社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
疲れた、もう寝たい。
寮に帰ってベッドに横になりたいけれど、それは多分今日も無理だから、せめて浄化魔法で体と服を綺麗にして机に突っ伏して五分だけでも眠ろう。
ああ、でもその前にお昼休みに食堂の人に分けてもらったビスケットと水で栄養取らなきゃ。
そうしないと死んじゃう。
私の体は疲れと眠気と空腹で限界だった、体力はもうどこにも残ってない。
人よりはだいぶ多すぎる魔力で体と服を浄化ししたらちょっとだけすっきりしたけれど、浄化魔法じゃ体力は戻らない。
私は癒しの魔法は使えない、補助魔法は少し使える程度で得意なのは攻撃魔法だ。それなら五属性全部使えるけれど今私に必要な魔法は攻撃魔法じゃない。
「攻撃魔法なんて得意でも、書類仕事にはなんの役にも立たないわ」
のろのろと鞄に入れていたビスケットを取り出したけれど、教科書に押し潰されてまともに形を保っているものは無かった。
そう言えば授業の後この部屋に来るのが遅いと、あの人に鞄を取り上げられ踏みつけられたのだったと思い出した。
『疲れた顔しているわ、甘い物食べて元気だして』
せっかくの食堂の人がそう言って手渡してくれたのに、ぐちゃぐちゃになってしまったと、ため息を吐きながら書類で埋まっている机の上で僅かに開いた場所にそれを置き、水をとってこようと立ち上がった。
「崩れていても味も彼女の好意も変わらない。s少しでも食べないと倒れてしまうわ、もう日付が変わったし体を休めないと」
励ますように自分に言って一歩足を踏み出す、その途端視界が揺れて目の前が暗くなった。
「あ、」
倒れないように足に力を入れたのに、ぐらりと後ろに体が倒れていく。
バタリとか、バタンとか音が小さな部屋に響いた後、ゴツンと後頭部を打ち付けた衝撃と鈍い痛みを感じたけれど体を起こす気力も体力も無かった。
「また死ぬの?」
声にならない声、それは思わず出た言葉だった。
でも、私は何を言ってるんだろう。また死ぬってどういう事? 私生きてますけど。
自分で自分に突っ込みを入れてる、なんて思った後で、突っ込みってなんだろう。と思う。
違和感を覚えながら、そのまま意識が遠くなっていく。
椅子に座ったままじゃない眠りは久し振りだから、このまま死ねるならそれでもいいか。
なんて、思うほどに私は疲れていたのだ。
「んん、体痛い」
あくびをしながら体を起こすと、体がギシギシときしんでいる気がした。
でもよく寝た、ぐっすり眠っていたのに、窓から差し込む日差しが明るくて目を覚ましてしまった。
起きたくないけど、仕事いかないとなぁと、周囲を見渡して目をこする。
「ここって、どこ? あれ? なんか痛い?」
もう一度周囲を見渡して、頭を抱えて後頭部が変な盛り上がりをしているところに指先が触れ鈍い痛みを感じ、昨日の事を思い出す。
昨日の夜、日付が変わっていたからもう今日か、とにかく真夜中に私は立ち上がった途端視界が揺れて倒れた拍子に頭を打った気がする。
会社で残業中、ドリンク剤を飲んだ後気持ちが悪くなって体に力が入らなくなって、椅子から転げ落ちて、頭を打ったのが最後の記憶だ。
「え、なんで記憶が二人分あるの? あれ? 私誰?」
私はポローニア・ナビィ、ナビィ伯爵家の次女、茶色の髪と茶色の瞳の地味な見た目をしている。
私は村田桐絵、ブラック会社で営業をしてる社畜だ。
「私……」
ショックが大きすぎて、両手を床について項垂れるとサラリと茶色の髪が落ちて視界を隠す。
茶色の髪じゃない、私、村田桐絵は黒い髪だ。美容院に行く暇がないからいつも後ろで一つにしていて、あまりにも伸びすぎた時は事務用のハサミで適当にカットしていた。
俯いた時に、髪が落ちてきたら仕事の邪魔だし、仕事中はおろしたりしない。
「私は、ポローニア? え、それじゃなんで、桐絵の記憶が……」
混乱していると、急にドアが開き金髪似青い瞳の男性が入ってきた。
「何やってるんだ、お前。床に座るなんて令嬢教育もまともに受けていないのか」
「あ、あの。申し訳ありません」
反射的に立ち上がり、頭を下げながらスカートの裾を直す。
頭の中は大混乱だ。
「それで、私の宿題は終わったんだろうな」
「宿題、あの……まだ」
「なんだと? それじゃ生徒会の仕事は」
「そちらもまだです、申し訳ありません」
返事がスラスラと出てくる。
今の私の頭は、間違いなくポローニアのものだと自覚する。
この人は、私の婚約者だ。
「お前、私の命令を軽んじているだろ。焼き菓子を食べながら、適当にしていたんだな?」
「ち、違います。あれは夕食の代わりにしようとしていただけ、きゃあ!」
目ざとく机の上のビスケットに気がついたらしく、机を指さしながら声を荒げる。
それが恐ろしくて言い訳をしようとした途端、どんと肩を押されてそのまま後ろ向きに床に倒れ込んだ。
いきなりだったから、手を着くことも出来ずまた後頭部を打ち付けてしまった。しかも同じ所だ。
昨日は無事だったけれど、今度こそ危ないかもしれない。
「言い訳はいい、お前は今日は授業に出ずにそれを終わらせるんだ。さもないと、お前の出来の悪さを理由に婚約破棄してやる。勿論お前が悪いんだから、慰謝料を請求する。ホルダー家に逆らえると思うなよ」
「そ、そんなっ!」
後頭部の痛みに耐えながら体を起こした私を睨みつけ去っていくのを、呆然と見送る。
バタンッと閉まるドア、出ていったのはゼルカヴァ・ホルダーだ。彼はホルダー侯爵家の嫡男でポローニア・ナビィの婚約だけれど、父親が決めた婚約者を嫌っていて、自分が好き勝手していい下僕だと勘違いしている。
頭の中にその情報がよみがえるけれど、それに私は驚き過ぎてみっともなく床に座り込み自分の茶色の髪を見つめる。
「今のって、ゼルカヴァ・ホルダー?」
ポロ―ニアの記憶では、彼は恐ろしい婚約者だ。
でも、村田桐絵の記憶では違う、彼はそして私は……。
「嘘でしょ、ポローニア・ナビィって、花は夢物語と恋をするに出てきて、ボロカスに婚約者から嫌われてた根暗令嬢じゃない」
認めたくないけれど、私の名前がポローニア・ナビィで、彼はホルダー家と言っていたし、ポロ―ニアの記憶で彼は確かにゼルカヴァ・ホルダーと言う名前だと分かっている。なぜ私が転生しているか分からないけれど、やっぱりここはゲームの世界なんだろう。
さっきの男性は、桐絵が現実逃避にやっていた乙女ゲームに出てくる攻略対象を本物の人間にした様な顔をしていた。私の顔はまだ見ていないけれど、同じくアニメ絵の顔を本物の人間にした様な顔なのだと思う。
「よりによって、ポロ―ニアなの、なんで?」
ポローニアが当て馬の悪役令嬢になるルートでは、攻略対者が婚約者であるポローニアに生徒会の仕事も学園の宿題も押し付けて、ポロ―ニアが満足に仕事をこなせなければ容赦なく罵声を浴びせ殴る蹴るなどをしていた。
家柄だけで生徒会役員になった他の人達は、大人しいポローニアを馬鹿にして、こちらも仕事を押し付けるようになり、いつの間にかポローニアは一人で生徒会の仕事をするようになった。
最初はポロ―ニアの寮の私室でこっそり仕事をさせられていたが、今は校舎の中にある小さな部屋に押し込められて仕事をさせられている。
ポロ―ニア自身の成績が下ればゼルカヴァがそれを理由に婚約破棄する脅してくるから自分の勉強は疎かに出来ないし、生徒会の大量の仕事と婚約者の宿題までやらなくてはならないから、ポローニアは寝る時間を削って働くしかなかった。
ナビィ家は伯爵位、婚約者は侯爵位だから逆らうと家にも迷惑がかかると、ポローニアは家には何も言わず耐えるしかなかったのだ。
ゲームのラストでヒロインはポローニアの状況を知り、助けてくれようとしてくれる。でも、ポローニアは卑屈な考え方でそれを拒否し、ヒロインを階段から突き落とそうとして逆に自分が落ちてしまう。
そうしてポローニアはヒロインに「私があなたみたいに強かったら良かったのに」と最後の言葉を残して死んでしまうのだ。
「今は二年生、隣国の男爵令嬢ヒロインが留学してくるのは私達が三年になった時。つまり、まだまだこの辛い日々が続く」
あのゲームは、ヒロインに恋した攻略対象がクズから真人間に変わり、ヒロイン一筋になるという展開だったから、攻略対象者は皆が何かしら欠点がある。欠点というか、どいつもこいつもクズだ。
攻略対象者のクズさに負けずヒロインは、相手のやることなすことを注意したり叱ったりしながら、更生させていく。
息子の悪行に頭を悩ませていた親達は息子を更生させたヒロインに感謝し、男爵令嬢でも良いから息子の婚約者にと話を進めていくと、相手は身分を隠した隣国の王女だと判明する。
ヒロインは攻略対象者とハッピーエンドを迎えるが、攻略対象者と婚約していた令嬢は悲惨な最後を迎える。例えば王太子殿下の婚約者の場合は、ヒロインをイジメたと家を追い出され、ボローニアの場合、つまり私だ。ヒロインを階段から突き落とそうとして自分が落ちる。理由はさっき思い出した通り。報われない最後というわけだ。
「ヒロインが出てきて、あの人を奪ってくれたら感謝以外の言葉なんてないわよぉ」
誰もいない小さな部屋で、私は頭を抱えてしまう。
ヒロインが攻略対象者の一人と結ばれた後で、彼女に選ばれなかった攻略対象者はそれぞれの婚約者と結婚しながらヒロインを思い続ける。ここでゲームは終わる。
恐ろしい事に、このゲームには有料の追加要素があり、前作でヒロインに選ばれなかった攻略対象者を一人選ぶと新ヒロインと攻略対象者が恋愛していくことが出来る。
なにせ元がクズな性格な人ばかりだから、妻になった相手を蔑ろにするなんてなんとも思わない人ばかりなのだが、新ヒロインと出会うことで攻略対象者は改心して妻と離縁し新ヒロインと再婚する。
なんでそんな酷い人しか攻略対象者にいないゲームなんて夢中になってたんだろと、今なら思うけれど当時はクズをまともにしようと自分の意見をはっきり言うヒロインに憧れていたし、理不尽なことをされても一人耐えたりせずにやり返す姿に、現実のストレスを解消してもらっていたのだ。
何せ私は、仕事を辞めたいのに「お前みたいな人間、この会社を辞めたらどこも雇ってくれない」という上司の声に、サービス残業も休日手当もない休日出勤も耐えて従ってをしていた挙句に、死んでしまったのだから。
元々大人しい性格で、新卒で入った会社がブラックでも理不尽な待遇は許せないなんて声をあげられるわけもなく、上司に恫喝されるのが当たり前になり過ぎて、従う以外の選択肢を持てなかった。
私の両親は私も妹達のことも大切に育ててくれていたから、酷い会社だったと知れば辞めるのは当然だと味方になってくれただろう。
でも、自分が情けなくて言い出せなかったのだ。そのせいで、死ぬくらいなら相談するべきだったと、今の私なら思えるのに……いいや、今の私だって婚約者に脅されてこんな目にあっているのだから、変わっていない。前世と同じだ。
「向こうの有責で婚約破棄なんて贅沢言わないから、解消したい」
そう呟いても何も方法は思いつかない。
ノロノロと椅子に座り、ビスケットの欠片をひとつ口に入れると、水分が無い口の中にビスケットがはりついて、情けなくて涙がこぼれてきた。
「頭痛い」
暫く泣いて、授業開始の鐘の音に我に返る。
授業を連絡無しに休んでしまったという罪悪感と、机の上の未処理の書類の山を処理して宿題も終わらせないといけない現実に目の前が真っ暗になる。
こんな生活をヒロインが現れるまで続けないといけなくて、ヒロインが私の婚約者を選んでくれなければ、私は彼と結婚し不幸な生活が続行してしまう。
「でも、ヒロインが彼を選んだ場合、私は死んでしまうんだわ」
つまり、私はどちらに転んでも不幸にしかならないんだ。
それを知ってしまったら、やる気なんて起きるわけがない。
「お父様に相談する? でも、そうしたら家に迷惑が掛かる。私だけ我慢すれば家族は助かる?」
何か家に迷惑を掛けずに逃げられる方法はないのだろうか、婚約を解消しても家に迷惑がかからない。そんな方法だ。
「他の攻略対象者の婚約者に相談する? でも、今まだヒロインは登場していないし。なんて言ったら信じてもらえるかしら」
考えようとするけれど、打ち付けた後頭部の痛みが強すぎて、考えがまとまらない。
「こんなに頭が痛くて大丈夫なのかしら」
打つけた場所が場所だけに、不安になる。
でも、学園内の医務室には行けない。
頭を打った理由を話したら大問題になるかもしれないし、問題になっても侯爵家の彼の方が庇われるかもしれない。
こうなったら、こっそりと学園の外に出て、薬を買ってくるしかないかもしれない。
「待って、私お金を持ってないわ」
私は寮に入っているし、食事は三食寮で出されるし、必要な物は家が取引している商人を呼び買い物すると、請求は家に行く。
だからお金を使うところがないから、お金を持っていないのをすっかり忘れていた。
それに私はそもそも買い物を自分でしたことは一度もない。この国では、貴族が一人で店に入ることは無いし、仮にその場で支払いが必要になったとしたら一緒にいる使用人が払う。
それは男女共に同じで、だからこそ平民街の市場で、攻略対象者が護衛を置いてヒロインとデートした時、露店で買ったお菓子の支払いをヒロインがしてくれて、ヒロインは素晴らしいというエピソードが攻略対象者全てのルートにあるのだ。
「どうしよう、治療しないとまずい気がする。でも私は寮にメイドを連れてきていないし」
本当はメイドを連れて来て良いことになっているけれど、私は彼の「一人でなんでも出来ないのは困るな」の一言で、連れてくることは出来なかった。
勿論貴族令嬢なんだから、一人で何でもできる方が稀だ。だからこれは彼の嫌がらせなんだけど、従うしかなかった。
幸い制服は一人で着られるし、ドレスも大変だけど一人で着ることが出来るものを持ってきた。
食事は全て食堂だから、お茶の淹れ方とお風呂の入り方、髪の結い方と化粧の仕方を無理矢理覚えて、寮の生活を始めた。
教えてくれたメイド達は、私の覚えが早いし器用だと褒めてくれたけれど、なんのことはない前世を思い出していなくても、前世の意識がどこかにあって、上手いこと手を動かせたのだろう。
「それにしても、どうやって……あ」
頭痛がどんどん酷くなり、絶対に治療しないとマズイ気がしながら、ふと窓から見える景色にゲームの設定を思い出した。
この部屋は校舎の一階、あまり人がこない場所にあり、生徒会の役員の一人が家の伝で無理矢理私の仕事部屋として用意したものだ。
部屋には校舎の廊下に出られるドアの他、小さな窓が一つと、裏庭に出られるドアがあるし、お手洗いと小さな水場もついている珍しい造りだ。
私はいつも深夜まで仕事が終わらないから、寮に戻るためにこの部屋のドアから裏庭に出て寮に帰る。
夜中に校舎の中を歩いていたら、誰かに見つかるかもしれないという。有難い配慮からそういう場所が選ばれたのだ。
迷惑な話だというのに、私は人目につかない帰り方を考えてくださりありがとうございます。とお礼を言わされた。
家格が上の人には逆らってはいけない、そういう意識が出来上がっている私は、言われるままにお礼を言って、毎日深夜にこっそり帰る日々だったのだ。
「庭師に変装している学園長、確か王太子殿下の叔父だった人が、ヒロインのお助けキャラなのよ。彼は正義の人でヒロインを助けてくれる」
もしもその人がいたら私は彼の身分は知らない振りをして、今お金のかわりになるもの、そうだお母様がお守りとしてくれていつも指にはめている指輪がある。
これで、傷を治す魔法薬を買って来て欲しいとお願いしてみよう。
魔法薬を買うには足りないかもしれないけれど、婚約者に突き飛ばされて怪我をしたので内緒で治療がしたいと相談すれば、話の流れで私が生徒会の仕事をさせられていることも話せるかもしれない。
あのクズ男ばかりが出てくるゲームで、あのお助けキャラだけはヒロインをいつも励ましてくれる優しい人だった。
私のあんな人が身近にいたらと、妄想で自分を良く励ましたものだ。あの人が現実にいるなら、きっと私を助けてくれると思う。
「上手く行けば他の婚約者達も助けられるかもしれないわ」
攻略対象者の相手は皆公爵か侯爵家のご令嬢で、私では声をかけることすら難しい。
私の婚約者だけでなく、冷静に思い出すと生徒会役員全員がゲームの攻略対象者と同じ名前だから、つまり全員が紛れもないクズだ。だから平気で私に仕事を押し付けている。
そんな彼らの婚約者達は、私同様様々な苦労を強いられているはずだし、どうせなら全員助けられたらいい。
「朝は確か裏庭の花壇の手入れをしている? あれは、ゲームが始まらないとしてないのかな」
鞄からドアの鍵を取り出し、鞄は置いて一人裏庭に出る。
なんだかふらついている気がする、これ私かなりマズイんじゃないだろうか。
「誰か、助けて」
あまり人目につくのは困る、でも探せないのはもっと困る。
小さな声で、ふらつきながら庭師を探していると、植え込みの影から体の大きな人が出て来た。
「今、助けてと言ったのは君かな」
丈夫さだけが取り柄のような服装で両手で木桶を抱えている男性に、私の小さな声はちゃんと届いていたみたいだった。
それが嬉しくて、何度も頷いた。
本当に会えるとは思っていなかった、ゲームのスチル同様に優しそうな顔をしている。怯えてばかりの私には癒し以外のなにものでもない優しい顔だ。
「はい、私です。どうかこの指輪を代金として魔法薬を買って来てくれませんか」
「魔法薬? 怪我をしているのかな」
そう言うと、素早く私を確認するように視線が動く。
魔法薬で病気は治せないけれど、怪我ならかなり重症でも痕も残らずに治せる。
「はい、突き飛ばされて後ろ向きに倒れたもので頭を床に強く打ってしまいました。出血はしていないようですが、とても痛みが酷くて、歩くのも上手く出来なくて、やっとここまで来たのです」
彼の顔を見て気が抜けたせいだろうか、話をするのも辛い。
これだけ話すだけで、私は体力全部を使った気がする。
「頭を打った? 失礼どの辺りかな」
「ここ……いたっ」
私が教えた場所を、男性はそっと指先で触れると、その途端痛みが走った。
え、たんこぶが出来てるとかじゃないの? こんな痛いとかあるの? あまりの痛さに顔をしかめながら倒れないようにと体に力を入れる。
「君、僅かだけど出血してるよ」
「そんな」
出血と聞いて、途端に体が震え出す。
まさか、私死んじゃうのだろうか、今は動けるけれどふらつくのはかなりまずい気がする。
「医務室……あまり動かない方がいいか、君今どこから来たのかな? 校舎から裏庭に生徒が簡単に出入り出来るところなんてあったかな」
「あの、あそこのドアから、私鍵を持っていますもので」
言いながら、違う意味でまずい気がしてきた。
この人は、生徒が簡単に出入りできる場所は無いと言っていたのと同じなのに、私は鍵を持っているのだから。
「鍵? 誰の指示で」
「あの、生徒会長様です」
あなたの甥です。とは言えないし、あのクズの王太子殿下の名前を安易に口にするなんて恐ろしくて出来ない。
「その場所に案内……まさかあそこかな」
ここから一番近いドアを、指さされて「はい」と返事をすると、二人でドアの前までゆっくと歩く。
「鍵を」
「こちらです」
鍵を手渡すと、躊躇いなくそれで解錠し扉を開く。
「これは驚いた」
「あの」
「ここは、もと学園の小使いの宿直室だった。最近は王族も学園に通うようになり、専門の警備兵を置くようになったから使わなくなった部屋だ。ベッドなどの家具は運び出したはずだが、なぜ机がある?」
それで納得した。
この部屋にはお手洗いと小さな水場がある。
この国は、さすがゲームの世界ともいうべきなのか魔法があり、水道もお手合いも魔石の力を使い前世の世界のようにどちらも使える。
こんな小さな部屋にまでそういう設備が整っているのは、貴族が通う学園だからなのかと思っていたけれど、実は宿直室だったからなのか。
「私は生徒会役員ではありませんから、生徒会室には入れません。そのため、仕事をする部屋を作ってくださいました」
私は頼んではいないけれど。その声に出さない声は正しく伝わったらしい。
「生徒会の仕事は、生徒会役員以外は関われないものだろう」
「はい、その通りですが、私はゼルカヴァ・ホルダー様と婚約している身、婚約者の仕事を手伝うのは当たり前だと」
「一人分には量があるが」
自分から王太子殿下の失態を口に出来ないけれど聞かれたなら答えても良い筈だと、そう判断して「私が仕事を代わってしていると知った皆様から、その……」
言って良いのだろうか、ここで婚約者だけだとておいた方がいいのでは。
生徒会長は王太子殿下、副会長は宰相閣下の息子なのだから、大問題になるかもしれない。
「全部やれと言われたのか」
「その通りでございます。宿題、生徒会の仕事と量が増えていき無理だと申し上げたら、婚約者の手伝いを拒否するような者は、お前の有責で婚約破棄し慰謝料を請求すると。そして昨日は睡眠不足で仕事が進まず、それを婚約者に叱責され」
演技ではなく、本当に涙が込み上げてきて思わず俯いてしまう。
これで、向こうの有責になればいいけれど、世の中そんなに甘いわけがない。
きっと、私が悪いことにされて、家に迷惑が掛かるんだ。
どうしたらいいのか分からない。
いっそ、死んだ方が家のためかもしれない。
「先程薬をと申し上げましたが、それはいりません。私が死んでしまったら、どうか窓の外から逃げていく姿が見えたと証言頂けないでしょうか」
涙をボロボロと流しながらお願いする。
私のせいで家族に迷惑はかけられない。
「証言?」
「はい、このまま生きていても、良いことはなにもありません。婚約者に日々恫喝され仕事をさせられて、少しでも返事が遅れれば私の有責で婚約破棄すると脅されているのです。これで結婚したらいつ殺されてもおかしくありません」
今だって躊躇なく乱暴な扱いをされているのだから、この先何が起きてもおかしくない。
ヒロインが私の婚約者ルートを選んでも、その先にあるのは私の死なのだから、だったら今死んでも同じことだ。
「そこまでのことを……まさか全員なのか」
ブツブツと呟いているのを不安な気持ちで見ながら、部屋の外から聞こえてくる賑やかな声に体が震える。
「今は授業中のはずだが?」
「宿題を預かっていますので、取りに来たのかもしれません」
「なるほど、それでは君は少し大袈裟に怯えたり会話して、彼らを少しの間引き止めてもらえるかな?」
「え、あ、あの」
廊下側の扉が開くほんの少し前、私が返事をする前に裏庭に出る扉の向こうに彼は消えてしまった。
見捨てられたのか、絶望の気持ちが一瞬持ち上がるけれど、彼はそんなことはしないと思い直す。
ゲームで唯一の優しいキャラだった人、私があんな人に現実でも頼れたらと願った人なんだから彼を信じよう。
「仕事は進んでいるだろうな、何をぼーっと立っている!」
「も、申し訳ございません。ご不浄に行っていただけです。決して怠けていたわけでは」
ゾロゾロと生徒会の役員全員が部屋に入ってきて、驚きのあまり目を見開いた。
それぞれが乗馬用の鞭を持っていたのだ。
まだ授業中だというのに、それを途中で抜け出してこの部屋に来た理由は何だろう。考えるのも恐ろしすぎて、今すぐ逃げ出したいのに足が動かない。
「王太子殿下、このようにこいつは最近生意気で言う事を聞きません。大切な生徒会の仕事を何と思っているのか」
「本当だな。見た目が悪いのだからせめて従順であればいいものを」
「言葉で分からないのであれば、畜生の様に躾けないといけないでしょうね」
「言う事を聞けない馬鹿は体に覚えさせる?」
「それがいいかもねえ」
生徒会長、副会長、会計の双子。それに私の婚約者、彼は書記だっけ、その五人がニヤニヤと笑いながら私に近付いてくる。
その顔はどれもお世辞にもヒーローとは呼べるものではなく、悪人顔でクズという言葉がぴったり過ぎるほどあっている。
「近付かないで!」
「騒ぐな不愉快だ、失点一だな。仕事をしないで怠けていたのは失点五、俺の宿題をしていなかったのは失点三くらいか? 素直に自分の非を認めないのは失点一。失点が十になったら落第だ」
それはこの学園の校則、赤点を取ったり、遅刻をしたり、すると失点されていく。
一年は、上期と下期に分けられていて、半期の間に失点が十となると落第になる。
「お前は私の婚約者から落第ってことだ。だが私は優しいからこれから日々の躾に耐え、私達の言う事をなんでも従うというなら、考え直してやるよっ!!」
ビシッと音を立て、机の上に鞭を振り下ろす。
「ひっ!」
「ほら、なんでも言うとおりにしますから、許してくださいと床に這いつくばって言え」
ビシッとまた鞭が振り下ろされる。
「脅すだけじゃ足りないな、体に覚えさせなければ。うーん、腕なら分からない。いや魔法薬を持ってきたから顔でも問題ないか」
「じゃあ、俺は背中」
「僕たちは足!」
王太子殿下はそう言うと、ヒュンと容赦なく私の顔めがけて鞭を振り下ろし、それに合わせて四方八方から鞭を振る音がした。
びくりと体が震えるのに、恐怖で動けない。
王太子殿下はにやにやと笑いながら、顔すれすれに鞭を振る。
ひゅんひゅんと空気を切る鞭の音があちこちから聞こえ、じりじりと私に近づいてくる。
そしてとうとう、五人に囲まれてしまった。
五人全員が鞭を振り上げて、「これは躾だ」という王太子殿下の声が部屋に響いた。
「いやぁっ!」
「止めなさいっ!」
私が頭を抱えしゃがみ込むのと同時に、勢いよく扉が開き、止める声がした。
「邪魔をする、お、叔父上?」
「お前達は何を」
「ち、父上っ」
庭師の振りをした男性の後ろから、豪華な衣装をまとった男女が現れた。
この人達ってまさか。
「すまない、遅くなった。二人を連れてくるのに時間がかかってね」
時間がって、ここは学園でこの方々がいるのは王宮で、それなのにどうやって。
「お前達、女性一人にそれぞれが鞭を持ち何をしていた」
「ち、父上これはこの者が私に不敬を」
『……「本当だな。見た目が悪いのだからせめて従順であればいいものを」……』
王太子殿下が言い訳をしようとした途端、何かが光り声が流れ始めた。
「これは?」
「これは、音を記録する魔道具だけど、ほんの僅かな時間しか記録出来ない。止めないとその上から重ねて記録してしまうんだ」
そんなもの、いつの間においていったんだろ。
知らなかった、それに王太子殿下が父上というのだから、この人達ってやっぱり国王陛下と王妃殿下なのだろうか。
「魔道具を発動してから、王宮に飛んで二人を説明なしに連れてきた」
「飛ぶ?」
「空間移動の魔法。この国では数人の魔法使いしか使えない」
なんでもないことのように説明されたけれど、私の気持ちはいっぱいいっぱいで、寝不足と先程頭を打つけたことと、今の恐怖で限界を迎えてしまった。
「助けてくださり、ありがとうござ……ます」
やっぱり助けてくれた、この人を信じて良かったと心から感謝して、お礼をとにかく言わなちゃと、それだけを頑張って口を開いたところで私の意識は途切れてしまったのだった。
「なんて豪華な天井、え、豪華?」
目を開くと、見事な絵と装飾された天井が目に入ってきた。
あまりのことに呆然としていると、私が目を覚ましたと気がついたのか、メイドのお仕着せを着た女性が声をかけてきた。
「お嬢様、お目覚めでしょうか」
「は、はい」
「ご気分はいかがでしょうか。悪いところがなければスープなどをお持ちいたします」
優しい笑顔を浮かべたメイドにお願いすると、すぐに部屋を出て行った。
「ここどこなのかしら、沢山眠って霧が晴れたみたいに頭がすっきりしてるけれど、どのくらい眠っていたのかしら」
目が覚めても、私はポローニアのまま、つまりこれは夢じゃない。
ここが現実だとしたら、私の婚約はどうなったのだろう。
意識を失う前が、大問題をおこしたということは分かるけれど、それで何が変わるのか分からない。
ゲームの世界だとはいっても、ここは現実で、貴族社会だ。下の爵位の家は上の人達に逆らえない。前世の私が上司に逆らえなかった以上の厳しい上下関係が存在する。
「私、流されちゃうからなあ」
社畜根性が染み付いている。
上の立場の人に強く出られると、それだけで従う理由が出来てしまうんだ。
そして身を粉にして倒れるまで働いてしまう。
「はい、どうぞ」
ノックの音にさっきのメイドさんかな? と、体を起こし気軽に返事をしたら入ってきたのは、きらびやかな服を着た庭師さんと、両親だった。
「目が覚めて良かった。頭の治療が遅れたから魔法薬を使ってはいても心配していたんだ」
「あ、あのこの度はご迷惑を、あの、なんで」
なんでは、両親に向けて言った言葉なのに、答えたのは庭師さんに変装していた彼だった。
彼は私の言葉を、良いように勘違いしてくれたみたいだ。
「すまなかったね。私はあんな格好をしていたけれど、実は学園長をしているんだ」
「学園長……あの、それは」
「ポローニア、こちらは恐れ多くも王弟殿下であらせられるんだよ」
父がそそそっと私に近付き、そっと耳元で囁き教えてくれるけれど、彼もベッドの側に射るから聞こえているだろう。
「お、大変失礼を!」
慌てた振りは得意だ。というか、今は自分の姿を思い出して慌てて毛布で寝間着を隠す。
まさかここ王宮なんて言わないよね? 私の家の王都や屋敷は小さいし、こんなに豪華な部屋はない。
そもそも今は社交のシーズンではないから、両親は領地にいたはずだ。
まさか陛下たちを連れてきた時みたいに、この人が両親を連れてきてくれたのだろうか。
「気にするな、身分を隠していたし、未婚の令嬢に不躾に訪ねたのは私の方、謝罪するなら私だ」
「この格好で、お話を聞いても」
「勿論、伯爵夫人そちらにが肩掛けがある渡してあげて欲しい」
「畏まりました、ポローニア」
「お母様」
じわりと涙が滲む。
入学してからずっと辛い日々を過ごしていた、安心できる人を見て気が緩んでしまった。
あぁ、私ポローニアなんだ。急に乗り移ってしまったんじゃなく。最初から私はポローニアとしてこの世界に生まれてきたんだ。
だって今、両親を見て本当に安心している。
「気なっているだろうから、先に話をしておく」
「は、はい」
「結果として、君の婚約は向こうの有責で破棄扱いになり慰謝料も支払われるが、公には白紙だ」
「白紙、と言いますと」
白紙と解消の違いが分からなくて、聞いてしまう。
「あちらが廃嫡し平民になったから、婚約話が消えた。この国の法では廃嫡し平民に落とした場合はその家に最初からいなかったとされる。つまり存在していない者と婚約はできないから、白紙となり婚約すらしていなかったことになる」
それは、ある意味破棄より有難いのだろうか。
円満な解消だろうと、相手有責の破棄だろうと婚約していた事実は王宮が管理している貴族籍に残る。これは前世の戸籍みたいなもので、平民にはないけれど、貴族は細かく管理されている。
血を残すのが貴族の役割だから、どことどこの血がどの家に入っているという記録を残しているのだそうだ。
「それは、ご配慮頂き有り難く存じます」
「王族が絡んでいることだからな、それに私も関わっているから、甘い処置は出来ない」
「甘い処置、あの殿下方はどのような」
「全て廃嫡、王太子殿下は離宮にて幽閉と決まったよ」
そんなエンド、ゲームには無かった。
これって、私のせいなの?
「わた、私のことだけではありませんよね」
それだけで、こんな重い処罰はされない筈。
私が婚約破棄になったことだけでも驚いているのに、王太子殿下が幽閉?
「良く分かったな。君は噂通り賢いのだろう」
「そんなことは、賢ければ逃げ道を見つけられていたと思います」
私は従うだけだった。
前世は、歯車の一つだと自分に言い聞かせ働き続けた。
今世は、ただ強い者に逆らうことは無駄だと流され、働き続けた。
「実は王太子殿下の婚約者は私の姪なんだが、彼女から、生徒会が働いていないのでは、そう相談を受けた。それをきっかけに彼らを調べてみると、生徒会の予算の横領から始まり、どこかに書類を運び自分達は遊び呆けている。それだけでなく、学園の生徒を脅して金品を巻き上げ、娼館に入り浸り、挙句この国の情報を他国に流した」
そ、そんなのゲームの展開に無かったと思うのだけど、そんなことしていたら廃嫡や幽閉になっても仕方がないのかな。
「様々な証拠が上がってきても、彼ら自身がやっていると証明出来ずにいたんだ。何が小さな罪でも彼らの罪だと証明出来れば、自白の魔法を使う許可が下りる。その機会を待っていた」
自白の魔法、そんな恐ろしいものがあるの。
恐ろしすぎて、ベッドの上に座っているのに倒れそうなんだけれど。
「私はいい機会を作った?」
「そういうことだ。王太子殿下に王位が移ってからでは、証拠があっても罰することは出来なかっただろう。兄は健康だとはいえいつ何があるか分からないからな。君には怖い思いをさせたし、そのせいで魔法薬を使うのが遅くなってしまって申し訳なかった」
「い、いえ。私は助けていただいた身です。感謝以外の言葉はありません」
あのクズと離れられた、それだけで嬉しい。
これから、私自由だわ。
恋愛は無理でも優しい人と結婚できる未来もあるのかもしれない。
「そうか……」
私が幸せな未来を想像して、ニンマリしていると、王弟殿下はちらりと両親に視線を向ける。
「え、お父様? お母様?」
私に優しい顔で頷いて、そっと部屋を出ていく二人。
残ったのは、王弟殿下だけ。
「君は、とても辛い目にあいながら、家のために耐えていた。助けを求めていた君に出会ったのが私で良かったと、神の采配に感謝している」
「あの?」
急に手を掴まれて、急に距離が縮まる。
「これは運命なんだ。私と婚約して欲しい。いや婚約しよう」
「え」
「君を守りたい、乱暴なことはしないと誓うよ」
そう言われたら、頷いてしまう。
あのゲームの中で、私はこの人に現実でも会えたらいいのにと何度思ったか分からない。
本当に助けてくれなくてもいいから、せめて私の辛い現状の話を聞いて欲しかった。そして「頑張っていて偉いね」と一言でいいから言って欲しかった。
それだけで良かったのに、今の私はこの人に助けられた。夢じゃないかと思うけれどこれが現実だ。
「婚約してくれるね」
「は、はい」
私の恩人だと分かっているのに、心のどこかから駄目だ、危険だと止める声が聞こえてくる。
優しい言葉の中に不穏なものを感じ、心の中で警鐘が鳴る。
返事をしてはいけないと思うのに、強く手を握られて、睨むように言われたら無理だとも駄目だとも言えなくなっていた。
こんなところで、強い人に逆らえない、立場が上の人に逆らえない精神が出てきてしまう。
でも、この人となら幸せになれる?
「ありがとう。震えて助けを求める君、それから泣いている君の顔が忘れられなかったんだ」
今、なんて言いました?
私の泣いた顔? それを忘れられない?
え、私やっぱり返事を早まった?
「怖いのに必死になっている姿に、うっとりしてしまった。泣き顔はこれから先は私以外には見せてはいけないよ」
ぎゅうぎゅうと手を握る。その力の強さに顔をしかめてしまう。
「約束、してくれるね」
「あ、あの」
「君の泣き顔は私の、私だけのものだと」
怖い、それってどういう。
あれ? 王弟殿下、この人はお助けキャラだったよね。クズの攻略対象者じゃなかったはず。
優しい顔でヒロインを励ます、お助けキャラ……だよね?
「約束、します」
握られた手が痛くて、じわりと涙が滲む。
「約束してくれて嬉しいよ。大丈夫、痛いことも苦しいこともしない。だから私を信用して」
「はい」
きっと、愛が強い人なんだ。
この人はお助けキャラ、クズじゃない。
自分に言い聞かせながら頷くと、満足そうに微笑んで、王弟殿下は私の目元をチュと吸った。
え、今何したの? まさか私の涙を吸った?
嘘でしょ。
「え、あの、え?」
「涙も私のものだ」
「……はい」
そう素直に頷くだけで、満足そうな笑顔が続くなら、きっと大丈夫。
乱暴なことはしないと誓ってくれる分だけ、前の婚約者より遥かにマシだ。
私は前世社畜、歯車の一つとして働いて働いてそして死んだ女。
今世も、なんの疑問も持たずに従っていれば良い。
そうすれば、今世は前世よりずっとずっと幸せになれる。
はず、だよね?
終わり




