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心菜の我慢と水島さんの考え


 学園祭の代休が終わった翌日。俺はいつもの様に教室に入り自分の席に着くと隣の席の小見川が、

「おはよ工藤。なあ、昨日何か有ったのか?」

 えっ!どういう意味だ?


「お、おはよう小見川。な、なにも無いけど」

「何動揺しているんだ?俺はお前が疲れた顔をしているから聞いたんだけど」

「そ、そうか。いや何も無かった」

「ふーん。まあいいや」


 俺と小見川が話をしていると緑川さんと門倉さん、それに水島さんがやって来た。

「ねえ、工藤君。今度の土曜日だけど午前中授業でしょ。午後から空いていないかな?」

「うーん、ちょっと色々あって」

 午後は稽古に行きたいし。


「じゃあ、日曜日は」

 日曜日は洗濯や買い物がある。それに午後は橋本さんと会う約束をしている。


「色々有って空いていない」

「じゃあ、いつ空いているの?」


 予鈴がなった。良かった。

「また後でね」

 彼女達が自分の席に戻ると小見川が、

「工藤、ハーレムは健在のようだな。羨ましいぜ」

「お願いだ。代わってくれ」

「前にも言っただろう。見ているのが面白いんだって」


 担任の先生が入って来た。




 一限が終わった中休みすぐにさっきの三人がやって来た。水島さんが

「ねえ工藤君。お昼ゆっくりと話そうか」

「良いけど。でも小見川も一緒だよ」

「工藤、俺を巻き込むな。三人さん、俺なんか気にしないで工藤とゆっくり楽しんで」

「小見川君、ありがとう」


 チラッと橋本さんを見ると悔しそうな顔をしている。でもこれ断り切れないし。



 そして、昼休みになるとさっそくあの三人がやって来た。今度は緑川さんが

「工藤君、学食行く?」

「いや、購買で買って来るから待っていて」


 この三人を連れて学食行ったら悪目立ち過ぎる。ここは俺が教室で食べた方がいい。何故か小見川が


「工藤、購買なら一緒に行こうぜ」

「ああ」

 どういう意味だ。


 小見川と一緒に教室を出ると

「なあ、気の所為かな。橋本さんがあの三人と動きが違う。何か有ったのか?」

 こいつには言っておいた方が良いかな。


「小見川、ちょっと放課後良いか」

「あん、ああそういう事か。分かった。放課後な」

 やっぱりな。



 俺達は購買から教室に戻ると小見川は、他の男子の所に行ってしまった。俺の席の周りには、緑川さん、門倉さん、水島さんが座っている。俺が席に戻ると

「工藤君、一緒に食べよ」

「うん」


 みんな、自分で作ったお弁当なのか、可愛い弁当箱に色とりどりの野菜やお肉、卵焼きなどが入っている。購買で買った菓子パンを食べていると門倉さんが


「工藤君、この唐揚げ食べて」

「えっ、でも」

「いいから」

 アルミホイルを少しちぎって俺の机に置いた。仕方なく、それを手で取って食べると

「どうかな?」

「うん、とても美味しいです」

「良かった」


「あっ、それなら私も」

 そう言って緑川さんと水島さんが、蛸さんウィンナーと出汁巻卵をアルミホイルの上に置いた。ここまで来ると要らないとは言えない。

「ありがとう、頂きます」

 先に蛸さんウィンナーを食べて、その後出汁巻き卵を食べた。両方共とても美味しい。

「うん、二人共とても美味しいよ


 俺の返事に門倉さんが

「ふふっ、良かった。ねえ、じゃあ明日からお弁当作ってきてあげようか」

「いやそれは流石に」

「いいじゃない」


 困ったぞ。周りを見ると他の男子は嫉妬の目で、田中、前田、一条と小見川は笑っている。橋本さんは相当に怒っているのが良く分かる。


「やっぱり、遠慮しておきます」

「そう、残念だなぁ」

「野乃花、それより休みに会う約束した方が」

「そうだね」

「工藤君、三人共君に個別で会いたいの。だから予定作って欲しいな」

「うーん、土日はちょっと」


 そこに水島さんが割込んで来た。

「じゃあ、放課後でも良いよ」

「里奈、あなたは部活無いから良いけど、野乃花と私は部活がある。それは狡いよ」

「優子、私達は土日何とか都合付けて貰おうよ」

「そうね、それが良いわ」

「優子も、野乃花もちょっと待ってよ、それなら私も土日がいいわ」


 おれ、この場所から逃げたくなって来た。小見川なんか、腹を抱えて笑っている。


「あの、三人共。俺土日は結構忙しいんだ」

「何がそんなにあるの?こんな事聞くのは良くないけど、そこまで忙しいってやっぱり気になるよ。ねっ、優子、野乃花」

「「うんうん」」


 はあ、どうしよう。もう橋本さん爆発寸前だし。

「分かった。明日か明後日説明するから」

「「「必ずね!」」」


 こんな事を話しているとお昼の休み時間は、あっという間に終わってしまった。




 放課後になると直ぐに橋本さんが寄って来た。

「工藤君帰ろ」

「ごめん、小見川とちょっと話が有るんだ。先に帰って」

「えーっ!でもう」


「小見川、行こうか。ごめん橋本さん」

「ああ」



 俺と小見川は、スクールバッグを肩に掛けると急いで教室を出た。あの三人に声を掛けられる可能性もある。



校門を出ると

「工藤、話って橋本さんの事か?」

「分かるのか?」

「まあな」

「実は、俺橋本さんと付き合う事にしようと思って」

「付き合う事にしようと思って?まだ付き合っていないのか?」

「ああ、俺1Cの美月に振られてから、また同じ目に遭うんじゃないかと思って、正直怖がっていたんだけど。橋本さん、凄く積極的で、その…」

「えっ、お前もしかして」

 俺は頷いた。


「そっかぁ、あの巨大なお胸様は工藤の手に落ちたのかぁ」

「そこかよ」

「まあ、良かったじゃないか。でもあの三人どうするんだ。橋本さんと

付き合ったっていう位じゃ諦めない感じがするんだが」

「だから、相談に乗って欲しい」


「相談って、それ。また難しい相談だな。うーん。…。やっぱりきっぱりというしかないんじゃないか。橋本さんと付き合うから三人とは付き合えないって」

「その手しかないかな。でもいつ言うかな。明日いきなりは」

「引き摺っても問題の先送りにしかならないぜ」

「そうだよな。もう一回考えるか」


 いつの間にか駅についた。小見川は俺とは逆の方向だ。改札で別れると俺はそのまま電車に乗った。



「工藤君」

「えっ?水島さん」

「待っていたわ。君が来るまで」

「…………」


「ねえ、お話したいの。優子や野乃花には昼間ああ言ったけど、やっぱり二人で話したい。お願い」

「でもどこで」

「君のマンション。もう心菜は何回か行っているんでしょ。私も行きたい」

「いやそれはちょっと」

「心菜は良くて私は駄目なの?」



 電車が入って来た。二人で入口に立った。水島さんは俺の顔をジッと見ている。俺は外を見ながらどうしようか考えているとマンションのある駅に着いてしまった。水島さんも一緒に降りた。



「工藤君駄目かな?」

「近くの喫茶店でいい?」

 本当は工藤君の部屋に行って強行策に出ようと思っているんだけど。


「工藤君の部屋は駄目なの?」

「でも」

「お願い!」


「水島さん、来ても良いけど、何にも無しだよ絶対に」


 何となく彼女の意図が見えた気がした。既に一度ナマお胸も見てしまっている。それに彼女は間違いなく経験者。多分彼女にとってはそれをする事はハードルが低いんだろう。


「分かった」

 入っちゃえばこっちのもの。何とか出来る。



 俺は仕方なく水島さんを部屋に入れた。ドアを開けて中に入って貰うと

「うわーっ、広―い。工藤君、ここに一人で住んでいるの?」

「うん」

「洗濯とか掃除も一人で?」

「うん、俺しかいないし」

「休みの日に手伝いに来てあげようか。家近いんだし」

「流石にそれはいいよ。それよりリビングのソファに座って。今冷たい飲み物用意するから」

「ありがとう」


 2LDKでも広い間取り。工藤君の家ってどんな家族なんだろう。まあ聞くのは止めておくけど。それより上手く事を進めないと。


「水島さん、これで良いかな」

「うん、ありがとう」

 彼が持って来てくれたのは氷の入ったグラスに冷たい炭酸のグレープジュースが入っている。気遣いも出来るんだ。


彼は私の反対側に座ると

「水島さん、話って何?」

「うん、君とはプール以来だし、もう一度二人で会いたいなと思っていたんだ」

「…………」

 何で俺なんかに。彼氏だっているんだろうに。


「そう。でも俺なんかより良い人いるみたいだし」

「いないよそんな人。アウトレットで会った男は中学の時の人だし、デパートで会ったのは習い事で知り合った友達だよ」

 本当かな、そんな感じには見えなかったけど。


「ねえ、工藤君。私って君から見て魅力ない子なのかな?」

「そんな事ない。水島さんは可愛いよ。性格だってとても優しいし」

「それだけ?プールに行った時、見られてしまったけど、やっぱり胸って大きい方が良いの?」

「いや、あれは、事故だったから」

「そういう事聞いていない」

「私じゃ駄目かな?君の隣にいたい」

「えっ?!それって」


「もし、もしだよ。君が良いって言うなら、しっかりと私の全部を見せても良いよ」

 やっぱりそれか。


「水島さん、ここに来る前言ったよね。何も無しだよって。そういう事言うなら」

「分かった。ごめん。でも、だって私、工藤君の事が好きになっちゃったんだもの」

 あーあ、下向いて泣き出してしまったよ。どうすればいいんだ。


「水島さん、これ使って」

 俺は急いでキッチンにある新しいタオルを出して渡すと


「ありがとう。ねえ、工藤君。今付き合っている人いるの?」

「うん」

「えっ!もしかして心菜?」

「うん」


「そっかぁ、遅かったのかぁ。分かった。…ねえ、工藤君。我儘聞いてくれる?」

「聞ける我儘なら」

「聞ける我儘かぁ。でも聞けるかも。工藤君、一度だけでいい。私を抱いて」

「…………」

 何を言うと思えば。


「お願い!」

「水島さん、それは聞けない。そういう事言うなら帰って。厳しい言い方だけど、何も無しって約束だから」

「そ、そっかぁ。やっぱり駄目か。じゃあ今日は帰るよ」


 

 工藤君が、駅まで送ってくれた。やっぱり心菜の抜け駆け勝ちか。もう少し早く強行策出ていれば良かったのかな。でも残念だなあ。工藤君なら一生付き合えたかもしれないのに。


―――――


投稿意欲につながるので少しでも面白そうだな思いましたら、★★★★★頂けると嬉しいです。それ無理と思いましたらせめて★か★★でも良いです。ご評価頂けると嬉しいです。感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


 


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