゃんと伝えますから」
セリオンが説教しているにも係わらず、イップ姫は再び本に目を向けると読みふける。
その顔は真剣で、とても休んでいる様には見えない。
「姫っ!」
「良いの、たまにはゆっくりさせてもらうの。………あっ、そうだ、セリオンも今日は休みにしよう。二人して、一緒にゆっくりするぞ!」
全く悪びれなくイップ姫は笑う。その笑顔は年相応で、いつもの彼女からは想像もつかない。セリオンはその笑顔にいつも騙されるが、悪い気はしなかった。
彼にしか見せない笑顔だ。
「ほら、早く。そんな鎧外して、寝っ転がって」
イップ姫は本を閉じて、セリオンの革の胴衣を引っ張る。
「あっ、危ないですよ! 私の腰にぶら下がっている剣は、鞘が無いですから」
「それなら、私が怪我したらセリオンのせいね」
良く解らないイップ姫の理屈に、セリオンは溜め息を吐き、腰の大きなバスターソードを外して、野原の上の無造作に置いた。
「鎧は良いから、セリオンも座る」
イップ姫は座る位置をずらし、シーツにセリオンの場所を空けた。
「良いですか、少しだけですよ。傭兵の私がこんな所見られては、首が飛びます」
「ほら、堅苦しいのは抜きよ。生憎と今日は業務を出来ない程のよいお天気よ。こんな日は何もする気が起きないわよ」
確かに春先の暖かさで気持ちが良い。イップ姫でなくとも誰もがボーッとしたくなる。
セリオンは諦めイップ姫の隣に腰を下ろした。走って火照った身体に風が気持ちいい。
セリオンはイップ姫の読んでいた本に瞳を落とす。
「またですか、好きですね」
イップ姫が読んでいたのは、ニデロムの塔と言うタイトルの本だ。
彼女は伝承や伝説の類いの本が大好きで、中でも天空城や、滅びた海に浮かぶ大国の話など、現実には有り得ない物語が好きである。
「良いじゃない。………それとセリオン、堅苦しい」
座ったまま横目に睨んでくるイップ姫に対し、セリオンは呆れたように肩をすくめた。
「イップ姫も、もうすぐ王です。私にそんな口調使わせては、周りの者に示しが付かないです」
「二人の時は良いの、いつもの様にしていてほしい。それに、王に成ったら私が何を言おうが、セリオンは堅苦しい言葉を使うでしょ」
確かにそうなれば、セリオンにとってイップ姫は雲の上の存在に成るだろう。口調どころか話し掛けることも出来ない。
「だから、今だけはそうしてて欲しいの」
イップ姫の真剣な顔に、セリオンは仕方ないと浅く息を吐いた。
「解ったよ。ただし、二人の時だけな」
「うん。それで良い」
イップ姫は満足と言った様に笑顔に戻り、セリオンと並んで座った。ラズベリーブルーの丘からは、城や城下町が見える。
二人してそれを眺めた。
城下町では人が忙しなく働き、馬車が行き来をしている。少し離れた畑では、人々は牛を使い畑を耕かせている。大戦が終わり、人々の顔は安堵に包まれていた。
だからこそ次だとイップ姫は思う。
「セリオン、この国をどう思う?」
「この国? あぁ、良い国だと思う。俺は好きだ」
自分の国を褒められてうれしく思い、イップ姫は城下町を見下ろしながら微笑んだ。
「でもねセリオン、私はこの国には、もっと技術が要ると思うの」
セリオンはイップ姫を見つめながら答えた。
「技術?」
「そう、技術よ。確かにこの国は、今では世界に誇れる技術が有るわ。だけど技術は奪い、奪われるもの、いずれはこの国以上の凄い国も出てくるでしょうね」
休むと言いつつも、また国の事を考えている。
王国ファスマは、大戦では攻め込みにくい山際に在り、被害は少なかったが、大勝利を納めた訳でない。逆に攻め込みにくい代わりに、貿易の勝手が悪い。最大の難点は、貿易の流通によく使われる、海辺に面していないことだ。
この国の収入源は、産業、技術、そして山辺の農業がすべてになる。その中で技術、産業が同じ位のレベルなら、流通の勝手が良い、海辺の国に負けるだろう。
「今の大臣もお祖父ちゃんも、凄いと思うけど、このままでは駄目よ」
イップ姫の言葉にセリオンは目を見開け驚く。
世界の全ての人の話を聞いたわけではないが、王国ファスマに来た、外からの者の話を聞く限りでは、皆がこの国を憧れているし、誰もがうやまう。そう考えると、このままでも十分だと思うのだか違うらしい。
イップ姫が何処まで先を見ているか、セリオンには解ら無かった。
「じゃ、イップ姫はどんな事をしたいんだ?」
「私はねセリオン、十年後でも、何処よりも豊かな国を国民に約束したい。………それが王に成ってから私のしたい事なの」
このお方は、何処までも真っ直ぐに、未来を見ている人だ。
セリオンは笑った。
「騎士として国に仕えて居ない、傭兵の俺が言うのもおかしいが、俺がイップ姫を守るよ。イップ姫の身の安全も、遣りたいことを止めようとする奴等からも」
セリオンの言葉には何の根拠もない。彼にすれば励ましの言葉だったのだろう。しかし、イップ姫は嬉しかった。
イップ姫は父親と共に殺されるはずだった。そこに現れ悠然と自分を救い出した他国の傭兵。
護衛の騎士より自分を救った者の台詞だ、何より重みはある。しかし、恥ずかしいのでお礼の言葉が出てこない。セリオンと居るといつもそうだ。
決められた儀式の言葉なら、恥ずかしい台詞もスラスラ出てくるのに。そして、それはセリオンも同じ思いなのか、照れ隠しのようにその場に寝転ぶ。
だから、セリオンだけには秘密を明かせた。
「ねぇ、セリオン。私は王になった暁には、あれを開けようと思う」
セリオンはイップ姫の台詞に頭を傾げた。
「あれって?」
考えてみれば、王族の秘密だし、知らない大臣も居る中、たかが傭兵のセリオンが知らないのも無理はない。
「そう、あれ。装置の名前は知らないし、どう言う技術を使ってお祖父ちゃんが建てたのか解らないけど、それを開けるわ」
セリオンはこの時、開けるという言葉から、箱か扉を想像していた。しばらくしてイップ姫の騎士となり、その正体を見るまでは、一切想像は出来なかった。
「それを開ければどうなる?」
セリオンの問いに対して、イップ姫は夢見る乙女のように、目を細め語る。
「この世界より、技術の優れた世界と繋がるわ。その世界には、高速で走る乗り物や、手紙以外の方法で、世界中の人々と会話できるシステムや、空高く鉄を飛ばし、他の星にまで行く技術が有ると聞くわ」
イップ姫の語る言葉は、夢のような世界で、安易に想像すら出来ない。しかし、彼女は幸せそうだった。
イップ姫はさらに続ける。
「たしかに、向こうも人間だから、開けたところで交友的とは限らない。きっと、争いは起こるべき問題だと思う。ひょっとして凄い技術力で、この国を、いえ、この世界をも従わせようとするかも知れない。だけど、私は、そんな世界でも、未来に希望をもたらす王で在りたいと思う。………私は間違っているのかな?」
隣を見ると、春の陽気のせいか、セリオンは寝息を立てていた。
全く、これから自分が従うべき者を前にして、いい気なものだ。歳上の癖に、しっかりして要るのか、抜けているのか解らない。
「全く、お主は」
ついついセリオンを責める時は、王族の言葉が口に出る。しかしイップ姫には解っていた。
いつも遅くまで自分を見守っていてくれているから。
イップ姫は誰も居ないのを知りながら、辺りを見渡した。
ラズベリーブルーの草原には、優しい風が舞っているだけだった。
イップ姫は静かに顔を近づけ、セリオンの口元に自分の唇を合わせた。
大人からすれば、十八歳と言えば未々子供だが、十四歳のイップ姫からすれば、セリオンはもう大人で、自分の様な小娘を相手してくれるとは思わない。
だから、これは秘密だ。
誰にも言わない、自分だけの秘密。
イップ姫が強くそう思ったからだろうか。
この時の記憶は、リオには無かった。
デルマンはブツブツと独り言を言いながら、城の広い廊下を歩いていた。
あの二人が来ていらい、何かが変わってしまった。
レナ姫の様子を探るために付けていた護衛兵は突然解雇され、新しく着けようとしたが却下される。他の皇太子にも聞いたが、同じ内容だった。全ては、新しくレナ姫の護衛兵隊長に任命された、カインの意向らしい。
基本的には、隊長にそんな権限はない。他の皇太子や大臣が横から口出しは出来る筈だが、カイン意向が罷り通っている。レナ姫に対しても、今は何をしているのかは詳しくは知らないが、話を聞く限り、カインと共に幾らかの権限と制限を与えられたらしい。
一つは黙秘権。
法王以外の者からの質問に、答えを拒否出来る権限だ。
もう一つは逆の権限で、法国聴者限定権限の解除。
これはレナ姫だけだが、優しく言えば、どんな密会で有ろうと、制限が掛かっていない内容は知る事の出来る、法王に近い権限だ。しかも、人によって違うが、付属の権限により兵をある程度動かせる。現在はローランド皇太子と、バーカードのみが持っている。
そして最後は制限だ。
特別機密に関する制限。
これは先程の、法国聴者限定権限の解除を持っても、言うことを禁ずる制限で、口を割れば重い懲罰が課せられる。
皇太子番号に代わりは無いものの、事実上は自分より重要ポストに置かれたらしい。
全く持って面白くない。
エドワードもあれ以来、常にバーカードと共にいるし、小言ばかりは言われているわりには、目を輝かせながら頻りにメモを取り、業務をこなしている。あれほど良くしてやったデルマンには、全く声を掛けてこない。
そして当のデルマンはと言うと、セントエレフェスに行ったきり、業務が入って来ないので暇を持て余していた。
これが面白い訳がない。
デルマンにとっては、ローランドの次こそ、自分が法王になる予定である。自分の国を好き勝手に、いじられる気持ちになるのは仕方がない。
全てあの二人が来たせいだ。法国の皇太子に背いた罪は重いことを知ればよい。
デルマンは一人「あいつらはもう任務をこなしたか」などブツブツ言いながら、廊下を徘徊する以外にすることが無かった。
デルマンはよく目立つように、法王の部屋の近くの、来賓客が座るソファーに腰かけて、紅茶を飲んでいた。誰かが声を掛けて来るのを待っているのである。
しかし、本日はレナ姫の護衛兵の昇級式で、暇な大臣や、他の皇太子達はそちらに顔を出すよう命じられていて、前の廊下を通る人もまばらだ。もちろん、あんな事のあった後だ。デルマンは行く気がしない。
大体、たかが隊長の昇級式に、皇太子が行くなどありえない。
デルマンは、誰も話しかけて来ないので、痺れを切らせて立ち上がると、部屋に戻ろうと廊下に出た。
「これは、デルマン第三皇太子様では在りませんか」
やっと掛かった声に、デルマンはその人物を見る。
声を掛けてきたのは二人組で、他国の騎士とその隣に一人の男が立っている。騎士は外交で何度か見かけた事が、もう一人の男は見覚えがない。
わざわざ俺が相手にするような人物ではない。
そう思い、デルマンは無視を決め込み背を向けるが、そこで何かを思い立ったのか急に振り向き、ぶっきらぼうな言葉を掛けた。
「どうかしたのか?」
他国の騎士はデルマンに、騎士の敬礼をしてから話し出す。
「実は、法王様か、バーカード殿に会いたくて参りましたが、いずれの二方は忙しくて手が放せないとの事。出来ればご相談出来る機会を作って頂きたく思い、声を掛けた次第であります」
デルマンは面白く無さそうに話を聞いていたが、顎でしゃくる様に先を急がせた。
「どういう内容か申してみよ」
「はっ、しかし………」
他国の騎士は、見覚えはない男と目線で相談する。
「何だ、俺だと言えない話か? ならば取り次ぎなど出来ない相談だ」
デルマンは直ぐ様翻し、他国の騎士を後にする。
騎士は慌てた。
せっかくの法国に会える機会を失う訳には行かない。
「お待ちください! 我々もここには断腸の想いで参りました」
「ならば申してみよ」
デルマンの問いかけに、しばらく騎士は下唇を噛みしめ考えていたが、再び去ろうとするデルマンの姿を見て、慌てて口を開いた。
「どうか、この話はご内密に………」
「あぁ、解ったから早く申せ、俺も暇ではない」
デルマンは、態とふてぶてしい態度を取った。騎士は諦めたのか、もう一人の男に頷くと話を進めた。
「この度、我が王国は、王に変わり新しい体制を整えようとした次第でございます。それに当たって、法国オスティマ本国のお力添えをしていただきたく思い、参った次第です」
これはと、デルマンは思い悩む顔をする。
騎士は、自国の内紛の後ろ盾をしてほしいと言っているらしいが、そんな事はどうでも良い。
こいつは使える。
デルマンは心の中で笑った。
「そうか、それは大変だな。是非とも俺から法王に接見を申し立てしてみよう」
「本当ですか! 有り難き幸せ!」
騎士は目を見開き、デルマンに頭を下げるが、デルマンは態とらしく困った顔をする。
「しかしだ、こちらも少し困った事に成っておってな………」
「どうかなさいましたか?」
やっとの思いで手に入りそうな、法王との接見を目の前にして、騎士は真剣に耳を傾ける。
「困った輩が、霧を止めるなどの戯言を言いふらし、善良な国民をたぶらかせていてな、法国はその為に今忙しく、俺はその対応に追われておる。どうだろ、俺の代わりにその者を処理してくれれば、法王との接見も早く現実の物となるが」
「………処理ですか?」
デルマンのその案に、流石の騎士も渋る顔を覗かせる。
処理とは則ち、殺害。
いくら自国の為でも、他国の暗殺には手は出せない。しかし、騎士が後には退けないのも確かに有る。
あと一歩かとデルマンは笑った。
「お主の噂は聞いておる。お主になら何故か解るだろう、霧により我が法国は栄えた。それは、お主も同じはずだな。………もし、お主が俺の肩代わりしてくれるなら、お主の言う後ろ楯の案に、俺も一筆添えよう」
騎士は唇を噛みしめたまま、言葉を止めた。
隣の男は騎士の耳元で、止めるよう説得しているようだが、騎士は首を振りデルマンを見据えた。
「………解りました。その条件を呑みましょう。しかし、私どもにも失敗する恐れがあります。その時はどうか………」
「解っておる、内密にするのであろう。では、詳しい者を案内させるから、少しここで待て」
それだけを述べると、デルマンは翻し今度こそその場を後にした。
「おい! 本当に良いのか?」
騎士と共に居た男は、デルマンが去っていった後、直ぐに騎士に問いただした。
「あぁ、いまは何を置いても国民を守る。イフレイン、とにかくお前は一度戻れ、手を汚すのは俺一人で十分だ」
騎士は、このイフレインと組むと決めた時、汚れ役を全て引き受け、イフレインは綺麗なまま王道を歩かせると考えた。そうしないと国民の支持は得られないだろう。
イフレインは心配そうに見ていたが、頷くとこの場を離れる。イフレインにも解っていた。今から二人が始めることは、綺麗事だけでは進めない。だから、今は騎士に任せ、後々の汚れ役は自分となる。
お互いの覚悟は誰にも負けない。これから国を支え、牛耳って行くには並大抵の覚悟では務まらない。
全ては国民のため。
今は何を置いても国民を守りたい。それが意志であり 義務だと思う。
本来なら昇級式は、その所属の隊長が行う。隊長クラスなら兵隊を仕切る、総司令が行う。そして、総司令は法王や皇太子が行う。
だから、これは例外中の例外だ。
カインは久し振りにドレスに着飾り、緊張しているレナ姫の前で膝まついている。緊張しているのはカインも一緒だ。
この場には法王は居ないし、ローランド皇太子もバーカードも居ない。しかし、他の皇太子や大臣が多くいる。それに総司令もいるが、昇級式を仕切っているのは総司令ではない。
レナ・オティアニア第七姫が行っていた。
レナ姫はこんなに大きな式典を仕切るのは、もちろん初めてだろう。何度も練習したのだが、地に足が付いていない様だ。
「で、では、カイン・スティーティスは…を、我が隊長、ごほん、護衛兵の隊長に任命ずる」
レナ姫は賞状を読みながらなのに、何度も噛み、しかも言い間違いをしながらその場を締めた。
カインは焦りながら立ち上がりレナ姫に近付く。レナ姫はカチコチに成りながら、カインに賞状を手渡した。
両方とも、皇太子や大臣の集まる所に馴れていないので当たり前だ。
周りからはまばらな拍手が起こる。
元々デルマンと同じ考えが多い者達が集まっている。本当は歓迎されていないのは重々承知だ。
レナ姫が最後に礼を述べて、式典は終わる。
早々と人々が帰って行き、部屋にはレナ姫とカインと、レナ姫の守役の女性の三人となり、いきなり寂しくなった。しかし、皆して安堵の溜め息を吐く。
「やっと終わったか」
レナ姫は式典用の部屋の、少し高い段にある、豪華な椅子に腰を下ろした。
「全く、レナ姫様はよく噛まれますし、読み間違えもします。見ているこっちがヒヤヒヤしましたよ。これからは言葉使いも、もっと厳しく行きます!」
二十代の守役の女性はそう呟く。
守役の女性エルザは、レナ姫の教育や世話をする付き人だ。レナ姫が外をうろついている時は、部屋の掃除などこなしている。
エルザはカインよりレナ姫とは長く、レナ姫を通じてカインと知り合った、現在はカインの妻だ。
因みに、今まで育ててきたという思いがあるのだろう。レナ姫には容赦ないし、レナ姫もエルザに対して少し怯えている。
「しっ、仕方がないのじゃ。私も祭典は初めてだし、それに、皇太子達が一杯おったのじゃぞ!」
言い訳するレナ姫に、エルザは静かに返した。
「レナ姫様も皇太子です!」
「うっ、」
レナ姫は冷や汗を流しながら言葉に詰まった。
「しかし、レナ姫様の功績は素晴らしく思います。頑張りましたねレナ姫様」
エルザは優しくレナ姫に笑いかける。いつもは小言ばかりの、エルザが誉めてくれるのは珍しい。レナ姫は嬉しそうに目を細めた。
「しかし、何と言いますか、リオ姫様達が来てから、我々も随分変わりましたな」
カインは純粋な感想を述べた。
あの二人のお陰でこう成ったとは思わない。
レナ姫は元々頑張っていたし、カインにしても、そこまでの護衛をこなしていたはずだ。たしかに切っ掛けは有ると思うが。
「そうじゃな。もう、あれから二日か。リオ姫は順調かの」
レナ姫は独り言のように呟き、カインを眺める。
皇太子や大臣が帰っても寂しくはないが、リオ達が居なくて寂しく思う。わずか一日しか居なかったのに。
そこでレナ姫は何かを思いついたのか、カインに尋ねた。
「カイン、私の護衛兵はどれくらいになる?」
「はっ、特別な任務に成りますので、十五人から十八人は可能で有ると聞いております」
レナ姫は椅子の肘掛けに肘をついたまま、あごの下に手を当て「うーん」と悩み、カインに話してみた。却下されるのは解っていたが、どうしても言っておきたい。
「私の護衛は三人で回らんか?」
直ぐにカインにはレナ姫の言いたい事が解った。自分の事より初めての友達を大切したいのだろう。
しかし、解りながらも意地悪くカインは聞いた。
「それは、どう言う事で有りましょうか?」
「リオ姫が何処で何を仕手いるか、情報が欲しい。十八人の内十五人を、その情報集めに利用できるか知りたくてな」
やはりかとカインは笑う。いかにもレナ姫の考えそうな事だ。
エルザもカインに詳細は聞いているのだろう。口を挟まなかった。
「残念ながら。私たち護衛兵は、レナ姫の兵隊ではございません。あくまで法王所属の兵隊と成ります。よって、レナ姫の意見を守れない時があります」
例えば、レナ姫と別の者の二人が危ない時、レナ姫が別の者を守れと言おうが、カインは聞く必要なくレナ姫だけを守れる。
完全にレナ姫を守るだけの部隊だ。
「………そうか」
レナ姫も解りながら聞いた事だ。しかし、残念そうに下を向いた。
カインは苦笑いする。頭が良いのだ、もっと悪知恵を思い付いても良いだろうに。
「しかし、法国聴者限定権限の解除の権限を使えば、レナ姫の知りたい内容として、我々は動かなくては成りませんが」
カインの言葉にレナ姫はまんべんな笑顔を見せる。
「本当か!」
「レナ姫様、そこは『誠か』でございます」
エルザは的確に訂正させる。
「………誠か」
レナ姫は渋々従った。
「はい。しかし、他国となるとそれを見越した、人選や計画を変えなくては成りません。明日、私が任命する護衛兵も、大規模な変更が必要で、中には折角の昇級を不意にする者も出てきます。どうなさいますか?」
カインは意地悪く伝えた。
明日は、カインが想定する、レナ姫の護衛兵達の任命式である。もちろんカインが信頼する者ばかりで、本人達には前以て報せておいてあるし、変えるつもりも無い。しかし、レナ姫には知って欲しかった。
上の者の我が儘で、泣く者が居ることを。
彼女はいずれ、きっと良い指導者に成る、だからこそだ。
「そっ、そうか。そうじゃな、それはすまぬな」
「違います、レナ姫様」
再びエルザの訂正が飛ぶ。
レナ姫は肩を小さくしてエルザをみる。どこが間違えていた台詞か解らない。
エルザはレナ姫に成ったつもりなのか、「こうするのです!」と胸を張り、冷たい目でカインを見つめ、人差し指をビシッとカインに突き刺して言った。
胸を張る事により、見事な胸が揺れる。
「構わぬ! レナ・オティアニア第七姫の命令じゃ、直ちに人選をやり直せ! と」
エルザはスカートの端を摘み上げると、優雅に頭を下げた。
レナ姫は感動のあまり、エルザを見たまま何度も頷く。
カインにしては、レナ姫に悪い事を教えて欲しくなかったが、レナ姫のその言葉を待った。
カインにしても知りたくは有る。
「あぁ、そうじゃ! リオ姫は私の大切な友達じゃ。カイン、構わぬ! レナ・オティアニア第七姫の命令じゃ、直ちに人選をやり直せ!」
「はっ、かしこまりました!」
レナ姫の台詞にエルザは満足げに頷いた。
王国セロンを立って三日後、キョウとリオは次の国、グウィネビア王国の港町を目指して歩いていた。
この辺りは大きな半島に位置するので、王国セロンからは双ルート有る。
北に行けば陸路で、次の国まで一週間以上掛かるし、合理的ではない。もう一つはグウィネビア王国の港町から、船に乗るルートで、四日程だが一日は船に乗らないといけない。
二人は後者を選んだ。
理由は簡単で、一週間の宿代を考えると、船代の方が安い事と、そして何より早い事だ。早さを求めるなら、本来は王国セロンで降りず、そのまま船で行った方が早いのだが、リオの反対が大きかった。
眠っていると大丈夫だが、起きているとやはり駄目らしい。短い距離なら我慢出来るが、長くなるとそれだけ苦しむ時間も長くなる。
急ぐ旅で無いし、リオの苦しむ姿は見たく無いので、キョウも了承したが、この判断がこの旅に暗い影を落とす事に成るとは、当人逹は気付いていなかった。
「なぁ、リオ。法国オスティマで、リオの言っていたワンピースは見つからなかったんだろ? このまま旅を続けて大丈夫か?」
キョウの台詞にリオは素直に頷いた。
「うん、直接システムに関係した内容じゃ無いから、着いてから考えても問題は無いよ」
リオのあっさりした答えに、キョウは頭を捻る。
だったら法国オスティマに寄った理由は何だったのだろうか?
「なぁ、結局、リオの探していたワンピースって、何だったんだ」
キョウの問い掛けに、リオはうんと頷いた。
「あれはね、痕跡を探していたの」
「痕跡?」
簡単に答えたリオに対して、キョウは復唱する。
「そうよ、痕跡。ここかは私の予想の話をするから、深く追求しないでね」
断りを入れてから、リオはキョウが頷くのを待った。
キョウは直ぐに頷き、リオに話を催促する。
「私の考えが正しければ、あれは少なくとも、二度開いているの」
「二度!?」
驚いたようにキョウはリオを見た。リオは歩いたまま目を閉じ、ユックリと見開いた。
そのブルーの瞳は真剣そのものだ。
「二度って、一度目は閉まったって事か?」
リオが頷くのを見て、キョウは嬉しくなる。一度閉まった事実が有るなら、再び閉める可能性は大きくなるだろう。
「多分よ、一度目はエネルギーが少なくて、長い時間開いて居なかったと思うの」
相変わらず細かい話は省くので、リオの話は解りにくい。
しかし、キョウは口を挟まずに聞いていた。
「そして、その時に王国ファスマの人々は、あの建設方法を聞いたと思うの」
キョウの驚きのあまり、歩みをゆっくりさせ、そして止まった。リオもキョウに合わせて立ち止まる。
リオの話が正しければこうなる。
「一度目は、向こうから開いたと言うことか。と言うことは、あれは霧の技術なのか?」
リオはユックリと首を横に振った。
「霧ではないよ。キョウは聞いているでしょ、イップ王女から」
確かに、セリオンの時に聞いた。
「………技術のもっと進んだ世界か」
「正解。そう考えれば辻褄は合うわ。だから私は、それを探していたの。この世界に在るはずの無い、オーバーテクノロジー。即ち、痕跡よ」
なるほどと、キョウは思うが、なぜ探していたのかが解らない。あれを閉めるのに必要ないと思うのだが。
「それを探してどうする?」
「どうもしないけど、私の理論が正しければ、閉める方法が確実となるだけ。まぁ、八割方は間違いないから、このまま進んでも問題ないってわけ」
話がややこしくて、キョウには理解出来なかったが、何かの為に必要なのだろう。
「オーバーテクノロジーか………」
そう呟くキョウには、それがどんな物かも解らないが、不思議な機械なら思い当たる節がある。
「俺にしたら時計もオーバーテクノロジーなんだけどな」
「時計?」
リオは眉をしかめてキョウを見た。
リオなら時計の構造も理解できているだろうが、キョウに取っては不思議な装置だ。
キョウは歩き出した。
「あぁ、あれって電池で動いているけど、それってさ、凄くないか?」
キョウは同意を求めるが、リオにとっては解りきった内容だ。
歯車でこの星の自転に合わせて、電力を溜めた電池で動かせる。電池にしても、電気を捕らえる炭素分子で出来ていて不思議はない。確かに、王国ファスマが原点だが、今は全世界にあるし、別におかしい点は思い付かない。
「別に不思議は無いよ?」
「でも、良く思い付いたと思わないか? 太陽の登り沈みに合わせて、しかもあんな小さな電池まで考えて」
「………」
キョウの時計の理解は間違っているが、リオはキョウの言葉に、顎に手を置き考え出す。
そっか、電池か。
良く良く考えればそうだ。小さくエネルギーを溜めるもの。
現在、電池は時計にしか使われていないが、良く考えれば他に幾らでも利用価値はある。しかし、誰もが電池=時計と思い込んでいる。そもそも、電気をエネルギーと利用しているのは、城の灯りなど、重要施設だけで、全て発電機と繋がれ、エネルギーを溜めておく単体は電池以外はない。町の中などはいまだに松明を使っていることが多い。
それは、近すぎて気付かなかったが、正しくオーバーテクノロジーでは無いだろうか。
「そうよね、考えれば確かにおかしいわ。電気が未々普及してないのに、電気を溜める単体が先に出来てる。しかも、時計にしか利用されていないなんて、有り得ないわ」
リオはキョウを見て何度も頷く。
「それよ! やっぱり私の理論は合ってたんだ! キョウ、ありがとう!」
喜びに震えているリオを見ずに、キョウは声を掛けた。
「………リオ」
キョウの声で解ったのか、リオは前を向くと頷いた。
「うん」
二人の前には二匹の馬。
彫刻のように固まり、同じ形のまま動かない。しかし、二人が止まっているにも係わらず、何故か距離が近付く。ただ、ひたすら不気味である。
順調な旅はここまでだった。
キョウは素早く構えてリオを下がらす。しかし、キョウにしても、霧に乗っ取られた大型生物二体は流石にこたえる。
どちらの馬も、固まったまま動きはないのに、攻撃をくりだす。しかし、これは余計に始末が悪かった。
動きが無いので、次の動作が読み取りにくい。
キョウは一体に警戒したまま、一気に剣を振り下ろす。
別の物に警戒しているので、どうしても軽い一撃となり、細かい傷は与えているはずだが、致命傷は与えられない。それに、何度も剣を振って敵を遠ざけねば、近付かれ不利になる。
「マジカルファイヤ!」
後ろから放たれたリオの魔法が、もう一方に当たる。威力は小さくても目眩ましにはなる。
勝機とばかりに、キョウは魔法の当たっていない方に、渾身の一撃をお見舞いしようと、剣を振り下ろす。しかし、炎を引き連れもう一匹がキョウに向かって来た。
「くっ、」
短い言葉を残し、キョウは咄嗟に後ろに跳ね飛び、馬をかわす。
しばらくして炎は消えたが、馬は無傷のままだ。
こいつはと、キョウはもう一歩下がる。
先程からこの連携が厄介だ。
「キョウ、多分あれは………」
「あぁ、命が繋がれているな」
リオの答えをキョウが答える。
馬は連携しているように見えるが違う。一番分かりやすい例えは、実は一体で右手と左手だ。
もちろん霧に乗っ取られる前は、別々の固体だったのだろう。しかし、今はどちらも倒さなければ動きが止まらない。小動物なら、幾ら命が繋がっていようが、真っ二つに切り裂けば、動けなくなり問題は無い。しかし、大型生物ではそう言う訳には行かない。動けなくするには、全ての足を切り落とすしかない。中なはそれでも動く物も居る。
もっとも厄介な霧に乗っ取られた物だ。
ある程度ダメージを与えて逃げたところで、元のスペックは馬なので、簡単に追い付かれるだろう。
リオの考えも、キョウと同じだった。
「キョウ、見た目には見えないけど、ダメージは有るはずだから、焦らないで」
「あぁ、解ってる。それより、魔法で一体を足止め出来るか? もう一方を仕留める」
キョウの台詞にリオは首を横に振った。
いくら凄腕のキョウでも、暴れている馬を相手に、一撃で倒すことは不可能だろう。
「キョウ、それより私が大きな魔法使うよ。イメージが難しいから、時間が掛かるから、キョウの方が足止めしていて。出来る?」
霧に乗っ取られていない大型動物相手でも、難しい注文をリオはする。しかし、魔法が有ると有り難い。
キョウは「解った」と頷き、構えを変えた。
いつもの担ぎ構えでは無く、手を自分の前でクロスに交差させる。何とも妙な型だ。
いつもの担ぎ構えは、セリオンが得意としていて、それをキョウが使っていたのだが、これこそキョウのオリジナルの構え。二刀流の者が、相手を二つの剣で挟み切る構えと似ている。キョウは敵の攻撃をいなす時に良く使う。
馬なので足からの攻撃が厄介だが、それでも、狙うならやはり足か。
キョウはその体制のまま馬が近付くのを待ち、馬が近付き攻撃し出すと、剣を右手左手と、何度も持ち変え攻撃をいなす。
「マジカルアイス!」
リオの魔法で、キョウの周りにも冷気を感じる。
凍らせて足止めする気か?
「キョウ、準備出来た。馬の間に雷の魔法を出すから一旦下がって!」
リオの声に反応して、キョウは剣を両手に持つと、足払いのように、下段で大きく横に振り抜く。
両方の馬に手応えは有った。足を切り取りは出来なかったが、馬は一瞬足を止めたと思われる。
キョウは大きくツーステップで、リオの後ろに滑り込む。滑り込んだ勢いで、砂煙が起こり、それと同時にリオの声が響く。
「マジカルサンダー!」
リオの声に反応して、突如、馬二体の間に雷を放つ球体が現れ、一つ激しい音を立てた。
その音に反応してリオは顔をしかめる。
「あっ、ちょっと距離が近いかも」
リオの不審な一言に、思わずキョウはリオを抱え急いで馬から離れる。
「えっ? ちょっと、キョウ待って! 今離れたら魔法が制御出来ないの。このままだと、魔法が暴走する!」
リオの抗議の声を無視して走る。そこからはまるで雷撃の雨だ。
何度も馬に雷が走り、周りの木々にまで雷が走る。肉体の中を雷が通るので、馬はもう生きてはいないだろう。
キョウはかなりの距離を開けてから、やっとリオを下ろした。目を細めて、やっと見える雷も収まったようだ。
キョウは肩で息をしながら、急いでリオを見た。
「危ないだろ! あんな近くで雷を出したら!」
キョウの抗議の声に、リオは眉間に皺を寄せ、腰に手を当てて反撃した。
「キョウ、魔法の基本は教えたよね?」
「うっ、」とキョウは怯む。
「あっ、あぁ」
頷くキョウに対して、リオはさらに迫る。
「じゃ、力ある言葉はどう言う意味だった?」
リオは目を細め完全に怒っている。キョウは狼狽えながら答えた。
「魔法の名前を唱えれば、意思通りに動かせれる」
「よろしい! 解っているじゃない」
リオの言いたい事は解る。しかし、あんな、不審な呟きを聞けば、誰だって逃げ出すだろう。
「リオ、だったら何ぜあの時、近いと言ったんだ?」
キョウの問い掛けに、今度はリオが「うっ、」と詰まった。
「あれは、ほら、雷の魔法は初めて使ったから、心配で………」
聞きたく無かった、そんな怖い情報。
「雷の魔法は、本当に危ない時しか使用禁止だ!」
キョウの言葉にブーたれていたリオも、再び二人して歩きだした。先ほどの馬を越えないと、先には進めない。キョウは雷の魔法を使った現場を見て、息を飲み込んだ。
周りは広く焼け焦げていて、地面にも何ヵ所も穴が開いている。木々は小規模ながらも、いまだに燃えていて、馬は相変わらず彫刻のように固まったままで無傷だが、横たわっていた。元々動かないので、倒したかどうか解らないので、大きく迂回して通り抜ける。
しかし、リオの弱い魔法でもこの威力だ。
これは魔法を使える者と対峙しても、最早、個人で相手が出来るレベルを超えている。
「魔法とは、凄まじいな」
キョウは歩きながら、率直な意見を述べた。
「でしょ? それに、基本魔法より威力が上がるでしょ。私はこっち方が、最強魔法と思うわけ」
リオは得意気に話してくるが、確かにあの現場を見れば納得する。
「でも、リオは雷の前に、氷の魔法を唱えなかったか? あれは、失敗したのか?」
キョウの発言に、リオは久々に得意気に、右手の人差し指をピンと立てて「おっほん」と咳払いをした。
「よろしい! では久々に講義してやろう。あれは、私のオリジナル魔法である」
キョウは首を傾げた。
王国ファスマでも、雷の魔法を使う者は少なかったが、数人はいた。それではオリジナルとは呼べない。
そこまで考えて、やっと気付いた。
「あれ? 確か雷の魔法は、雷撃一本が敵に向かって進むだけだな。あんなに何度も起こらなかった」
そんなキョウを見て、リオは何度も頷く。
「その通りよ。私がしたのは、先に雲の中を作ったわけ。まずは氷の分子を一杯作って振動させておいた。すると、摩擦で電気が溜まりやすくなり、そこに、雷の魔法を唱えると、自然界の物質が多くあるので、結合が一杯出来る。これは正しく、魔法科学よ!」
それは、今までの魔法を覆す、新しい魔法の理論の誕生かも知れないが、生憎とキョウはあまり魔法に詳しくない。だから「そっか、凄いな」程度で終わった。
もっと誉めて欲しいとリオは目で合図するが、キョウはまるで気付いていない。
「それより先を急ごう。このままでは、グウィネビア王国に着くまでに夜に成ってしまう」
キョウの台詞に、リオは頬を膨らませ顔を背ける。キョウは何故リオが怒っているのか解らなかった。
結局、あれからも何度かの霧に乗っ取られた物との戦闘をこなし、グウィネビア王国の港町に着いた頃には、とうに日は暮れていた。
キョウとリオは慌てて、船の時間を確認するが、やはり本日は終了していたので、二人はしかた無く宿を探す。
港町はティーライ王国の領地並みの大きさで、一般的な町の規模だ。もちろん人の流れもまばらで、法国ファスマを体験した二人にとっては、少し寂しく感じる。
そして町の中を歩くキョウは、人の動きに何かを感じとる。
すれ違う人が徐々に少なくなり、後ろを歩く人は離れない。
キョウはリオの右に身体を置き、剣に手を掛けたまま、後ろの人に抜かれるため、ゆっくりと歩いていく。しかし、後ろの人も歩調を遅くして、キョウ達を抜く事はしなかった。
後ろをつけられていると確信して、後ろの気配を探る。
人数は二人。こちらから仕掛ければ、まだ何とかなる人数である。そう考え、タイミングを計っていると、噴水のある広場に出たので、さらに周りにも気を配る。
囲まれては不味い。
そう気持ちが焦り、速足でその広場を抜けようとした時、前から一人の男が現れた。
正規の騎士の鎧。ロングソードを抜き身で右手にぶら下げ、こちらを向いている。暗くて顔が見えないが、後ろを着けていた者より、格段に出来だろう。今まで対峙してきた中でもトップクラスに思える程の殺気。
咄嗟に足を止め、左手でリオを斜め後ろにおき小声で話した。
「リオ、不味い。相手はかなりやる、俺がもし危なく成ったら、魔法を使って逃げて、何処でも良いから、とにかく身を隠せ」
キョウの台詞にリオは青ざめたが、何度も首を横に振り、従えないことを伝える。
キョウが負ければ、リオ一人ではこれ以上進めない。この旅はそこで終りにすると、リオはそう思った。
リオは自分の騎士に対しての言葉を発した。
「キョウ、私は負けることを許しません。最後まで私を守りなさい!」
出来れば言うことを聞いて逃げて欲しいが、知らない町の中なら捕まる可能性も高い。キョウはリオの台詞に頷き、覚悟を決めた。
そこで、近づいて来る騎士の殺気が、突如消えた。
「キョウ?」
その声と顔に驚き、キョウも声を上げた。
「………オヤジ!?」
船でグウィネビア王国に着くころ、辺りはもう暗闇に包まれていた。
あれから直ぐに船に乗り込んだのだが、丸一日かかってやっとたどり着いた。
バードは船乗り場で待ち構えていた、ゴードンと名乗る兵隊長から、標的が近づいていることを聞くと、その足で迎え撃つ準備に向かう。ゴードンからは何人か部下を着けると提案されたが断った。
聞けば、相手は金髪の子供と護衛の若い男が一人らしい。それならこちらも、一人で迎えると答えた。
相手が子供と聞き、さらに気が削がれたが、これも国民の為と覚悟を決める。しかし、護衛一人に対してこちらが数人で向かうのは、幾ら汚れ役を請け負っても、そこまで腐りたくは無かった。
バードは兵士に案内され、噴水前の広場に着く。ここまでは、ゴードン達が標的を誘導してくるらしい。
これから、ここを通る未来の在る若者には悪いが、ティーライ王国の未来に比べると、些細過ぎて比べようが無い。
相手は二人。こっちは、十五万人だ。
自分自身にそう言い聞かし、無理矢理に気分をもり上げていく。
いずれ、自分も同じ運命を辿るのだから許してくれと思った時に標的が現れた。
小さな女の子を守るように、若い護衛の男は半歩前に出る。手は剣に掛かっているものの、まだ剣は抜いていない。あの若さからして、まだ状況が解って居ないのだろ。
構わない。これも未来の為と思い、バードの方から足を向かわす。と、そこで若い護衛の顔が見えた。
「キョウ?」
「………オヤジ!?」
驚き、互いに顔を見合わせる。
突然の事でお互いに、全く状況が把握出来ない。
「こんな所で、何をしている?」
「オヤジこそ………」
リオはキョウの言葉を聞いて胸を撫で下ろし、挨拶するため前に出ようとした。
金髪の子供。
咄嗟にキョウは、前に出ようとしたリオを左手で止めた。バードに殺気が戻ったためだ。
バードの目には、リオが標的として映った。
「オヤジ――――あんた何をするつもりだ?」
先程とは変わり、キョウの低くなった声に、バードはただ口を噤む。
キョウはそれが答えと確信した。一体何が有ったか解らないが、バードは本気だ。
隣でリオが心配そうに、何度もキョウとバードを見比べた。
バードは一度だけ苦しそうに目を閉じ、見開くと覚悟を決める。
「ティーライ王国騎士団長、バード・ニグスベール。悪いがその命、貰い受ける!」
バードが名乗りを上げ、キョウは剣を構える。しかし、キョウが名乗りを上げる前に、リオが声を上げた。
「駄目っ!」
「っ!」
「キョウ! 名乗ってはいけません。リオが許しません!」
キョウはグッと息を飲み込む。
何が有ったか解らないが、もうバードは完全に覚悟を決めている。リオの意見は聞きたいが、ここで名乗りを上げても上げ無くても、結果は同じだろう。
しかし、キョウの姫は許してくれなかった。
「戦っては駄目です。親子が戦うのは間違っています! キョウ、私に従いなさい!」
姫からの命令。それは絶対事項だ。
キョウは苦しそうに声を上げた。
「駄目だ、従えない! 今、剣を退けばリオが殺られる。それだけには従えない!」
バードには、キョウが何故こんな子供に従い護衛をしているか解らない。それに、法国ファスマの皇太子に、どんな怨みを買ったのかも解らない。
何もかも解らないが、気を乱しながら狼狽えるキョウに対して、本気だと言うことだけは解った。
従う者の言葉に従えず、狼狽えているのである。
これは何なのだ? 彼女は何者で、何をしたのだ?
そこでやっと、バードはデルマンの言葉を思い出した。
『霧を止めるなどの戯言を言いふらし………』
あり得ないと頭を振る。もっと別の理由が在るはずだ。デルマン皇太子を否定する事を言ったとか。
「バードさん、剣を退いて下さい! 戦っては駄目です! キョウはあなたの家族でしょ。私の首が欲しいなら、霧を止めてから幾らでも上げます。だからお願いです、キョウとは戦わないで! キョウを苦しめないで!!」
「!!」
リオの声にキョウはその目を見開いた。
あの時のセリオンの気持ちが込み上げてくる。それは信じていた物を全て捨てる覚悟。
キョウはバードを見据えて、はっきりと言葉を発していた。
「所属国はない、リオ・ステンバーグ姫の騎士、キョウ・ニグスベール!」
「キョウ駄目っ! 言うことを聞きなさい! 親子で戦っては駄目!」
リオの叫びは虚しく、ついに、キョウが名乗りを上げた。
バードはキョウの言葉を重く受け止めた。「所属国はない………」か。
キョウが国名を捨てるほど、今のティーライ王国には魅力が無いのであろう。しかし、いずれは捨てたことに後悔をするような、そんな国にしてやる。
バードは剣を上段に振り上げる構えをとる。
一度キョウと手合わせして負けているが、あれはあくまでも手合わせの話だ。命の掛け合いなら、場数が違う。伊達に騎士団長を名乗っていない。
バードはキョウの剣を振る姿を幾度となく見てきた。だから解る。キョウの剣技はバスターソードまでいかない物の、大振りの剣が有ある前提の剣技。重さにより振り回す形を取るので、実はあまり力を使っていない。一度振れば、方向さえ与えてやると、剣の重さに吊られ、すんなりと重い一撃を放つ事が出来る。
だからこそ、最初は担ぎ構え。
担ぎ構えから放たれた一撃は、僅かな力により方向性を与えられ、Uの字を書くように変幻自在となる。左からの一撃は、体を軸にして剣を回すやり方だ。しかも、本来ならもっと大きな剣、バスターソードで行う様な剣技な筈だ。だから少し威力が劣る。
ネタが解れば、警戒するのは、最初の切っ掛けの一撃のみ。
意地と意地を掛けて、二人の戦いが始まった。
二人は同時に仕掛ける。
キョウはいつもの担ぎ構えから、バードは上段から、お互いの初撃を受け止める形で、二人の剣が重なり合う。
「キョウ、悪いが国の為だ! 退けっ!」
「国がどうした! リオに剣を向ける奴は、たとえ誰であろう容赦はしない!」
互いに叫び声を上げ、力任せに相手を押す。
お互いを跳ね飛ばす形で、二人は再び間合いを開けた。
再び担ぎ構えから切りかかろうとするキョウに対して、バードは剣を合わせようとする。その動きを見て、キョウは親父のたくらみを理解した。
キョウの剣技が解り、対処法をとられている。
あくまでも初撃潰し。
キョウは構えを変えた。霧に乗っ取られた馬と対峙した時と同じ、両腕をクロスさせる型だ。
ジリッと足を合わせ、バードも上段から正眼に構えなおす。
「キョウ、お願い! やめて、………やめなさい!」
リオの声にキョウは苦しそうに唇をかむ。
解っている。負けても勝っても、俺はここまでだ。だから、せめてリオを守る。
次はバードから仕掛けた。コンパクトで早い連撃。
これは、キョウの大振りの一撃を警戒した攻撃だろう、構えを変えて正解だった。キョウはその全てを受け止めていき、何度も剣が重なり火花が飛ぶ。
しかし、バードの剣は早く上手い。手数が多い中にも要所要所と急所に狙いが入っている。少しでも気を抜けば、それが致命傷になってしまうだろう。
このまま攻められ続ければ不味いと、キョウが内心で焦った時、バードは再び間合いを開け、今度は突きの構えをとった。
キョウに合わせて攻撃態勢を変えていたのだが、それでは攻めきれないと考えたのだろう。今度はバードから攻める一撃必殺。
相手に傷を負わすのではなく、仕留める。
リオは話を聞いてくれないキョウを止めたくて、バードに話しかけた。
「どうして? バードさんは、どうして戦うの?」
バードはキョウの動きを警戒したまま答えた。
「俺は、ティーライ王国を変えるためにここにいる。王を交代させ、イフレインと共に国を良くすると決めたのだ! それには法国オスティマの後ろ楯がいる。国民の為だ! 悪いが契約の為だ、死んでもらう!」
「それなら………」
口を開くリオの言葉を遮り、キョウはバードを睨み付け、大声を上げた。
「それだけか、それだけの為か! そんな小さな事で動くとは、ティーライ王国の騎士団長も地に落ちたな!」
バードは黙ったまま、キョウを睨む。
小さい事とは聞き逃しならない。バードとイフレインの両者とも、死を覚悟の上で決断した。もちろん、自分だけの死ではない。この罪は家族にまで及ぶだろう。だから、失敗すれば家族も親戚も、バードの死の内に入っている。
それを小さいとは。
睨むバードをしり目に、キョウはまだ話を続ける。
「――――リオは、霧を止める。………俺の姫は、世界のために、皆のために命をかけて危険な旅を続けている! それを、たかだかティーライ王国の為だと? 笑わせるな!!」
バードは驚き目を見開いた。先ほどリオが言っていたセリフと同じセリフ。
デルマンは本当に、そのままを伝えていたのか。しがし、信じられない。霧は止められない。
バードは目を閉じ、再び見開いた。
意識を変え、上段に構える。
今まで、口では覚悟を決めたようなことを言ってはいたが、心のどこかで、キョウに剣を向けるのが躊躇われた。しかし、ここからはただの倒す敵だと認識を改める。
キョウも何時もの担ぎ構えをとった。
言葉を交わさなくても解る。父親はこれで決めるつもりだ。
合図も無しに、二人は同時に跳んだ。
キョウはバードの剣が届く前に、袈裟切りを放とうとする。
バードはキョウの次の斬撃を無視して、首を取りにいった。次にどこを狙われようが、斬り捨ててしまえば同じことだ。
「キョウっ、私はそんな事を望みません!」
キンっと乾いた音をたてて、バードを剣ごとキョウは斬りつけた。いや、そのつもりだった。
左から横這いに来るバードの剣を、タイミングをずらして、直接、袈裟切りで折ったキョウの剣が、バードの鎖骨寸前で止まる。
剣を折るほどに一撃だ。止めるだけでも、かなりの力を使ったのだろう。筋肉の痛みでキョウは顔を歪ませる。
結局、リオの叫びで腕を止めた。
キョウには自分の仕える姫の命令はやぶれなかった。
リオはキョウが剣を止めたのが解り、胸を撫で下ろす。
「何故――――振りぬかん?」
バードの怒りの声に、キョウは目線を外した。
自分の守るべき者を狙われ、ここで情けをかけて敵の首を落とせないようなら、キョウに未来はない。
「騎士団長バード・ニグスベールは俺に負けた、だから俺に従ってもらう。異存は無いな?」
やっとキョウの考えが解ったのか、バードは頷いた。
「好きにしろ、ここで落とした命だ。どんな言う事も聞いてやる」
捕虜にするか、または、残りの法国オスティマの兵士と戦わせるつもりか。
「これからは、俺の代わりにリオを守ってくれ」
キョウはそれだけを言うと、剣を退きバードから離れる。意味の解らない言葉に、バードは目を白黒させて、キョウとリオを見比べた。
キョウはリオの前に行き片膝を着くと、騎士のとる最高礼をとって、自分の剣の握りをリオに差し出した。
「申し訳ございません! 私はリオ姫の命令に背きました。打ち首でも解雇でも、どんな処罰にでも軽んじます」
キョウの姿にバードは目を見開いた。
偽りの姫に対して、子供の姫に対して、騎士ごっこにさえ取れるその姿に、バードはキョウの覚悟を知った。
本当にキョウは命を懸けたのだ。負けたら敵に殺され、勝っても命令違反で打ち首の覚悟。それは騎士にとっては当たり前の覚悟だ。この場で冗談をしているとは思わない。
本当に彼女の騎士をしているのだな。
リオはキョウに抱きつき泣いている。キョウは何度も謝った。
負けるはずだ。
たとえ同じような覚悟でも、全く違う。守ると言ってもこちらは十五万人、片や相手は全世界の三十億人だ。
キョウは、自分の姫と共に、本当に霧を止めに行くのだな。
バードは静かにそう思った。
泣いていたリオは、目を擦りキョウを見る。本当に怒っているのだろう、その目は吊り上っている。
「もう、心配かけないで! 罰なんて良いから!」
「リオ、ごめんな」
そんな二人の姿に対して、バードは自分が何に対して覚悟をしていたのか解らなくなる。
国に対してか、国民に対してか、――――それとも自分自身に対してか。
リオは足早にバードの前にやって来た。倒したと言えど敵だった者だ、キョウは慌ててリオを追い二人の間に立ちはだかる。
バードに対しての責めなのだろう。バードはそれを受け入れる為、ただ立ち尽くしていた。
「バードさん、王様を交代させるつもりなら、後ろ楯は駄目ですよ。特に、法国オスティマは大きいし、摂政のバーカードさんは侮れません。良いように使われます」
バードは、リオの的確なアドバイスより、彼女の口からバーカードの名が出たことに対して、驚きを隠せずにいた。
「だから、目標にするなら、ライマ共和国をモデルにした方が、現実的ではないでしょうか? 本当に悪い王なら後ろ楯など必要ないです。そして、国民がそれを望んでいるなら必ず成功します!」
リオの言葉に、バードはポカンと口を開けた。
一体何者なのだ。デルマン第三皇太子に恨みを買い、バーカード摂政を知っていて、キョウを自分の騎士にしている、偽りの姫君。
ティーライ王国の内情も知らず、ここまでのアドバイスをするとは。………王を持たない国、ライマ共和国か。
たしかにリオの話はあっている、一度試すのも悪くない。
バードはそこまで考え、リオに対して頭を下げた。
それは謝罪でもあるし、お礼でもある。
リオの言葉は未だ続いた。
「だから、さっきのキョウの言葉は忘れてください。私の騎士はキョウ以外にはいません。二人で必ず霧を止めます!」
リオは言い切った。
一瞬、嬉しそうな顔をしたキョウに対して、バードは急に親に戻る。
詳細は解らないが、自分の支えた者に、この台詞を吐かすまでの騎士に成るとは、親として鼻が高い。
負けた。完敗だ。
覚悟の重さだけでない。
バードは自分の剣をみる。ちょうど真ん中から、見事に折れていた。先代の王に祝福された、騎士の魂が。
バードはキョウ達を残し、広場の端に行くと大声をあげる。
「ゴードン! 剣が折れた、代わりの剣を貸せ!」
キョウは慌て、リオを自分の後ろにやった。
まだオヤジはやるつもりなのか?
ゴードンと数人の兵隊が現れ、一本のロングソードをバードに手渡す。バードは受け取ったロングソードを、ゴードンの首筋に当てた。
「所属国のないリオ・ステンバーグ姫の騎士! お前の姫は狙われている! 話では、暗殺者まで飛んでいるらしいぞ! 今日はこのまま姿を隠し、明日は別の港から出港しろ!」
バードの叫び声に、その場に居る全て人物が驚く。
バードはさらに続けた。
「この場は、ティーライ王国の騎士団長、バード・ニグスベールが受けまつった。急がれよ!」
バードの叫び声に意味が解った、キョウはリオの手を取り走ろうとする。
リオは足を踏ん張ると叫んだ。
「キョウのお父さん、無理しないで! 法国オスティマでの事なら、レナ第七姫に相談して。リオから聞いたと言えば相談に乗ってくれるはずだから、危なくなったら逃げてね!」
「かしこまりました、他国の姫様! 頑張ってくだされ!」
「リオ、早く行くぞ!」
リオはキョウに抱きかかえられ、二人は町の中に姿を消した。
もう驚かないと思ったが、第七姫まで知っているとは、本当にただ者ではない。リオが何処かの姫だとしても、何の疑いもない。
バードは思った。
霧により栄光を集めた騎士。その息子の騎士が、霧から人々を守りに行く。悪い話では無い。
バードはゴードンの首筋から剣を離して、正眼に構えると再び叫んだ。
「あの二人を狙う者はティーライ王国、騎士団長バード・ニグスベールが相手致す! 今の私は手強いぞ、心して掛かってこい!」
バードの声が町中に響き渡った。
何時もは書き終えてから、サブタイトルを付けますが、今回は先にサブタイトルが出来ていました。でも、このままで良いのかは悩みました。
サブタイトルで解る人が出てくる可能性があるからです。
昔にイップ姫が何をしたくて、アレを開けたのか解りました。キョウにしても強さの秘密が解ってきました。
ここから物語は佳境に入って行きます。
次は物語の重要人物ユキナが出てきます。残りあと3話の予定ですが、延びたらごめんなさい。
やっぱり、イップ姫書いていて楽しい。イップ姫いいわ。