表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

エピローグ 王国ファスマの騎士

エピローグ  王国ファスマの騎士



 霧の無い時代に移り、一年が経とうとしていた。

 ユキナに(もら)った、五本の鉄の棒は(おお)いに役立ち、リオが()ストラで(つぶや)いた通りに、一年でほとんどの霧の討伐に成功を(おさ)め、今では霧を見かけることすら、王国ファスマでは(めずら)しく成っていた。

 王国ファスマは、霧を斬り裂ける武器を手に、他国の討伐も手がけ、それにより大きな利益も産み出していた。

 その甲斐(かい)あってか、最近では、ようやく他国に再建国をみとめられ、イップ王女が再び王位に付き、近国を集め再建国の大きな祭典(さいてん)を済ませたところだ。

 そこで、イップ王女は正式に婚約(こんやく)を発表し、近々セリオン王の継承式(けいしょうしき)(おこな)われる予定だ。

 祭典(さいてん)だけで予定は一杯有る。

 それに、祭典(さいてん)以外でも来訪者は多く、しだいに昔の様な賑わいのあった国へと戻りつつあった。

 その日も(さわ)がしく、訪問者があった。

 手紙で前もって知らされていたが、それを見るなり、キョウは開いた口が(ふさ)がらなかった。

 リオの風船だ。

 本当に作るとは思わなかった。

 全長三百メートルを超える大型の乗り物が、雄大(ゆうだい)に空を()け、徐々(じょじょ)に近付いてくる。

 こんな大きさは、船ですらまだまだ少ない。

 城から少し離れた、大きな広場にそれは止まった。

 手紙に書かれていた通りに、(あわ)てて大人数(だいにんずう)の男たちが、先端(せんたん)に付いているロープを、力一杯引き寄せ、大きな(くい)に固定した。

 中から飛び出してきたのは、もちろんレナ姫だ。

 レナ姫は一番に飛び降りると、走ってこちらにやって来る。

 髪の毛は短く成っていたが、身長などはあの時とあまり変わっていない。

 後ろからはカインの慌てた声も聞こえる。

 レナ姫はイップ王女とセリオンに頭を下げると、急いでキョウに詰め寄った。

 イップ王女とセリオンは苦笑いだ。

「キョウ、久し振りじゃ。元気にしておったか? 所でリオ姫は何処(どこ)じゃ?」

 (はな)からキョウの元気には気に()けて無いのだろう。答えも聞かずリオを探す。

「レナ姫様、リオ姫は引き込もっております」

「引き込もり?」

「はい。それで、レナ姫様が御出(おいで)(さい)には、『引き連れてきて』と(もう)しておりました。のちほどご案内いたします。(あと)、私は元気にしておりました。御気遣(おきづか)いありがたく(ぞん)じ上げます」

「そうか、元気で何よりじゃ。しかし、リオ姫にこれを見せたかったのじゃがな」

 落胆(らくたん)(かく)せないレナ姫は、唇を(とが)らせる。

「リオ姫の事です。直ぐに見て、レナ姫様の功績(こうせき)(たた)えますよ」

 キョウのその台詞に、レナ姫は機嫌(きげん)を取り戻し、大きく頷いた。

 そこで、他の者も降りてきたので、キョウは騎士の敬礼(けいれい)で挨拶をする。

 皆はイップ王女やセリオンに挨拶を済ませると、必ずキョウの元で長時間足を止めた。

 解っていたことだが、これでは誰が主賓(しゅひん)か解らない。

「これは、バーカード殿。このような場所まで態々(わざわざ)足労(そくろう)です」

 バーカードは相変わらず、背筋を伸ばし、歩いてきた。すぐ後ろにはエドワードが着いている。

「おぉ、リオ姫様の騎士、キョウ殿か。あの時以来だな」

「失礼が有ったあと、お顔を見せずに恐縮(きょうしゅく)です」

 キョウは騎士の敬礼(けいれい)を向けた。

「いやっ、なに、こちらも不都合があり、()められてもしかたない所在(しょざい)で、のちに正式な謝罪をさせて頂きたい」

 相変わらず腰は低いが、何を考えているのかキョウには解らない。油断のならない人物だ。

「バーカード殿、止してくだされ。こちらも、リオ姫に粗相(そそう)が有ったことを謝らなければ成りません、エドワード殿にも、大変御無礼が有ったことを、深く申し上げたい」

 キョウも習い、深々と頭を下げるのを見て、エドワードも頭を下げた。

「キョウ殿、こちらこそ、大人気ない態度に、恥ずかしく思っております。のちほど、リオ姫様にも正式に謝罪(しゃざい)させていただける機会を作ってもらえますよう、お願い申し上げます」

 キョウは以外だと驚く。

 バーカードは摂政(せっせい)としての礼儀が素晴らしいが、以前の記憶からして、エドワードはまだまだ摂政(せっせい)の水に馴染(なじ)んで居なく感じたが違うらしい。

 大きく成長したか、以前のリオが(いつわ)りの姫だったためか。

 一通りの挨拶が終り、皆はイップ王女に着いていく。

 そこでは簡単な歓迎式(かんげいしき)が行われ、外交の交渉がはじまる。

 皆は、霧を止めた時の話を聞かせてほしくて、キョウが歓迎式(かんげいしき)に来ないことを()しんだが、キョウはここまで。ここからはレナ姫をリオの元まで案内するのが仕事だ。

 キョウはやっと終わったと溜め息を吐いた。

 王族や、大臣相手はまだまだ馴れていないし、緊張する。

 残ったのは、リオに連れて来るように頼まれた、レナ姫と、護衛兵長のカインのみだ。

 やっと心が許せる相手だけに成った。

 カインは久し振りの再会に握手(あくしゅ)を求めた。

「キョウ、久し振りだな。身長が伸びたな。あれ以来、法国に寄ってくれずに、寂しかったぞ」

 キョウはカインの手を取り頷く。

「えぇ、あれから一度帰るつもりが、結局は帰れず、ずっと王国ファスマに居ましたから。――――あっ、それはそうと、昇格(しょうかく)おめでとうございます」

 カインはそこで眉間(みけん)(しわ)を寄せた。

「キョウ、お前が成長したのは解る。しかし、俺に対してはもっと気軽でいいぞ。霧を止めたんだ、立場ならお前の方が上だ」

 本人たちは解っていないかもしれないが、今や二人はほかの国でも話題されるほどの英雄だ。それにカインはもっと、再会の喜びを分かち合いたかったのだが、キョウはどこか(かた)い。

 確かにこの年で、王族や大臣相手の出迎えまでさせられているのだ、緊張は有るだろうが、カインはそれでは不満だった。

 そこで、やっとキョウは肩を下げた。それから、周りの例の人物が居ないか見わたした。

どうやら、ご老体(ろうたい)は他に気になることがあるのか、この場にはいない。

 キョウは重い溜め息をついた。

「………聞いてくれ、この国には悪魔がいる。マグナの野郎、あれ以来、俺を敵視(てきし)して見やがる!」

「マグナって、………最高位の、あのマグナか?」

 キョウは頷いた。

「そのマグナだ。勝手に俺の教育係をしていて、言葉遣いを間違えただけで、魔法使って来るんだぞ。信じられるか? 騎士に対して、魔法の矢を放つんだぞ! 本気で首を取りたい奴だ」

 どうやら、キョウはマグナの下で作法(さほう)を習っているらしい。

 カインは絶句(ぜっく)した。

 マグナと言えば、大戦時代からの伝説的魔法使いだ。生きているのも驚きだが、キョウはすごい人物に教育を受けている。

 しかも、伝説のマグナから教育を受けているご本人は、不満満載(ふまんまんさい)らしい。

 霧を止めることで世界を救って、伝説の魔法使いに知識を習い、すごい人生を歩んでいるというのに、その教え方が厳しいと文句を言っている。なんという贅沢。どれ程の人がうらやましがることか。

「とにかく、あの時の礼がまだだったな。あの時は凄く助かった。いまだにあの船は感謝している。それに、話で聞いたレナ姫様の、王族襲撃事件。レナ姫様、リオの為に有り難うございます。リオに変わってお礼いたします」

 キョウの台詞にレナ姫は真っ赤に成った。

「あっ、あれは、その、違うのじゃ………そうじゃ、新しい権限を使いたくてな」

 照れ隠しをしているレナ姫に対して、カインはまんべんな笑顔を作った。

「だろ? うちの姫様も中々遣るだろ。あの時は格好良かったぞ」

 カインは(ほこ)ったように胸を張った。

 最近は()められる事が多くなったが、まだ馴れていないのか、カインの台詞に顔を真っ赤にして目線を外した。

「とっ、ともかくだ、キョウ早くリオ姫に会わせるのじゃ!」

 あまりに()められ落ち着かないのだろう。レナ姫は話題をかえキョウを急がせる。

 キョウは騎士の敬礼(けいれい)をレナ姫に向けて、三人は移動した。

 そして、キョウは一度だけ振り返り、現実と成った、リオの風船を見つめる。

「でも、あれって、あの時のリオの言ったやつだろう? よくあれだけの言葉で、作る気に成ったな」

「あぁ、お陰さまでな。レナ姫の光栄ある一歩だ」

 カインの言葉に、レナ姫は得意に胸を張った。

「あれはまだ試作機じゃ。本来なら、あれの三倍大きくなる予定じゃ。名はそのまま、リオの風船にした」

「リオの名前を付けてくれたのか、レナ姫様は(すご)いな。これではリオも負けるかもな」

 キョウの台詞にレナ姫は純粋(じゅんすい)に喜んだ。

 レナ姫からして、リオは一番の友達であり、一番の競争相手だ。リオより凄いと思われたら嬉しい。

 しかし、カインはキョウの台詞の裏に何か有ると感じとったが、今は口を出さないでいる。

 キョウは二人を城に案内するため、メインロードを歩いていく。

 あれほど()れていた石畳(いしだたみ)は、綺麗に修復されている。

「町は復旧途中(ふっきゅうとちゅう)か?」

「あぁ、見てわかる通り、道の整備から始めている。予定ではメインロードは二つ作られる予定で、東にもう一本有るんだ」

「二つも? 無意味なんじゃないか?」

「いや、今後は必要だとリオがな。何でも、一方通行の道にするとか、それに、まずは下水道の設備に時間を食ってな。基礎(きそ)が出来ないと、家が建てられない。俺には必要性が解らないが、リオなりの考えが有るのだろう」

 キョウは興味無さげに話している。

 カインも解らずに「そうか」と答えているが、レナ姫は(おど)きで、目を見開いた。

 最近はレナ姫も国政を勉強し出しているので、その意味が解った。

 どこの国でも、下水道は城にしかない。町の中には(みぞ)やどぶがある程度だ。

 それは、下水道の概念(かんねん)が遅くて、後からやるとお金が掛かるためである。

 一度、石畳(いしだたみ)をはずし、道を掘ってから、また戻さなくては成らないので、余計(よけい)な出費と考えられている。

 しかし、近年、疫病等(えきびょうとう)はそこから蔓延(まんえん)すると考えられており、水路の確保や、下水道の設置を進める国が多い。

 王国ファスマは、法国の大臣達からすれば、(うらや)ましい存在に成るだろう。

「――――凄いな」

 キョウとカインは、レナ姫の思わず出た一言が解らずに、不思議に顔を見合わせた。

「所でキョウ、一度ぐらいは国に帰らなくて良いのか?」

 現在はキョウとリオは正式に王国ファスマの人間だ。しかし、生まれ故郷に親も友人も居る。

 カインはキョウやリオを思いやり、そんなことを口にした。

 キョウは男だし、十七歳だ。勝手に家を出てもそれほど珍しい歳ではないが、リオは十三歳に成ったばかりである。どういって出て来かのかは知れないが、親は気が気でないだろう。

「あぁ、近々一度戻ろうと考えているが、リオの準備が進まなくてな。手紙だけは(つね)に出している。俺のオヤジは、何だか選挙と言うものを始め、お前も選挙権が有るから帰ってこいと、ふざけた内容で無視したが、問題はリオの方だ。――――全く、どんな内容をリオが出したか知らないが、一度、リオのお父さんから俺宛(おれあて)に手紙が来た。――――会ったら命の危険を感じる内容だった。ご丁寧に、カミソリまで入っているねんの()りようだ。一度会いたかったが、勇気がない」

 キョウは疲れた顔のまま答える。

 カインは納得したように頷いた。

 キョウは二人を連れて、城に入ると、そのまま最奥地に当たる、あの部屋に連れていった。

 あまりにも城の奥に進むので、カインは少し戸惑(とまど)っている。

 レナ姫は待ちきれないように、扉を開けると、すぐに中に駆け出した。

 二人は止めずにその様子を見守った。

 ドーム状の広い部屋に、巨大な建造物。

 その巨大な建造物の前に机が置かれ、いくつものノートパソコンが並べられている。

 周りには、ソファーや食事用の別のテーブル、本棚にベッドまであり、ゴミが散乱していて、ごちゃごちゃとしている。ここで、生活しているようすが(うかが)える。

「リオ姫!」

 レナ姫は叫びながらリオに向かって走る。

 リオは眠そうに顔を上げて、レナ姫を見てから、頭をひねった。

「レナ姫? あれ? レナ姫が来るのは二日後のはずだよね。早く無い?」

 戸惑(とまど)いながらも、リオも椅子から立ち上がり、レナ姫が抱き付いて来るのを受け止めた。

 レナ姫はもうすでに、涙でグチャクチャだ。

「リオ姫! 良かったのじゃ。リオ姫は私との約束守ってくれた!」

「だから言ったでしょ、私にも考えがあるって」

「じゃが、心配しとったのじゃぞ! 忙しくても、一度ぐらい顔を見せよ! 友達じゃろ!」

 レナ姫は涙を流したまま、リオを責めている。そこまで心配していたのだろう。

「心配させてごめんね。でも、私は約束を守ったから、次はお願いね」

「あぁ、約束を果たしに来たぞっ!」

 レナ姫の本気の言葉に、リオも顔をほころばし、抱きしめる。

「うん。有り難う、レナ姫!」

「あぁ、任せよ! 何でも言って………」

 レナ姫はそこで(まゆ)を寄せ、言葉を止めた。

 抱き付いていたので、レナ姫には良くわかった。

「くっ、臭いぞリオ姫! お主、ちゃんと風呂に入っておるのか!」

「えっー? ちゃんと入っているよ。昨日はちょっとアレだけど、一昨日は………あれ? キョウ、一昨日はちゃんと入ったよね?」

「リオ、残念ながら四日前だ」

 リオの少し頭をかかげた問い掛けに、キョウは残念そうに答える。

 リオにしては、ここ二日ほどの記憶は、(ふく)まれていないので、レナ姫の訪問(ほうもん)も二日ほどは後と思っていたのだ。

 それほど集中していた。

「ともかく、レナ姫が来てくれて良かったよ」

 リオの言葉にレナ姫が喜ぶ。

「そうかの? まっ、あの時の約束じゃ、何でも言え私は手伝うぞ! ………とっ、その前に見ぬか、リオ姫の風船が出来上がったぞ! 未々試作機じゃか、中々の出来だぞ!」

「いや、また後ででいいよ。時間が無いし」

 リオはすぐに(ことわ)る。

「そ、そうか? 中々格好が良いのじゃがな、船より早いし(ゆれ)れないぞ。ちょっとだけ見ぬか?」

「うん。また後でね」

 早く見てほしいレナ姫は、色々と説明して、リオに興味を持たそうとするが、再度リオはすんなり断る。

「あれなら、乗ってもいいし、動くよう言ってみるが………」

「また今度にするよ」

「………そうか」

 レナ姫は(あきら)めた。

 その間にキョウとカインは建造物を見上げていた。

「凄いな。………キョウ、これはなんだ?」

「あぁ、空間輸送システムだ」

「空間輸送システム? なんだそれは?」

 カインは聞いたことの無い名前に、嫌な予感がした。

「あぁ、霧が発生した根元(こんげん)だ」

 キョウは簡単に答える。

根元(こんげん)って、お前達はこれを止めたのか?」

「そうだ。あの時は大変だったぞ。法国の兵士はやって来るし、現王(げんおう)のセリオンは強いし」

 キョウは思い出してか、顔をしかめた。二度と味わいたくない体験だ。

 カインは法国で、その話は聞いていた。

「あ、ところでデルマン皇太子はどうした? あの後、ローランド法王が探していたが見つからなかったろ?」

 現在はローランドが法王を継承(けいしょう)している。

「あぁ、法国にも戻らなかった。霧に乗っ取られたか、どこかに身を隠したかだろう。だが、法国に戻ってきても、皇太子は剥奪(はくだつ)と成っているし、拘束されるだろう」

 キョウは頷き、デルマンを思った。

 彼は自分の癇癪(かんしゃく)でこうなったが、キョウ達が法国オスティマに寄らなければ、こんなことには成らなかった。

 キョウの考えが解ったのか、カインは首を振る。

「しかたないさ。あそこまでの騒ぎを起こしたんだ、自分でも解っていただろう。………それよりキョウ、これが霧を発生させた装置なら、俺達、別の国の人間が見たら不味くないか?」

 キョウはすんなりと頷いた。

「あぁ、国内でも一番の秘密事項(ひみつじこう)だからな。不味いに決まっている」

 キョウは嫌なニヤケ顔をした。

 カインの予想は当たっていた。この二人はまだ何かを(たくら)んでいて、俺達を巻き込もうとしている。

 キョウとカインが空間輸送システムの話をしている中、リオは思い出したように頷いた。

 そう言えば手紙に書いてあったお祝いを言っていない。

「それより、おめでとう。えっと、レナ第三姫になったよね?」

 その台詞にレナ姫は溜息を吐いた。

 デルマンが失踪(しっそう)した後、法国では大きく皇太子番号が変わった。

 ローランドは法王を継承(けいしょう)し、他の者も一から見直しだ。

 ローランドはレナ姫を押した。

 王族の集まる会議で、あれほどの迫力(はくりょく)を見せられたのだ。異存(いぞん)(うった)える者は居なかった。

 しかし、自分の(くらい)が上がったのはうれしいが、ここでもリオに負けている。

「リオ姫こそ、王国ファスマの第二姫ではないか」

 その台詞で、リオは今気づいた様子に「そうだねー」と、興味(きょうみ)なさげに頷いた。

「番号なんていくらでも良いじゃない。だって、どの道、私もレナ姫も意味ないから」

 リオの言っている事はよく解らないが、確かにレナ姫も番号は気にしていない。

 (よう)は何をするかが大切だ。

「ともかくだ、何を手伝えばよい? 何でも言ってくれ」

 レナ姫はしばらくの間、その言葉を呪うことと成る。

「うん、じゃ、始めるけど、レナ姫は時間有る?」

「あぁ、リオの風船も原案(げんあん)は完成したし、試作機も完成した。後は私が居なくても大丈夫じゃ」

 レナ姫の答えにリオま満足気に頷く。

「良かった。じゃ、レナ姫、まずは、これを二週間以内で覚えてね」

 リオから渡される分厚い紙束を、レナ姫は両手で受け取り目を白黒させた。

 まずはの意味が解らないし、紙に書かれた内容は、見たことのない文字だ。

「二週間? なんじゃ、これは?」

「向こうの言葉。それが解らないと、次に進めないから、早目にお願い。その次はパソコンね。最低でもブラインドタッチまで覚えてもらう。一ヶ月以内で覚えて欲しいから、寝てる時間はないよ」

 リオは得意気に答え、レナ姫は戸惑う。

 リオが手紙で(しめ)したのは、助けて欲しいの文字だけ。内容も期限も、何も書かれていなかった。

 しかし、今の内容を聞けば、(しばら)くは帰れない模様(もよう)

「えっ? えっ?」

 戸惑(とまど)うレナ姫に、解っていながらキョウはリオに問いかけた。

「リオ、ちゃんと手紙に書いたのか?」

「書いたわよ!」

 と、強くいってから、不安になったのかレナ姫に(たず)ねた。

「書いたよね?」

「書いとらん!」

 レナ姫はジト目でリオを睨む。

 カインは慌てていた。

「おいおい、法国の大切なお方だぞ、無理はさせるな」

 しかし、カインのその願いは(かな)わなかった。

 リオの断固(だんこ)たる意志も大きいが、話を詳しく聞いたレナ姫も、自らの意志でそのまま作業に没頭(ぼっとう)していく。

 約束の日時は(せま)っていた。



 二か月後。

 空間輸送システムの前に人々が集まっていた。

 リオにキョウ、レナ姫にカイン。そしてイップ王女にセリオン、マグナ。

 少人数で護衛は立てていない。

 帯刀(たいとう)は許されているが、抜刀(ばっとう)は禁じられている。

「いよいよだね」

 リオがうれしそうに、キョウに振り向いた。

「あぁ、本当だな、ユキナ元気かな」

 今から、リオがしたいことの一歩が始まる。

 まずは空間輸送システムを、完全に開けるのである。

 イップ王女は再び反対したが、安全だと主張する、リオの詳しい説明を、理論を交えて一週間休むことなく聞いた。

 相対性理論(そうたいせいりろん)、素粒子理論、空間の(ゆが)みと()じれと(もつ)れや、超ひも理論。

 わざと難しく教えたのだろう。イップ王女は途中で音を上げた。

 さすがのレナ姫も、悩むことが多い理論だ。この世界では今のところ、リオしか理解していない。

「じゃ、レナ姫お願いね」

「あぁ、解っておるが、本当に心配はないのかのう?」

 ノートパソコンの前にはレナ姫が座っている。彼女は開ける係らしい。

「大丈夫! 失敗したら、レナ姫のせいだから、私に問題は無いよ」

「私が大丈夫では無いであろう!」

 しっかりしたプログラムの時間が取れたのだろう。余裕から来た冗談だ。

 リオは笑った。

「大丈夫、私を信じて」

「解っておる。私もプログラムは打った。成功するに決まっておる」

「うん。じゃ、レナ姫、始めて」

 レナ姫の短い指がキーボードをリズムよく叩く。

 リオのしたいこと。

 レナ姫や色々な学者を集め、共にユキナの世界で、知識を()るである。

 リオはそれを持ち帰り、こちらの世界で作り、いずれは、ユキナの世界に追い付こうとしている。その第一歩だ。

 それはイップ王女の()ろうとしていたこと。

 王国ファスマ再建国もそうだが、これこそが、イップ王女の遣る事だと、リオは思った。

「リオ姫、パスワードを頼む」

 万が一のため、パスワードはリオしか知らない。

「うん、パスワードはラズベリーブルー!」

 リオは元気よく答えた。

ここでは、少し思っていたことを。

先ずはタイトル。ラズベリーブルーって、いかにも読まれそうに無いタイトルを付けたな。自分でもそう思います。

もう少しましなのが有っただろうと。

あと、今回の話は旅ですが、風景は少ないなと。読んでいる皆様に想像してもらおうと思ったのですが、それでもかなっと思いました。

悪くても良いので、採点していただいたら光栄です。

では、ここで、一旦筆を置きたいと思います。

では、また、次の作品で会えることを楽しみに。

次は陰陽師みたいな話かな?

スペシャルサンクス、つるけいこさん、鷹臣えりさん、ファランクスさん。

あなた方のおかげで、終わりを迎えれました。感謝です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ