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異能探偵ジェーン・ドゥの事件簿  作者: ショウゴロウ
2章 不穏なるグレイフォード
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18話 単独調査


現在火蝶魔(クリムゾンバタフライ)事件の調査は行き詰まっている。


犯人の目的は依然不明。爆発する物品・場所に法則性は見られず、犯行時間も不規則だ。


おかげで現場に急行して被害者の救護をするぐらいの場当たり的な対処しかできていない。


だからまあ、実際ジェーンさんがいなくなっても困りはしないのだ。



〜〜〜〜〜〜



「すいません、この動きって──」


手話の教科書を片手にわからないことを聞こうと顔を上げたが誰もいない。


「昨日からヴァレンフォード邸だったわ…」


ジェーンさんがいるのが当たり前になっていた。ジェーンさんはエレノア嬢の護衛のために西区にいる。貴族嫌いの彼女がどうしているのかは心配だが…まずは自分のことをしなくてはならない。


「…パトロールと、人探し」


壁に立てかけていたケースを肩にかけ、懐の『異能危険物取扱許可証』を確認する。


「いってきまーす…」


外出を無人の事務所に知らせて、一人街に繰り出した。



〜〜〜〜〜〜



東2番通り、普段なら露店や親子連れで賑わうそこは平日であることを考慮に入れてもだいぶ静かだった。


「寂しいなあ…」


周囲を見渡してニット帽か蝶の刺青の男、あるいは黒い髪かベール─「?」

探し人ではないが、黒髪の男が目に入った。露店のジュースを飲む糸目の胡散臭い東洋人だったが近くに見覚えがある人がいる。


「…ゲイルさん?」

「ん?ああ、ジャンか。半月ぶりだな」


ゲイルさんが緑髪の女性とジュースを飲んでいた。


「ボス、もっと」

「だったらボクのを飲むといいヨ」

「オマエのどくいりをのむはずねえだろ」

「ユウレン、揶揄うな。金は出すから自分で頼め。ジャンはパトロールか?」

「そんな感じです。パトリシアさんとヴォルフさんは…仕事か」


港の方で指揮をしているのだろう。そうなるとゲイルさんがいるのが疑問だ。


「俺はコイツら問題児の面倒を見てる」

「ボス、問題児とは心外ネ。リシェよりかはマトモなつもりだヨ」

「ウチらをぜんめつさせかけたバカがよくいう、ユーレンとどーれつとかイヤなんだけど」

「諦めろ」


知らない顔だがブラウンラットのメンバーらしい。


「紹介してなかったな。ウチ(ブラウンラット)の契約者のユウレンとリシェだ」

「幽霊(ゴースト)に蓮(ロータス)と書くヨ。よろしくネ」

「いつもはへやにいる。よろしく」


月華風の派手な上着を着たユウレンさんに花の髪飾りをした緑髪のリシェさん。

握手しようを手を出したが止められた。


「ボクの異能は毒、触らない方が身のためだヨ」

「めんどくさい」

「そう、ですか…」


ユウレンさんはともかくリシェさんはだいぶ変わった人らしい。


「火蝶魔(クリムゾンバタフライ)事件はどんな感じだ?独自に調べてはいるが…」

「えーっと、言っていいんでしょうか?」


警察の調査で得られた情報もある。部外者に伝えていいのか…


「それもそうか。じゃあこっちでわかったことを一方的に伝えておく。お前ら、周りの迷惑にならないようにな」

「はーい」「わかったヨ」

「ありがとうございます…」

「名前は報告書に書くなよ」


別の露店へ歩いて行く彼らを見送り、僕がメモ帳とペンを構えるのを待ってからゲイルさんは口を開いた。


「旦那様のツテと船員を締め上げ…もとい聞き込みで得た情報だ。火蝶魔(クリムゾンバタフライ)、蝶の刺青の男。奴は10日前に客船に乗ってリュミエールから来たらしい。乗員名簿曰く名前は『アシュトン・ヴェイル』。同行者が一人と船上で親しくなった奴が一人。三人で会話していたと証言がある」

「同行者?」

「『ヴィクター・ウィリアムズ』。紙袋を被った変な男らしい」

「え、黒髪の少女じゃなく?」


黒髪の少女かと思っていた予想が外れた。思わず疑問の声を漏らす。


「グレイフォードでの下船記録はあるんだがそれ以来目撃情報はない」

「黒髪の少女は…」

「そっちは『マドカ・ミカガミ』。さっき言った親しくなった一人だ。黒板で筆談してたと証言がある。こっちはグレイフォードで下船してそれなりに見られてる」


目撃されていない紙袋を被った不審者に元々同行者じゃなかった少女。


増えた疑問点をメモ帳に書き込んでいく。


「ありがとうございます。このお礼は…」

「いい、こっちはお嬢様の件やら何やらで協力できない。火蝶魔(クリムゾンバタフライ)事件をさっさと解決してくれるのが何よりだ」

「お嬢様?わかりました、がんばります!」

「おう、じゃあ「ボス!ユーレンが!」

「ボス!リシェが!」

「やかましい!さっさと帰るぞ!」


騒がしく去っていく彼らを見送る。

得られた情報を有効活用するべく帰路を急いだ。


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