女の子達の攻防
結局、この一週間で野乃花の事は頭の中で整理出来なかった。俺の中では体の関係を持ったというだけの事。どう彼女と接して行けばいいのか分からない。
今週、野乃花はもっと俺に接触してくるのかと思ったけど、いつもと同じだった。彼女は心の繋がりを強くしたいと言っていたけどこんなんでいいのだろうか。
そして明日土曜日は午前中授業の後、午後から緑川さんと会う事になっている。もし緑川さんも同じ態度に出て来られたら、どうするんだ?
自分が、節操のないヤリ男の様な気がする。彼女次第かな。もしそうなれば、野乃花、緑川さん、水島さんの誰かに絞ってお付き合いしなくてはいけないのだろうか。
もう面倒になって来た。なんでこんな事考えないといけないんだ。
朝からそんな事を憂鬱に考えながら学校に歩いて行くと
「工藤君、おはよ」
「あっ、新垣さん。おはようございます。明日の受付一人ですみません」
「ううん、全然構わないよ。それに来週からは工藤君一人でも出来そうだから」
「はい、何とか出来そうです」
「じゃあ、お昼休みに当番決めようか?」
「そうですね」
新垣さんと一緒に教室に入ると
「おはよ、工藤、新垣さん。今日も二人揃って登校か?」
「おはよ、小見川。まあな」
「否定しないのか?」
「だって、駅からの道で会っただけだから」
「なるほど」
「小見川君、おはよ。そう駅からの道で会っただけだから」
新垣さん、どういう意味で言っているんだ?
「ねえ、ちょっと許容範囲超えたわね」
「うん、明日から私達も」
「そうね」
最近分かって来た。緑川さんと門倉さんは工藤君の事が好きなんだ。今の所順調に来ているのに、邪魔されてたまりますか。
「工藤君、お昼は受付当番の相談だから一緒に食べようね」
「分かってます」
どう見ても新垣さん意図的に言っている。どうしてだ。まさかあの子達に…勘弁してくれ。
午前中の授業が終わり昼休みになると
「工藤君、学食行く?」
「小見川良いか?」
「いや俺他の奴と食べるから」
「えっ?」
工藤争奪戦は新しいパーツが始動し始めたな。これは面白そうだ。ところで俺には来ないのかな?一条にでも相談するかしかないか。
教室でお昼を一緒に食べている門倉さんと水島さんに緑川さんが話しかけた。
「ねえ、野乃花、里奈」
「あなた達、工藤君と同じ方向でしょ。彼の乗る駅から一緒に来れる」
「うーん、私は難しい。学級委員の仕事も有るから工藤君の時間に合わせられない」
「じゃあ、野乃花は?」
「私は、時間は大丈夫だけど彼がどこの車両に乗っているか、まあ聞いてみようか」
「じゃあ、私は野乃花と彼が改札を出てきたら合流するわ。これ以上新垣さんだけに工藤君を独り占めさせる訳には行かない。それと彼の受付担当日も聞かないと」
「そうね。取敢えず、工藤君を新垣さんが合流する前にこっちが合流しないと」
「うん」
ふふっ、優子も野乃花も部活がネックで早々に工藤君の受付担当日に放課後会う事は出来ない筈。私が新垣さんより先に彼と一緒に帰る事にするわ。
三人で食べ終わり、話し込んでいると工藤君が一人で教室に帰って来た。
「優子、里奈。ちょっと聞いて来る」
俺が席に戻ったところで野乃花が近付いて来た。
「工藤君、ちょっと良いかな」
彼女が廊下の方を指さしている。
「なに?」
「ねえ、明日から一緒に登校して良い?工藤君の駅のホームで待っているから」
「えっ?」
「驚かなくてもいいじゃない。新垣さんと一緒に登校するんだもの。私も工藤君と一緒に登校する権利有るでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「駅からは優子も一緒よ」
そういう事か、なんか勘違いしているみたいだけど。野乃花ならその位はいいか。
「分かった。いいよ」
「ほんと!いつもどの車両に乗っているの。何時の電車」
「午前七時五十分の電車、一番後ろから二番目の車両の一番後ろのドア」
「分かった。後さ、受付担当の曜日教えて。なるべく一緒に帰りたい」
なんか今日は積極的だな。
「月、水、金」
「分かった、ありがとう工藤君」
決して名前呼びしないのは嬉しけど、今日はどうしたんだ?
「優子、里奈。聞いて来た。受付担当は月、水、金。朝は彼の駅午前七時五十分に乗るからここの駅には八時には着くわね」
「簡単に教えてくれたわね」
「うん、簡単に教えてくれた」
野乃花、なんか嬉しそう。先週工藤君と会っているし。…まさかね。
「野乃花、今日部活終わったら一緒に帰ろうか」
「良いよ優子」
いつも別々に帰るのにどうしたんだろう?
放課後になり、
「工藤君、鍵取って来るね。図書室に先に行っておいて」
「いや、それも今日は俺が行くよ。早く慣れたいから」
「ほんと、ありがとう。じゃあ先に図書室に行っている」
工藤君、始めはどこまで手伝ってくれるのか心配だったけど、こんなに積極的やってくれるなんて。なんか、ちょっとドキッとしちゃう。
彼って、ちょいイケメンだし、背が高くて、優しくて、少しモテ過ぎなのは気になるけど…あれ、私何考えているんだろう。冷静にならないと。
今、野乃花と一緒に駅に向かっている。
「野乃花、先週の土曜日は工藤君と会ったんでしょ?」
「会ったよ」
「何処で会ったの」
「…彼のマンションの部屋」
「えっ!それってもしかして」
「優子だからはっきり言うね。したよ。初めてを彼に上げた」
「の、野乃花。で、でもまだはっきりと付き合うって決まった訳じゃ?」
「うん、無いよ。でもいいの。本当は逆なのかも知れないけど、彼の心を引き込むのは大変だから、体を先に強行させた。
これからは、彼の心の中にしっかりと入れる様にしていくつもり」
「そうなんだ。上げちゃったんだ」
「明日、優子、彼に会うんでしょ。どうするの?」
「わ、私は」
本当は私も彼に上げるつもりだった。でも野乃花は心を掴むのが難しいから先にしてしまったと言っている。
確かに、彼の心を落とすのは大変だ。体の関係を持っていた方が良いのは分かる。でも本当にそれでいいんだろうか。
もし、私も彼に上げたとしたら野乃花との関係はどうなるの?
「ねえ、野乃花。もし私が彼としてしまったら、私と野乃花の関係はどうなるの?」
「何も変わらないよ。優子には悪いけど、今は私の方が一歩リードと思っている。でももし優子が彼としたら、また同じになるかな。
そして彼の心をどちらが先に掴むかそれだけの事。気になるのは新垣さんの動向。彼女と工藤君は、こんな事まだ先の様に思えるけど分からない。
もし彼女が彼と関係を持てば、私達と同じ位置に来てしまう。そして私達より先に進みそうな気がする。その前に彼の心を掴みたい。少なくとも新垣さんには渡したくない。
それにこんな言い方おかしいかも知れないけど、初めてをいずれ誰かにあげるなら、最初に好きになった人が良い。あの時こうして居ればなんて後悔したくないから」
「野乃花」
この子がここまではっきり言うなんて。そんなに工藤君の事を。だとしたら、私は工藤君は友達のままで野乃花を応援してあげた方がいいのでは。
でも私も工藤君の彼女になりたい。彼の良さは十分に知っている。いま恋人同士になれば一生大事にして貰えそう。どうしよう。
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