晴れた空に雲がどんどん増えて行く
私、橋本心菜。渡辺さんが祐樹と話す方法があると言って来た。それは、門倉さんと緑川さんを祐樹から離す事。そしてその方法にとんでもない事を言っていた。
でも祐樹とまた前と同じように話す事が出来れば、あの二人なんか関係ない。でもその方法に怖さを感じて結論は保留にした。計画もずさん過ぎる気がした。
月曜日教室に入るとまだ祐樹は来ていなかった。渡辺さんは居る。彼女は私の方を見ると決めた?という顔をしている。
目を逸らしてドアの方を見ると祐樹と門倉さんが手を繋ぎながら嬉しそうな顔をして教室に入って来た。
門倉さんは、一度自分の席にバッグを置くと祐樹の傍に行った。楽しそうに話をしている。
私が早く耕三と別れていれば…。自分自身のいい加減さが嫌になる。でももしそれを…時間を巻き戻す様に出来れば。
いや、祐樹が門倉さんと付き合う前に状態に戻せば。そうすれば、私があそこにいれるかもしれない。もう一度夢を見たい。
だけど、渡辺さんの提案に乗る前に自分だけでもう一度祐樹に話してみたい。本当に一生懸命お願いすれば、何とかなるかもしれない。
今日は祐樹が図書室の受付をする日。帰りに話すチャンスはある。
放課後になり、私は図書室に行こうとして止めた。あそこに行けば祐樹が私を警戒するかもしれない。だから図書室が閉まる前までは教室にいよう。もし先生に注意されたら下駄箱で待っていればいい。
予鈴が鳴った。幸い先生は来なかった。私は下駄箱に行って履き替えて祐樹が来るのを待った。もうこの時間は部活生を除けばほとんどの生徒が帰っている。
あっ、祐樹が来た。
俺が下駄箱に行くと心菜が居た。何しているんだ?上履きを履き替えようとした時、
「祐樹」
「…………」
俺は心菜の言葉を無視して履き替えるといきなり心菜が床の上に土下座して俺を見た。
「祐樹、お願い。聞いて」
今更何なんだ?
「祐樹、本当にごめんなさい。貴方という人がいながら耕三いえ田中と関係を持ってしまったこと、本当にごめんなさい。
貴方とお付き合いを始めた時、田中とは本当に別れていたの。でもちょっとした事で。でもずっと祐樹の事が好きです。今でも好きです。
もう一度お付き合いして欲しいなんて言いません。せめて偶に話が出来る様になりたい」
「祐樹、待ったぁ?えっ、橋本さん何をしているの?」
「私は…」
「橋本さん、自分の都合ばかり言って、何を謝っているのか全然分からない。俺は君と二度と口をきく気はない」
俺のズボンのすそを掴んで来た。
「ごめんなさい。貴方を裏切った事、本当にごめんなさい。私が悪かった。お願いです。せめて口だけでもきける様になりたい」
「橋本さん、手を退けなさい。その汚い手を離しなさい。貴方が傍にいるだけで汚らわしいわ」
俺は面倒になって裾を持たれている方の足を思い切り前に上げた。手が離れた。ズボンも破けなかったようだ。
「橋本さん、いい加減してくれ。もう二度と俺の傍に近寄るな」
「そうよ、橋本さん、私の大切な人に近付かないで。行こう祐樹」
「ああ」
目の前で祐樹と門倉さんが手を繋ぎながら校舎を出て行った。こっちを振返る事も無い。あの女がここに来なければ、なんとなったかもしれない。門倉野乃花許さない。
「野乃花、この前の事といい、さっきの事といい、凄いな。野乃花にもあんなにきつい事言えるんだ」
「普段はあんな言葉使わない。でも大切な人に汚物が近付こうとするならそれをさせない様にするのも彼女の勤めよ」
なんか、将来が怖いような。俺大丈夫かな?
「そんな事より、もうすぐ文化祭ね。今年は二年だし。思い切り楽しみたいな。祐樹と一緒にね」
「俺もだ。野乃花と一緒に楽しみたい」
あれからもう一年が経ったのか。あの時は心菜いや橋本さんに目が行っていたな。まさかあんな事になるなんて。
「祐樹、目が怖いんだけど」
「あっ、ごめん」
「去年の事考えていたの?」
「えっ、何で分かるの?」
「そりゃ、彼女だもの。ねえ今日ちょっと祐樹の所に寄ってもいい?」
「良いけど、もう午後六時になるよ。いても一時間位だぞ」
「祐樹はうちの親より門限厳しいね。連絡しておけば大丈夫だよ」
「そうか?」
翌日、私は学校に行くと直ぐに渡辺さんを廊下に呼びだして
「渡辺さん、あの事実行しよう」
「二人共やる?」
「門倉さんだけでいい。あの女許せない」
「私も同感だわ。細かい事はここじゃ不味いから放課後話そうか」
「うん」
放課後、私と渡辺さんは、また駅の反対側の広場のベンチに座った。
「門倉さんが一人の時でないといけない。今度の文化祭の時がチャンスよ。私達のクラスは今年も模擬店。当然工藤君と門倉さんが別々の時間帯が出来る」
「でも、私達だけじゃ、どうにもならないわ」
「だからあいつらを使うの」
「でも」
「門倉野乃花の貶めたくないの?」
「それはしたい」
「じゃあ、実行するしかない」
「…分かった」
―――――
えーっ?
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