見えない壁
朝、目が覚めると、部屋の中は依然として暗い。カーテンを引き、外の光が部屋に入ってくるが、それさえも僕には眩しく感じる。目をこすりながら、ようやく体を起こし、ベッドから足を下ろす。背中が重く、まるで身体の中に何かが詰まっているような気がした。
時計を見ると、もう昼近くになっていた。ああ、またこんな時間になってしまったか。寝すぎたわけではないが、体が動く気配を感じない。大学に行かなきゃいけないが、それもどうでもいいことのように感じる。
ぼんやりとキッチンに向かう。冷蔵庫を開けても、食材はあまりない。昨日の残り物が一つ二つあるだけだ。まるで、生活そのものが手抜きのように感じられた。いつからか、食事を作るのも面倒になっていた。何もかもが面倒で、どうでもいい。
パソコンを開いて、大学のサイトを確認する。講義の予定、提出しなければならない課題、連絡事項。やらなければならないことがいくつも並んでいるが、そのどれもが僕には関心を引かない。目を通すだけで、気力が抜けるようだ。結局、何も手を付けることなく、またぼんやりと画面を見つめている。
昼過ぎ、仕方なく大学に向かうために支度を始める。街を歩いていても、何も感じることはない。知らない顔ばかりの人々が行き交う中で、僕だけが浮いているように感じた。誰も僕に気づかない。どこかに消えてしまいたい気持ちが、胸の中で膨らんでいく。
大学に着いても、何も変わらない。いつもの顔ぶれ、いつもの空気。無理に笑顔を作り、会話を交わす。だけど、どこかでそれが無意味だと感じている自分がいる。どうしてこんなに空虚なのだろう。何もかもが、どこか他人事のように感じられる。
そんな時、ふと目にした一人の同級生の顔が目に留まる。その顔を見て、思わず息を呑んだ。彼は、あまりにも明るく、元気に周囲と話している。まるで、何かを成し遂げようとするような、力強いエネルギーを感じる。そんな彼を見て、僕は一瞬だけ、自分と何かが違うことを痛感する。
「どうして、僕はこうなんだろう?」
その思いが、無意識に頭をよぎる。
講義が終わると、僕はすぐにバイト先へ向かった。バイトも、もう長く続けているが、そこでもやはり空虚な感覚がついて回る。顔を合わせる同僚たちとも、何かを共有しているわけではない。ただ、お金を稼いでいるだけ。会話は続けるが、心の中では「これでいいのか?」という疑問がずっと鳴り響いている。
バイトが終わると、再びアパートへ戻る。帰る道すがら、少しだけ人混みにまぎれて、誰かと話すようなことができたらいいのに、と思ったこともあった。でも、それすらも面倒で、結局誰とも話さずに帰宅する。
部屋に戻ると、また一人きり。テレビをつけても、画面に映るのは何も面白くない番組ばかり。スマホをいじり、SNSを見ても、そこには見知らぬ顔が並ぶだけだった。今の自分には、何の意味もないように感じられる。
部屋の中、煙草の煙が少しずつ立ち上がり、僕の周りを漂っている。ひとときの安らぎを求めて、煙草を吸う。だが、その安らぎも一瞬で消え、またすぐに空虚が広がっていく。何もかもが無意味で、僕はただ過ぎ去る時間の中に浮かんでいるだけだ。
「何をしても、どうせ変わらない。」
その言葉が、口からこぼれ落ちる。何もかもが、今の自分にとって無駄に思えてならない。