緑川さんとデート
土曜日の放課後、私は野乃花に行って来るねと言うと工藤君の傍に行った。
「工藤君、帰ろうか」
「うん」
私は昨日、野乃花と一緒の帰り道、野乃花の気持ちをはっきりと聞いた。そして昨日の夜一生懸命考えた。そして一つの結論を出した。
工藤君と一緒に校舎を出ると
「工藤君、何処か行く所決めている?」
「実言うと…何も考えていない」
「やっぱり。じゃあ、私の行きたい所に一緒に行って」
これってどこかで聞いたような。
駅まで来ると
「工藤君のマンションの部屋に行きたい。でも勘違いしないで。私は野乃花と違うから。行きたい理由はねっ、私だけ工藤君のお部屋に行っていないでしょ。だから」
そういう事か、それなら
「いいよ。行こうか」
俺のマンションの有る駅に降りると
「ねえ、工藤君。あそこのスーパーね。いつも買い物している所って」
「うん」
「じゃあ、お昼の具材買って行かないと。野乃花も工藤君にお昼作ったんでしょ」
みんな聞いているのか。
俺と緑川さんはスーパーに寄ってからマンションの部屋に帰って来た。ドアを開けると
「入って」
「お邪魔しまーす。うわぁー広ーい。ここに一人で住んでいるの?」
「そうだけど」
そんなに広いのかな?
「じゃあ、工藤君、キッチン使わせて貰うね」
「うん」
緑川さんは、可愛いクマさんのプリントが付いているエプロンを出して着ると
「どう、これ」
「とっても似合っている」
「そ、そうかあ。似合っているって言ってくれるんだぁ」
俺変な事言ったかな?
彼女が作ってくれたのは、鶏もも甘辛煮、出汁巻卵、トマトとレタスのサラダそれにお豆腐のお味噌汁だ。ご飯はパックご飯を電子レンジでチン。これは仕方ない。でもやはり二十分位しかかかっていない。
「凄い、こんなに短い時間でこれだけの料理作れるんだ」
「ふふっ、慣れれば出来るよ。工藤君さえ良ければ毎週末作りに来てあげるけど」
「流石にそれは気持ちだけ貰っておく」
「そうか、残念だな。さっ、食べて」
「うん」
俺は、鶏ももの甘辛煮のお肉がいっぱい付いている所を一口噛むと、とってもジューシーな味が口の中に広がった。
「美味しい!」
「ふふっ、そんなに喜んでくれるんだ。良かった。出汁巻卵も食べて見て」
「うん」
箸で少し摘まんで口に入れると甘さを抑えた美味しさが口に広がる。
「美味しい!」
「ふふっ、工藤君さえ良ければ、毎日でも来るけど」
「気持だけ貰っておく」
また同じ事を言われた。
俺は、ご飯をお代わりする位一杯食べた。本当に美味しかった。
「ご馳走様」
「お粗末様でした」
その後、紅茶を淹れて貰って、リビングのソファに移った。目の前には一番小さいホールのイチゴケーキがある。そしてフォークが二つ。
「こ、これって」
「野乃花から聞いたわ。さっ、食べて」
緑川さんが、フォークにイチゴケーキのクリームとスポンジを乗せて俺の口元に持って来た。
「あの…」
「いいから食べて」
押しに弱い俺。口を開けるとケーキが口の中に入って来た。
「では、私にも。あーん」
緑川さんが口を開けて待っている。可愛い口だ。
もう抵抗は諦めよう。緑川さんの口にイチゴケーキのクリームとスポンジを持って行った。
「おいひい」
「…………」
どう返していいか分からない。
やがて食べ終わると緑川さんが俺の隣にやって来た。そして俺の顔をジッと見ると
「工藤君、もうキスはしたからいいよね」
いきなり口付けをして来た。俺の背中に手を回して柔らく、時には強く口付けしてくる。
あっ、工藤君が私の背中に手を回して来た。ふふっ、このまま。
ずっとしていると、彼から離れた。
「あの緑川さん。門倉さんと同じ事をしないのでは」
「しないとは言っていない。野乃花とは違うって言ったの。私だけまだ見せていない。だから」
緑川さんがブラウスのボタンに手を掛けようとしたので、それを止めさせると
「工藤君、野乃花も、里奈も心菜もみんなして貰っている。そして野乃花はこう言ったの。
初めてをいずれ誰かにあげるなら、最初に好きになった人が良い。あの時こうしていればなんて後悔したくないからって。
だから私も同じ。君が好き。だから私も君に私の初めてをあげたい」
「でも…」
「でもは無し!」
話をしている間にも緑川さんはブラウスのボタンを外していった。綺麗なピンクのブラが見えて、そしてそれが外れた。とても綺麗だ。
「うわっ」
いきなり抱き着いて来た。
「あんまり見ないで恥ずかしいから。ねっ、お願い。大好きな君に上げたい」
今日は天使と悪魔は出て来なかった。
……………。
「っ!」
「止める?」
「来て」
何も分からなかった。ただ彼の指と唇に翻弄された。そして彼と一つになる時、とても痛かったけど、それよりもっと大きな満足感が有った。彼と一つになったという。
目の前に緑川さんがいる。野乃花に負けない位、白くて柔らかくて綺麗な肌。そして形の良い胸、括れた腰、可愛いお尻。また、彼女の大事な所に手を伸ばしてしまった。
「ふふっ、ありがとう。これでみんなと同じ目線になれた。でも工藤君。お願いが有る。野乃花を大事にしてあげて」
「えっ、どういう事?」
「今言った通り。私の初めては大好きな工藤君に上げた。でもそれは、私の自己満足。もちろん君とは恋人同士になりたい。でも私は工藤君より野乃花との友情を選ぶ。だから彼女を大事にしてあげて。お願い」
「緑川さん」
「あっ、それと二人で会った時は、祐樹と呼ばせて。私は優子でいい」
「優子」
「なに、祐樹?」
「俺が優子を選ぶ事は出来ないのか?」
「そんなことないけど。でも」
唇を塞がれた。祐樹は、野乃花より私を選ぶ可能性もあるって事?でもそれは…。
彼にもう一度体を委ねた。一度目とも二度目とも違うこの感覚。これが…。
「家まで送って行くよ」
「ありがとう」
学校のある駅で降りて、歩いて十分。学校からだと五分だけど。家に着くと
「ねえ、祐樹。また行ってもいいかな?」
「うんいいよ。じゃあ、また来週」
「うん」
彼の帰って行く後ろ姿を見ながら、胸が苦しくなって来た。そして自分が決めたはずの結論が崩れていくのが分かった。
ごめんね。野乃花。
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