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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「天狗裁き」

作者: 霧夜シオン
掲載日:2025/11/03


落語声劇「天狗裁(てんぐさば)き」


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約30分


必要演者数:最低4名~

      (0:0:4)

      (4:0:0)

      (3:1:0)【性別準拠人数比率】

      (2:2:0)

      (1:3:0)

      (0:4:0)



※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※当台本は元となった落語を声劇として成立させるために大筋は元の作品

 に沿っていますが、セリフの追加及び改変が随所にあります。

 それでも良い方は演じてみていただければ幸いです。



●登場人物


熊公(くまこう):話の主人公。熊五郎(くまごろう)。

   寝ているところを女房(にょうぼう)のお光(みつ)に起こされ、どんな夢を見たか聞かれ

   るが、見てないのでそう答えたら、これが騒ぎのもとに。


お光(みつ):熊公(くまこう)の女房(にょうぼう)。

   熊公(くまこう)が寝ていてニヤニヤ笑いながらブツブツ言ってたのを見て、

   どんな夢を見たのか気になる。

   熊公(くまこう)の見た夢を知り隊その1。


辰公(たつこう):熊公(くまこう)の隣家(りんか)の住人。

   いつも熊公(くまこう)夫婦のケンカを仲裁(ちゅうさい)したりしている。

   熊公(くまこう)の見た夢を知り隊その2。


大家(おおや):熊公(くまこう)夫婦や辰公(たつこう)の住んでいる長屋(ながや)の大家(おおや)。

   辰公(たつこう)と熊公(くまこう)の喧嘩(けんか)を仲裁(ちゅうさい)する。

   熊公(くまこう)の見た夢を知り隊その3。


奉行:南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ)のお奉行(ぶぎょう)様と言えば大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)である。

   …が、この噺(はなし)の大岡(おおおか)さまはだいぶはっちゃけてらっしゃる。

   熊公(くまこう)の見た夢を知り隊その4。


天狗(てんぐ):熊公(くまこう)をお奉行(ぶぎょう)様の拷問(ごうもん)から救った高尾(たかお)の大天狗(おおてんぐ)。

   自分は人間じゃないから興味もないとか言ってるくせに、

   熊公(くまこう)の見た夢を知り隊その5でもある。


奉公人(ほうこうにん):とある裕福(ゆうふく)な家の奉公人(ほうこうにん)。


娘:とある裕福(ゆうふく)な家の娘。

  重い病(やまい)で今夜が峠(とうげ)、という時に、熊公(くまこう)に助けられる。


語り:雰囲気を大事に。




●配役例


熊公:

お光・娘:

辰公・奉行・奉公人:

大家・天狗・語り:



※枕は誰かが適宜(てきぎ)兼(か)ねてください。



枕:皆さんは最近、夢を見たでしょうか。

  【ここで自分のエピソードを入れても良い】

  睡眠てのは三大欲求の一つで、夢は脳内の情報整理の為、感情整理の

  為と言われてます。

  日中の出来事や感情、ストレスの解消や心身の不調の現れなど、

  さまざまですな。

  また、三大欲求以外にも人間には知的好奇心、つまり、知りたいとい

  う気持ちがあります。

  人は秘密にされると知りたいという気持ちがどうしてもわくものです

  。

  夢は見た人にしかその内容は分からないもの、だから寝てても夢を

  見てない場合だってあります。

  ところが、それは傍(はた)から見てれば分かるわけがありませんから、

  こんな騒動(そうどう)に発展する事もありますようで。


熊公:【かすかにいびきをかいて寝ている。】

   ……。


お光:寝ちゃった…ほんとうにもう…お前さん?

   風邪(かぜ)ひくようなとこで寝てたらいけないよ。

   ちょっと、ねえ、お前さん?


熊公:【かすかにいびきをかいて寝ている。】

   ……。


お光:ニヤニヤ笑ってるよ、この人。

   …面白(おもしろ)い夢でも見てんのかね。

   ちょっと起こして聞いてみようかしら。


   ね、ちょいと、お前さん。

   お前さん、起きとくれ。


熊公:【かすかにいびきをかいて寝ている。】

   ……。


お光:ねーえっ、お前さん!

   起きとくれよ!


熊公:んっ、おっ、んん-ーっっ…。

   いやぁすまねえ、こういうとこで寝ちまうから風邪ひくんだよな。

   ダメだなほんと。


お光:いいのよ。

   それでお前さん、どんな夢見てたの?


熊公:…えっ?


お光:いま夢見てたんでしょ?

   なんだかニヤニヤ笑いながらブツブツブツブツ寝言(ねごと)言ってたよ。

   どんな夢見てたんだい?


熊公:夢?いいや、見てねえよ。


お光:見てたよ。見てたよお前さん、


熊公:いや、見てねえって。

   覚えてねえもの。


お光:なに言ってんだい。

   お前さんがそこで夢見てんのを、あたしがここで見てたんだから。


熊公:妙な理屈(りくつ)だなおい。

   見てないってんだよ。


お光:見てたわよ。

   なんか面白(おもしろ)い夢だったんでしょ?笑ってたよ?

   教えてよ。ね、どんな夢見てたんだい?ねえ、どんな夢?ねぇえ。


熊公:だから見てねえっての。


お光:見てたんだって。

   いいじゃないのさ、ちょっと教えてくれたって。

   なんか面白(おもしろ)い事があったら、夫婦で分かち合うのがあるべき形じゃ

   ないのかい?

   もう所帯(しょたい)持って長いんだからさ、夢の内容が変だったからってそれ

   で焼きもち焼いたりとか怒ったりとかさ、あたしはそんな小さな女

   じゃないんだからさ。

   ねえ教えて、どんな夢なんだい?ね、ねーー


熊公:【↑の語尾に食い気味に】

   ばっ、うるせえな、近づいて来るなこの野郎!

   俺ァ見てねえんだっての!


お光:何さ、見てたわよ!


熊公:見てねえよ!なんで見てたって分かるんだよ!

   見てねえよ俺ァ!


お光:見てたでしょ!教えなさいよ!

   面白(おもしろ)い夢だったんでしょ!


熊公:見てねえ!!


お光:ッ……はん!小さい男だね!

   なにそれ、見てねえ!とか言って!

   見てたくせに!

   見てたんでしょ!


熊公:見てねえっつってんだろ!


お光:見てたから見てねえってそう言ってんでしょ!


熊公:じゃあ見てたらなんて言ったらいいんだよこの野郎!


お光:見てたでいいじゃないか!そんでないよう教えりゃいいじゃないか

   !


熊公:見てねえっての!


お光:…言いなさいよ。……言いなさいよ!


熊公:見てねえよッ…!


お光:…ッフン!どうせ、つまんない夢見てたくせに!

   言えないのかい?


熊公:だったら聞かなくたっていいだろこの野郎!

   つまんねえ夢だったら聞かなくったっていいんだからよ!


お光:【猫なで声】

   ねえぇ~教えてよぉ~、ねぇえ~、気になる気になるのぉ~、

   ねぇどんな夢見てたの~??ね、教えて、この通り、ね?

   あたしがここまで折れてるんだからさ、ね?


熊公:折れなくたっていいよバカ野郎。

   見てねえよバカ野郎。見てねえの。見てねえ。見てねえってんだよ

   。いい加減にしろよ、オウっ。


お光:なによ、オウって。偉そうに。

   フンっ、そうやって目を三角にしてオウっとか言えばさ、

   女が言うこと聞くと思ってんだろ。

   言いなさいよ!言わないの!?

   ……しみったれ…!


熊公:なんでェしみったれてな。


お光:しみったれじゃないか。

   夢ぐらい話したっていいだろ。ふん、少ない稼(かせ)ぎしてさ…。


熊公:…お前なんか言ったか?なんか言ったろこの野郎。

   少ないなんだって…!?


お光:少ない稼(かせ)ぎしてって言ったんだよ。

   …甲斐性(かいしょう)なし。


熊公:…っなんだよそれ。

   少ない稼(かせ)ぎって言いぐさがあるかよ!


お光:じゃあ多いってのかい!?


熊公:……少ないけども…。

   っ甲斐性(かいしょう)がっーー


お光:あるのかい!?


熊公:……ないけど…でもそれは、いま言う事じゃないと思うぞ…!

   そういうこと言うとな、俺ァほんと怒るぞ…!

   ッいい加減にーー!


お光:【↑の語尾に食い気味に】

   なにさ拳固(げんこ)振り上げて!

   なんだい、打(ぶ)とうってのかい!?女房(にょうぼう)を!?

   フンっ、面白(おもしろ)いじゃないか!

   やればいいよ!やれんのかい!?ええ?

   臆病者(おくびょうもの)!

   腰抜(こしぬ)け!

   婿養子(むこようし)!


熊公:【わなわな震えている】

   ~~~ッッッ……っ!

   【軽くはたく】


お光:いたァァーーーいッッ!

   顔の骨が折れたよォーーーッ!

   【涙声で】

   うぅぅ女房(にょうぼう)にも言えないような夢を見て女房(にょうぼう)はたいて楽しいかい!

   ころしてやるッ!


熊公:るせぇこの野郎ォーー


お光:【本気でバシバシ引っぱたきながら】

   ああぁぁぁぁあッッッ!!!


辰公:ッ待て待て待てっ!待てっこのっ、待てって!!

   やめろっての!

   どうしたってんだいおみっちゃん!


お光:【涙声で】

   聞いて下さいィィィうちの人がっ、そこでっ居眠(いねむ)りしてでっ、

   ニヤニヤ笑ってっ、ブツブツ寝言(ねごと)言ってでっ、なんがおもじろい夢

   でも見でんのがなってっ、起こじてどんな夢見でたのってっ聞いた

   らっ、夢なんが見でないって言うもんだからっぐやじくでェェェっ

   !


辰公:あぁそうか、そらァ大変だな!

   それで、どうした?


お光:【涙声で】

   夢なんか見でないってっ、だがらぐやじぐでっっ!


辰公:あぁそうかいそうかい。

   それでどうした?


お光:【涙声で】

   夢見でないっでっ、夢見でないっでッ、そう言うんですッッ!


熊公:そうかい…!

   それで?!


お光:【涙声で】

   …ぞれだげでずっ…!


辰公:…なに?


お光:【涙声で】

   ぞれでおじまいなんでず…ッ!

   夢見でないって…悔(くや)しくて…っ!


辰公:……。

   …ぇーどういうことかな?

   夢見てたのって聞いたら、夢見てないって言われたの。

   こいつが夢見てねえって、そう言ったの。

   それだけ?

   それでおしまい?


お光:は、はい…。


辰公:熊公(くまこう)、おめえも?

   本当に?


熊公:あ、ああ…。


辰公:【溜息】

   んだコラ、くだらねェケンカしやがってほんとによ。

   仲(なか)ぁ良すぎんだよおめえ達は。

   やめてくれよもう。


お光:うぅ、ぐずっ…うううぅっ…。


辰公:あぁあぁそうなの、悔(くや)しくて泣いてんの。

   おみっちゃん痛かったろさっき。

   俺そこでずっと見てたけどな、一発目ポンとやられて、

   後はみんなおめえがやってんだもんな。

   熊公(くまこう)、鼻血出てるもんな。

   まぁまぁとりあえず隣の俺の家(うち)行ってな。

   いま俺のかかあが茶ァ煎(い)れて一服(いっぷく)してんだよ。

   こないだ越後(えちご)の本場(ほんば)のかき餅(もち)もらったんだ。

   醤油(しょうゆ)付けて食ったらまたうめえんだこれが。

   おみっちゃんにも食わしてやりてえって、そう言ってたよ。

   な、隣行って、かき餅(もち)食ってこい、な?


お光:【涙声で】

   だってッ、夢の話っ、どうなるのォッ…!

   気になってっ、気になってっ…!


辰公:いいから食ってこいって。


お光:【涙声で】

   だってっ、夢っ…!


辰公:夢とかき餅(もち)、どっちがいいんだ?


お光:【涙声で】

   …かき餅(もち)…っ。


辰公:そうだろ、な。

   かき餅(もち)食ってこい。な。

   熊公(くまこう)にゃ俺から言っておくから。いっぱい食べてこい。うん。


   ……いい加減(かげん)にしろよ、おう。


熊公:…いつも、申し訳ねえ。


辰公:申し訳ねえじゃねえんだよ。

   隣に住んでてよ、日がな一日(いちにち)夫婦ゲンカ聞かされる身

   にもなれってんだ。

   うるさくてかなわねえよ。


熊公:いや、本当に済まねえ。


辰公:まぁまぁ、女同士、バカっ話(ぱなし)でもして茶ァ飲んで、すっきりして

   帰ってくるだろうよ。

   ま、ウチのかかあに任(まか)しとけ。


   …ところで、どんな夢見たんだよ。


熊公:い、いや、見てねえんだって。


辰公:ははは、そんなわけねえって…見たよ、見たんだよ。

   見たんだろ?


熊公:だから、見てねえって…。


辰公:いやいや、見たんだって。分かるんだよ。

   俺も見るよ、そういうの。

   たまにこう居眠りなんぞしてうわーっと目を覚ますとさ、妙な夢を

   見たりする事があるよ。

   脇(わき)でかかあが繕(つくろ)い物なんかしてて、それに俺なんか夢見てたかって

   聞くと見てなかったよって言われてホッとするんだよ。

   だから、そういうことはあるんだ、うん。

   …見たんだろ?教えろよ、どんな夢見たんだよ?


熊公:いや、見てねえんだよ。ホントに。

   ホントに見てねえからケンカになったんだ。


辰公:いいじゃねえか、俺ァ口が堅(かて)えんだから。

   背中ァ鉈(なた)で叩き割られて鉛(なまり)の熱湯(ねっとう)注(そそ)がれたって俺ァ言わねえよ。

   やられた事ねえけどさ。例(たと)えの話だ、うん。

   それくらいの心意気(こころいき)だってこった。

   誰にも言わねえからさ、おみっちゃんだって俺の家に行っちゃって

   んだから、な?


熊公:だから、ホントに見てねえんだって!

   いい加減にしろよオイ!

   見てねえって言ってんだろ、帰(けえ)れ!


辰公:…なんでェ、帰(けえ)れって。


熊公:邪魔でしょうがねえんだよ。俺にだって用があんだから、

   帰(けえ)ってくれよ。


辰公:んな物の言い方があるかよオイ!

   俺ァケンカの仲裁(ちゅうさい)に入ったんじゃねえか!


熊公:それはいつもすまねえ、ありがとうございます。

   けどね、見てもいねえ夢の話はできねえんだから。

   帰(けえ)ってくれ。


辰公:…ああそうかい……ほォ…。


   おう、おめえに聞くけどな、五年前の大晦日(おおみそか)の恩を忘れたか?


熊公:な、何でェ急に、五年前の大晦日(おおみそか)ァ?


辰公:おうおう忘れたなこの野郎。

   五年前の大晦日(おおみそか)だ。

   おめえが年が越せねえ、餅(もち)が買えねえ、銭(ぜに)がねえって俺に泣きつい

   て来たろうが。

   俺が銭(ぜに)をこさえておめえに渡してやって、それで年がようやく越せ

   たんじゃねえか。

   その五年前の大晦日(おおみそか)の恩を忘れて夢の話ができねえってのかこの野

   郎、ええ?恩知らず!


熊公:っ今そういう話じゃねえだろ…!

   じゃあおめえに聞くけどな、四年前の大晦日(おおみそか)の恩を忘れたか!?


辰公:何をォう!?三年前のーー


熊公:【↑の語尾に食い気味にテンポよく】

   二年前のーー


辰公:【↑の語尾に食い気味にテンポよく】

   去年のーー


大家:【↑の語尾に食い気味にテンポよく】

   待て待て待て!大家(おおや)のあたしが間(あいだ)に入るよ!

   なんだ、どうしたんだ、辰公(たつこう)?


辰公:聞いて下さいよ大家(おおや)さん!

   こんな面白(おもしろ)くねえ話はねえんだ!


大家:まあまあ落ち着けよ。

   で、どうしたんだ。


辰公:どうしたんだじゃねえんだ!

   熊公(くまこう)の野郎が家で居眠(いねむ)りしてたらしいんですよ。

   そしたらそれを見てね、この家(うち)のバカかかあがねーー!


熊公:っちょっと待てよこの野郎!

   なに人ん家(ち)のかみさんつかまえてバカかかあだ!


辰公:あれが利巧(りこう)と言えんのかこの野郎!


熊公:…おっしゃる通りです。


辰公:そうだろ!

   で、そのバカかかあがこの野郎を起こしてね、ニヤニヤ笑ってブツ

   ブツ寝言(ねごと)言って居眠(いねむ)りしてたらしいんですよ。

   で、どんな夢見たんだって聞いたらこの野郎に見てねえって言われ

   て、さあケンカですよ。

   そこをあっしが間(あいだ)に入ってね、この家(うち)のバカなかかあを家の利巧(りこう)な

   かかあのとこへやってね、かき餅(もち)食わして落ち着かせてるとこなん

   ですよ。

   それで今、二人っきりになったから、どんな夢を見たんだと聞いた

   らね、俺にまで夢は見てねえって言いやがるんで。

   どう思います?大家(おおや)さん。


大家:なんだ、そんな事かい…。


辰公:そんな事かじゃねえんですよ!

   どう思うんで?大家(おおや)さん!


大家:どう思う、かと言われれば…、お前はバカだ。


辰公:なんであっしがバカなんですか!


大家:お前はな、店賃(たなちん)が六つたまってる。


辰公:今はそれどうでもいいじゃないですか!

   俺の店賃(たなちん)は関係ないでしょう!?


大家:関係?大(おお)ありだよ!

   いいか、昼間っから仕事もしねえでぼんやりして、友達が夢ェ見て

   その内容を気にして、どんな夢見たんだなんて聞いてんのは、

   バカのやる事なんだよ。考えろ少しは。


熊公:だからあっしはバカじゃねえ!


大家:バカなんだよ!

   こんなとこで油売ってねえで、帰れバカ!

   働けバカ!身を粉(こ)にして!粉骨砕身(ふんこつさいしん)!一生懸命!奮励努力(ふんれいどりょく)しろ!

   帰れバカ!働けバカ!金を貯(た)めろバカ!稼(かせ)げバカ!

   店賃(たなちん)入れろバカ!回れ右しろバカ!外へ出ろバカ!

   振り返るなバカ!戸を閉めろバカ!バカッ!!


辰公:~~~~ッッッ!!!


大家:ったく…。


   よく口を割らなかったな、熊公(くまこう)。

   えらい。

   あんなお喋(しゃべ)りに話しちまったら、長屋(ながや)じゅう、町内じゅう、江戸じ

   ゅう、いや日(ひ)の本(もと)じゅう津津浦浦(つつうらうら)またたく間(ま)に広がっていっちまう

   よ。

   そこへいくとあたしは大家(おおや)だ。

   大家(おおや)と言(い)や親も同様、店子(たなこ)と言えば子も同様、親子の間柄(あいだがら)だ。


   どんな夢を見たんだい?


熊公:また始まったよおい…!

   だから見てねえんですって…!


大家:なに言ってんだよ~、見たよお前は。


熊公:何(なん)すか変な喋(しゃべ)り方して…見てないって言ってるじゃないですか!


大家:なァに言ってんだよ~、あたしはもうこの年だよ~?

   やる事なんかもうなんにもないんだよ~。

   何か面白(おもしろ)い話を聞いたってね、もう先は見えてんだから。

   棺桶(かんおけ)の中まで持ってく覚悟(かくご)はできてんだよ。

   だから教えとくれよ。どんな夢見たんだい?


熊公:いやそんな格好(かっこう)してそんなこと言われたってね、見てないんですか

   ら話できねえんですって。


大家:なに言ってんだよォ~、もうこの年になればね、生きててもそんな

   面白(おもしろ)い事なんか転がってないないない。

   だから教えておくれよ~なァァ~。


熊公:すり寄るんじゃねえよ!ジジイこの野郎、帰れ!


大家:…おい、今なんつった。

   ジジイこの野郎帰れとか言ったか…!?


熊公:言いましたよ。ジジイだろ?

   あんたなんかこの野郎だよ。帰ってくれ、邪魔だから。


大家:あのな、あたしは大家(おおや)だよ?


熊公:分かってますよ。


大家:帰れって言いぐさはないだろ。


熊公:帰ってくれよ。ここは俺の家(うち)なんだから。


大家:ハア!?俺の家(うち)とか言ったか!?

   あたしは大家(おおや)、お前は店子(たなこ)だろうが!


熊公:それがどうしたよ。


大家:お前が帰れって言ったって、あたしはこの長屋(ながや)の大家(おおや)だよ!

   お前の住んでるここも含めて、この長屋(ながや)全部があたしの家(うち)なんだよ

   !


熊公:店賃(たなちん)なら毎月きちんきちんと払ってるだろうが!


大家:~~~……お願いだよ、ほんの、ほんの少しで良いんだから…


熊公:【↑の語尾に食い気味に】

   少しでもダメなんだよ!


大家:ッ…じゃあどうしてもできないってんだな?


熊公:ああできないね。

   だって見てねえんだから。


大家:…そうかい、そうかそうかい。よしわかった。良い度胸(どきょう)だ。

   短い付き合いだったけどな、

   ……長屋(ながや)を出てってもらおうかい!


熊公:ちょちょちょ、待ってくれよ!

   いきなり乱暴だな!   


大家:ふん、大家(おおや)にも話せないような物騒(ぶっそう)な夢を見る奴に、この長屋(ながや)に

   住んでもらいたくないんだよこっちは!

   出てけこの野郎!


熊公:そんなべらぼうがあるかィ!!

   俺ァ出てかねえぞ!


大家:出てかねえだァ!?

   ようし分かった!じゃあお奉行(ぶぎょう)様に訴(うった)え出るぞ!


熊公:何をォゥ!?

   訴(うった)えれるもんなら訴(うった)えてみやがれってんだこんちきしょう!


語り:なんてんで見てもないであろう夢の内容を話せと迫(せま)られ、断(ことわ)りゃ

   出てけなんという、暗黒企業(ブラックきぎょう)にも劣(おと)らない黒さで大家(おおや)に詰(つ)め寄られる

   熊公(くまこう)。その苦しさたるや推(お)して知るべしでございます。

   まあ、江戸の頃(ころ)の商家(しょうか)に奉公(ほうこう)なんてのは、現代の方が真っ青になる

   内容だったりするんですが、まあどうでもいい話ですな。

   そして今回の一件を願書(がんしょ)にして奉行所(ぶぎょうしょ)へ提出と相成(あいな)ったわけです。

   奉行所(ぶぎょうしょ)もびっくりでしょう。

   夢の内容を話してくれないから出て行けと言っても出て行かないか

   ら、お奉行(ぶぎょう)様なんとかしてください、なんという実にくだらない趣(おもむき)

   の願書(がんしょ)を出されたわけですから。

   しかしまあ来たものは仕方がないというので、さっそくお白州(しらす)に

   熊公(くまこう)と大家(おおや)が呼び出されます。


奉行:家主(やぬし)・幸兵衛(こうべえ)ならびに、店子(たなこ)・熊五郎(くまごろう)、一同の者、揃(そろ)いおるか?


大家:へへーっ、揃(そろ)いましてございまする。


奉行:…願書(がんしょ)の趣(おもむき)によれば、店子(たなこ)・熊五郎(くまごろう)が見た夢を物語(ものがた)らんが為、

   長屋(ながや)を立ち退(の)けと申すも熊五郎(くまごろう)これを拒否する。

   奉行(ぶぎょう)よりよくよく言い聞かせられたいとあるが、それに相違(そうい)ないか

   ?


大家:ははーっ、相違(そうい)ございません。


奉行:家主(いえぬし)、もそっと前へ出(で)い。

   前へ出(で)いッ。


   よいか、家主(いえぬし)たる者、町役(ちょうやく)である。

   町役(ちょうやく)たる者、下(しもじも)々の鑑(かがみ)にならねばならん大事な役目ぞ。

   しかるにその町役(ちょうやく)が、たかだか見た夢を物語(ものがた)らんがために長屋(ながや)を

   立ち退(の)けなどと申すとは何事か。言語道断(ごんごどうだん)、不届至極(ふとどきしごく)である。

   熊五郎(くまごろう)に罪はない。

   よってこの願書(がんしょ)は願い下(さ)げと致(いた)すぞ。


   良いか!一同に物申(ものもう)す!

   上(かみ)、多用(たよう)の折にこのような詰(つ)まらぬことで上(かみ)の手を煩(わずら)わせる事は

   二度と相(あい)ならん!

   分かったか!


大家&熊公:は、ははァーーーーーッッッ!!


奉行:分かれば良い。


   これで調べは相(あい)すんだ!一同の者立ちませいーーーー…

   あ、熊五郎(くまごろう)はそのままおれよ。


熊公:ええぇ…!?


奉行:…、熊五郎(くまごろう)、もそっと前で出(で)い。

   …前へ出(で)い。


熊公:へ、へい…。


奉行:奉行(ぶぎょう)このたび感服(かんぷく)つかまつった。

   はじめ家人(かじん)が聞きたがり、隣家(りんか)の男が聞きたがり、家主(いえぬし)が聞きたが

   った夢の話。

   よくぞ口外(こうがい)せなんだ。あっぱれあっぱれ。

   男子の誉(ほま)れであるな、はっはっは。


熊公:ぇ、な、何か褒(ほ)められた…?

   あ、ありがとうございます、お奉行(ぶぎょう)様に褒(ほ)めてもらって…。


奉行:はじめ家人(かじん)が聞きたがり、隣家(りんか)の男が聞きたがり、家主(いえぬし)が聞きたが

   った夢の話とやら…この奉行(ぶぎょう)になら聞かせてくれるであろうの?


熊公:ええぇ…!?


   あ、あの、お奉行(ぶぎょう)様?あっしは夢は見てないんで、

   話はできねえんで…。


奉行:…なんじゃ?


熊公:ぁ、いぃえ、夢見てないんで…。


奉行:…さようか。

   しばし待て。


   つくばいの同心(どうしん)、表(おもて)へ出ておれよ。

   五人組一同も良いと言うまで入って来てはならんぞ、人払(ひとばら)いじゃ。

   出ておれ!

   人払(ひとばら)いじゃ!


熊公:え…え…!?


   【二拍】


奉行:【はっちゃけてる】

   …。

   熊五郎(くまごろう)ォォ!二人きりじゃ…!

   どんな夢を見たのだ!?


熊公:えっえっ、えぇぇ…!?

   え、えらい変わりようだよ…!


奉行:【はっちゃけてる】

   どんな夢を見たんだァ!?


熊公:い、いやいやあの、お奉行(ぶぎょう)様、あっしは夢を見てないんです。

   だからお話しできないんで…


奉行:【↑の語尾に食い気味に】

   いぃぃや見たであろォう!?

   どのような夢を見たのだァ!?聞かせてくれェ!


熊公:い、いやですから、見てないんですって…


奉行:いやいやその方(ほう)は分からんであろうがなァ、奉行(ぶぎょう)という職

   は大変に辛い職なのだぞォ?

   上からは抑(おさ)えつけられ、下からは突き上げられェ!

   もうなんか面白(おもしろ)い話でも聞かないとやっておれん!やっておれんの

   だァ!

   だから聞かせてくれんかァ!?どのような夢なのだァ!?


熊公:っだ、だから本当に見てなーー


奉行:【↑の語尾に食い気味に】

   んんンンンン家内(かない)との折り合いも少し良くないのだァ!

   なんか、なんか潤(うるお)いが欲しいんじゃ!

   面白(おもしろ)い話を聞かんと、もうやっておれんのじゃァ!

   聞かしてくれいこの通りィ!!


熊公:い、いやあの、ですから、本当に見てなーー


奉行:【↑の語尾に食い気味に】

   んんンンンン北町奉行(きたまちぶぎょう)のあやつはなァ!遊び人(にん)の金(きん)さんとかいって

   なァ!表(おもて)をブラブラブラブラして楽しそうにやっとるではないかァ

   !なのに南町奉行(みなみまちぶぎょう)のわしはずっと、ずっとここにおるんじゃ!

   つまらん!もう日々つまらんのじゃ!

   悪ければお城に呼び出されて上様(うえさま)になんやかんやご報告せねばなら

   ん!

   もう胃が痛い!針のムシロ!

   頼む教えてくれいこの通りィ!!


熊公:い、いやお奉行(ぶぎょう)様の日常なんか知りませんけど、見てないものを

   話すことはーー


奉行:【↑の語尾に食い気味に】

   んんンンンン正直ぶっちゃけるとなァ!その話が目当(めあ)てで、それを

   聞きたくてこの裁きを開いたのだ!な、な!!?


熊公:…いや、あの、だから見てないんですって…。


奉行:……いくら出せばよい?


熊公:い、いくらって……あの、いいですお奉行(ぶぎょう)様、そうペコペコしない

   で…やめてくださいよ…あっしは町人(ちょうにん)ですから、その頭下げないで

   、涙(なみだ)拭(ふ)いて下さいよ…泣かないで下さいって…!

   しっかりしてくださいよ…!お奉行(ぶぎょう)様ってこう、もっち毅然(きぜん)として

   るもんなんじゃないんですか…!?

   あの、ですからね、見てないものはお話できませんので…!


奉行:…ぐすっ…お上(かみ)から奉行(ぶぎょう)の職を預(あず)かるこのわしにも話すことができ

   んと申すのかァ…!

   偉いんだぞ、お奉行(ぶぎょう)様はえらいんだぞ…!


熊公:いや、そりゃ知ってますけど…見てないんで…。


奉行:…。

   【ここから真面目に】

   はっ、さては貴様、幕府転覆(ばくふてんぷく)をくわだてておるなッ!


熊公:えぇッ!?い、いえそんなバカな事はーー!


奉行:【↑の語尾に食い気味に】

   これ者ども出(い)でい!

   こやつに縄を打て!重き拷問(ごうもん)をもって白状(はくじょう)させるのじゃ!

   引っ立てィ!!


語り:それっとばかり入って来た役人たちによって、あわれ熊公(くまこう)は荒縄(あらなわ)で

   ぐるぐる巻きにされた上、奉行所(ぶぎょうしょ)の松の上に吊(つ)るされてしまいます

   。


熊公:【泣きながら】

   こんな事なら夢見ときゃ良かったよ…!

   見てりゃ話すよ俺だって…!

   …えっ、な、なんだ、つむじ風が…うわあああああッッッ!?!!


   【二拍】


   あでっっ!!

   …いててて……なんだここ……えッ!?あ、あ、あなた様はッ!?


天狗:熊ァ五ォ郎…心(こころ)づいたか…!?


熊公:は、はぁぁ…天狗(てんぐ)様!!


天狗:いかにも、高尾(たかお)の大天狗(おおてんぐ)じゃ…!


熊公:た、高尾(たかお)!?なんであっしが、こんなところにいるんで

   ございましょう!?


天狗:先ほど江戸の空を飛んでおると、南町奉行所(みなみまちぶぎょうしょ)の上にて異(い)なことを

   聞いた。

   はじめ家人(かじん)が聞きたがり、隣家(りんか)の男が聞きたがり、家主(いえぬし)が聞きたが

   った夢の話とやらを、重き拷問(ごうもん)をもってでも白状(はくじょう)させてみせるなど

   と…いやいや、あのような愚(おろ)かな奉行(ぶぎょう)に人は裁けん。

   よってこのわしが貴様を助けてやったと、こういうわけだ。


熊公:そ、そうでございますか!

   命を助けていただきまして、本当にありがとうございました!


天狗:いやいや礼には及ばん。はじめ家人(かじん)が聞きたがり、隣家(りんか)の男が聞き

   たがり、家主(いえぬし)が聞きたがり、奉行(ぶぎょう)までもが聞きたがった夢の話とや

   ら…ハハハ…天狗(てんぐ)は人間ではないゆえ、そのようなつまらぬ話は

   聞きとうない………が、

   どうしても聞いてほしいというのであれば、聞いてやらんこともな

   いがなァ…ハハハ…!


熊公:え、えぇぇぇ…!

   あの、天狗(てんぐ)様、あっしは夢なんて見てないんです。

   だから本当に話はできないんです…!


天狗:わしはな、聞いてやっても良いと言っておるのだぞ…。

   ここは高尾(たかお)の山中(さんちゅう)、誰も聞くものはおらん。二人っきりじゃ。

   のお、熊五郎(くまごろう)。…話して楽になれ。

   どのような夢を見たのだ…?


熊公:いや、あの、本当に見てないんですよ!


天狗:ほお…天狗(てんぐ)に逆(さか)らうとどのような目にあうか知っておるか?

   その身は八つに引き裂かれ、杉の小枝(こえだ)に吊(つ)るされてカラスの餌食(えじき)と

   なるのだぞ。

   貴様、それでも良いと申すのかァ…?


熊公:い、いぃ嫌です!死にたくないです!


天狗:ならばどのような夢を見たか話すのだ!


熊公:いや本当に見てなーー


天狗:【↑の語尾に食い気味に】

   では死にたいか!?


熊公:い、嫌です!嫌だアアア…!

   【声を落としてつぶやく】

   ど、どうすりゃ……ッそうだ…!


   見ました。


天狗:!!見た!?


熊公:けど、なんか手に持ってないと喋(しゃべ)りにくいんで。

   落語家だって扇子(せんす)持ってんでしょ?

   その羽団扇(はねうちわ)でいいんで貸して下さいよ。


天狗:む、むううう……。

   わかった、いいだろう。

   大切に扱えよ。うっかり扇(あお)いだりすると飛んで行ってしまうぞ。


熊公:わかりましたよ。


   えー…一席(いっせき)申し上げます。


天狗:なんだ一席(いっせき)とは。

   ほんとに落語でもやるつもりか。


熊公:実はですな、あたしは屋根船(やねぶね)で寝ておりました。

   そこへ花火がばーーんっ、と上がりまして、船の中では三味線(しゃみせん)の音

   がしました。


天狗:ふむ。


熊公:【羽団扇で扇(あお)ぎながら】

   スチャラカチャン、スチャラカチャンチャン、スチャラカチャン

   ……


天狗:あっこれ!扇(あお)いではならんと言ったであろう!

   それ以上は扇(あお)ぐでない!

   降りてこい降りてこい!


熊公:へへ、降りないよ!

   こいつを手に入れりゃこっちのもんだ。

   いただいてくぜ!


天狗:こっ、これこれこれッッ!

   大事なそれを持っていってはならぬ!

   それは大事な…それがないと、天狗(てんぐ)仲間をハブられてしまうのだ!

   返せッ!


熊公:へっ、返さねえよ!

   もう用はねえや、あばよッ!


天狗:ど、泥棒ーーーッ!


   【二拍】


熊公:へへへ、こいつはすげえや!

   さてと…うん?ありゃあすげえ屋敷だ。

   どんだけの財産があるんだって話だな。

   …けど、なんだかやけに慌ただしいな…。

   降りて聞いてみるか。   


   ちょいと、ものを尋(たず)ねるけどよ。


奉公人:は、はい、なんでしょう?


熊公:なんだかやけに慌(あわ)ただしいけど、何かあったのかい?


奉公人:じ、実はここのお屋敷のお嬢様が重い病(やまい)で、今夜が峠(とうげ)という事

    なんです。

    あんなにお優しく、美しいのに…!


熊公:へえ、そうかい…いや、実はわたしは医者なんだが、もし良ければ

   お嬢様を診(み)てもよいだろうか?

   もしかすると治(なお)せるかもしれない。


奉公人:えっ、お医者様ですか!?

    ど、どうぞこちらへ!


熊公:うむ、ちょいと失礼するよ。

   …なるほど、ふん、ふん…。

   【つぶやく】

   この羽団扇(はねうちわ)なら、病(やまい)だけを吹き飛ばせるかもしれねえ。

   ここはひとつ…


   むんッ!!


娘:あ、あら……?

  さっきまで苦しかったのが、嘘(うそ)のように…!


熊公:【声を落として】

   しめた、うまくいった!


   あー、もう大丈夫ですよ。


娘:本当になんとお礼を言って良いか…!

  あの、もし良ければ、わたくしと、夫婦(めおと)になっていただけませんか…

  !?


熊公:そ、そうかい?

   ははは…そうまで言われちゃ、断れねえなあ…!


語り:かくして熊五郎(くまごろう)は娘と祝言(しゅうげん)をあげ、名家(めいか)の養子に迎えられました。

   そして、その夜。


熊公:ハハハ…いやあ、夢見てえだなァ…俺がこんな美人と一緒になれる

   なんてなァ…。


娘:さ、お前さん…こちらへ…。


熊公:へへへ、こいつァ極楽だァ…!

   ああ、たまんねえーー


お光:ちょいと!

   ちょいとお前さん!

   起きなよお前さん!

   いつまで寝てんだい!?


熊公:ウワッ!!?


   あ、あれ…っな、なんでェおめえは!


お光:ハア?

   なんでェじゃないよ、お前さんの女房(にょうぼう)に向かって。


熊公:あぇッ!?お光(みつ)!?


   あ…夢か。




終劇




参考にした落語口演の噺家演者様等(敬称略)


春風亭一之輔

古今亭志ん生(五代目)



※用語解説


・越後(えちご)

今の新潟県。


・店賃(たなちん)

家賃のこと。六つためてると言うのは、六か月分滞納しているという事。


・店子(たなこ)

長屋を借りて住んでる者の事。


・町役(ちょうやく)

この場合は町役人のこと。

江戸時代に都市の個別の町の自治や民政を担った町人身分の役職のこと

。町奉行の指揮下で、町内への命令伝達や、町民からの訴えの取次ぎ、

事件の調停など、多様な事務を扱った。



・遊び人の金さん

この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみな!

で有名な遠山の金さんこと、北町奉行・遠山金四郎さまである。


・南町奉行(みなみまちぶぎょう)

こちらもご存知、大岡越前守忠相。

大岡越前で有名。


・祝言(しゅうげん)

結婚式。


・べらぼう

1・余りにもひどいさま。はなはだしいさま。

2・人をののしる時に言う語。ばか者。

今回は1の方。


・つくばい

和風の庭に置かれる石でつくられた手水鉢(ちょうずばち)のこと。

茶庭や露地など茶室に面した庭に置かれる設備で、客人が茶事の席に入る

前に手や口を清める場所。 水で清める際に、低く設えられた手水鉢に

しゃがむ姿勢となることから、「つくばい(蹲踞)」という名称になった

。


・家内

奥さん。


・お上(かみ)

この場合は幕府のこと。


・高尾(たかお)

東京都八王子市に位置し、都心から約50kmの関東山地の東端の山。

元来は修験道の霊場であり、真言宗智山派大本山高尾山薬王院有喜寺の

寺域。




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