第4話 誕生日
俺が生まれて一年が経った。
今日は俺の誕生日で、パーティーを行うそうだ。
この世界に誕生日という概念はあるようだが、それを祝ったりするのは1歳、7歳、10歳、13歳、16歳の5回だけだそうだ。
というわけで、今日は貴重なその一回目だ。
しかし、パーティーを行う前に病院に行くらしい。
なんでも俺のギフトを専用の装置で確かめるそうだ。
なぜ今日かと言うと、ギフトが能力として発現するのが1歳だかららしい。
それで俺は今、家から遠く離れた最初の病院に向かっている。
まぁ移動手段は徒歩でも馬車でもなく、ワープゲートなのだが…。
なぜワープするのかは、簡単に言うと都市同士が壁に囲われていて、距離がかなり離れているからだ。
どうやらこの世界にもモンスターがいるらしく、ソイツらから町を守るための壁らしい。
他の街にワープした後は徒歩で移動だから少し気持ちが落ち着く。
「流聖も今日で1歳かぁ〜。どんなギフトが与えられたんだろうな。」
「きっと、治癒とか家事みたいな便利で素敵なギフトよ。」
「いやいや、やっぱりパパみたいな戦いに向いた肉体強化とか戦闘系のギフトだよ。」
「それでヒーローになって人を救うのも良いけど、この子は普通で平和に暮らせればそれでいいの。」
両親が楽しそうに会話している。
ちなみに俺は絶対に戦闘系のギフトがいい。
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そうこうしてる間に病院に着いた。
「では、流聖くんをここに座らせてください。」
看護師が装置に案内する。
「怖くないですよ〜。」
お父さんがそう言うが、元年齢18歳の英雄様が今更病院ごときに怖がるはずがない。
ウィーン
急に装置が作動し、カプセルが閉じた。
すると、真っ暗だった装置の中が突然水色に光だす。
体が熱くなり、フワフワした感覚に陥った。
眩しいし体には負担がかかるし、絶対に赤ちゃん相手にすることでは無いと思う。
この世界の子供は体が丈夫なのか?
そういえば、俺が立ち上がった時もそこまで驚いた様子じゃ無かったな。
そのうち意識がぼーっとして、体感でカプセルの中にいる時間がとても長く感じた。
気づいた時にはいつしか終わっていて、お母さんに抱っこされていた。
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しばらく時間が経ち、俺たちは医者のいる部屋へ案内された。
「では、早速ですが流聖くんのギフトは左目で数秒先の未来を見通す。名付けるなら《未来視》ですね。」
「み、未来視!?いやぁ補助系だったかぁ、まぁいいか。」
「補助系かぁ〜。未来を見通すって、なんかかっこいい能力ね。」
お父さんもお母さんも俺のギフトに大した不満は無いようだ。
まぁ、二人の性格的に子供に不満を持つ訳ないけどな。
「そこまでは変わりません。ですが…」
医者が何かありげに口を開く。
「まさか二つ目が!?」
お父さんが言い放つと、医者がコクっと頷く。
「そうです。お察しの通り、流聖くんには未来視以外にも何かがあるようなんです。ただ、それが何かは分かりません。」
「てことは、リュウは二重神与かも知れないってことですか!」
お母さんがそう言うと、医者は再び頷く。
二重神与が何なのかは知らないけど、何かっていうのは魔力かスキルのことなんだろう。
そりゃ珍しいだろうな。
魔力とギフトが両方ってこの世界で俺だけなんじゃないか?
「二重神与であることは間違いないでしょう。ただ、何か分からない以上流聖くんの二つ目のギフトをプロフィールに記載することはできません。それでも二重神与とだけは記載できます。」
「リュウが二重神与なんて、パパ誇らしいな。どんな立派な大人になるんだろうな〜。」
お父さんが俺を抱き上げる。
それにしても未来視か、便利そうな能力だな。
未来が見えるってだいぶ強くないか?
俺のスキルと組み合わせるとチートだぞ。
まぁ、今スキルはまともに使えないけど。
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診断が終わって、再びワープして家まで戻って来た。
「じゃあ改めまして〜!」
「リュウのお誕生日〜!」
「おめでとう〜!!」
「おめでとう〜!!」
パァーン!!
両親が息ピッタリでクラッカーを引き、誕生日を祝ってくれた。
そういえば、こうやってちゃんと誕生日を祝って貰うのは久しぶりかもしれない。
この世界の子供は1歳前後になったら早くも歯が生え揃うらしく、柔らかいものなら食べることが出来た。
だからケーキも食べれた。
俺は重度の甘党でスイーツなどには結構うるさい方だ。
でも、この世界のケーキは前世より種類が豊富で、格別に美味しかった。
俺はとても幸せなひと時を過ごした。
そのままケーキに夢中になっていると、いつの間にか両親がそれぞれ包まれたプレゼントを持っていた。
「リュウ、これが何か分かるかな?」
分かるわけない。
「これはね、誕生日プレゼントで〜す!」
それは見たら分かる。
にしてもプレゼントか…、ちょっと気になるな。
「どっちがいいかな?」
俺はお父さんにそう聞かれ、お母さんのプレゼントを指差した。
正直どっちも気になるが、とりあえず選んでおく。
「えぇ!?そっちがいいの!?」
「ほら、私のプレゼントの方が好きらしいわよ。」
お母さんはプレゼントを開ける。
その中に入っていたのは本だった。
もしかしたら魔導書かもと思い、ウキウキしながら表紙を見てみると、そこに書いてあったのは
1歳から学べる英語学習
の文字だった。
なぜか分からないが、その文字に異様な嫌悪感を覚えた。
それに、魔導書じゃないと分かって完全に興味を失った。
「ん?勉強には興味ないみたいだよ?」
「え〜、そういう感じかぁ。」
「じゃあ次はパパのだね。」
お父さんが長い袋からプレゼントを取り出す。
すると、出てきたのはおもちゃの剣だった。
驚いたのは、偶然にも俺の前世の愛剣と形が同じだったことだ。
俺はそのおもちゃが気に入った。
そしてすぐ手に取り、前世と同じ構えをとる。
「お〜!リュウすごい!様になってる!」
「リュウはそっちの方が好きなのね…。」
お母さんが少ししょんぼりする。