エピローグ 王国ファスマの騎士
エピローグ 王国ファスマの騎士
霧の無い時代に移り、一年が経とうとしていた。
ユキナに貰った、五本の鉄の棒は大いに役立ち、リオが故ストラで呟いた通りに、一年でほとんどの霧の討伐に成功を納め、今では霧を見かけることすら、王国ファスマでは珍しく成っていた。
王国ファスマは、霧を斬り裂ける武器を手に、他国の討伐も手がけ、それにより大きな利益も産み出していた。
その甲斐あってか、最近では、ようやく他国に再建国をみとめられ、イップ王女が再び王位に付き、近国を集め再建国の大きな祭典を済ませたところだ。
そこで、イップ王女は正式に婚約を発表し、近々セリオン王の継承式が行われる予定だ。
祭典だけで予定は一杯有る。
それに、祭典以外でも来訪者は多く、しだいに昔の様な賑わいのあった国へと戻りつつあった。
その日も騒がしく、訪問者があった。
手紙で前もって知らされていたが、それを見るなり、キョウは開いた口が塞がらなかった。
リオの風船だ。
本当に作るとは思わなかった。
全長三百メートルを超える大型の乗り物が、雄大に空を駆け、徐々に近付いてくる。
こんな大きさは、船ですらまだまだ少ない。
城から少し離れた、大きな広場にそれは止まった。
手紙に書かれていた通りに、慌てて大人数の男たちが、先端に付いているロープを、力一杯引き寄せ、大きな杭に固定した。
中から飛び出してきたのは、もちろんレナ姫だ。
レナ姫は一番に飛び降りると、走ってこちらにやって来る。
髪の毛は短く成っていたが、身長などはあの時とあまり変わっていない。
後ろからはカインの慌てた声も聞こえる。
レナ姫はイップ王女とセリオンに頭を下げると、急いでキョウに詰め寄った。
イップ王女とセリオンは苦笑いだ。
「キョウ、久し振りじゃ。元気にしておったか? 所でリオ姫は何処じゃ?」
端からキョウの元気には気に掛けて無いのだろう。答えも聞かずリオを探す。
「レナ姫様、リオ姫は引き込もっております」
「引き込もり?」
「はい。それで、レナ姫様が御出の際には、『引き連れてきて』と申しておりました。のちほどご案内いたします。後、私は元気にしておりました。御気遣いありがたく存じ上げます」
「そうか、元気で何よりじゃ。しかし、リオ姫にこれを見せたかったのじゃがな」
落胆を隠せないレナ姫は、唇を尖らせる。
「リオ姫の事です。直ぐに見て、レナ姫様の功績を称えますよ」
キョウのその台詞に、レナ姫は機嫌を取り戻し、大きく頷いた。
そこで、他の者も降りてきたので、キョウは騎士の敬礼で挨拶をする。
皆はイップ王女やセリオンに挨拶を済ませると、必ずキョウの元で長時間足を止めた。
解っていたことだが、これでは誰が主賓か解らない。
「これは、バーカード殿。このような場所まで態々ご足労です」
バーカードは相変わらず、背筋を伸ばし、歩いてきた。すぐ後ろにはエドワードが着いている。
「おぉ、リオ姫様の騎士、キョウ殿か。あの時以来だな」
「失礼が有ったあと、お顔を見せずに恐縮です」
キョウは騎士の敬礼を向けた。
「いやっ、なに、こちらも不都合があり、責められてもしかたない所在で、のちに正式な謝罪をさせて頂きたい」
相変わらず腰は低いが、何を考えているのかキョウには解らない。油断のならない人物だ。
「バーカード殿、止してくだされ。こちらも、リオ姫に粗相が有ったことを謝らなければ成りません、エドワード殿にも、大変御無礼が有ったことを、深く申し上げたい」
キョウも習い、深々と頭を下げるのを見て、エドワードも頭を下げた。
「キョウ殿、こちらこそ、大人気ない態度に、恥ずかしく思っております。のちほど、リオ姫様にも正式に謝罪させていただける機会を作ってもらえますよう、お願い申し上げます」
キョウは以外だと驚く。
バーカードは摂政としての礼儀が素晴らしいが、以前の記憶からして、エドワードはまだまだ摂政の水に馴染んで居なく感じたが違うらしい。
大きく成長したか、以前のリオが偽りの姫だったためか。
一通りの挨拶が終り、皆はイップ王女に着いていく。
そこでは簡単な歓迎式が行われ、外交の交渉がはじまる。
皆は、霧を止めた時の話を聞かせてほしくて、キョウが歓迎式に来ないことを惜しんだが、キョウはここまで。ここからはレナ姫をリオの元まで案内するのが仕事だ。
キョウはやっと終わったと溜め息を吐いた。
王族や、大臣相手はまだまだ馴れていないし、緊張する。
残ったのは、リオに連れて来るように頼まれた、レナ姫と、護衛兵長のカインのみだ。
やっと心が許せる相手だけに成った。
カインは久し振りの再会に握手を求めた。
「キョウ、久し振りだな。身長が伸びたな。あれ以来、法国に寄ってくれずに、寂しかったぞ」
キョウはカインの手を取り頷く。
「えぇ、あれから一度帰るつもりが、結局は帰れず、ずっと王国ファスマに居ましたから。――――あっ、それはそうと、昇格おめでとうございます」
カインはそこで眉間に皺を寄せた。
「キョウ、お前が成長したのは解る。しかし、俺に対してはもっと気軽でいいぞ。霧を止めたんだ、立場ならお前の方が上だ」
本人たちは解っていないかもしれないが、今や二人はほかの国でも話題されるほどの英雄だ。それにカインはもっと、再会の喜びを分かち合いたかったのだが、キョウはどこか堅い。
確かにこの年で、王族や大臣相手の出迎えまでさせられているのだ、緊張は有るだろうが、カインはそれでは不満だった。
そこで、やっとキョウは肩を下げた。それから、周りの例の人物が居ないか見わたした。
どうやら、ご老体は他に気になることがあるのか、この場にはいない。
キョウは重い溜め息をついた。
「………聞いてくれ、この国には悪魔がいる。マグナの野郎、あれ以来、俺を敵視して見やがる!」
「マグナって、………最高位の、あのマグナか?」
キョウは頷いた。
「そのマグナだ。勝手に俺の教育係をしていて、言葉遣いを間違えただけで、魔法使って来るんだぞ。信じられるか? 騎士に対して、魔法の矢を放つんだぞ! 本気で首を取りたい奴だ」
どうやら、キョウはマグナの下で作法を習っているらしい。
カインは絶句した。
マグナと言えば、大戦時代からの伝説的魔法使いだ。生きているのも驚きだが、キョウはすごい人物に教育を受けている。
しかも、伝説のマグナから教育を受けているご本人は、不満満載らしい。
霧を止めることで世界を救って、伝説の魔法使いに知識を習い、すごい人生を歩んでいるというのに、その教え方が厳しいと文句を言っている。なんという贅沢。どれ程の人がうらやましがることか。
「とにかく、あの時の礼がまだだったな。あの時は凄く助かった。いまだにあの船は感謝している。それに、話で聞いたレナ姫様の、王族襲撃事件。レナ姫様、リオの為に有り難うございます。リオに変わってお礼いたします」
キョウの台詞にレナ姫は真っ赤に成った。
「あっ、あれは、その、違うのじゃ………そうじゃ、新しい権限を使いたくてな」
照れ隠しをしているレナ姫に対して、カインはまんべんな笑顔を作った。
「だろ? うちの姫様も中々遣るだろ。あの時は格好良かったぞ」
カインは誇ったように胸を張った。
最近は誉められる事が多くなったが、まだ馴れていないのか、カインの台詞に顔を真っ赤にして目線を外した。
「とっ、ともかくだ、キョウ早くリオ姫に会わせるのじゃ!」
あまりに誉められ落ち着かないのだろう。レナ姫は話題をかえキョウを急がせる。
キョウは騎士の敬礼をレナ姫に向けて、三人は移動した。
そして、キョウは一度だけ振り返り、現実と成った、リオの風船を見つめる。
「でも、あれって、あの時のリオの言ったやつだろう? よくあれだけの言葉で、作る気に成ったな」
「あぁ、お陰さまでな。レナ姫の光栄ある一歩だ」
カインの言葉に、レナ姫は得意に胸を張った。
「あれはまだ試作機じゃ。本来なら、あれの三倍大きくなる予定じゃ。名はそのまま、リオの風船にした」
「リオの名前を付けてくれたのか、レナ姫様は凄いな。これではリオも負けるかもな」
キョウの台詞にレナ姫は純粋に喜んだ。
レナ姫からして、リオは一番の友達であり、一番の競争相手だ。リオより凄いと思われたら嬉しい。
しかし、カインはキョウの台詞の裏に何か有ると感じとったが、今は口を出さないでいる。
キョウは二人を城に案内するため、メインロードを歩いていく。
あれほど荒れていた石畳は、綺麗に修復されている。
「町は復旧途中か?」
「あぁ、見てわかる通り、道の整備から始めている。予定ではメインロードは二つ作られる予定で、東にもう一本有るんだ」
「二つも? 無意味なんじゃないか?」
「いや、今後は必要だとリオがな。何でも、一方通行の道にするとか、それに、まずは下水道の設備に時間を食ってな。基礎が出来ないと、家が建てられない。俺には必要性が解らないが、リオなりの考えが有るのだろう」
キョウは興味無さげに話している。
カインも解らずに「そうか」と答えているが、レナ姫は驚きで、目を見開いた。
最近はレナ姫も国政を勉強し出しているので、その意味が解った。
どこの国でも、下水道は城にしかない。町の中には溝やどぶがある程度だ。
それは、下水道の概念が遅くて、後からやるとお金が掛かるためである。
一度、石畳をはずし、道を掘ってから、また戻さなくては成らないので、余計な出費と考えられている。
しかし、近年、疫病等はそこから蔓延すると考えられており、水路の確保や、下水道の設置を進める国が多い。
王国ファスマは、法国の大臣達からすれば、羨ましい存在に成るだろう。
「――――凄いな」
キョウとカインは、レナ姫の思わず出た一言が解らずに、不思議に顔を見合わせた。
「所でキョウ、一度ぐらいは国に帰らなくて良いのか?」
現在はキョウとリオは正式に王国ファスマの人間だ。しかし、生まれ故郷に親も友人も居る。
カインはキョウやリオを思いやり、そんなことを口にした。
キョウは男だし、十七歳だ。勝手に家を出てもそれほど珍しい歳ではないが、リオは十三歳に成ったばかりである。どういって出て来かのかは知れないが、親は気が気でないだろう。
「あぁ、近々一度戻ろうと考えているが、リオの準備が進まなくてな。手紙だけは常に出している。俺のオヤジは、何だか選挙と言うものを始め、お前も選挙権が有るから帰ってこいと、ふざけた内容で無視したが、問題はリオの方だ。――――全く、どんな内容をリオが出したか知らないが、一度、リオのお父さんから俺宛に手紙が来た。――――会ったら命の危険を感じる内容だった。ご丁寧に、カミソリまで入っているねんの要りようだ。一度会いたかったが、勇気がない」
キョウは疲れた顔のまま答える。
カインは納得したように頷いた。
キョウは二人を連れて、城に入ると、そのまま最奥地に当たる、あの部屋に連れていった。
あまりにも城の奥に進むので、カインは少し戸惑っている。
レナ姫は待ちきれないように、扉を開けると、すぐに中に駆け出した。
二人は止めずにその様子を見守った。
ドーム状の広い部屋に、巨大な建造物。
その巨大な建造物の前に机が置かれ、いくつものノートパソコンが並べられている。
周りには、ソファーや食事用の別のテーブル、本棚にベッドまであり、ゴミが散乱していて、ごちゃごちゃとしている。ここで、生活しているようすが伺える。
「リオ姫!」
レナ姫は叫びながらリオに向かって走る。
リオは眠そうに顔を上げて、レナ姫を見てから、頭をひねった。
「レナ姫? あれ? レナ姫が来るのは二日後のはずだよね。早く無い?」
戸惑いながらも、リオも椅子から立ち上がり、レナ姫が抱き付いて来るのを受け止めた。
レナ姫はもうすでに、涙でグチャクチャだ。
「リオ姫! 良かったのじゃ。リオ姫は私との約束守ってくれた!」
「だから言ったでしょ、私にも考えがあるって」
「じゃが、心配しとったのじゃぞ! 忙しくても、一度ぐらい顔を見せよ! 友達じゃろ!」
レナ姫は涙を流したまま、リオを責めている。そこまで心配していたのだろう。
「心配させてごめんね。でも、私は約束を守ったから、次はお願いね」
「あぁ、約束を果たしに来たぞっ!」
レナ姫の本気の言葉に、リオも顔をほころばし、抱きしめる。
「うん。有り難う、レナ姫!」
「あぁ、任せよ! 何でも言って………」
レナ姫はそこで眉を寄せ、言葉を止めた。
抱き付いていたので、レナ姫には良くわかった。
「くっ、臭いぞリオ姫! お主、ちゃんと風呂に入っておるのか!」
「えっー? ちゃんと入っているよ。昨日はちょっとアレだけど、一昨日は………あれ? キョウ、一昨日はちゃんと入ったよね?」
「リオ、残念ながら四日前だ」
リオの少し頭をかかげた問い掛けに、キョウは残念そうに答える。
リオにしては、ここ二日ほどの記憶は、含まれていないので、レナ姫の訪問も二日ほどは後と思っていたのだ。
それほど集中していた。
「ともかく、レナ姫が来てくれて良かったよ」
リオの言葉にレナ姫が喜ぶ。
「そうかの? まっ、あの時の約束じゃ、何でも言え私は手伝うぞ! ………とっ、その前に見ぬか、リオ姫の風船が出来上がったぞ! 未々試作機じゃか、中々の出来だぞ!」
「いや、また後ででいいよ。時間が無いし」
リオはすぐに断る。
「そ、そうか? 中々格好が良いのじゃがな、船より早いし揺れないぞ。ちょっとだけ見ぬか?」
「うん。また後でね」
早く見てほしいレナ姫は、色々と説明して、リオに興味を持たそうとするが、再度リオはすんなり断る。
「あれなら、乗ってもいいし、動くよう言ってみるが………」
「また今度にするよ」
「………そうか」
レナ姫は諦めた。
その間にキョウとカインは建造物を見上げていた。
「凄いな。………キョウ、これはなんだ?」
「あぁ、空間輸送システムだ」
「空間輸送システム? なんだそれは?」
カインは聞いたことの無い名前に、嫌な予感がした。
「あぁ、霧が発生した根元だ」
キョウは簡単に答える。
「根元って、お前達はこれを止めたのか?」
「そうだ。あの時は大変だったぞ。法国の兵士はやって来るし、現王のセリオンは強いし」
キョウは思い出してか、顔をしかめた。二度と味わいたくない体験だ。
カインは法国で、その話は聞いていた。
「あ、ところでデルマン皇太子はどうした? あの後、ローランド法王が探していたが見つからなかったろ?」
現在はローランドが法王を継承している。
「あぁ、法国にも戻らなかった。霧に乗っ取られたか、どこかに身を隠したかだろう。だが、法国に戻ってきても、皇太子は剥奪と成っているし、拘束されるだろう」
キョウは頷き、デルマンを思った。
彼は自分の癇癪でこうなったが、キョウ達が法国オスティマに寄らなければ、こんなことには成らなかった。
キョウの考えが解ったのか、カインは首を振る。
「しかたないさ。あそこまでの騒ぎを起こしたんだ、自分でも解っていただろう。………それよりキョウ、これが霧を発生させた装置なら、俺達、別の国の人間が見たら不味くないか?」
キョウはすんなりと頷いた。
「あぁ、国内でも一番の秘密事項だからな。不味いに決まっている」
キョウは嫌なニヤケ顔をした。
カインの予想は当たっていた。この二人はまだ何かを企んでいて、俺達を巻き込もうとしている。
キョウとカインが空間輸送システムの話をしている中、リオは思い出したように頷いた。
そう言えば手紙に書いてあったお祝いを言っていない。
「それより、おめでとう。えっと、レナ第三姫になったよね?」
その台詞にレナ姫は溜息を吐いた。
デルマンが失踪した後、法国では大きく皇太子番号が変わった。
ローランドは法王を継承し、他の者も一から見直しだ。
ローランドはレナ姫を押した。
王族の集まる会議で、あれほどの迫力を見せられたのだ。異存を訴える者は居なかった。
しかし、自分の位が上がったのはうれしいが、ここでもリオに負けている。
「リオ姫こそ、王国ファスマの第二姫ではないか」
その台詞で、リオは今気づいた様子に「そうだねー」と、興味なさげに頷いた。
「番号なんていくらでも良いじゃない。だって、どの道、私もレナ姫も意味ないから」
リオの言っている事はよく解らないが、確かにレナ姫も番号は気にしていない。
要は何をするかが大切だ。
「ともかくだ、何を手伝えばよい? 何でも言ってくれ」
レナ姫はしばらくの間、その言葉を呪うことと成る。
「うん、じゃ、始めるけど、レナ姫は時間有る?」
「あぁ、リオの風船も原案は完成したし、試作機も完成した。後は私が居なくても大丈夫じゃ」
レナ姫の答えにリオま満足気に頷く。
「良かった。じゃ、レナ姫、まずは、これを二週間以内で覚えてね」
リオから渡される分厚い紙束を、レナ姫は両手で受け取り目を白黒させた。
まずはの意味が解らないし、紙に書かれた内容は、見たことのない文字だ。
「二週間? なんじゃ、これは?」
「向こうの言葉。それが解らないと、次に進めないから、早目にお願い。その次はパソコンね。最低でもブラインドタッチまで覚えてもらう。一ヶ月以内で覚えて欲しいから、寝てる時間はないよ」
リオは得意気に答え、レナ姫は戸惑う。
リオが手紙で示したのは、助けて欲しいの文字だけ。内容も期限も、何も書かれていなかった。
しかし、今の内容を聞けば、暫くは帰れない模様。
「えっ? えっ?」
戸惑うレナ姫に、解っていながらキョウはリオに問いかけた。
「リオ、ちゃんと手紙に書いたのか?」
「書いたわよ!」
と、強くいってから、不安になったのかレナ姫に尋ねた。
「書いたよね?」
「書いとらん!」
レナ姫はジト目でリオを睨む。
カインは慌てていた。
「おいおい、法国の大切なお方だぞ、無理はさせるな」
しかし、カインのその願いは叶わなかった。
リオの断固たる意志も大きいが、話を詳しく聞いたレナ姫も、自らの意志でそのまま作業に没頭していく。
約束の日時は迫っていた。
二か月後。
空間輸送システムの前に人々が集まっていた。
リオにキョウ、レナ姫にカイン。そしてイップ王女にセリオン、マグナ。
少人数で護衛は立てていない。
帯刀は許されているが、抜刀は禁じられている。
「いよいよだね」
リオがうれしそうに、キョウに振り向いた。
「あぁ、本当だな、ユキナ元気かな」
今から、リオがしたいことの一歩が始まる。
まずは空間輸送システムを、完全に開けるのである。
イップ王女は再び反対したが、安全だと主張する、リオの詳しい説明を、理論を交えて一週間休むことなく聞いた。
相対性理論、素粒子理論、空間の歪みと捩じれと縺れや、超ひも理論。
わざと難しく教えたのだろう。イップ王女は途中で音を上げた。
さすがのレナ姫も、悩むことが多い理論だ。この世界では今のところ、リオしか理解していない。
「じゃ、レナ姫お願いね」
「あぁ、解っておるが、本当に心配はないのかのう?」
ノートパソコンの前にはレナ姫が座っている。彼女は開ける係らしい。
「大丈夫! 失敗したら、レナ姫のせいだから、私に問題は無いよ」
「私が大丈夫では無いであろう!」
しっかりしたプログラムの時間が取れたのだろう。余裕から来た冗談だ。
リオは笑った。
「大丈夫、私を信じて」
「解っておる。私もプログラムは打った。成功するに決まっておる」
「うん。じゃ、レナ姫、始めて」
レナ姫の短い指がキーボードをリズムよく叩く。
リオのしたいこと。
レナ姫や色々な学者を集め、共にユキナの世界で、知識を得るである。
リオはそれを持ち帰り、こちらの世界で作り、いずれは、ユキナの世界に追い付こうとしている。その第一歩だ。
それはイップ王女の遣ろうとしていたこと。
王国ファスマ再建国もそうだが、これこそが、イップ王女の遣る事だと、リオは思った。
「リオ姫、パスワードを頼む」
万が一のため、パスワードはリオしか知らない。
「うん、パスワードはラズベリーブルー!」
リオは元気よく答えた。
ここでは、少し思っていたことを。
先ずはタイトル。ラズベリーブルーって、いかにも読まれそうに無いタイトルを付けたな。自分でもそう思います。
もう少しましなのが有っただろうと。
あと、今回の話は旅ですが、風景は少ないなと。読んでいる皆様に想像してもらおうと思ったのですが、それでもかなっと思いました。
悪くても良いので、採点していただいたら光栄です。
では、ここで、一旦筆を置きたいと思います。
では、また、次の作品で会えることを楽しみに。
次は陰陽師みたいな話かな?
スペシャルサンクス、つるけいこさん、鷹臣えりさん、ファランクスさん。
あなた方のおかげで、終わりを迎えれました。感謝です。