ゴリラ対ゴリラキラー続編
天地を揺るがす拳と拳の衝突。
ただのパンチの応酬。
地面は陥没し、木々は倒れ、空気は爆発音のように震えた。
「ウホォォォォォッ!!」
ゴリラの拳が振り下ろされる。
それは岩を粉砕し、大地を割る破壊の鉄槌。
「オラァァァァァッ!!!」
ゴリラキラーの拳が迎え撃つ。
鋼鉄をも砕くと言われる、鍛え抜かれた人間の拳。
ドゴォォォォォォォォン!!
衝撃波が周囲一帯を吹き飛ばし、葉が嵐のように舞い上がる。
両者は一歩も引かず、何十発もの拳を交わした。
ゴリラは両拳を顔の前で構えピーカーブースタイル、対するゴリラキラーは片腕をL字に下げて半身で戦うデトロイトスタイル。
互いに血を流し、息は荒れ、しかし目の奥には炎が燃えていた。
「……ウホッ」
(お前、ただの人間じゃないな)
「……フッ」
「当たり前だ。俺はゴリラを倒すために生まれた男だ!」
そんなやり取りをしながら小一時間。
もはや読者が飽きてきた頃。
最後の一撃を放つため、両者は後ろへ大きく跳んだ。
「行くぞゴリラァァッ!覚悟しろぉぉぉおおっ!!」
「ウホホゥオォォォォォ!!!【お前がな!】」
赤熱しながら2つの大きな物体が、巨大な矢となって放たれた。
人間と獣、運命を懸けた最後の拳が、空間を切り裂きながら交錯する。
ゴガァァァァァァンッ!!!
一瞬、世界が白く光った。
そして……………
辺りに静寂が訪れた。
倒れていたのは……ゴリラキラーだった。
だが、その顔には笑みがあった。
「……いいパンチだ……お前は、森の王だ……」
ゴリラは荒い息をつきながら、ゆっくりと立ち上がる。
そして、敗れた男の胸を一度だけドンと叩いた。
それは敬意の証……。
戦いに勝ったのはゴリラ。
月明かりの下、勝者の影が揺れ、敗者の息遣いが夜に溶けていく。
ゴリラキラーとゴリラの戦いは、誰に語られるでもなく、ただ大地の記憶に刻まれた。
そして人々は今も言う――
「森の奥には、人と獣の拳がぶつかり合った跡が残っている」と。
その跡を見た者は、誰もが思うのだ。
あの日、ここで何かが起こり、そして幕を閉じたのだと。
完。