門倉さんとデート
中間考査が終わった次の土曜日。今日は午前中だけ授業がある。考査が終わったんだから休みにしてくれと思っても授業の消化を考えると仕方ないんだろう。
そして放課後は門倉さんと遊びに聞く予定だ。だから今日の図書室の受付は新垣さんにお願いした。
午前中の授業が終わると門倉さんが寄って来た。
「工藤君、行こうか」
「ああ」
私、橋本心菜。去年のクリスマスに耕三とラブホに入った事がばれて以来、祐樹とは全く口をきいていない。
もう耕三とはあの時にきっぱりと別れた。ほんのちょっとの自分の間違いでこんな事になるなんて。
クラスの中では、一年生の時からの友達、野乃花や優子が声を掛けてくれるからまだいいけど、他の女子からは全く相手にされていない。
祐樹はまだ誰とも新しい女の子とお付き合いはしていない。少しずつ彼の心の中の私を蘇らせていきたい。そして祐樹と話が出来る友達にまでなれれば。でもどうすれば?
私、渡辺美月。去年の今頃、祐樹を自分から振ってしまった。本当は思い切りまだ好きだったのに。ほんのちょっとした自分の過ちで自分から彼との距離を離してしまった。
もう健司には、相手にされていない。そしてクラスの誰からも。こんなはずじゃなかった。
祐樹はクラスの中でも人気がある。女子だけでなく、男子にも。だからもし祐樹ともう一度よりを戻す事が出来れば、私のクラスでの立場も変るはず。何とか話を普通に出来る友達位になれればいいんだけど。
「工藤君、久しぶりだね。こうして二人きりで会うの」
「そうかな?」
「そうだよ。遠足の時のバスの中を除けば、二人きりになるのは新学期になって初めてでしょ。それよりー。今日はどこか行きたい所ある?」
「全然無い」
「じゃあ、私が行きたい所でいい?」
「良いけど」
大丈夫かな?
門倉さんの行きたい所、それは俺の部屋だった。
「あのどうしてここに?」
「私が行きたい所、つまり来たい所だよ。それはここ工藤君のお部屋」
「えっ、でも」
「でもじゃない。だって工藤君、行きたい所全然無いって言ったから」
「それはそうだけど」
ふふっ、先ずは第一ポイントクリアです。
「さて、駅前のスーパーで買って来たお肉と野菜を今から私が料理します。工藤君一緒にお昼を頂きましょう。外で食べるより良いよね」
「確かに言えるんだけど…」
「工藤君、キッチンにある調理器具使うね」
「うん」
どうなっているんだ。確かに外の〇ックで食べたり映画館に行くよりはいいけど…。
二十分位で門倉さんの料理が出来上がった。豚肉の黒酢餡掛け、トマトとルッコラそれにモッツアレラチーズのサラダ。お味噌汁は酸辣湯スープ。ご飯だけは仕方なくスーパーのご飯を温めた。
「どうかな?」
「凄いよ。こんなに短い時間でこれだけ出来るなんて」
「じゃあ、食べようか」
「うん」
俺は豚肉の黒酢餡掛けを口に入れた。
「上手い!」
「ふふっ、嬉しいな。どんどん食べて」
第二ポイントクリアです。
工藤君とお話をしながらゆっくりと食べた。
「食べたー。とても美味しかった。ご馳走様」
「良かった。ケーキも買ってあるから二人で食べよ」
食事後、リビングに移動して、彼女が入れてくれた紅茶で、途中のケーキ屋さんで買ったモンブランを食べる。
「あの、これ一個しかないんだけど」
「そうよ。工藤君と一つのモンブランを食べるの。もちろんフォークは二つだけど」
「ハードル高くない?」
「自分で低くすればいいのよ。はい、あーんして」
「へっ?そ、それは」
「いいから、早くフォークからケーキが落ちてしまうから」
彼女は強引に俺の口先にフォークに乗せたモンブランを持って来た。
「でも」
「でもはいいから、はい」
はぁ、生まれて初めてのあーんかい。
口に入れるととても甘いクリームの美味しさが広がった。
「美味しいです」
「ふふっ、良かった。食事をした後は甘いものを食べると交感神経を刺激してお腹一杯の満足感が得られるの」
「へー、そうなんだ」
「早く、私にもして」
「えっ?」
「早く、工藤君のフォークのモンブランが食べたい」
「わ、分かった」
これは食べる時より食べさせる時の方が恥ずかしいかも。
俺がフォークですくったモンブランケーキを彼女の口に持って行くと彼女は大きな口を開けてパクンとくわえた。顔が赤くなっている。
「工藤君、これって食べる方が恥ずかしいかも」
普通、そう思うでしょ。
「じゃあ、これを交代で食べさせるの」
「…………」
もう答える気力もない。
ふふ、第三ポイントクリア。さてこれからが重要。
一つのモンブランをお互いのフォークで食べさせ終えると門倉さんが俺の傍に来た。ゆっくりと俺の腕に寄りかかりながら
「工藤君、覚えている。心菜が君とお付き合いし始める時、言ったよね」
「何だっけ?」
「一時我慢するって。そしてあれから三ヶ月も経たないで心菜と別れて、それからもう五か月。君は今誰ともお付き合いしていない。そして私の君への心は変わっていないよ」
「…………」
「私、まだ男の子とお付き合いした事ないの。だから良く分からないけど…いいんだよ」
門倉さんが俺の顔に近付いて来た。モンブランってお酒でも入っているのかな。頭が正常でない気がする。
あっ、唇に彼女の柔らかい唇が…。甘い香りがする。背中に腕を回して来た。何か気持ちいい。されるままにしていると更に強く口付けして来た。
彼女の甘い口付けに頭がふわーとしてきた。
俺も彼女の背中に腕を回して…。どの位か分からない。長いのか短いのか。あっ、彼女がブラウスのボタンを取っている。不味い。本当は止めさせなきゃ。でもその気持ちが薄らいでいる。どうしたんだ俺。
あっ、彼女の右手が俺の左腕を持って…柔らかい。少し手が動いてしまった。
「あん!」
「ご、ごめん」
「いいの。もうこの中も見せているんだから」
また唇を塞がれた。
また時間が経った。彼女の上半身は何も身に着けていない。彼女の綺麗な形の胸が目の前に有る。スカートは脱げていた。
「工藤君、お願い。初めてを君に上げたい」
「でも」
「お願い!」
また、頭の中で天使と悪魔が言い争っている。
天使―祐樹、ここまで門倉さんが言っているんだぞ。彼女の気持ちも考えろ。
悪魔―祐樹、早まるな。心菜の二の舞になるぞ。
天使―この子はそんな子じゃない。
悪魔―分からないじゃないか。あっ。
………………。
「っ!」
「ごめん」
「いい。来て」
お互いの顔が目と鼻の先にある。彼女は偶に口付けをしてくる。俺もそれに応えている。
「ふふっ、して貰えた」
「…………」
「工藤君、二人だけの時は祐樹って呼んでいい」
「いいよ。野乃花」
「嬉しい」
彼女が、思い切り抱きしめて来た。
野乃花の体は、とても白くて綺麗で柔らかい。胸は綺麗な形をしていてしっかりとボリュームがあり、腰も綺麗に括れている。そして可愛いお尻。見ていたらもう一度してしまった。
祐樹に二回もして貰えて。一回目は痛かっただけ、でも二回目は少しだけ痛かったけど全然違った。
勿論これで優子や里奈に完全に勝ったとは思っていない。私は初めてを祐樹に上げる事が出来たけど、それだけでは駄目だ。
今、肉体の繋がりは出来たけど、それは私が強引にして貰ったおかげ。もっと祐樹の心が私を必要と思ってくれなくては駄目だ。彼が私を求める位に。
だからまだ最終ポイントはクリアしていない。これからは彼の気持ちをしっかりと掴むことが大切。
来週、優子と会うのは寂しいけど、仕方ない。彼女とはこれからも仲のいい友達で居たい。祐樹を二人同時に好きになったと分かった時、私と優子どちらが選ばれても仲の良い友達で居ようと約束した。
だから祐樹の心を掴まなければいけない。体は飽きる事は有っても心は繋がればつながる程、深い愛情となる。
「あっ、ごめん。寝ちゃった」
「ふふっ、まだ午後六時よ。祐樹と私の家は近いんだから。ねえ、今度稽古終わった後で良いから家に寄って。もういいでしょ」
「でも汗臭いし」
「大丈夫。今日だって一杯汗かいたよ。祐樹の汗は私の大好きな匂いだから」
「…………」
どう言えばいいか分からないけど、確かに野乃花の汗はいい匂いがする。
「野乃花、今更だけど何で俺に君の大事なものをくれたの?」
「祐樹が好きだから」
「なんで?」
「理由はいくらでも言えるけど。…好きだから。それだけ。でもこれからは祐樹の心の中にしっかりと私がいる様にしたい。祐樹の心の中の椅子は一つだって思っているから。誰にも奪われたくない」
「そっか」
野乃花の言葉を俺はまだ理解出来ていない。でも肉体よりも心の繋がりを求めている。それがどれだけ大事な事かは俺でも分かる。
「じゃあ、また月曜日に」
「うん、送ってくれてありがとう」
野乃花の家は道場から一分も歩かない所にあった。この辺は皆大きな家が多い。野乃花の家も大きかった。
俺は、自分の部屋に帰ってからも良く自分自身の事を考えないといけないと芯から思っていた。
「ただいま」
「お帰り、野乃花。あの子、初詣の時会った工藤君だよね」
「えっ、お姉さん見てたの?」
「二階からね。野乃花が帰ってきたから降りて来たのよ」
「そ、そう」
多分、間違いない。
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お姉さんの最後の言葉、なに?
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