遠足の始まり
もうすぐ、今年もGWがやってくる。後半が五連休だ。でもその前に遠足がある。今年の二年は、朝日ランドという所でアスレチックフィールドを回るらしい。
朝、担任の桜庭先生が入って来て午後のLHRで班を決めなさいと言われた。班決めは三から五人一組になれという事だ。
当然その前にクラスの皆は騒ぎだす。一限目後の中休み、そこらここらで組合わせが決まって行く。俺は当然
「小見川一緒に回ろうぜ」
「もちろんだ。でも最低三人だろう。あと一人誰誘う?」
「はい、はい、はい」
いきなり隣に座る新垣さんが手を上げて声を掛けて来た。
「新垣さん入ってくれるの。やったな工藤」
「…………」
小見川は喜んでいるけど俺は複雑な心境だ。出来れば一条が入ってくれるといいのだけど。ふと見るとやっぱり、緑川さんと門倉さんがやって来た。
「工藤君、一緒に回ろう」
「工藤、俺やっぱり、お前と回るの遠慮するわ」
「ちょっと待て小見川。さっき一緒に回ろうと言ったじゃないか」
「そうよ、小見川君。私達と一緒に回ろう」
緑川さんが小見川の顔に思い切り近付いて言って来た。
「あ、あの俺は…」
「いいじゃない。ねっ、小見川君」
今度は門倉さんが顔を近付けて言っている。小見川の顔が真っ赤になっている。
「わ、分かりました」
「うん、それで良し」
今度は、新垣さんが言っている。
「小見川良かったな。遠足は小見川ハーレムだな」
「「「違う!」」」
「へ?!」
今度は小見川が、俺を見て
「ふふっ、工藤諦めろ。主人公はお前だ」
「…………」
何も言えなかった。
遠足当日は、全員動きやすい服装で学校に午前八時に集合。バスで朝日ランドに向かう。バスで二時間の予定だ。バスのフロントガラスには、学校名と学年クラス名が書いて有る。
2Aと書かれたバスに俺は他のクラスメイトと一緒に乗り込もうとすると、後ろで何やら騒いでいる。
「私が、工藤君の隣。席も隣なんだから当たり前でしょ」
「何言っているの私よ。貴方は毎日、隣なんだから私と優子に譲りなさい」
新垣さんと門倉さんが揉めている。桜庭先生が、
「二人共早く乗りなさい。後ろがつかえているわよ」
「「はい」」
俺は、そんな事気にせずに先に乗って小見川と一緒に座ろうとしたところで、
「工藤、別々に座ろうぜ」
どう見ても意図的な良からぬ気配がするが、仕方ない。小見川が俺の後ろの席に座るとあれ、門倉さんと新垣さんの席争いを横目に緑川さんが座って来た。
「工藤君、宜しくね」
「ちょっと、優子。狡いじゃない」
「そうよ、緑川さん」
「あなた達が、バスの入口で騒いでいるからよ。帰りは代わってあげるわ」
結局、小見川の隣に新垣さんが座り、門倉さんは通路を挟んで知らない女の子の隣に座った。
「全員、乗ったわね」
「「「はーい」」」
みんな元気だ。
バスが動き出すと
「ふふっ、嬉しいな。こうして工藤君の横にいるの久しぶりね」
「そうでしたっけ?」
「そうよ。遊園地以来かな?ねえ、工藤君。GWどこかで会えないかな?」
「あの、緑川さん。そういう話はここではちょっと」
「そうね、じゃあ降りた時に」
「…………」
バスが走り出して十五分もしない内に緑川さんが目を閉じて、そして俺の腕に寄り添って来た。ちょっと怪しい。
ふふっ、寝たふりして工藤君に体を付ければ彼は無理して私を起こそうなんてしない。それは電車の中で良く分かっている。このままパーキングエリアまで彼の腕に体を預けていよう。
途中、パーキングエリアでトイレ休憩に入った。緑川さんに声を掛けて起きて貰うと
「俺も、ちょっと行って来たいから」
「私も」
ふふっ、良かった。工藤君の匂いを一杯嗅ぐことが出来た。今度はどうやって触れて居ようかな。同じ手は駄目だし。
「優子、ここからは私に代わって」
「えっ、野乃花は帰りでいいじゃない」
「駄目。優子、嘘寝入りしながら工藤君にくっついて居たでしょう。だから代わって」
「ばれていたか。仕方ない」
俺が、バスに戻ると何故か、隣は門倉さんに代わっていた。
「優子と代わったの。宜しくね工藤君」
「う、うん」
後ろの席に座る小見川が、分けの分からない事を言っている。
「工藤、ハーレムー」
小見川と新垣さんの会話が全く聞こえてこないのはそれはそれで心配なんだけど。
あっ、門倉さんが、俺の腕に自分の腕を絡めて抱き着く様に目を閉じている。これ絶対嘘寝だ。周りか見えないから良いんだけど。
「門倉さん」
「スー、スー」
「門倉さん」
「スー、スー」
絶対嘘だ。でも強引に退かせないし。腕には門倉さんの顔と豊かな胸が押し付けられているし。あっ、ついプールの時の事が思い出されてしまった。不味い。こんなところで元気にならないで。お願い。
バスがやっと目的に着いた。俺は、門倉さんの耳元で
「門倉さん、着きましたよ」
「ひっ!」
耳元で囁いたのが良くなかったのか変な声を出されてしまった。
「く、工藤君。あ、ありがとう」
不味い、寝た振りして彼の腕にしがみついていたら本当に寝てしまった。まさか彼が私の耳元で囁くなんて。鼓動が思い切り跳ねあがってしまった。
全員がバスから降りると学年主任が
「全員、聞く様に。バスを降りる時、担任の先生からここのフィールドアスレチックのマップを渡されたと思う。このパップの中のマークされているチェックポイントを回って、十二時までにもう一度ここに戻って来るように。
昼食はこの後ろにある建物の中のレストランで全員で一緒に食べるから、遅れない様に。
チェックポイントには先生方が居るから、具合が悪くなったとか、万一怪我をした場合は直ぐに近くにいる先生に声を掛ける様に。以上です。全員怪我無く楽しみましょう」
学年主任の話が終わると、クラス単位でスタートする。2Aは一番最初だ。但し、後ろから抜かれるのも抜くのも構わない。は自分達に合ったスピードで楽しむ様にとの事だ。
俺と小見川、緑川さん、門倉さん、新垣さんで早速スタートした。
「工藤、楽しんで行こうぜ」
「もちろんだ」
「小見川君、なんで私達を入れてくれないの?」
緑川さんに突っ込まれている。
「い、いえ、緑川さん、門倉さん、新垣さんも楽しんでいきましょう」
「「「うん、楽しんでいきましょう」」」
―――――
投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。




