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ハプニングは遠足と共にやって来る


前話からの続きです。


―――――


 最初のチェックポイントは、軽い坂道を歩いた先だ。俺と小見川が楽に歩いていると

「待って、工藤君」


 後ろを見ると新垣さんが遅れている。俺は直ぐに新垣さんの所に行って、

「じゃあ、一緒に歩こうか」

「うん」


―ちっ、あの手が有ったか。

―私が先に使おうと思っていたのに。


緑川さん、門倉さん。心の声が駄々洩れです。


 小見川も緑川さん達の横に行って歩くスピードを緩めたようだ。皆で景色を見ながら歩いて行くとしばらくしてチェックポイントが見えて来た。いたのは体育の先生だ。

「おう、来たか。誰かマップを見せろ」


 緑川さんが見せると先生はマジックでチェックを付けた。

「この後は、ロープとか有るから楽しめよ」

「ありがとうございます」


 


 最初のチェックポイントを過ぎて少し行くと二メートル位の高さの所をロープで五十メートルほど進むようだ。並行して三本ある。

 最初、小見川、緑川さん、門倉さんがロープに摑まって滑降していった。気持ちよさそうだ。


 俺達も、向こう側に着いたロープを紐で手繰り寄せると

「行こうか新垣さん」

「うん」


 シャー、シャー。


「工藤君、これ気持ちいい」

 新垣さんの長い髪が風で綺麗に流れている。横顔がとても可愛い。


 しばらくロープに摑まってゴールまで着くと足で着地した。

「あははっ、これ面白いね」

「そうだね」



 少し歩くと二つ目のチェックポイントに着いた。緑川さんがマップを出してマジックでチェックマークを付けて貰うと

「次は、坂が多いから気を付けろ」

「はーい」



 今度は、少し狭い道のアップダウンが激しい。

「く、工藤君ちょっと待って」


 また、新垣さんが膝に手を置いてゼイゼイ言っている。仕方なしに俺が行こうとすると

「小見川君、今度は君が新垣さんを助けてあげて」

「えっ、俺が?」

 自分の顔に指を向けてなんで自分が?って顔をしている。


「さっきは、工藤君助けたじゃない。だから今度は君」

「は、はい」


 小見川が新垣さんの所に戻った。


―あの子ばかりいい思いをさせる訳には行かないわ。

―そうよ。


 あの二人共心の声が駄々洩れです。


「工藤君、私達と一緒に行こうね」

「はい」


 門倉さんに言われて仕方なしに、彼女達の横に付いた。新垣さん達のスピードに合せてゆっくり歩いて行くと、後ろから一条達の組に抜かされた。抜き際に一条が俺の顔を見ながら


「工藤、楽しんでいるじゃないか。頑張れよ」

 何を頑張ればいいんだ。


 何とか、最終のチェックポイントまで来ると緑川さんがまたマップを出した。チェックマークを付けて貰った後、先生が

「緩やかな下りが続くが気を抜くと躓くから気を付けろ」

「はーい」

 また緑川さんが、可愛く答えた。先生も嬉しそうに笑っている。


 もう、スタート地点も真近だと思ってゆっくり歩いていると


「痛い」

「えっ?!」


 後ろを見ると新垣さんが、躓いて足首を押さえている。

「どうしたの新垣さん?」

「ちょっと景色見ながら歩いていたら石に躓いて」


 確かに彼女の足元にこてっと小さな石が土から覗いていた。

「歩ける?」


 彼女が足首を触りながら

「ちょっと駄目かも。工藤君、お願い」

「えっ?」

「おんぶして」

「えっ!」

「駄目かな?」

「小見川君、おんぶしてあげたら」

「い、いや俺は。工藤ご指名だし」


 新垣さんがじっと俺を見ている。仕方なしに俺は、新垣さんに背を向けて腰を落とすと

「ごめん」

 そう言って俺の肩に手を掛けて来た。


「いいかな。悪いけどおんぶするよ」

「うん」

 彼女のジャージ膝裏に手を掛けて起き上がると思い切り背中に感じる二つのお山がある。参った。この子見た目より大きい。


―最後はこの手で来たか。

―この子侮れないわね。


 二人共さっきから心の声駄々洩れですって。


「工藤君、重いでしょ」

「そんなことないですよ」

「ごめんね。ずっと足手まといだね」

「そんなことないですって。皆で楽しむんだから。新垣さんのおんぶもアスレチックと思えば楽しいですよ」

「そう言ってくれると嬉しい」

 彼の肩に顔を付けて体を背中に寄せた。



「ちょっと、優子。あれ何?」

「これは作戦立て直しね。心菜が居なくなって二人だけだと思ったのに」

「そうね。当分共同戦線張るわよ」

「うん」



 くくっ、工藤をめぐる戦いに新しいパーツが増えた。この二年も楽しくなりそうだ。でも俺ってこの三人から相手されてないのか。しゅん。



 俺達がスタート地点に近付くと俺の姿を見た担任の桜庭先生が駆け付けた。

「どうしたの工藤君?」

「あの、先生。私が最後の下り坂でよそ見して石に躓いて足首を挫いてしまったんです。それで工藤君にお願いして」

「そういう事。じゃあ、工藤君そのまま、あの建物の救護所に行くわよ」

「はい」


 ここ朝日ランドの常駐の医師らしい人が、新垣さんの足首を触って見て彼女の反応を確かめると

「軽い捻挫ですね。ロキソニンテープを貼っておきます。一応家に戻ったら近所の医者に再度見せて下さい」

「分かりました。ありがとうございます。先生」


 今度は彼女に肩を貸しながら二人で皆が集まっているレストランに行くと小見川が手を振って俺達が座る場所を教えてくれた。そこに行こうとすると


「おい、新垣さんが知らねえ男の肩に手を掛けているぞ」

「彼女足を挫いたみたいだな」

「くそっ、俺が同じ班だったら」

「しかし、気に食わないな。誰だあれ?」

「ああ、工藤とか言って成績表の上位ランカーだ」

「ふん、頭だけでなくいい思いもしているじゃないなか」


 俺達の恰好を見て、あっちこっちで同じ事を言われている。仕方ない。新垣さんに肩を貸しているんだからな。


「ごめんね工藤君」

「仕方ないです」



 無事に席に着くと

「工藤君、ご苦労様。ここからは私達が新垣さんの面倒を見るわ」

「えっ?」

「当たり前でしょ。あなたばかり何いい思いしているの。バスの中でもしっかりと野乃花と私で面倒見てあげるから」

「そんなぁ」



 帰りのバスの中では、横並びに俺、緑川さん通路を跨いで門倉さん、新垣さんだ。どう見ても面倒見ている雰囲気じゃない。

 途中のパーキングエリアでは、俺、門倉さん通路を跨いで緑川さん、新垣さんだ。何とも言えない。


俺の後ろに座る小見川が、

「ふふっ、工藤、今年も期待しているぜ」

 何期待しているんだ。全く。



 学校に着くと校門に一台の車が停まっていた。俺達のバスの傍に寄って来ると桜庭先生に挨拶をした後、新垣さんを乗せて帰って行った。多分彼女の家族だろう。でも迎えに来ただけなのに身なりがしっかりしていたような?



 学校の校庭で一度二年生全員が集まり校長が挨拶をした後、解散となった。他の学年も別々に行われたんだろう。俺も駅に向かおうとすると

「工藤君、一緒に帰ろうか」

「えっ?」

「私達と一緒に帰ろう」

 なんと、緑川さんと門倉さんに両脇を取られた。仕方なく一緒に駅に向かっていると


「工藤君、明日からGWね、一緒に遊びましょ。野乃花とは約束しているんでしょ。だから私とも会って」

「はぁ」

 緑川さんと門倉さんが組むと逃げれない。結局、俺は家に帰ってからメールするという事にした。もう精神的に疲れた。


―――――


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


 


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