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体育祭


 体育祭の朝になった。昨日から制服は夏服になっている。俺も上着が無いのが楽でいい。ネクタイは簡単に結ぶだけ。大人の様にきっちりとは結ばない。


 手にはスクールバッグの代りにジャージとか入ったスポーツバッグを持つ。着て来ても良いと学校では行っていたが、流石にちょっと抵抗を感じる。



 学校のある駅を降りて学校へ向かうと、珍しく小見川が後ろから声を掛けて来た。

「工藤、おはよ」

「おはよ、小見川」

「ここ二週間しっかり橋本さんと仲良くなったみたいだな。練習の後、二人でファミレスに行って楽しそうに話していたって聞いてるぜ」

「ああ、それは、まあな」

「ふーん、工藤もそれなりなんだ。橋本さん結構お前に気があるらしいよ」

「えっ、そうなの?誰から聞いたのそんな事?」


「そうりゃ、運動部系繋がりだよ。俺達は毎日練習しているし、最近は体育祭の為にグラウンドも提供していたから横の繋がりも多くなったんだ」

「そうなのか」




 俺達は、一度教室に入り、女子とは別々の教室で着替えを終わらせるとみんなでグラウンドに向かった。


 校長先生や体育祭担当の先生の挨拶が終わった後、生徒会長が前に出て準備体操が始まった。腰までの艶やかな黒髪をポニテにしている。


切れ長の大きな目にスッとした鼻、プリンとした下唇が可愛く、細面の綺麗な顔。つい見惚れてしまう程綺麗な会長さんだ。動く度に豊かな胸が揺れている。男子の目は、みんな釘付けになっている。俺もつい見てしまった。


 それが終わると競技が始まった。俺はクラスの集合場所で小見川と一緒に並んでみている。

「工藤の種目って、午前中一つと午後一つだよな」

「ああ」

「なんかあんまりやる気無さそうだけど?」

「そんな事は無いんだが」

 

「理由は分からないが、お互い頑張ろうぜ」

「ああ」



 午前中の競技も進み、放送で二人三脚競技への出場者はスタート地点へ集合するように流されると

「工藤君、行こうか」


 いつの間に俺の傍に来たのか橋本さんが声を掛けて来た。

「行こうか橋本さん」


 隣に座る小見川がニヤニヤしながら

「工藤、行ってこい」と声を掛けて来た。



 スタート一つ前で橋本さんが二人の足にタオルを結び付けると

「工藤君頑張ろうね」

「うん」



「スタートに付いて。用意」


パーン。


いっちに、いっちに、いっちに、


「工藤君、頑張ろう。いっちに、いっちに」


 俺達の前は他の競技者はいない。もうすぐゴールだ。


 パーン。


「やったぁ、一着だー!工藤君、やったよ、やったよ」


 橋本さんが俺の両手を持ってぴょんぴょん跳ねている。大きな胸がそのまま上下しているけど…。本当に嬉しそうだ。競技が終わり、クラスの集合場所に戻ると何故か橋本さんはそのまま俺の隣に座った。


「あれ、橋本さん、皆の所行かなくていいの?」

「いいの、いいの」

 その言葉に橋本さんと反対側に座る小見川がニヤニヤしている。



 そして午前中の競技が終わり昼休みになった。俺達は一度教室に戻り、コンビニで買っておいたパンとジュースを取りだしてから小見川と一緒に食べ始めようとすると

「ねえ、工藤君、私も一緒に食べて良いかな?」

「えっ?!」

 俺は小見川の顔を見ると


「俺は別に良いけど」

「じゃあ、良いわね。工藤君」

 俺は何も言っていなんだが。しかしこの子凄い積極的だな。周りの様子をチラッと見るが、特に気にしている生徒はいない。じゃあ良いか。


「ああ、一緒に食べようか橋本さん」

「うん!」




 昼食も摂り終わり、小見川と何故か橋本さんも一緒にクラスの集合場所に行くと1Cの美月が男と喋っていた。いつも彼女と一緒に帰っている生徒だ。


 午後一番で学年別クラス対抗男女混合リレーが始まる。二百メートルを半周ずつ走る。アンカーは一周だ。男子は役員席側、女子は生徒の集合場所側に集まる。


 俺は男子で二番目なので半周だ。チラッと横目で見ると1Cの並びに美月と喋っていた男子が座っている。ちょっとしたイケメンだ。なるほど美月はあんな男が良かったんだ。


「第一走者位置について、用意」


パーン。


 第一走者が走って行き、二百メートルトラックの反対側で待っている女子に渡す。まだほとんど横並びだ。

 俺も順番を確認してラインに立つ。三番目だ。二番目に1C美月が走って来る。その後ろが俺の組1Aだ。

 だけど、ほとんど差はない。バトンを彼に渡した後チラッと俺の方を見た気がしたが、俺もクラスの女子からバトンを貰うのが必至で彼女と目を合す余裕はない。ほんの二メートルくらい先に美月の彼氏がいる。


 思い切り全速で走ると、コーナーの入口で並んだ。外側からだと不利だが仕方ない。そのまま並走して反対側直線に入った所で、一気に抜き去り二番手でバトンを渡した。


「きゃーっ、工藤君」

「工藤君、カッコいい」

「工藤、すげえぞ」


 走り終わりトラックの中に入ると結構な声援を受けた。ちょっと顔が緩んでしまった。


-ねえ、良く見ると工藤君ってイケメンよね。

-優しいし、背高いし。

-この前の中間でも学年十位でしょ。

-ふふふっ、ふふふっ、ふふふっ、


 なんか背中がぞくぞくするんだけど。


 競技が終わりクラスの集合場所に戻るといきなり橋本さんが俺の腕を掴んで来た。

「工藤君、凄かったね。君のお陰でうちのクラス二位になったよ」


 橋本さん、君の豊かな所が俺の腕で擦れているんだけど…。


 そんな俺の姿をしり目に小見川が

「工藤、やったな。抜いたのは渡辺の彼氏だ。気分良かったんじゃないか」

「何の事だ。もう忘れた」

 本当は思い切り意識して抜き去ったんだけど。


「そうか、なあ、あの足があるなら陸上部でもレギュラーになれるぞ。入らないか」

「いや、止めておくよ。偶々だったから」

「偶々速く走れるほど短距離は簡単じゃない。練習も重要だが天性が八十パーセントだ。持っているのに残念だな」

「買いかぶり過ぎだって」

 その間も何故か橋本さんは俺の腕に思い切り豊かな所を押し付けている。参った。



 ふふふっ、工藤君が小見川君と話している間に思い切り私をアピールした。女の子の間では工藤君は密かに人気がある。今回のリレーで思い切りそれが表面に出て来た。取られてたまりますか。




 祐樹、かっこよかった。賢二が遅いわけじゃないけど。バトンを渡された後、あっという間に賢二の横に並びコーナーの立ち上がりで一気に差をつけた。かっこ良すぎる。

 案の定、1Aでは、女子が彼の話で持ち切りだ。やはり私は失敗したんだろうか?


「美月、抜かれちゃったな。あいつ誰だ。偉く足が速かったけど」

「私も知らない人。1Aに足の速い人がいるんだね」

「まあいいや。美月、今日も良いよな」

「うん」


 毎日の様にこれ。流石に嫌になって来た。賢二は恋人というより私の体を求めているだけ。祐樹の時の様に一緒に映画を見たり、買い物行ったり、散歩したりなんて全然しない。でも誘われれば断れない。私バカみたい。


―――――



書き始めのエネルギーはやはり★★★★★さんです。ぜひ頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。



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